2023/07/12 のログ
ご案内:「廃教会」にアスリーンさんが現れました。
■アスリーン > 魔物や野盗に襲われて廃された村には、複数の羽の繭があった。
王都や近郊で時々目にすることがある純白の羽が幾重にも連なって人一人を包み込めるような繭となり、そこに人間を閉じ込めて快楽に等しい幸福な夢を見させている。
それを知れば、おのずと犯人にたどり着くことになるだろう。
白く美しい六翼を持つ巨躯の天使。正確には堕天使。
身の丈3mにも届きそうなぐらい人の平均を超える体に少女のようなあどけなさを残す顔。
神聖な法衣にも似た服を纏い、虹に煌めく白銀の髪をなびかせる。
美しい月夜の廃教会に天使はいた。
何をするでもなく、この村を根城にしていた野盗の集団をまとめて白い繭の中に包み込んで。
静寂の中厳かに天井から差し込む月明かりを見上げている。
「──── わたくしの力が、衰えてきているのかしら」
そんな風にぽつりと零す。
使命を果たすために力を使う。けれど力は無限に湧いてくるわけでもない。
「わたくしのモノ…… わたくしだけのモノ…… わたくしに必要なモノ……」
セルリアンブルーの双眸が、長い睫毛の下で揺れる。
そう、眷属。────天使には眷属が必要だ。
けれど契約に耐えうる器と魂でなければ、意味がない。
ただの人間ではいけない。相反する魔族もだめ。
「……作り変える? そう、魂と肉体の、昇華……」
ぶつぶつと、鈴を転がしたような可憐な声が、静かな教会に響いていた。
誰が訪れるか、誰も訪れないか、そんな深夜の教会で、天使は月を見ていた。
ご案内:「廃教会」からアスリーンさんが去りました。