2023/04/22 のログ
アロガン >  人目につかず移動する為に、しばらく時が過ぎるのを待っていた矢先に、アロガンの頭部からまっすぐ伸びる耳が、不意にぴくりと動く。
 響く足音は複数。遠くから聞こえてくる金属の音。
 手に剣や槍、鎧をまとう国の正規兵が数名と、頭目を見捨てて逃げ出した配下の男たちが数名、物々しくアロガンを囲む映像が一瞬だけ瞼の裏に過っていく。
 アロガンの血が、稀に見せるそう遠くない未来の光景。いわゆる未来視だ。
 よもやこの貧民地区で、まともに仕事を全うしようとする憲兵がいるとは。
 そう思い、アロガンはその考えを唾棄するようにハッ、と嗤い捨てた。

「全く……面倒事の予感しかせんわ」

 すっと立ち上がれば、椅子代わりにしていた頭目の男の襟首を掴み、肩へと担ぎ上げる。
 必要なのはこの男だけだ。
 その他の男どもは放置していたところで、その手足を大分痛めつけたので暫くは悪行もとれまい。
 ずしりと重い男を担いだまま、足取りは早々に、暗がりの中へとアロガンの姿は消えていく。

 深夜の冷たい風が吹き抜ける、月明かりも雲に隠れたタイミング。
 その薄暗がりの中でも足取りは惑わず、その場からは二人の男だけが消えていった────。

ご案内:「貧民地区 廃屋」からアロガンさんが去りました。