2023/07/14 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城 とあるテラス」にガルガントさんが現れました。
ガルガント >  
 綺麗な月夜
 夏の空は星の広がりが月を超える。
 城下の夜は港湾都市よりも淡く、その色味は空までは覆えない。
 火明りだけでは色褪せない満天の星宙の下にて
 全身包帯 着流しの右肩から先を露出させた男はテラスの縁に背から寄りかかっている。

 手元には羊皮紙に記された余り開かすものではない秘匿されるべき文書。
 橙色の三白眼が、星宙と月明りの下の明かりだけでそれを読めているのか
 左から右へと移動していく文をなぞる視線と瞳。
 貌にも巻かれた濃いめ生地の包帯 菱形に残す口元は、薄ら笑みを浮かべていた。


   「ご苦労 下がっていいぞ。」


 喉を多少焼いたようなハスキーな声
 労いの言葉一つ それで隅で控えていた暗い衣装束は ふ と息すら感じさせずに消えていく。


   「俺の時代はこの両手で造る強さだったが、拍子抜けだな。
      ―――これがあいつ等の強気になっている理由か。 」


 王城内で発生している血の匂いの濃さ
 一部が派閥を変えて組みあがる構成 王族として継承権を放棄している己にとって
 それは眺めているだけで楽しめるものであり 傍から見れば脅威とされる自身でも
 関わるものなどありはしない 精々が殺しに関係させようとする腰抜けが数人いた程度か。
 興味本位で忍ばせてみれば、なんてことはなかった。
 が、見方を変えれば 巨大な船 巨大な雷 手に入れた物の大きさ一つで王などひっくり返る。
 そんなありきたりな神話を踏まえれば常套と言えるかもしれない。

 テラスから離れ、テーブルセットに置かれたギヤマンの中に満ちる飴色の褐色琥珀酒
 グラスに注ぎ、舐めるように唇を濡らせば歯列を魅せる ニッ としたそれが出る。


   「予定外の戦が始まる、か。 使える“悪事”だと良いな ■■■。」


 それは王族貴族 誰もが一度は眺められてしまう瞳
 他者を利用する、気に入らない瞳 価値を見出して使おうとする瞳。 

ガルガント >  
 今回知った“悪事”
 それに対しガルガントが思うことは笑み浮かべること。
 王族の“彼奴”が強気になった原因
 一等を勝ち取る為の策は単純なものながら、しかしそれは愚策にもなる。


   「―――俺がクシフォス・ガウルスなら。」


 奪うよな “アレ”を。

 ニィッ とグラスの中身を半分ほど減らしながら舌は廻る。
 周りを散らかして 敵を蹴散らして 魅力的に見えるものの、それよりもこの案件
 クシフォス・ガウルスが知らないままでいること前提だ。
 目の前に目にしてからでも 破壊 よりも 奪取
 そちらに思考が行ってしまうのは、ガルガントの利用しつくそうとする利を感じるからか。
 
 始まる前にこの悪事を阻止できなければ、下手が起こる。
 そんな予感と共に、“アレ”を実際ガルガントも欲しくなっていた。
 といってもガワよりも中身 技術力のほうか。


   「他の王族もそうだ 知れば奪い合いになる。」


 腰のカマスから金無垢の髑髏煙管を取り出すと、雑に火口に掬われた刻み葉
 手元の文書を捻り潰し、火打ち金を数度 ガチンッ と鳴らすことで出る火花から着火された一点
 それに文書を近づけ、バチバチと燃える目の前の火の粉一片が煙管の葉をジワリと染み燃やす。


   「―――フゥゥゥゥ…、…廻りができねぇようならバラシて掻きまわすか。」


 貴族じゃ手に負えない 技術力の提供なら幾らか有名人がいるものの
 手元に置くのは結局王の末裔らだろう。
 一体だけで釣りがくる ガルガントは確信めいてから、手元の火種
 燃える文書を自身の異能を以って、瞬間的に燃焼させては黒屑に変えた。
 足元の火をブーツの底が踏みつぶしながら、二口吸った煙管
 白石床にポンッと逆さに振った煙管の羅宇が手元に落ちると、灰の粒が零れ落ちるだろう。
 残りの酒を飲み干しカマスが帯に帰るのなら、それまでテーブルに置いていた愛刀を手に
 その場を去っていくだろうか 黒屑の燃えカスが風でバラりと飛んでいく中
 焦げ蒸すその場だけがガルガントの形跡を知らせた。

ご案内:「王都マグメール 王城 とあるテラス」からガルガントさんが去りました。