2018/06/04 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にジルヴァラさんが現れました。
ジルヴァラ > 街はすっかり夜の色に染まっている。
見慣れた商店の並ぶ通りへ向かいかけた足を翻し、男は海の見える高台へと移動した。
遠くの酒場から微かに響く喧騒に耳を傾けながら、石造りの塀に肘を置き、暗い海を眺める。
いつものように葉巻を取り出そうと右腕を動かした瞬間、皮膚の下から鋭利な痛みが奔った。
男の利き腕には今、添木と共に白い包帯が巻かれている。
敵対する海賊との交戦で傷を負ったのだ。船医の見立てでは骨に深くヒビが入っているらしい。

「はっ……ダセエな」

仕方なく左腕を懐にしのばせるが、取り出したシガーケースの蓋を開けることもままならない。
自嘲気味な笑みを零し、侘しい唇を横に結んだ。

ジルヴァラ > 水平線の彼方に浮かぶ船影は王国軍のものか、漁船だろうか。
答え合わせの出来ない当てずっぽうを繰り返したが、口寂しさは紛らわせそうにない。

今の情けない姿を誰かに見せるのも気が引け、男は塀から身体を剥がし、その場を離れた。
いつの間にか喧騒は掻き消えている。
残されたのは夜の静寂と、それを慰めるように吹く優しい潮風だけだった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からジルヴァラさんが去りました。