2019/10/24 のログ
ご案内:「王都マグメール近辺」に玉藻さんが現れました。
■玉藻 > 目的の宿、それを目指していた。
それはここには無く、そもそも、居る世界も違う。
いまだ、それに気付く事もなく、幼女は進んでいた。
それと勘違いした、先に見えた王都を目指し、幼女は今日も歩き続ける。
この森林地帯を抜ければ、王都は、目の鼻の先。
しかし、まずそれは難しい。
「おかしいのじゃ…」
ふと、足を止める。
木々に囲まれた獣道、ぐるりと見渡してみた。
見渡し終えれば、腕を組み、考える仕草。
「………そろそろ、宿に着いても良い頃ではないか?
あれだけ歩いて、あれだけ転がって、なぜ建物一つ見えておらんのじゃ!?」
くわっ、目を見開き、幼女は声を上げる。
そして、だむだむっ、と地団太を踏む。
確かに、最初はちゃんと王都へ向かい、真っ直ぐに進んでいた。
のだが、歩いている内に、進む先が曲がっていた事には気付いていない。
木々を避けるたびに、寝るたびに、そして、先日のように問題が起こるたびに。
確実に方向は狂い、今、進む方向は完全に逸れているのだ。
そんな状態で、辿り着けないのは当然である。
せめて、丘になったような場所にでも着き、改めて王都を確認出来れば…
まぁ、それはそれ、後は誰かに会うとか、己の運に頼るのみである。
■玉藻 > はふー…落ち着いたのか、地団太を止め、深呼吸。
「それにしても、ここはどの辺りなんじゃろうか?
地図には、ここまで長くあったようには、見えんかったんじゃがのぅ…」
思い出すように首を捻り、そう呟く。
地図とは言っても、本来の、己の世界の宿への道程を記したもの。
ゆえに、それを頼りにしようと、ここではまったく意味が無い。
………そもそも、色々あって、滲んで読めなくなったので、丸めて捨てていた。
空を見上げる、木のせいで空が見えない。
前を見る、木々のせいで大して先が見えない。
左右を見る、後ろを見る…以下略。
「………ま、まぁ、進まねば、何も起こるまい。
先に行くに限る、うむ」
己の言葉に、うんうんと頷いて。
適当な方角へと足を向け、幼女は歩き出した。
そう、進まなければ、このままだ。
それが良いのか悪いのか、それは、今はまだ分からない。
ご案内:「王都マグメール近辺」にセイン=ディバンさんが現れました。
■セイン=ディバン > 冒険者の仕事というのは、実に多様である。
ダンジョン探索による財宝の取得を生活の糧とする者もいれば。
モンスター退治を得意とする者だっている。
未開の遺跡に踏み入って地図を作り、それを売るという者も存在する。
あるいは、街の中で様々な困りごとを解決する者も。
「……うし。こんな物か」
または……森などで錬金術の材料となるものを回収し、業者に売る、なんていうのもお仕事。
依頼さえあればドブさらいでもする。それが冒険者であり。
男は、カゴ一杯のキノコを見て満足そうに頷くと。
そのカゴを背負い、歩き始める。
本日の依頼、これにて終了、であるが。
「……?」
男が、歩みを止めた。近くに何者かの気配。敵意などはなさそう。
つまり、魔物や野生の獣ではないと思えるのだが。
「……あれ? この感覚……」
その気配に男は首を傾げつつ、ゆっくりと歩む。
何か変な? いや、でも変じゃない?
そう首をかしげかしげしつつ。がさ、と茂みを乗り越えれば。
「……お?」
そこで出会うは、可愛らしい狐少女。
その姿に、いよいよ男の首は、横に90度どころか、100度くらい曲がった。
「……んん?」
え~? と考え込む男。相手にしてみれば、ちょっと恐ろしい話かもしれない。
山盛りキノコが入ったカゴを背負った中年男性が。
首をぐぎぎぎぎぃ、と曲げながら。奇妙な視線を向けているのだから。
■玉藻 > ぴくん、幼女の耳が揺れた。
小さくても獣、聴覚は並ではないのだ。
…まぁ、異常な程に鋭くはないが。
「………うん?」
聞こえた足音、茂みを掻き分ける音。
相手は、音を隠す気が無い様子だ。
ここに来ての、初遭遇、一体何がやって来るのか…
ごそり、片手が着物の袖の中へ。
と、漁る手が、何かを掴んだところで、それは現れた。
途中、聞こえる呟き声から、男である事は分かっている。
果たして、それは、どんな相手だろう?
姿を現わした相手は、予想通り、人間の男だ。
すちゃり、袖の中で掴んだそれを、取り出す。
その手に収まっているのは、何個かの、黒くて丸い何か。
とは言え、小さなそれは、握り拳の中、相手に見えはしないだろう。
「………な、何じゃ…?」
現れた、その次の男の行動。
いきなり首を傾げ、こちらをじっと見ている。
それはもう、奇妙な光景以外、なにものでもない。
すちゃ、と自然と身構えてしまう。
■セイン=ディバン > 男とて、こういうことを予想しなかったわけでもないのだが。
男自身が予想した中で、一番難しいパターンの出来事に遭遇してしまい。
男は、首をかしげたまま、固まることになるのだが。
「……お嬢ちゃん。こんな森で一人、とは。
正直言って危険が過ぎるぜ?」
ふむ、と息を吐いた後、首をぐい、と真っ直ぐに戻し。
男は、その場に屈みこむと、相手と目線の高さを合わせて話しかける。
「ここいらはウロついてる魔物は小粒だが。
野生動物の方が性質が悪い。
最近は野犬が数多くいるらしくてな」
相手を真っ直ぐ見たまま、そんなことを言いつつ。
懐から細巻を取り出し、喫煙し始める男。
あくまでも、距離を詰めたりはしない。
「あぁ、申し遅れた。俺ぁセイン=ディバン。冒険者だ。
今は、そんな野犬どものせいでキノコを取りにこれないという。
かわいそうな道具屋の主人の依頼でキノコを取りに来ている」
ぺこ、と頭を下げて自己紹介の男。
そのまま、相手を再度見据え。
「ここで会ったのも何かの縁。そして、オレはキミみたいなお狐さまには優しくすることを誓いとしている。
もしよかったら、街まで護衛してあげるが。いかがかね?」
特別、感情を滲ませずに。淡々と言う男。
視線は相手の手に向き。僅かに、目が細まるか。
■玉藻 > 男が予想での難しい事である以上に、幼女にとっては予想外過ぎるものだった。
出会い頭、何か反応がある、そう思っていたのに、男は固まっている。
これ、こっちはどう反応したら良いの?みたいな?
と、僅かの間、男はやっと普通に動き、普通に問うてくる。
屈み込み、こちらを見詰めながら。
しかし、その言葉の中に、聞き覚えのない単語。
今度は少女が、かくん?と首を傾げた。
「…小粒なのに、うろついておる…まもの?
よく分からんが…動物ならば、問題はない。
そんなものの一匹や二匹、妾にかかれば、どうって事はないのじゃ!」
ふふんっ、と偉そうに言いながら、幼女は無い胸を張る。
正しくは、逃げる事が得意、な訳だが、そこはあえて伏せた。
野犬、ならば木に登れば問題ない、その程度で考えているのもあるからだ。
「………せ…せいんばでん?…ぼう…何じゃ?
何やら分からん事が多いが、茸を取りに来ておるのか。
なるほどのぅ…まぁ、この辺り、茸は色々とあるものじゃな…」
ふむふむ、と男の言葉に頷き、そう言葉を返す。
名前はずれてるわ、目的が端折られてるわ、色々あるが気にするな。
そして、なぜか遠い目をしながら、最後の呟きを漏らす。
「おっと、妾の名は玉藻じゃ、まぁ、聞いた事はあるじゃろうが、それとは違うからのぅ?
しかし、狐には優しくするとは、良い心掛けじゃな、お主?
………ん?まち?ごえい?…近くにあるのは、宿…ではないのか?」
どうやら、相手は悪い人間ではなさそうだ?
そう思えば、こちらの名乗りを忘れていたのを思い出し、名乗っておく。
まぁ、ここでは本来有名ではない名前、なのだが…この男の場合は?
ともあれ、また予想しない言葉に、首を傾げっぱなしだ。
己は宿に向かっていたはず、近くには街は無かったはず、なぜ?と言った感じに。
いざと言う時を考え、握っていた物は、握ったままだ。
■セイン=ディバン > 男としては、相手に警戒心を抱かせないように話しかけたつもりなのだが。
どうにも、相手の反応がおかしい。
なにか、言葉の意味が通じていないような気がするのだ。
「あぁ、小物、と言い換えた方がいいかな?
要するに、ザコモンスターばっかりなんだが……。
……一匹や二匹ならいいがね。この辺りの野犬は、数十で群れをなしている」
いくらお嬢ちゃんが自信があっても、やはり一人で森の散策はおすすめしないぞ、と。
男は平坦な声色で言いつつ、相手の言葉などから情報を集めようと。
「……言いづらければ、セイン、でいい。冒険者を知らないのか?
……う、ん? ふむ……。
あぁ、このキノコは、色々と使えるんだ。料理にも、調合にも、な」
名前はともかく。冒険者を知らない? 男はいぶかしむ。
もしも相手が東の地の存在なら、名前が言いづらいのもおかしくない。
だが、冒険者を知らないというのは、どうにも奇妙な話だ。
この国では、冒険者など路傍の石以上にごろごろしているのに。
「……う~ん。それはなんとも。
それとは違う、っていうのは? 玉藻ちゃん、同じ名前のお姉さんか、お母さんあたりいないか?
……。いや、この辺りで一番有名なのは、そりゃあ王都マグメールだ。
こんな森で営業してる宿など、オレは知らんなぁ」
まさかの相手の名乗りに、おいおい、と男が困り顔。
偶然なのか? あるいは、関係者なのか?
少し探りを入れつつ、相手の問いには首を振る。
宿も、あるのかもしれないが。少なくとも男はそんな話は知らない。
この森から一番近い安全な場所は、王都そのものだぞ、と相手に伝えつつ。
相手の手からは視線を逸らさない。男の【生存本能】スキルは。
相手の手の中に何らかの物体があることを察知していた。
「もしかして、その宿ってのに行きたいのか?
地図や、宿の特徴。あるいは名前は?」
とりあえずは相手の目的地を知ろうと、質問する男。
■玉藻 > 当然の事だが、男の言い換えた言葉にさえ、幼女は不思議そうな表情。
しかし、野犬ならば知っている。
なのだが、群をなす、と聞けば難しそうに視線を彷徨わせた。
さすがに数の暴力は面倒かもしれない、程度の考え方だが、そこは伝わらなくても仕方無いだろう。
「ほほぅ、せいん、それならば大丈夫じゃ。
…?…うむ、知らん。
茸と言えば、食べるものじゃろう?…ちょう…ご?とか、それもよく分からんのぅ」
幼女からすれば、知らないのは当然の話。
そうした存在自体、耳にする事もないものだからだ。
もちろん、茸に関しても、食べる以外は知らないもので。
別の意味で、訝しげな表情を浮かべるのであった。
「むむむ…知らん者は居らん程なんじゃが…
妾の名は、母様から継いだものじゃ、聞いて分からねばどうしようもない。
………ま、まぐ…める?
って、宿を知らんじゃと!?…い、いやいや、この辺りには宿があるはずと地図に…」
己の名を聞いて分からない時点で、分かるものではないが…そう思いつつも、そう教えて。
そして、男から聞いた有名な場所…それを聞くも、やはり、幼女には分からないものだった。
しかも、近くに宿がないとかどうとか。
その言葉に、むしろ、幼女はがーんっ、と驚いたような反応を。
がっくりと膝を落とし、地に伏せる。
と、男の続く問いに、ふらーっと立ち上がって。
「うむ、そうなのじゃが…
地図…地図なぁ………無い!読めなくなって捨てたのじゃ!」
こう、空いた手で、くしゃくしゃーっと丸めるような、それを地面に叩き付ける動きを見せ、伝える。
ちなみに、右手は今だに握られたままだが…
きっと、生存本能に従い、それを見るならば、その中身は危険性が低いと見えるだろう。
■セイン=ディバン > 魔物、ではなく。モンスターと言い換えるも。
相手の表情は変わらず、理解が及んでいない様子。
それだけではなく、冒険者も知らないし、調合も聞きなれぬという。
いよいよこの狐少女、存在自体が不可思議だ、と男は考える。
「あぁ、よろしく。
……調合、ってのは。こういったキノコや、草や……。
まぁ、色々なものを混ぜたりして、薬を作ることなんだが。
……キミ、出身はどこだ?」
冒険者はともかく。東の地でも調合くらいは知っているのでは無いか?
そう考えた男は、いよいよ踏み込んだ質問をするのだが。
「イヤ、その名前は知っている。
ただ……オレの知っている『たまも』という人物は。
少なくとも、キミのお母さんでは無いと思うんだが。
なにせ、見た目が……いや、妖怪という存在なら、見た目は年齢に直結しないのだろうが。
おいおい、王都マグメールも知らないのか?」
相手と、情報を共有、統合しようとする男なのだが。
なんだか、そもそもの認識などがかなりズレている様子。
いや、認識どころか。常識が違うというレベルだ。
この森を歩いている人間の多くは、マグメールから離れるか、マグメールに向かうかくらいしかしない。
なのに王都を知らぬという少女は何者なのか?
「……捨てるなよ。地図を。
読めないとしても、読める人物に出会うまで取っておけよ。
はぁ。同名にしても、タマモ様とはえらい違いだ」
なぜ捨てる。地図を。そう言いたい男であるが。
相手は可愛らしい少女だ。怒っても仕方あるまい、と考える。
相手の手の中の謎の物体。まだそれは目にしていないが。
男の本能が、当面の危険は少ない、と判断する。
「……ともかく。一旦、王都まで連れて行ってやろうか?
どうにも、キミを今ここで一人にするのは良くない気がする。
直感なんだが。キミ、多分この森から出られんぞ」
ずばり言おう。キミは迷子だ、と。
ずびっ、と指を突きつけて宣言する男だ。
■玉藻 > 今の幼女は、人里離れた隠れ里から出て来たばかり、の状態。
ありえない存在や、難しかったり、専門的な用語は分からないのは仕方無い。
それを理解するのも、また、なかなかに難しいだろうが。
「ほほぅ…混ぜて作るとは、聞いた事はあるが、見た事はないのぅ
何を聞いておるんじゃ?まぁ、どこだと言われれば…」
調合、それ自体はまったく無いものでもない。
なのだが、それがほぼ身近でないものである、それは幼女の言葉を聞けば分かるだろう。
そして、出身と言うものを聞き出そうとすれば…
幼女から紡がれる言葉は、それこそ、男の知らぬ名であるだろう。
それを、当然のように幼女は伝える。
「うん?…知っておるのか、知っておらんのか、はっきりせんのぅ。
玉藻は妾じゃ、そして、妾の母様は玉藻前じゃ、似ておるが違うと言うたじゃろう?
何度も言わせるでない、知らんものは知らん」
はふー、溜息混じりに幼女は答える。
その情報は、間違いなく男が知る、その相手だろう、しかも双方共だ。
だが、男が知る相手よりも、余りにも常識知らずなのは間違いない。
なにせ、本当に何も知らない状態なのだから。
「し、仕方なかろう、濡れて図も字もぐちゃぐちゃなんじゃ、役になんぞ立ちはせんじゃろう?
………むむむ…妾と同じ名の者が居るんじゃろうか…?
いや、しかし、妖狐で、この名を名乗るなんて事は………わ、分からん…」
ここで明かされた事実、それもまた、突っ込みどころのあるものだろう。
大事な地図なら、ちゃんと管理くらいしろ、と。
男の言葉は、次々と訳の分からないものや、理解し難いものが多い。
唸りながら、頭を抱えるようにして、あれやこれや考える。
と、続く男の言葉に、幼女の瞳が見開かれる。
「な、なん…じゃと…!?」
王都に連れて行くとか、一人にするとか、それはそれで。
だがしかし、幼女にとって、迷子だと言う事実を伝えられた事に、一番の衝撃を受けた様子であった。
そして、がくり、幼女は再び地面に突っ伏すのであった。
■セイン=ディバン > こういった会話において、男は基本的には冷静に話をするタイプなのだが。
相手がどの程度のことを知らないのか、というのが掴めなくば。
流石の男も会話をなかなか進められない。
「なんだ、聞いたことはあるんじゃないか。
……はぁ? そんな土地の名前は……。
いや、俺も世界の全てを知っているわけではないが。
……お嬢ちゃん。ハッキリ言うが。
キミのその出身地。少なくとも……。
この国の周囲には、そんな名前の国や場所は、存在しないぞ」
もちろん、自分が知らないだけかもしれないが、と補足しつつ。
男はそこで一つの考えに至る。
この少女は。あるいは。
この世界の住人では無いのではないか? という仮説。
なにせこの世界、神やら天使やら悪魔やら魔王やらがいるのだ。
別の世界、みたいなものがあっても不思議ではない。
「……さっきから、何か違和感があると思ったら。発声の調子が違うんだな。
オレの知ってるのは、その玉藻前という人でも、キミの名前でもない。『タマモ』様だ。
……この国にいて、王都を知らないってのはなぁ……」
男は、相手の名前などのイントネーションを指摘する。
同時に考える。相手がこの世界の住人でないと仮定。
あるいは、過去のタマモ様? あるいは未来のご子孫様?
そこまで考えて、男は苦笑する。
そんな可能性まで考えるのなら、もうどんな可能性でもアリアリじゃないか、と。
「……言い訳ご苦労様。
少なくとも、キミがオレの知人のタマモさまでないのなら。
キミと同名の狐さんがいるよ。そして、オレはその人に恩がある。
だから、狐少女には優しくするようにしてるのさ」
結局のところ。相手の話と自分の知識を合わせても、どうにも状況は解決できそうにない。
とはいえ、この少女はなかなかに興味深い存在。
尊敬する大妖様と同じ名前の存在を見捨てるのも気分が悪いのも事実。
「どう考えても迷子だろ。
……もしよければ、王都で宿くらいは連れてってやる。
宿代はオレが出してあげてもいい。その代わり……」
男は、がっくりと落ち込む相手に手を差し出す。
「キミの話をもっと聞かせてくれないか?
どうにも、キミは随分と面白い存在だからな」
そこでようやっと、笑顔になる男。
どうやら、本気で相手を保護しようというつもりらしい。
■玉藻 > 「むぅ…それが、ちょうご?と言う事は、知らなかったのじゃ。
………うぐっ…そ、そんな馬鹿な…」
地に伏せたまま、顔だけ上げて、それだけは返す。
そして、新たな新事実が聞かされれば、がっくりと項垂れて。
………が、そう経たぬ内に、はふ、と吐息を吐き立ち上がる。
「まぁ、悩んでおっても仕方あるまい。
少なくとも、こんな場所から出られるならば、お主に付いて行くだけじゃ。
にしても…妾と同じ名か…妾の知らぬ妖狐が居るんじゃろうか…」
本来の目的は宿だが、今、この付近には、それが無い。
なら、一度態勢を整えて、改めて向かえば問題なし。
切り替えを済ませれば、ぱんぱんと、膝についた汚れを払う。
幼女は、幼い頃から刹那主義者だった。
長々とした話を聞くのは苦手だ、色々と言ってるが、とりあえず、分かるところだけ端折って聞く事にした。
己と同じ名前の妖狐が居る、ここは目的地ではない、宿はないが街は側にある。
そして、この男は狐には優しい、これ重要。
よし、これで無問題だ。
「ま、まぁ…色々とあるみたいじゃが、それは置いておいて…
その王都とやらに案内をし、宿も良いのじゃな?
それならば、悪くは無い話じゃ、連れて行くが良い」
ところどころ、どころか、大部分が端折られていた。
まぁ、話すだけでそれならば、確かに十二分な条件、受けて損は無いだろう。
相変わらず偉そうな態度に言葉だが、笑顔を向ける相手に、にこーっと笑顔を浮かべるのだった。
忘れていたと、右手の何か、それは袖の中に戻しながら。
ご案内:「王都マグメール近辺」からセイン=ディバンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール近辺」から玉藻さんが去りました。