2019/07/01 のログ
ご案内:「街外れの廃教会」にルビィ・ガレットさんが現れました。
ルビィ・ガレット > 木製の両開き扉は、片方が見事に外れ、地面に突っ伏していた。
ダンピールはそれを踏みつけて、廃教会の中へ入る。

風通しは思いのほか、よかった。
ステンドグラスや木枠の窓が派手に割れているせいだろう。
出入り口の扉も正常に機能していなかったわけだし。

……ただ、埃っぽいのには変わりない。
蜘蛛の巣が張っているし、中には少しも清浄な気は残っていない。
室内奥の祭壇には、ひび割れ、欠けた女神の石像が。

荒れ果てた教会内、その半ばほどまで進めば。
朽ちた女神像と視線が合――った、気がした。

ルビィ・ガレット > 似ても似つかないはずなのに、"それ"に母の面差しを見出してしまった。
その途端、目まいに近い「何か」が湧き上がって。――ふらつく。
通路の左右に整然と置かれた長椅子、その背もたれの頭頂部を掴んで。……そのまま倒れこむのを、ぐっと堪える。

物理的であれ、魔術的であれ。外部からの侵入や攻撃には、耐性があるのだが。
さすがに。内的要因は、そうもいかない。常に内包している葛藤が、揺らぎが。
不意打ちで今みたく、文字通り。……襲ってくる時があって。

「……っ」

幸い、人の目がないことに。情けなくも安堵する。
荒い息遣いを数度繰り返せば、体勢を立て直し、面を上げた。
……再度、女神の石像と向き合う。今度は何も感じなかった。

ルビィ・ガレット > 「――……の、予言を。疑う訳ではないが。
 本当に私たちが保護すべき勇者は、『朽ち果てた教会』に現れるのか?」

頬に張り付く髪のひと房を片手で振り払いながら。
左右に長椅子が並ぶ、通路の真ん中に立ち尽くし。
室内を仰ぎ見た。……周囲を満遍なく見回してみるが、目ぼしいものは見当たらない。

それに安堵している自分がいる。……今日、この場所でなくて、よかったと。
使命に対して甚だ不誠実だとは我ながら思うものの、どうしようもなかった。
この国をまだ出たくないのだ。気がかりなことがあるから。

脳裏に浮かぶ個人。……その幻影を、頭を振って追い払う。

ルビィ・ガレット > 女神像に背を向ける。床に散らばったガラスの破片や何かの木片を踏み締めながら、外へ――。
ご案内:「街外れの廃教会」からルビィ・ガレットさんが去りました。