2017/10/26 のログ
ご案内:「魔将軍の洞」に双牙将軍さんが現れました。
双牙将軍 > 王都より馬で三日。双牙将軍とその一味が住まう洞窟はそこにある。
将軍は努力の末に体得した妖術を使い、周辺の村を脅して食糧や娘を巻き上げていた。
不必要な略奪をしないのは、やりすぎて本格的に討伐隊がやってくるのを恐れているためである。
支配下に置いた村は必要以上に締め上げず、また甘やかしもせず。絶妙なカツアゲが行われていた。

「ブフフフ……」

さて双牙将軍。本日も真っ昼間から寝室で惰眠を貪っていた。いい夢を見ているらしく寝息も可愛らしい。
寝室といっても洞穴を無理やり改造した一室であるが。

『将軍、将軍。お仕事の時間でカクニ』

家来が呼びに来た。
将軍はゆっくりと石のベッドから太った身を起こす。

「余が寝てる時は影武者にやらせろといっておるだろう」

威厳たっぷりに言い返すと、家来は深々と頭を下げた。

『影武者もお昼寝してるでカクニ』

さすがは将軍の影武者だった。
仕方がないと将軍は自分の席に戻る。
といっても別に何をするでもない。護衛のオーク兵が立ち並ぶ中、一段高い豪奢な椅子に腰掛けるだけである。

(これ別に儂がやらんでもいいんじゃないかなあ)

心の中でそんなことを考える悩める将軍だった。

双牙将軍 > 「むはははは、よくぞ来た無謀なる勇者よ! この双牙将軍を倒せるものなら倒してみよ」

突然、将軍は椅子から立ち上がると威厳たっぷりに叫んだ。
大きな声が洞穴をこだまする。
将軍の突然の言葉に、オーク兵たちは慌てて将軍を守るように陣形を組んだ。
しばしの静寂が流れた。

「……まあ、余を退治しにきた者がやってきた場合な。こうして威圧をしてやるつもりだ
 おぬしらも常に戦闘準備を怠らぬよう」

また椅子に腰掛けると、将軍は得意げに太い足を組んでみせる。
足が太すぎて組みきれなかった。ただ踝を太ももに乗せるのみである。

『さすが将軍でジンジャー!』
『敵を騙すにはまず味方から、我らもすっかり敵襲かと騙されたでジル!』
『とても座ったまま居眠りしちゃって寝ぼけてしまったとは思えないフォローでカクニ~』

オーク兵たちの惜しみない拍手が将軍に叩くつけられる。
将軍がふっくらとした手を翳すと、見事に拍手は止んだ。
満足げな将軍は、椅子の傍らに置かれている銀の皿から果物をひょいとつまみ上げ、口に放り込む。
くちゃくちゃと汚い咀嚼音を鳴らしながら、歪んた唇を果汁で濡らした。

双牙将軍 > オーク兵の一人が銅鑼を鳴らす。
ようやく本日の仕事が終わったのだ。
兵士たちは将軍に頭を垂れると、それぞれの巣穴へと戻っていく。

「ようやく儂一人か……」

ぐったりとした豚面で将軍は椅子から降りる。
座りっぱなしだったから腰がいたい。
自分の寝室に戻った将軍は、また石のベッドに横たわり寝息を立て始める。
夢現、今度から村からの貢物を受け取る時は、馬ではなく輿で移動しようかなと考える将軍であった。

ご案内:「魔将軍の洞」から双牙将軍さんが去りました。