2019/07/03 のログ
ご案内:「王都付近の街道沿い」にルドミラさんが現れました。
■ルドミラ > 急な大雨の晩。街道がところどころ川の増水で寸断され、旅人は身分の別なく、
難渋を強いられていた。
王都や近隣の軍駐屯地から兵が割かれ、ランタンの明かりを頼りに雨具姿で土嚢を積んでいる。
その作業が完了し通行規制が解除されるまで、旅人たちは手伝うか、待つしかなく──待つことを選んだ者たちは、
誰からともなくあたりに一軒しかない酒場の軒先や、その敷地内の大樹に身を寄せていた。
領地から王都へ戻る途中だった娼館の女主人はといえば、二頭立ての馬車を大樹の下に避難させ。
コーチの中からにわか景気に沸き立つ酒場の賑わいと、そのあかりの向こうで黙々と立ち働く兵士たちの姿を見るともなく眺めている。
湿気が籠らぬよう、扉は開け放ったままで、
「困ったわね。本当なら今頃店へ戻っていたはずだったのだけれど──」
兵士に作業の進捗を聞きに行った馭者兼護衛が、通行規制の解除までまだ少し時間がかかるようだ、
という報告を携えて戻ってきたのへ、愁眉を寄せていた。
■ルドミラ > こんなことなら領地の屋敷でもう一泊すべきだったか。
が、こうまで急な天候悪化は予想もしていなかった。
たまたまそういう巡り合わせになってしまったものと、運を天に任せるしかない。
見れば酒場の客となった旅人たちは、開き直ってけっこう楽しくやっている様子。
賑わいに商機を見出したか、足止めを食った物売りの中には軽く商売をしている者もいるようだった。
まったくもって逞しい。女主人は、アーチ型の眉をかるく持ち上げ、座席の上で脚を組んだ。
「彼らを見習うしかなさそうね。
……ああそう、それと酒場のご亭主にひとつお願いをして欲しいの。
雨の中作業中の兵隊さんと助っ人さんたちが体を冷やさぬよう、振る舞い酒をと。
あの人数ならそうね、ラムが2樽もあれば足りるかしら」
酒の一杯や二杯でそうそう効率は上がるまいが、何もないよりはマシだろう。
在庫が飲み尽くされる前に抑えてこいと命じられた馭者は、一礼して店の中へ。
座席に深く背を沈めて一息つくと、雨の音がまた強くなった気がした。
■ルドミラ > 街道での作業の声と、酒場の賑わいと。雨音に消されそうで消されない、ふたつの物音に耳をすます。
結局その日、馬車が王都に帰り着いたのは深夜になったとか──。
ご案内:「王都付近の街道沿い」からルドミラさんが去りました。