2017/05/21 のログ
ご案内:「王都平民地区 淫具屋通り」にホウセンさんが現れました。
ホウセン > そう広くもない路地で、建物と建物で切り取られている空を見上げる。
快晴。
それも、太陽が燦々と降り注ぐような。
だというのに、この界隈は真昼間であるにも拘らず、それなりの客入りをしているように見受けられる。

「何時の世も、スキモノが払底することはないのじゃろうな。」

自分の事は全力で棚上げをし、視線を水平に戻す。
雑貨店が建ち並ぶ区画の中、どういう訳か猥褻な品物の取り扱いを行っている店が固まっているエリアがある。
異国仕立ての服に袖を通した子供子供した”何か”が闊歩するのは、そういう通りだ。

ホウセン > 自らも商いをする妖仙のこと。
性的な目的に用いる為の道具を手に入れることは難しくないし、術を用いた責め具なら自らの手で作り出せもする。
だが、初夏の日差しに焼き焦がされながら、斯様な界隈を練り歩くには理由がある。

「いやいや、人間の想像力というのは、集団としてみると予想から食み出す事もないのじゃが…
 個としてみると、中々に突拍子の無い事を考える輩もおるでのぅ。」

つまりは、自分自身にも考え付かなかった、性愛の神からの”天啓”を受けた何者かの作品との出会いを欲して。
偏に淫具と一括りにしているけれど、ジャンルとしては多岐に亘ろう。
快楽を引き出すもの、痛苦を与えるもの、恥辱を煽るもの、体の自由を奪うもの。
中には標的を”作り変える”ものだって転がっているだろうし、相手の情欲を掻き立てるような下着やコスチュームもこの範疇に組み入れられなくもない。

ホウセン > 羽振りのよさそうな、商人と思しき男とすれ違う。
最初は、妖仙の幼げな容姿にぎょっとした顔。
続いて、呆れに漂白され間の抜けた表情。
最後には、勝手に抱いた連帯感やら共犯者意識やらで、生温かい笑顔。
特に害がある訳でもなく、寧ろ状況次第では有益な情報が転がり出す事もあるのだ。
敵対的に振舞う意義を見出せず、軽い会釈を返して、歩を進める。

「さて、彼奴には装飾具の一つでも用立ててもよい頃合じゃろうし、”世話人”殿にはもう少し破廉恥な装いも提供せねばなるまいて。」

戸口の所から、店の中を覗き込む。
やや暑く感じられる気温のせいか、はたまた客が入り易いようにと心配りをしているのか、ドアが開いている店舗が間々ある故に。
一軒、二軒と、外から様子を窺い、何か遊興の種になりそうなものが転がっていないかと検分するのだ。
道具でも装身具でも。
或いは、愉快な事態への引き金になりそうな人やら状況やらでも。

ホウセン > この辺に出没するとすれば、第一に妖仙と同じような目的を持った好事家。
次に、商売柄でこれらの物品の世話になる事もあるであろう娼館関係者や奴隷商人。
もしかしたら、単独で客を取っている娼婦自身ということもあるだろう。
そして商店自体の関係者も、目撃されても不思議ではあるまい。

「ふむふむ、昨今は電気仕掛けの絡繰が流行っておるのかのぅ?
 情緒もへったくりも無いが、その手の”機械的に悦を与えられている”というのが屈辱に繋がるやもしれぬ。」

数店の売れ筋商品なり、新商品なりの陳列棚を覗いての述懐。
内心で思うだけでよかろう筈なのに、ついつい音声にしてしまうのは、妖仙自身が喋りたがりという話。
…誰彼かに聞かれてしまったとしても、文句は言えぬというのに。

ご案内:「王都平民地区 淫具屋通り」にノアさんが現れました。
ご案内:「王都平民地区 淫具屋通り」にノアさんが現れました。
ノア > 真っ昼間から、 暑さに負けて気怠げな女が一人。手には暑くて脱いだショールと、 大きな紙袋、 そして何やら買い物リストが記されたメモが一枚。こんな通りに居るのだから、 当然中身は全て淫具。従者にも頼めない、 自分で買いに行く勇気もない.. そんなむっつり貴族サマの依頼により、 こうして買い物に来たのだけれど

「 .........っ、 あっつ.. 」

あれこれと淫具を買い漁る女は、 何かと視線を集めがち。余程の痴女だと思われているか、 或いは何かの罰ゲームに来たと思われているか。いずれにしてもニヤニヤと馬鹿にされている様な視線を浴びながら、 さっさと抜け出すべく歩を進めた。紙袋に視界の下半分を塞がれたまま、 歩調を速めれば

「 ─── ?! 」

小さな何か.. 否、 誰かにぶつかった。慌てて相手を確認すれば其処には、 何ともこの場に不釣り合いな愛らしい少年の姿。

「 ゃ..... ごめんね、 大丈夫だった ? 」

明らかに子供扱いした生温い声色で、 やや前屈みに声を掛けた。

ホウセン > ペタペタと雪駄の底を鳴らしながらの闊歩。
平素であれば、通行人の気配等、目を瞑っても察せようものだけれども、意識が店の中に向けられ過ぎていたらしい。
無論、脅威となるような何かであれば、見落とす事もないのだろうけれども、生憎と女は警戒水準に至る存在ではないらしく――

「ぬぉっ…!?」

小童小童した風体には、聊かそぐわぬ驚きの声を上げる。
不意の衝突ではあったが、流石に尻餅をつくまで吹き飛ばされるという醜態は晒さず、一歩二歩蹈鞴を踏むに留まる。

「うむ、仔細ない。
 儂とて余所見をしておったのじゃ、がなりたてるような恥知らずにはなりとうないしのぅ。」

ふんすっと、鼻を膨らませる。
この国ではあまり見かけぬ衣装に袖を通した、そこはかとなく偉そうなお子様。
傍目から見れば、その程度の存在だ。

「然しアレじゃな、それだけの大荷物では前が見えずとも仕方ない…が…
 ――自分用かのぅ?」

お澄まし顔で大人の対応をしていても、興味の対象が目の前にぶら下がると手を出してしまう悪食っぷり。
こんな界隈での大荷物の中身なんて誰にも彼にも見当がつこうというもので、デリカシーの”デ”の字も存在しない蛇足の問いを投げてしまう。

ノア > 艶やかな黒髪に、 陶磁器のような肌、 そして何とも愛らしい顔立ちの少年。均整の取れた其の容姿はまるで作り物のようで、 とても子供好きとは言えない女も流石に

( ゎ.. 何この子、 超可愛い♡ )

萌えた。
そんな叫びは胸の内に隠し、 申し訳なさそうに、 そして心底心配そうな表情を向けていた ── が、

「 .....え、 あぁ... そう。なら良かった.. 」

返ってきたのは、 見た目に似合わぬ口調。語尾も一人称も あまりに違和感があって、 くすりと小さく吹き出した。異国の物には然程詳しくないけれど、 其の服装から それなりの家の子 (?) と推測は出来た。鼻を膨らます姿には片手を口元に添えたまま、 ふるりと笑いを堪え

「 ありがと、 優しいのね。 ん..... コレ ? ふふ、 内緒♡ ボクにはちょっと早いかな。」

大人に聞かれたとしても、 どこぞのむっつり貴族に頼まれたとは口に出来ない誓約。相手が年端もゆかぬ "お子ちゃま" ならば.. 此方は "オネエサン" ぶって、 やんわりと紙袋の口を手で覆い隠した。

「 で、 こんな所で何してんの ? お家の人と はぐれちゃった、 とか ? 」

ホウセン > 仕立て方については、ここら辺の衣服とは何もかもが違うけれど、生地については上等なものが使われている。
何処かの金持ちのボンボンという見立てが成立する余地は、掃いて捨てるほど。
子供扱いされるのには慣れているし、寧ろ子ども扱いされた方が色々得をすることもあるが故に、目くじらを立てることはない。
少なくとも、今のところは。

「それはそれは残念な事じゃ。
 儂の知的好奇心とやらが、行き場をなくして右往左往してしまおうぞ。」

薄っぺらい肩を、ひょいっと竦める。
矛先が己に向くと、何と答えたものかと袂の中に両手を突っ込んだ腕組み。
むぅっと眉間に皺を寄せるが、それさえも無駄に愛嬌たっぷり気味。

「家人が斯様な所に儂のような者を連れ歩く輩だとしたら、捻くれてグレてしまうのじゃ。
 ま、所謂…何じゃ、アレじゃ。
 社会勉強というやつかのぅ?」

誤りではないし、大筋では嘘でもない。
人間というものが、如何に不埒で不遜で自堕落な事柄に情念を燃やしているのかということを知るという意味では。
だが、一人でこの辺りを出歩くのは、確かに不自然な年頃だ。
只でさえ非力そうで金の匂いがする上、まかり間違って奴隷市場にでも繋がれていたのなら、小児性愛を抉らせた好事家達が天井知らずに大枚を叩きそうな容姿をしているのだから。
自分の発言が本位に近い形か自省するように、頭をカクリと左側に傾げる。
サラリとした艶のある黒い髪が流れ、ふわりと洗髪剤に因らぬ甘い匂いが零れる。

ノア > ( 何なの、 いちいち可愛過ぎるっ.. )

腕を組む仕草に、 眉間に皺寄せた表情に、 いちいち萌える。其の少年が、 小難しい言葉を使う様がまた.. 余計に愛くるしい。

「 チテキコーキシン だとか、 ウオーサオーだとか、 随分難しい言葉知ってるのね。まぁ.. 何てゆーのかな、 これはオシゴトで使うの。」

拗ねる少年に、 誰の物かと ほんの少しだけ答えた。便利屋として頼まれた買い物だから嘘でもないし、 この程度なら 情報の漏洩にもならないだろうと。ちらり、 視線を周囲に向け

「 社会勉強の場にしては、 んん......... もっと他にあったでしょ.. とにかく、 こんなトコふらふらしてると..... 」

視線を貴方に戻すと、 其の柔らかそうな頬へ人差し指を伸ばした。つんつんと、 軽く突つく事が叶うかどうか。叶うにせよ払われるにせよ、 子供相手に脅すような口調で

「 怖ぁぁぁいオジサンに、 拐われちゃうんだから..... わかった ? 」

ホウセン > 仕事で使うと、情報の端っこを与えられた事で、女の立場を思案。
黒い瞳から真っ直ぐな視線をやや斜め上に向けて。
淫具の類を使う仕事なんて、娼婦の類か、それとも調教師の類か。
そういえば、思いの外露出が激しい服装をしているしだとか、勝手に納得して、うんうんと縦にかぶりを振る。

「仕事というのなら言えぬ事情とやらもあろう。
 ならば深くは詮索せぬが…んぅ?」

顔に目掛けての伸ばされる指の意図は不明だったが、取り立てて大騒ぎするものでもなく、女の指は妖仙に触れられるだろう。
ぷにっとした頬が、指先を受けて柔らかく沈み、そして適度な弾力で跳ね返す。
揶揄うような仕草に、警告の意図があっとのかと遅まきながらに理解すると、丸っこい目を半分閉じて悪戯っぽい表情に。
不意打ちには不意打ちを。
頬を突く指を除けぬ代わりに、僅かに頭部を後退させて首を捻り、顔の正面に捉えたそれをぱくっと咥えた。

「くくく、ゆひゃんはいてきひゃのう。
 おぬひこそふひひゃやひぇでふぁないかっ。」

訳するなら、”油断大敵じゃのぅ。お主こそ隙だらけではないか”だっただろうか。
不明瞭なもごもごした物言いをする度に、にゅるにゅると桜色の小さな舌が、女の指を舐め擽る。
逃さぬとばかりに、真っ白な歯で甘噛みをするのは、小動物がじゃれ付くのと通底しているかもしれない。

ノア > やたら物分かりの良い少年のお陰で、 むっつり貴族の面子は保たれた。そんなこんなで指先を、 其の白く綺麗な頬へ伸ばせば

( やっぱり.. やわらかーい♡ )

ぷにぷにと、 予想通りの柔らかさに思わず脅す様な表情も弛んでしまう。オネエサンぶった警告のつもりが、 いつの間にやら其の感触に夢中になっていると

「 .....っ、 ん.. こら。食べちゃダメっ 」

まさに油断大敵。容易く指先を捉えられ、 食まれてしまう事に。舌遣いも歯の立て方も上手い.. なんて、 一瞬よぎった考えは直ぐ様払拭。だって目の前に居るのは、 少年なのだから.. と、 僅かに頬が染まるのも この暑さのせいにして 指を引き抜いた。

「 もう.. 大人をからかわないのっ 」

つんと尖らせた唇で、 あくまでオネエサンぶる。まさか自分より長い時を生きる妖仙などとは、 露知らず。

ホウセン > 然し、誰も彼も自分の頬を突っつきたがるのか。
目の前の女のようにお姉さん風を吹かせる者はいうに及ばず、甘味処のおばちゃん連中までがこぞってプニプニプニプニと。
そこだけが不条理だと思わなくもないが、油断を引き出せたのなら瑣末な事。
唇からチュルっと引き抜かれた指に掛けて、透明な唾液の橋が架かり、程なくしてフツリと途切れる。
年上としての振る舞いをしたがっている割には、脇が甘い。
見目に反して純朴ならざる妖仙は、そう値踏みするのだ。

「呵々!からかい等という戯れではのうて、儂からのれっきとした注意ぞ。
 ほれ、今だってこうも無防備でおっては、不埒な輩が蠢きもしよう。
 このように…のぅ!」

すっと、妖仙の小さな体が沈む。
胸の稜線やら腕に持った荷物やらで視界が遮られがちになる下方へ。
こうも暑い中なのに活き活きとした、跳んで跳ねるような勢いで。
しゃがみ込むと、妖仙の頭高は女の腹に届くかどうかという程度。
そこから満を持して細っこい両手を前方へ伸ばし、ミニ丈のスカートの裾に。
後は、一気呵成に――捲り上げる。
もとい、捲り上げようとする。
子供達の定石である悪戯を仕掛けるが、成功率は五分五分ぐらいか。
一方で、事前の回避ができなければ、荷物を持っている上、その荷物を周囲に撒き散らす訳にもいかぬという制約のせいで、被害は甚大になるかもしれない。
妖仙にちらっと下着を披露するだけでは済まず、通行人たちにさえラッキースケベを提供するような。

ノア > 「 .....っ、 な..   ──── ?! 」

少年の、 少年による、 何とも少年らしい攻撃が発動。引き抜いた指先に残る擽ったさに戸惑いながら、 荷物を抱えていた女は其の攻撃に..

「 ─── ぃ やっ.. !! 」

完全ノーガード。ミニ丈のスカートは見事捲り上げられ、 面積の少ない白のレースが丸見えになる始末。慌てて捲り上げられたスカートを下げ、 ふらりと一歩後退った 其の時 ── 不覚にも紙袋の口から玩具が一つ、 ポロりと落ちて

「 ...............ぁ、 」

石畳の上、 ぶーーーんと音を立てながら振動する小さな塊。真っ昼間に公衆の面前で下着を晒された恥ずかしさと、 淫具を落としてしまった恥ずかしさとで、 あわあわとパニック状態。

「 何コレっ... あぁ、 もう.. ちょっ、 と..... どこで止まんの よっ.. 」

止め方もわからず、 手の中で震え続ける淫具に苛立ち悪戦苦闘。只でさえこんな通りでは目を引く、 女と子供の組み合わせ。まして白昼堂々淫具を震わせているのだから、 あちこちから愉しげな視線が集まる。そして更に、 追い討ちをかけ

「 や..... あぁ"、 もうっ.. ! 」

.........手の中の淫具を止めるのに必死で、 抱え方が疎かになった紙袋を落とすという.. 惨劇。見せられないよ、 と靄を掛けたくなる程の卑猥な淫具やコスチュームの数々は、 石畳の上 盛大にぶち撒けられて。

( あぁ、 地獄.. )

結果.. 自称優しいオネエサンは崩壊。化けの皮が剥がれれば、 普段と変わらぬ顔付きと口調に戻り。

「 ちょっと、 どーにかしなさいよっ.. アンタのせいだからね、 このえろがき !! 」

ホウセン > 我、奇襲に成功せり。
しゃがんだ体勢のまま、小さくガッツポーズをする妖仙。
その後の惨憺たるパニック連鎖は、仕掛けた本人でさえも予想できていなかった混沌を引き起こす羽目になったようで。
石畳の上を、振動音と共にガガガガガっと硬いものと硬いもののぶつかり合う音を撒き散らしながら転がる、丸っこい淫具を手に取る。
ふぅと息を吹きかけて埃を払い、しげしげと鑑賞。

「くははっ…!如何な儂とてここまでは読みきれんかったわ。
 そう恥じ入るでない、恥じ入れば恥じ入るだけ周りの興味を惹いてしまうのが道理じゃろう。
 ほれ、儂も拾うのを手伝うてやるから、お主も疾くせぬか。」

噛み付かれた妖仙はといえば、蛙のツラに何とやらである。
正論っぽい物言いをするが、事態の解消には一ミリも寄与していない。
仕方ないと、肺腑の中身を緩々と、呆れの色の濃い息遣いで吐き出しながら、地面に散らばる衣装を拾い上げる仕草。
加害者が、さも巻き込まれたという顔で、後片付けの手伝いをする。
…だけならば、まだ良かったのだけれど。
丸みを帯びる振動具の類だけならばまだしも、男性器を模した代物がぐぃんぐぃんと竿を回転しながらのた打ち回るのはシュールでさえある。
そういった後始末の為に、パニック気味で視野が狭くなるであろう女の意識が傾注の度合いを深めたのなら、二度目の悪戯を仕掛ける頃合である。
止め方もあまり理解していないらしい戸惑いっぷりに、購入すれども自身で使用することは無かったのかと訝しみつつも、気配を抑えて。
足元に意識と視線が向いているであろう女の背後を取り――

「おっと、手がすべったのじゃ。」

大根役者っぷりは脇に置くとして、それはもう、語尾に星印が見え隠れしそうな媚っ媚の声色で。
尚も振動を続ける卵形の淫具を、女へと押し付けんと試みる。
臀部という狙い易い部位ではない。
ドレスの裾やら太腿やらの妨害を排して、ショーツに包まれた股座という急所目掛けて。

ノア > ( 超可愛い♡ とか思ってたけど ── なんか違うっ、 ませてるっ、 すれてるっ、 生意気っ.. !! )

目の前の少年が見せる仕草や言葉の全てが、 女の中で勝手に仕上がっていた "愛くるしい少年像" をみるみる崩壊させ.. 此方も同様に、 本来の大人げなさを露呈させながら。周囲からは笑い声やら、 見事奇襲を成功させた少年へ『 でかしたぞー 』などという声援やらが ちらほらと飛び交う中、 とにかく今は事態の収集を優先させて

「 何余裕こいてんの、 当たり前でしょっ。ほら、 早く入れてっ.. 」

石畳の上に置いた紙袋へ、 拾い上げた淫具を次々と放り込む。当然周囲の視線や野次に気付いているから、 其の顔は苛立ちや焦りに赤く染まっていて.. 早く、 早く、 少しでも早く拾い上げてこの場を離れようと.. 多少汚れてしまうのも構わずに、 石畳に膝を付き必死で淫具を集めていると

「 ─── っ、 んんっ.. ! 」

少年のターン、 再びクリティカルヒット。注目を集める中 沢山の淫具を抱えたまま、 ぴくんっと背中を反らせ甘い声を漏らしてしまった。

「 こ.. のっ......... くそがきっ !! 」

優しいオネエサンは何処へやら.. 次はいよいよ、 女のターン。たまたま其の手に掴んでいたのは、 潤滑液が入ったボトル。其のキャップを開けて振り返ると、 思いきり柔らかなボトルを握り透明な液を少年に向け発射した。

「 喰らえっ 」

ご案内:「王都平民地区 淫具屋通り」にノアさんが現れました。
ホウセン > 悪態をつく言葉が、どうにも心地良い。
悪戯を仕掛けても、”あらあらうふふ”で済まされてしまっては、やりがいが無い。
だからこそ、余裕を失って精神的骨格を露にした今の方が、興が乗ってしまうという悪循環。
にぃっと、形の良い唇を緩めて悦に浸って入るけれど、だからこそ、女の反撃への初動が遅れる。

「呵々!それがお主の”地”か。
 善い善い、それはそれで中々に楽しめるというもの…じゃっ!?」

振り掛けられるならまだしも、水鉄砲のように噴射された液体は、至近距離ということもあってものの見事に妖仙の顔面に直撃。
本来なら水かお湯で希釈して用いるものだから、べっとり、ねっとりとへばりついて、中々顔から流れ落ちてくれず、碌に目も開けられない。
ピキ…と、鷹揚な妖仙の額に何かが浮かんだのなら、この瞬間だ。
反撃には再反撃を。
生っちょろい物では、更なる無駄な足掻きを誘発してしまうだろうと踏み、無慈悲な一撃を見舞う事にする。

「えぇい、大人しくしておれば許してやったものを。
 己の愚行を噛み締めるが良いのじゃ…!」

細くしなやかな指が踊り、股間に押し付けるだけだったローターを、手早くショーツの縁から内側に送り込む。
布一枚分とはいえ振動を遮る物がなくなったせいで、秘所への刺激は弥増す筈であり、この手の淫具に耐性が無いのなら中々に悪辣な一手。
既に泥仕合となりつつあるが、痴話喧嘩めいた生温かい闘争は、通行人の足を止めるだけに飽き足らず、何事かと付近の店の店員が戸口から顔を覗かせる始末。
自身の下着が淫具を保持させて、女を辱めるという状況を作り出せたのなら、ようやく手で顔を拭ってローションを払い落とすのだけれど、粘液は原液で水分不足。
お陰様で、薄く伸ばした傍から乾燥が始まりカピカピに。
表情一つ動かすだけで肌が引き攣れる不快感のせいで、腹の虫は簡単に沈静化してくれないらしい。

「そこに直れ…手打ちにしてくれようぞっ!」

主に性的な意味で。
とは、唇の内側に押し留めたままだけれど、べっとりぬるぬるの体を跳ねさせ、女の体目掛けてぴょいっと飛び込む。

ノア > 「 ふは、 どーだ参ったかー 」

仕立ての良い服に身を包んだ少年は何処かの御曹司で、 だとか.. そんな事まで、 考えが及ばない女は.. 見事、 其の整った顔面をとろっとろにする事に成功した。物凄ーいドヤ顔で、 不敵な笑みを浮かべるが..... 其れがまた、 更なる悲劇を生み

「 やっ.. ちょ、 待っ ───  ン、 んぁっ... あっ ! や、 だっ.. 取っ て ── ん、 んっ ! 」

実演ショー..... などと呼ぶには、 あまりに色気のないやり取りが繰り広げられていた。やけに大人びた少年と、 何とも大人げない女とが、 白昼堂々淫具をぶち撒けて攻防を繰り返す.. 物珍しいといえば物珍しい、 そんな光景。

「 .....っ、 大人.. ナメんなっ 」

尻餅を付いた先、 たまたま手に触れた淫具( もとい、 武器 )を手に取り 少年に向けぶん投げた。女がぶん投げた武器、 は..

「 !! 」

( ...............負け、 た.. )

透ける程薄い、 マイクロビキニ。当然反撃になんてならなくて、 せいぜい ひらりと少年の頭に被さる程度。飛び込んできた身体に粘液を擦り付けられては、 二人揃って ぬるぬるの大惨事。

「 これ、 くらい で.. かんべん..... したげ る、 からっ.. ん、 んっ ! だか、 らっ.. も..... おしま いっ.. ! 」

子供相手に敗北なんて認めない、 大人げのなさ。何とか下着の中で震えていた淫具を取り出すも.. 取り出した其れは、 とろりと女の蜜で濡れていた。

「 .........っ、 もうっ.. 」

慌てて其れを手の中に隠し、 石畳の上に落とすと.. 立ち上がり思いっきり踏みつけて。止め方がわからないなら壊してしまえばいい、 という.. 何とも単純な思考。恥ずかしさでいっぱいいっぱいの今、 依頼主のことなんて微塵も考えていなかった。

「 何処のガキだか知らないけど、 次逢った時は顔面とろっとろにするくらいじゃ済まないんだからねっ.. 」

スカートの丈を直し、 尻や太腿に付いた砂埃を払いながら口にしたのは.. まさに、 負け犬の遠吠え。

ホウセン > 争いごとは、同水準の相手でしか生じないという話もあるが、この二人においては如何だったか。
共に大人げのなさではいい勝負なのだろうけれども、主観的に必死な攻防戦は、どうにもこうにも間が抜け過ぎている。
体当たりで尻餅をつかせて小鼻を膨らませていたのも束の間、緊張感も窮迫性も疾走感もなく、面積の小さい布切れ一枚が舞うなんて象徴的な光景だ。
その極薄の布に邪魔をされながらも、隠匿するまでの短い時間だけであっても股間から排除した淫具の照りは見逃さない。

「ふふんっ、言うに事欠きおって。
 そういうお主こそ、股座をトロトロにするだけでは容赦してやらんのじゃ…!」

だからこそ、女を恥辱に塗れさせる為に、秘匿しようと証拠隠滅まで図った事実を、威勢良い声に載せて周辺にばら撒く。
ザリっと砂の音を伴いつつ、ゆらりと立ち上がる。
幸い、布面積の多い着物に、流動性が殆どなくて絡みついているお陰で、地面に垂れ落ちたローションに足元を掬われるなんて三流コメディの主人公にはならずに済もう。
とはいえ、持ち合わせている値千金の面の皮もベトベトにされて、端然と着こなしていた服装もぐちゃぐちゃ。
愉快な心地で大手を振るって帰途に就くには、精神がささくれ立ち過ぎている。
単純な収支計算は、きっとこうだ。
女としては、依頼の不履行、衆目の前での痴態、精神的敗北感。
妖仙としては、顔面同様穢された自尊心、決して安くない和装の対価。
決して深刻ではない割に、相応にダメージの残る痛み分けといったところか。

「まぁよい。
 お主が尻尾を巻いて逃げるというのならば、儂とて追撃はせんでやろう。」

腕組みをして踏ん反り返るが、元々小柄過ぎる背丈と、ローションでぐちゃぐちゃなせいで、威厳の欠片も存在していない。
それでも、女の神経を逆撫でする為の台詞が捻り出せるのは、性悪の面目躍如といった所か。
売り言葉に買い言葉と、ドツボに嵌ってしまうか、今更感溢れる大人の判断で屈辱を引き連れながらも退散となるかは――

ノア > 「 ゃ..... ばかっ !! 」

証拠隠滅も虚しく、 蜜を漏らしてしまった事はバレていて.. それどころか、 其れを周囲に言いふらす少年。思わず、 真っ赤に頬を染め子供より子供っぽい悪態を吐いた。

こうして、 共にぬるぬるに終わった女子供の泥仕合。少年の自尊心にまで考えは及ばないけれど、 少なくとも女は

( こんな姿晒した上に、 コレ全部買い直し.. 報酬割に合わないっ !! )

多大なダメージを受けた模様。髪や胸元、 あちこちを粘液に濡らした無様な姿でもなお、 少年の子供には 僅かな身長差を生かして やや上から返した。

「 逃げるんじゃなくてっ.. 今日はこの辺で勘弁してやるっつってんの、 わかった ? 」

とはいえ.. 内心は げんなりと。このままこの通りで買い物をやり直す気力も、 当然残っていない。ボロボロの紙袋を抱え つんと踵を返すと、 女のプライドでもあるピンヒールを鳴らしながら去って行った ── はたして、 女の言う通り再戦はあるのか ないのか。それはまた、 別のおはなし。

ご案内:「王都平民地区 淫具屋通り」からノアさんが去りました。
ご案内:「王都平民地区 淫具屋通り」からホウセンさんが去りました。