2023/06/02 のログ
ご案内:「廃教会」にアスリーンさんが現れました。
アスリーン > 何らかの事情で廃された村。
人口が減ったのか魔物に襲われたか、飢餓か疫病か。
領主が管理しなくなって久しく、空き家が目立つ村の中にある廃教会。
そこに静かに座して、倒れた神像に腕を乗せ、凭れかかるようにしているのは巨大な女。
少女らしい顔立ちに豊かな胸元、神聖性すら感じさせる法衣に似た純白の衣裳。
長い銀髪は癖もなく体にゆったりとかかっている。
そしてその背にはうっすらと半透明に隠しきれていない六翼。
その天使はお気に入りのカウチにでも腰掛けるように、祭壇の上でゆったりと座っている。

外は大雨。風も強くて周囲は暗い。
教会の中だって明かりなんてあるはずもない。
貴方がどんな理由でこの場を訪れたかは定かではないけれど。
雨宿りに立ち寄るために教会の扉を開いたら、奥にほんのりと白く光る存在が見えるはず。
天使は長い睫毛を今は伏せて、静かに座しているだけ。

「…………────」

何を見るでも、何を歌うでも、何をするでもない。
ただそこに座す天使をどう思い、どう対するかは貴方次第。

ご案内:「廃教会」にエーゼルさんが現れました。
ご案内:「廃教会」にミンティさんが現れました。
ご案内:「廃教会」からエーゼルさんが去りました。
ミンティ > めったに王都の外へ出たりなんてしないから、その日の仕事も断るべきだったのかもしれない。
珍しく馬車に乗り、住み慣れた街からすこしだけ遠い場所へ。取引は滞りなく進んだため、その点では安堵していたのだけれど。
せっかくだからと、帰りは途中まで散歩もかねて、自然の中を歩いてみようなんて考えたのが運の尽き。とつぜん降り出した大雨に、傘もないのではどうしようもなく。
せめて休める木陰の下でも探し逃げまどっているうちに、辿り着いたのが廃村だった。
幽霊でも出そうな雰囲気にびくびく怯えながら、せめてすこしでも、なにかの加護がありそうな場所に引き寄せられるよう、手をかけたのが廃教会の扉だった。

転がりこむように屋内へ踏み入り、とりあえずこれ以上、雨に打たれずに済んだ事にはほっとして。
けれど、すぐに目を丸くし、呆然と立ち尽くす事になる。
祭壇に腰かけている人。いや、人にしてはずいぶん大きい。身の丈が、ほぼ自分の倍近いその姿は、ちらりと見ただけで眩く思えて、視線が外せなくなる。

「あ……ぁ、えと……」

思考がうまく回らない。おじゃましますと言うべきなのか、あわてて踵を返すべきなのか。なにも浮かばず、ただ呆然と、その人を見ていた。
できた事といえば、うっすらと見える六枚の翼に、見間違いかと目を擦るくらい。

アスリーン > ざあざあと降る雨の音に耳を傾けていた天使は、足音と扉の開く音にゆっくりと双眸を開いていく。
セルリアンブルーの澄んだ瞳は光の粒子が散りばめられているようで、緩やかに貴女の方を見た。
雨に濡れて震える小さな体。
天使はゆっくりと凭れていた体を起こして、貴女に微笑みかける。

「あら、まぁ。可愛らしい貴女。
 そんなに濡れてしまって、どうしたの?」

軽やかな美しい鈴を鳴らすような声音が貴女に届いたなら、貴女の聴覚を侵すものがある。
天使の眼差しをまっすぐに見つめ続ければ、視覚からも得も言われぬ高揚か、あるいは安堵のような感覚を覚えるだろうか。
天使の声も視線も、人に幸福感という状態異常を付与するもの。
そう言った状態異常に耐性があるのなら、貴女の前にいるのはにこにこと笑顔を見せる只の大きな女になるけれど。

「さあ、こちらへいらっしゃい」

雨に濡れて帰ってきた子を迎える母に似た柔らかな声。
体躯に見合う大きな掌が、貴女の方へと差し伸べられる。
捕まってしまえば逃げられない。目を閉じ、耳を塞いで踵を返せばまだ間に合うけれど。
そうしないのなら、貴女は天使が齎す幸福という檻に招かれることになる。

ミンティ > ほんの数秒前まで、ぐっしょりと濡れて身体に纏わりつく衣服に不快感すらあったのに、今はそんな嫌な気分だった事さえ忘れてしまっていた。
急に夢の中に放りこまれたみたいに現実感がなく、自分がどこにいたのかさえ、あやふやになっていて。
声をかけられても、それが最初、自分たちと同じ言葉で話しているものだとは理解できなかったほど。
ただ、鼓膜を震わせたその音のあまりの心地良さに、くらりと頭が揺れた。

「…ぇ、ぁ……ぁ、え…え…と、……あまやどり…に、…来て……」

事情を尋ねられたのだと遅れて理解が及ぶと、はっとして。
ただでさえ口下手なのに、喉がからからになっていて、返事をするのもやっとだった。
見つめ返されただけで、頭の中がずっとふわふわしていて、ますますなにも考えられなくなっていく。
本当に夢でも見ているのだろうと思った。今の自分は、慣れた自宅のベッドで、うとうとと心地よい微睡の中にいるんじゃないかと。

「……ぁ、……はぃ…」

誘われた理由なんて考える余地もない。その声で招かれたのだから、従うしかない。
ふらつきながら踏み出した足は、しかし数歩も歩めない。
自分よりずっと高位の存在を前にして、そのあまりの神々しさに、腰抜けになってしまったみたいにバランスを崩す。
床に打った膝の感覚だけは現実的で、夢じゃないとわかった。ただ、今はもうそれもどうでもいい事。
這うようにして、すこしでもその人との距離を縮めようとし。あとすこしのところで、これ以上、自分から進み出るのは恐れ多い気がした。
だから、膝をついた姿勢のまま、胸の前で両手を組む。なにも考えられずとも、自然と祈りを捧げる姿勢になって。