2019/09/06 のログ
ご案内:「セレネル海沿岸」にルドミラさんが現れました。
ルドミラ > 「あら、あら、まあ。あれがそう? ……波打ち際が真っ赤になっているようだけれど」

馬上で携行用の単眼鏡を覗き込みながら、女男爵は轡を並べる家令にそう下問した。
丸く切り取られた視界の中では、海辺に無数の赤いクラゲ──にしては異様にサイズが大きい──が吹き寄せている真っ最中。

『ただのクラゲではなく、魔獣のようです。強い神経毒があるとかで、水からは上がれないものの漁民に人的被害も出ております』

安全な距離を保ち、丘の上から晩夏の招かれざる客と、その駆除にあたっている冒険者たちの攻防を視察している。相手が相手だけに、今回の依頼に応じてくれたのは長距離武器や攻撃魔法の遣い手が多いようだ。
怪我人が出ても対処できるよう、砂浜では薬師、ヒーラーも待機中。その傍らには王都の魔獣学アカデミーから派遣された研究者もおり、死んだ個体を戸板に乗せて解剖している。珍種なのだろうか。

残暑の日差しが海辺にいる者をジリジリと灼いていた。単眼鏡越しに見るどの顔も汗と潮に汚れている。雨模様でなかったのはせめてもの救いだが、後でたっぷり差し入れでもせねばなるまい。

ルドミラ > 「漁に出られなければ経済的損失も大きくなるばかりね。駆除完了までの必要日数の目処は?」

『これ以上あれらが漂流して来なければ3日というところですが、何とも』

「報酬を弾んで、急がせて。飛行能力のある者を手配して今後一週間、周辺海域の見張りを。
漁民には損害に応じて税の減免と物資の援助。王都の軍部と沿岸部を領する諸家にも注意喚起、あの学者さんに報告書を書いてもらって情報提供も──素材としてなり薬品としてなり、お化けクラゲに利用価値がないかも調べてもらって頂戴」

女の指示を書き留めた家令は「ではさっそく」と一礼すると、屋敷に向かって馬を走らせる。
かつて敵国の艦隊の侵入を防ぐために海峡に鉄鎖の網を渡した国があったというが、そこまで大規模な対策は一領主の身では講じづらい。余計な疑念を呼ばぬためにもできる範囲で手は尽くすべきだが、対処療法でどうにかなるような相手なのだろうか。単眼鏡片手に浜辺へ向かって馬を進めながら、しばし考えあぐねる風。

ルドミラ > とりあえずは、魔獣研究者から話を聞いて参考にすることにしよう。
領主のお仕事に明け暮れる一日になりそうだった──。

ご案内:「セレネル海沿岸」からルドミラさんが去りました。