2017/02/25 のログ
ご案内:「草荘庵 王都本店」にホウセンさんが現れました。
■ホウセン > 日差しは温かく感じなくもない。吹き付ける寒風さえなければ。故に、窓から差し込む陽光のみを享受する身にとって、大分居心地の良い時期にさしかかっている。とはいえ、屋外に飛び出して遊興の種を探すにはまだハードルが高いらしく、大人しく己の店の執務室で書付などに勤しむのである。勤勉なのか怠惰なのかよく分からぬ性情は、筆を止めぬながらも生欠伸を隠そうともしないところからも見て取れよう。
「くぁ… はぁ。夜は出かける故、不在にするのじゃ。約束なしの客人が訪れるようなら、丁重に詫びて引き取ってもらう様に。この一覧にある人物については、取り急ぎ此方から連絡をする旨を申し添えるのを忘れてはならぬぞ。」
よく一人きりでお篭りをしているのだけれども、今は店その物の営業時間中ということもあり、奉公人が時折姿を覗かせている。今宵の宿直の者に一枚の紙片を渡し、不在時の手筈を言いつける。墨と筆で書かれた文字は、出身地のものではなくこの国で使われているもの。奉公人を現地採用するにあたって、その位の妥協はせざるを得ないのだ。
■ホウセン > 視線は目下の紙面に向けながら、執務机の端に置いておいた湯飲みへと左手を差し向ける。淹れてから相応に時間が経過している事から、陶器製のそれに熱を感じられなかった事へは疑念を抱かず、然し幾許か軽過ぎるそれを手繰り寄せる。強いて近しい色合いを挙げるなら、セピア色という誠に地味で渋い色彩の湯飲みを覗き込むと、期待していた液体は払底しており、淹れた時に混ざる細かな粉末にも等しい茶葉の欠片が、どうにか干からびない程度に濡れているぐらい。
「…茶。熱く、濃い目じゃ。疾く持い。」
口寂しいが、煙管で一服という気分でもない。飴等の甘味を口に放り込む気分でもないという、我侭感覚だけで生きている妖仙。宿直の者が退出しようとする背中に声をかけると、確かに聞こえたと頷きが返り、一礼と共に部屋を辞する姿を見送る。店は通常営業中。何か客人が来れば応対もするし、そうでなければ薄っすらとした眠気と格闘しながらの筆仕事となるだろう。
■ホウセン > 手にしていた小筆は、筆置きに。小さな背中を背凭れに預け、両腕を伸ばして仰け反る。軽量級の体一つが多少身動ぎした所で小揺るぎもしない、どっしりとした椅子。座り続けていたことで縮こまりがちの筋を伸ばす痛気持ち良さに、ゴロゴロと喉を鳴らす猫めいた風情。
「ぬ。まぁまぁの早さじゃな。善哉善哉。」
暫しの休憩も、妖仙自身が急がせた事で極短時間。湯飲みは執務机の天板に置かれ、ずずいっと部屋の主の元に押し遣られる。右手で掴み、左手を湯飲みの底に添える。先刻とは異なり、陶器製の器を通しても明朗に伝わる熱。立ち上る香気を鼻腔に含んで検分した後に、一口。時刻は昼餉の頃合だけれども、区切りの良い所まで片付けてしまう腹づもり。途切れがちな気力を、熱く、苦く、仄かに甘い茶で鼓舞し、今しばらくの執務に向き合い――
ご案内:「草荘庵 王都本店」からホウセンさんが去りました。