2017/05/06 のログ
ご案内:「シノの邸宅」にシノさんが現れました。
■シノ > 王城付近に位置する、広大な敷地を持つ邸宅。
その中の一室に少女は居た。
日も沈み、夜も深けている時間…邸宅に共に住まう子達は、すでに各々の部屋で深い眠りに付いているだろう。
だが、自分は主や他の式神等も含めた者達と違い、睡眠をそこまで必要としていない。
椅子にゆったりと座り、カップを手に、淹れた紅茶の匂いを楽しむ。
「………そう、では、あなたはそこに…そう、お願いしますわ~?
あなたは、もう少し奥に…そうですわね、出来るだけ糸を広めて頂ければ良いですわね~?」
紅茶を楽しみながら、目を閉じ、まるで誰かと会話をしているような独り言。
その実は、王城内へと手を伸ばす己の領域を広める為、子蜘蛛を使い糸を張り巡らせているのだ。
糸は無色無感触、広げているのは、ただの子蜘蛛…そうそう疑いようも無いだろう。
それが終われば、紅茶に口を付け、椅子に背を預ける。
先日に、この邸宅へ無謀にも侵入をして来た者を思い出す。
何を調べに来ていたのか、それとも、何かを盗みに来ていたのか…それは分からない。
色々と探られて、よろしいものは無いのだから、結果は一つである。
捕らえ、軽く嬲り、記憶を改変して帰した。
■シノ > こと、とカップを置き、羊皮紙にさらさらと何かを書き込む。
それは見る者が見れば分かるだろう、王城内の一部を除いた正確な見取り図だ。
そこに、何かしらの印を付け、ペンを置く。
口元に手を添えて、くすくすと楽しそうに笑う。
こうして思い通りに事が進むのは、楽しいものだ。
しかし、それを阻もうとする存在が居るのも、また楽しい。
その者達が、それを成功するのも、失敗をするのも、きっと楽しいものになるだろう。
少女にとっては、何もかもが楽しい遊戯のようなものなのだから。
そして…その中でも最も楽しいものは、自分の手に掛かり、美味しい精を頂かれる者達の姿。
種族も、老若男女も、関係はない。
少女にとっては、外見なんてどうでも良い問題なのだ。
だから、夜中には門番は立たせないし、大きな門は開放したままなのだ。
何か目的があって潜入する者、興味本位で入り込んだ者、そして、迷い込んだ者。
そういった者達が深夜に入り込むのを、簡単に許す。
まさに、張った巣に舞い込んでくる獲物を待つ、蜘蛛そのもののように。
■シノ > 「さすがは主様ですわ、魔法なんてものともしませんわね~?
これも、もうすぐにでも完成してしまうのかしら~?」
何かを感じ取ったのか、再びペンを手に持つ。
羊皮紙に描かれていた、王城内の見取り図。
それが、今まさに抜けていた一部も描き込まれようとしていた。
色々と話を聞き、決めた方法。
向かわせる子蜘蛛達に、主が魔力消失の力を付与させる。
それは、魔力を持つ力の影響を一切受けないもの。
攻撃を向けられようと、結界であろうと、何事もないかのように仕事をこなすだろう。
もちろん、感知にさえも掛からない…本当に便利なもの。
まぁ、欠点と言えば、所詮はただの子蜘蛛という事。
糸を広げる、それ以外の事は何も出来ないし、魔法でなければ簡単に殺されてしまう。
意識を一度切り、再び邸宅内へとそれを向ける。
侵入者は無し、今日も平和だろうか。
■シノ > そして、ついに見取り図の完成。
自然と少女の笑みは深まり、ペンはまた置かれた。
「お疲れ様ですわ、後は自由にして良いですの~」
最後にそれだけを呟けば、すっと閉じていた目を開く。
カップを手に取り、残った紅茶をゆっくりと啜る。
羊皮紙に乗せたインクが乾くのを確認し、他のものとまとめ、棚へと仕舞う。
浮かべているのは変わらぬ笑み、また楽しそうに、ころころと笑う。
飲み終わったカップをテーブルの端に、ゆらりと立ち上がる。
糸を張り終えた今、王城内の情報収集はかなり楽になるはずだ。
張った糸は子蜘蛛達の身を守り、その移動の手助けとなるのだから。
まだまだ忙しい、だけど、その忙しさも楽しみの一つ。
次々と仕上げられる資料を纏めながら、その先を、更にその先をと考えを巡らせていく。
■シノ > と、ふと何かに反応したように、視線が門の方向へと向けられた。
この敷地内は、既に己が領域、些細な反応も逃さない。
…が、この反応は…
「あらあら、主様のお帰りですわね~?
では、お出迎えをしなければ、ですわ~」
こんな時間まで、何をしていたかは知らないが…主は気紛れ、こういう時もある。
そして、次の瞬間には、少女の姿は部屋から消えていた。
正確には、瞬時に移動をしたのだ。
張り巡らせた糸の上であるからこそ、ではあるのだが。
こうして、やってきた主を迎え、もてなす。
疲れを知らぬかのように、少女は常に何かをし続ける。
それが、シノという少女なのだから。
ご案内:「シノの邸宅」からシノさんが去りました。