2018/09/11 のログ
ご案内:「喜びヶ原 月獸ノ森」に紅月さんが現れました。
■紅月 > ーーーリィン…リィィン……しゃら…
深い森の、奥。
木々の合間を縫うように進んだ、その先…静けき泉の上に紅が煌めく。
月の無い夜を映す鏡の上、水の上…沈む事なく、ゆらゆらと。
舞う紅の揺れる度…指先、爪先の滑る度。
涼しげな音を、響かせて。
■紅月 > 泉を囲う淵の一部には、輝く花々。
魔石で出来たそれは近付いてよく見れば灯火を内包した人工物…恐らくランプのような物であるとわかるだろう。
更に、花の近くには敷き布と…その上には大太刀に鉄扇、水筒に、恐らく着替えなのだろう黒革の服や手袋など。
…ごく簡易な休憩の場、といった所か。
風の音、木々のざわめき…衣擦れと、金属や玻璃の奏でる音に包まれて。
一人、静寂の中…ゆらゆらと。
…其処にひとつ、ふたつ、影が増える。
透き通ったそれは水で出来た狼…作り手の横に侍り、まるで生きているかのように尻尾まで振ってみせる。
「……ひとつ、ふたつ、みっつ…よっつ…っ、さすがに五つは厳しいか」
ほんの僅か、呼吸が乱れる。
その瞬間にも泉の底へと呑み込まれようとする足許に集中し直せば、作りかけの狼がパシャンと泉に還る。
残りの四体の透き通った狼が、其処に近付いて不思議そうに匂いを嗅いだり掘ろうとしたりしている。
そんな少々微笑ましい光景を、冷や汗を手で拭いながら眺めて。
「…ここまで出来ただけでも、上出来…よな?
少し、休むか…」
ふ、と、苦笑すれば…振り向く狼達を撫でてやり泉へ還す。
パシャリ、とぷん…水面は波紋を広げ、また夜空を映す鏡へと戻る。
■紅月 > 一歩、一歩…波紋を生み出しながら、岸へ。
土を踏みしめれば、ようやっと…からり、と、暖かみのある木下駄の足音が鳴る。
からころと音を鳴らしながら敷き布のもとへ戻れば、ごろり、と無造作に寝転ぶ。
さて、こんな森の奥まで何をしに来たかと言えば…修行、である。
元々は休息や息抜きのつもりであったが、気付けば本格的に始まってしまっていた。
最近ようやっと水や氷の術が使えるようになった故の、鍛練…元々、芸術家や軽業師のような"魅せる"方向には器用である故に、それを応用しての技術であるが。
…やはり固体と液体では勝手が違いすぎる故、簡単なゴーレム作成だというのにこの体たらく。
情けないとは思えど、元々の自身の属性を考えれば、かなり頑張った方…だと、思いたい。
「…いやぁ…ドボンは免れたけど、しんどいなぁ……」
もはや苦笑しか出ない。
いくら魔法剣士と同調して、上手く扱えぬ分野も最低限扱えるようになったとはいえ…やはり苦手は苦手だと、はっきりわかってしまった。
やれやれとでも言いたげに、ふぅ、と溜め息をつきながら…ゆっくり、目を閉じる。
肌を撫でる夜風が気持ちいい。
■紅月 > 「……、…汗、流すかなぁ…」
寝転がりながら、装束を解いていく。
その姿は非常にだらしないが、どうせ誰も見ていやしない。
妖精や精霊だけでなく魔物まで住み着くこの森に入ってくるのは…何も知らぬヒトの子か、冒険者が精々だろうが。
今宵はまだその姿を見かけていないし…この森にはよく来るからか、己が妖精に襲われるような事も滅多に無い。
…だから、と言うわけではないが。
ちょっとくらい裸一貫で水浴びしたって大した問題にはならなかろう、と。
むくりと気だるげに起き上がり、一糸纏わぬまま脱ぎ散らかしたものを簡単に片付け泉へと向かえば…パシャパシャと音を立てながら泉の中へ歩を進めていく。
「っひゃ、ちべたい…ふふっ、でも、贅沢……」
そう、贅沢…上も下も星屑に満たされて、きらきらと輝く天然の宝石箱の中で汗を洗い流せるのだから、この紅娘にとっては充分に贅沢なのである。
臍下辺りまで水に浸かると胸や肩にも水をかけ、少しずつ身を清めていく。
■紅月 > 泳いだり水を操り戯れて、そのまま修行に移行して。
そんな充実した時間が朝日を浴びるまで続いたとか。
…充実しすぎて、着替えの最中にうっかり背後から魔物に急襲され。
次々と増えゆく様々な種類の魔物や魔獣の群れに翻弄され、今度は日が沈むまでたっぷりと…体力と耐久力の鍛練をヤらされるハメになったのは、また別のお話。
ご案内:「喜びヶ原 月獸ノ森」から紅月さんが去りました。