2020/02/23 のログ
ピング > 店を閉じる時間までたっぷりと本を堪能するのだった。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/雑貨店」からピングさんが去りました。
ご案内:「牢獄」にエリザベートさんが現れました。
エリザベート > 其の日、あるいは其の夜、白い狂女の姿は四角い部屋の中に在った。

城内なのか、そもそも王都の何処かなのか、あるいは別の何処かなのか。
物狂いの女に其れを知る術は無く、また、興味も無かった。
判っているのは、己が両手首を一纏めに黒鉄の枷で括られ、
天井からぶら下がる頑丈そうな鎖に繋がれ、吊るされているということだけ。

今、鎖は辛うじて、直立して足がつく高さに調節されてはいるけれど、
履物は奪われており、冷たい石の床に触れているのは素足である。
常の状態でも、充分過ぎる程にぼんやりした女ではあるが、
部屋の中には甘く、絡みつく様な香りが満ちて、女の意識を朦朧とさせていた。

扉は一方の壁にひとつだけ、家具調度と呼べるものは、部屋の片隅に置かれた小卓と、
其処で揺らめく燭台の灯火、そして、怪しげな煙を棚引かせる香炉のみ。
卓上には他にも、悪趣味な品々が並んでいる様でもあり、
壁際にも幾つかも、其れに類するものが並んでいる様だが、
――――そも、何の咎で此処に繋がれているのか、此れから如何なるのか、
女は知る由も無く、また、知りたがってもいなかった。
そんな奇妙な虜囚一人を囲い込んで、四角い部屋の時間はゆっくりと流れてゆく。