2016/06/08 のログ
ご案内:「森の中にある花園」にリーゼロッテさんが現れました。
リーゼロッテ > 旧神に存在ごと葬り去られた森を彩るため、昨晩の言葉通り花を探しに歩いていた。
あそことは異なる静かな森の中に、綺麗な花畑を見つけると小さなスコップで必要な分だけ根本から掘り起こしていく。
土と絡んだ根を崩さないように蔦を編んだ籠へと収めると、鴉達が協力して運んでいく。
大きい個体なら一羽でも十分運んでいけるが、普通のサイズや、小さい鴉では一つ運ぶのも難しい。
二羽で籠の取っ手を咥えて運んでいく鴉達がいたりと、様々。
薄っすらと楽しそうに笑みを浮かべながら、花を籠に移していく。

「……あまり取り過ぎると、偏るから」

適当に幾つか頂いた後、少し場所を移動して別の花を掘り起こす。
黒い喪服の様な格好で土いじりをするというのも、他者から見れば奇妙な光景かもしれない。
薄暗い森の中でもヴェールを取ることもなく、顔に影をかけたままさくさくと土へスコップを突き刺した。

「それ…? うん、じゃあ…それも」

クローバーが沢山生えたところに集まる鴉達は、変わった葉と鮮やか緑色に惹かれたらしく、これも欲しいとお強請りを彼女にだけ聞こえるように紡いだ。
ずっと集団で自我というものがないように見えた彼らに多少の好みの差があると知ると、少しだけ愛着が深まり、柔らかに微笑みながらそちらへと歩いて行く。

ご案内:「森の中にある花園」にイニフィさんが現れました。
イニフィ > 迷ったといえばいいかもしれない。
少し困り顔で、イニフィはあたりを見渡しながら森の中を彷徨っていた。

別に、ここにきた理由はほかでもない。
近くの町に宿を取り、この近くの森に小さいながらも四季折々の花が楽しめる場所があると、街娘が教えてくれた。
それを聴けば、やっぱり旅行者としては一度暗いお目にかかりたい。
そう思い、昼食を済ませてからこの森に入ってきたまではよかったのだが。

「う~ん、此れは困ったわねぇ…。」

思っていた以上に森が深く、おまけに道らしい道はない。
地元の人ならば大体わかるだろう、という程度の獣道が申し訳程度に続いている以外に道らしい道は無かった。
そのせいで、同じところを回っている感じがしてしまい、結果イニフィはすっかり迷ってしまった、という事だ。

「………此れはさすがに飛んだほうがいいかしら…。でも…」

なんだか、鴉の数が異常に多い気がする。
おまけに、この鴉一羽一羽から奇妙な感じがしてきて、かなり不気味だ。
結局獣道を歩くしかなく、更に道に迷っていく。

リーゼロッテ > 草花を運ぶ準備を勧めていくと、鴉達が妙に騒ぎ立てる。
何かなと空を見上げると、彼らの声を聞き届け、嗚呼と一人納得したような声を溢す。

「……多分、今は悪い人じゃないわ」

炎を纏って喰らい尽くそうか、炎を埋め込んで魔族と生まれたことを呪わせてやろうかと、物騒な事を騒いでいるカラス達に苦笑いが溢れる。
寧ろここへ案内するように彼らに頼めば、鴉達が彼女の前を彷徨くようになるだろう。
離れる道を進もうとすれば無数の鴉が目の前の地面に降り立って道を塞ぎ、威圧的とも言える道案内をする。
鴉に従い、歩くのなら喪服姿でヴェールで顔を隠したリゼのいる花園へと辿り着くだろう。

イニフィ > 「………え、なに?」

鴉の声、というよりもイニフィは風の声が聞こえることに首をかしげた。
確かに、空を飛ぶ際に風と会話することによってイニフィは飛行術を扱うことが出来る。
その際に聞こえる風の声に比べると、ここの風は穏やかだった―――はずだった。

怯えているのだ、風そのものが。
鴉達のその鳴き声に、風そのものが怯えているのだ。

「……っと、何?」

まっすぐ獣道を行こうとしたら、その道に突如鴉が降りたち、激しく啼き喚く。
まるでこっちに行くなといっているかのようだった。
振り返れば、今度は別の鴉が鳴く。まるでついて来いといっているようだった。
どういうことか、と首をかしげながらも、風が啼く。『ついて行った方がいい』と。

「……………。まあ、いくしかないわよね…。」

カラス達はとても賢い。
知能で言えば人間をも凌駕してしまうとも言われているものたちが、まるで自分をそっちへと導くかのように飛ぶ。
警戒をしながらも、獣道を歩いていけば―――。

「えっ……だ、誰…?……って、えぇっ!?り、リーゼちゃん!?」

そこには黒い服を着たリーゼの姿があった。
いや、確かにリーゼロッテなのだけど、どこか様子がおかしい。
服装もそうだけど―――いつもの、あの天真爛漫な彼女にしては、どこか落ち着きがあった。
その性で、最初は誰かわからなかったほどだ。

リーゼロッテ > 鴉達の泣き声は、普通の鴉の声と変わりない。
しかし、契約を交わした自分にだけは何といっているか、全て聞こえてしまう。
喧しく案内をするカラス達によって彼女が花園へ辿り着くと、呼びかける声に瞳を閉ざして起きそうになった本来の性格を寝かしつけていく。

「……その呼び方をしないほうがいいわ、壊れたあの娘を見たくないなら。私は貴方がリゼと呼んだ方の人格よ」

呼ばれたような気がしたと目覚めかかった壊れた人格に、気のせいと優しく言い聞かせて眠らせると、ゆっくりと瞳を開く。
こちらの存在が何かと気づかれれば、顔を隠す必要もなくなり、ヴェールを横にずらして顔を晒す。
何時もより落ち着いた表情に、深い青色の瞳。
鴉達がリゼの周囲を飛び回り、木々に止まっては声を上げる。
明らかに何時もと異なる光景を見せながらゆっくりと立ち上がった。

イニフィ > 「…………え?」

木々に止まる鴉たちのその光景を見やりながら、イニフィは目を見開いた。
壊れた?どういうことだ――――いや、考えるまでもない。
彼女が名乗った名前、それを聴けばどこか納得したように力を抜くと、笑みを浮かべた。

「…なるほど、そういうことね。…そっか、入れ替わっちゃったのか…。」

別に、寂しいとかそんなことを思うでもなく、ただ坦々と入れ替わったという事実を確認し、そして微笑んだ。
二番目でいい、自分の愛人になってくれたという少女が―――壊れた。
その事実に、別に驚くでもなく立ち上がった『リゼ』に、軽く掌を上げて挨拶した。

「…ってことは、お久しぶりでいいわね……?
どうしちゃったのかしら、随分と落ち着いてるわね…?」

イニフィが知っているリゼとも、実は少し雰囲気が違った。
以前の彼女は、狂おしいまでの愛情を欲しがり、それによって壊されることを望む自壊的な性格をしていたはず。
だけど、どこか目の前の少女はとても落ち着いていて―――そんな様子は微塵もなかった。

何か、彼女を変えるきっかけでもあったのだろう。
そういえば、先日リーゼロッテと思わしき人物を連れて行く貴族の姿も目撃されていた。
その貴族に何かされたのか、とも思ったが―――それだけでここまで劇的に変わるものであろうか。
だけど―――彼女は一つだけ勘違いをしている。

「…リゼ、私のことはよく知ってるはずよね……?だったら、壊れたあの子を見たくないなら…って言うのは当てはまらないんじゃないかしら?」

何しろ、リゼを生み出したのは―――。

リーゼロッテ > この状況を聞いて驚くなという方が無理だろうとは思っていたけれど、こちらの名前に納得がいった様子に少しだけ安堵した。
ただ、嫌な感じを少しだけ覚えて、ほほ笑みを浮かべることはなく感情を失ったような表情でじっと見つめている。

「えぇ…一人では何も出来ないぐらいだから。 お久しぶりね、落ち着いた…というよりは、熱が冷めたといったところかしら」

愛情に植えて狂っていた時の自分との違い、表の性格が爪痕なんてなくても、安心していられることが必要な愛情だと示した事で狂うことはなくなった。
それでも熱と自壊の衝動は残り、その熱も世界に失望して失われた。
残った欲望は、今は満たす訳にはいかないからと胸の奥底にしまい込む。
彼女には何といって接すればいいだろうか、そんなことを考えていると、続く言葉に少し目を細める。

「……それはつまり、あの時に強請った言葉は嘘ということ?」

二番目でいいと強請るほど、甘く繋がりを求めていた。
だから、今連れて来ても問題ないかもしれないと思っていた。
けれど、壊れた姿を望む響きに少しだけ空気が張り詰めていく。
鴉達がバサバサと飛び立ち、不気味に二人を取り囲むように飛び回っている。

「優しさを求めて微笑むあの娘より、心を砕かれて、虚ろに微笑むほうが好み…と?」

そんな姿を望むのだろうかと思えば、改めて問いなおしていく。

イニフィ > 「……相当壊されちゃったみたいね?…あの子、精神は強いはずなのに…。」

いままで徹底的にせめても、心は絶対に砕けることはなかった。
触手で乱暴に攻めても、魅了の魔術で心を染め上げても、絶対に心だけはかたくなに護っていたのに。
だからこそ、そこに魅かれたのかもしれないと思っていた。
だけど、そんなリーゼちゃんが壊れた。しかも一人じゃ何も出来ないほどに。

感情らしい感情をなくしているのは、その影響だろうか。
空のような青色ではなく、深海のような青色をしている瞳に、イニフィは軽く笑みを浮かべていた。
熱が冷めてしまったという言葉に、くすっとまた笑みを浮かべる。

「嘘?……あぁ、温泉でのアレね?…なんだ、聴いてたのか。」

まあ、当然だ。リゼとリーゼは同じ人物、リーゼが聴いてリゼが聞いていないはずはない。
失念していたと言うわけではないが、その言葉は失言だったかもしれない。
淡く、空気が張り詰めていく―――。

「…………リゼ。」

望むかどうか―――じゃない。リーゼロッテの顔で、冷たい顔をしているのが、気に食わなかった。

「…私は二番目でもいいのよ、本当に。あの子が優しく笑ってるのも好き。
でも…快楽に蕩けて、欲望のままに笑ってるリーぜちゃんも好き。」

つまり、それら全部ひっくるめて―――リーゼという人間を、気に入ってしまっているのだ。
淫魔としてのイニフィと、人間としてのイニフィを持っているからこその言葉だった。

「…リゼ、私を甘く見ないで。そんな冷たい顔をするなら…リーゼちゃんを連れてきなさい。」

周囲を飛ぶ鴉。それらを威嚇するように、一瞬雷撃が走る。
一戦交えてもいい、というほどに―――。

リーゼロッテ > 「強引に全部壊されたたわ、絶望して粉々に」

快楽の末に壊れるというよりは、壊して肉人形にして貪ろうとしていた相手だったのもあり、下手に守ったのがアダになった。
今思い出しても酷い光景で、少しだけ顔色が曇る。

「…薄っすらとね」

全部聞こえていたわけではないものの、本来の性格越しに感じるものは多い。
そしてこちらの言葉に向こうもピリピリとし始めれば、鴉達が今にも飛びかかりそうなほど空で暴れていた。
全て含めて好きだと語る言葉に、眉一つ動かさないのも癪に障るかもしれない。
そんなことに気付くこともなく、続く命令に鴉達は叫ぶ。
彼女には鴉の鳴き声にしか聞こえないが、魔族を殺せと、食い殺してやると、かなり血の気立っている。

「…いいわ、でも…長く代わると私にもあの娘にも良くないから」

短い間だけ、そういうと瞳を閉ざす。
ふと鴉達の鳴き声が止むと、黒い服が霧のように散ってしまい、裸身を晒しながら膝から崩れ落ちる。
どしゃっと地面に倒れた体が、ゆっくりと起き上がるときょとんとした表情で辺りを見渡し、瞳の色合いが澄んだ青色に戻っている。
彼女を見つけてもじっと見つめているが、言葉を紡ぐ様子はない。

イニフィ > 「一番厄介なのに…当たったみたいね。」

おそらく受け入れてしまえば、まだ心のダメージは少なかったのかもしれない。
だけど、リーゼはおそらくいつものように―――かたくなに精神を護ったのだろう。
護りたいもののために守る、いかにもリーゼらしかった。
だけど、それがかえってあだとなってしまった。徹底的に貪られたのだろう。

表情が曇るその様子を見ながら―――イニフィはこう思った。

(なるほど…リゼもリーゼちゃんを護りたかったのね…。
結構可愛いところあるじゃない、最初は入れ替わるのを虎視眈々と狙ってるのかと思ったけど)

自分と同じ、そんな感情を芽生えさせていたのかもしれない。
二番でいい、影でもいい。用は―――リーゼちゃんが、大事。
リゼも随分と丸くなったわね、と少しおかしくて笑ってしまった。

「……うっさいわね、この鴉……。黒焦げにするわよ……?
…ええ、短い間でいいわ。ちょっと様子を見てみたいだけ。」

そんな鴉への罵倒。なにをいっているのかはわからないが―――なんとなく空気は察することが出来る。
彼らは普通の鴉ではなさそうだ。
まるで、自分のことを見透かしているかのように啼くそれが―――ぴたりと止んだ。

リゼの使役獣―――それが先に頭をよぎった。
しかし、おかしい。確かリーゼにはザムと呼んでいた隼がいたはず―――。
それではなく、黒い鴉と契約したのかと、軽く思案する――――間もなかった。

「……っとっ!」

裸で、倒れるリーゼの元へと駆け寄る。
言葉をつむぐ気配がないが―――駆け寄って目の前でしゃがんで見せた。

「……リーゼちゃん。」

名を、呼んだ―――。

リーゼロッテ > 小さく頷き、その言葉を肯定する。
絶対に従わないと、最後の最後まで抵抗した結果、絶望と共に快楽漬けにされ、浮上する間もなく壊された。
人が壊されていく酷い惨状を、直ぐ側で見ているしか無かった。
自分と同じ存在の心が、食肉の様に叩き潰されていくような凄惨たる光景を。
自分が欲しかった終わりと、自分がすべきことをその時に自覚し、狂った炎を失った。
彼女の思惑は分からぬまま、可笑しそうに笑う様子に首を傾げたい気分だが、今は意識を失っていく。

「……?」

胸元にあった紋章は姿がなく、放っていた旧神の白い魔力の気配もない。
隼とのつながりがまるで感じられない状態に変わり果てたリーゼが、呼びかける声に微笑む。
名前を呼ばれたことは分かったらしいが、白痴の壊れた微笑みを浮かべるも、言葉は紡げない。
それどころか、彼女が誰かもわからないらしく、不思議そうに見つめているだけ。
胸元も股座も隠さず、両手を地面についてぺたりと女の子座りをしていた。