2023/02/15 のログ
リア > 「まあ、私も馴染みの顔になりつつあるんですね。ふふふ」

満更でもなさそうに笑って、隣に腰掛ける。
伸びてきた指をつかまえて、自分の膝の上に留めておくと、

「アッシュさんは結構読書家なのかしら……。その本、お部屋にありますか?
 そう、万愛節のお菓子ですよ。学校でも今日はお菓子が飛び交っていました。
 授業で死んでいなければ、私も手作りお菓子の会に参加したかったのに……」

と飛び出しかけた恨み言を途中で飲み込み、咳払い。
空色のリボンの箱をちょんとつつく。

「とってもきれいな青いチョコレートだったので、一目惚れでした。
 あ、マスターの分もありますよ。どうぞー」

店主にも納めておけば、店内に持ち込んだお菓子をつまんでも目こぼししてもらえるかもしれない、という策略が半分、お世話になっている気持ちが半分、でにこにことお菓子を献上する。

アッシュ > おお、捕まった。とわざとらしく慌てた顔を作りつつ。
ちょっと指先を曲げて、その膝の上を掻くようにくすぐっている。

「あの部屋には残念ながら。そもそも本にはなっていなさそうだなぁ……旅の間に詩人に聞いたような話しだからねぇ。
 ――ああ、やっぱり学生さん達の方がそういうのは盛り上がりそうだよな。手作り、はそれはそれで大変そうだが……そこはお菓子に限らずとも、料理とかでもいいんじゃないかね」

お祭りに合わせて盛り上がるのも良い。が、お祭りでなくとも色々と手段はありそう、と。
店主へも策略が行っているのを小さく笑いながら、それなら開けてもいいよなぁ、とリボンに手を伸ばし。
そっと解いたリボンは上着のポケットにしまい込みつつ、空色なのが、リアらしいなぁと思いながら。

「なるほど、以前……青いお菓子を探そうとして上手く見つからなかった事があったが。
 チョコレートなら青色に飾ってやることもできるわけか」

結局ハンカチになった、と言うのは思い返しつつも横に置いておき。
青い食材、と言うのではなく青くコーティングすると言う手はあるわけだなぁ、などと関心しながら箱を開け。

リア > くすぐったくてひんやりした手で指を押さえていたが、コーヒーがやって来たので離してそちらへ手を伸ばす。

「お話ちゃんと覚えてます? 気になるから寝るときに話してくださいな。

 料理でも良いのですけど、教えてもらえる時に教えてもらうのが大事なのです……。
 アッシュさん、明日の朝、目玉焼き教えてください」

隣で箱の中を覗き込む。白と空色ともう少し濃い青の三色のチョコレートが三つずつ入っている。

「天然で青いお菓子はなかなか難しそうですねえ。
 これはね、味も美味しいんですよ。ええと、どれがどれだったかしら」

あつあつのコーヒーカップを包むように持って口をつける。

アッシュ > 手が自由になれば、もっとくすぐってみたくもなるが、コーヒーカップに手を伸ばすのを見れば流石に危ないな、と思うから。
自分の方のカップに手を伸ばしてまた一口飲みながら、あの物語の内容はどうだったかな、と思い返す。

「やたら長い物語だからなぁ、印象深い所はいくつか覚えているが……面白いようには話せんかもしれんぞ。
 ……ん、目玉焼きぐらいならいくらでも。と言うかあれはただ焼くだけだろうに」

一人旅の経験も長いし、今の事務所を兼ねた家に住んでいるのも自分だけだし、店に出すような料理はできないが……簡単なものはそれなりに作れる。
目玉焼きは特別教えるようなものではないような気がしたが、そこはどちらかと言うと作る物の内容よりも一緒に作るのが良いのだろう、とも思うから。言葉上では教えるほどのものではなかろうと言いつつも、にこやかに頷いてはいて。

「青い食べ物、ってのがそもそもなかなか存在しないものだからな……
 ふむ、白はミルクの味なのではないかね。空色と青は……食べてみないと想像が付かんなぁ」

飲んでいたのが甘くないコーヒーだったし、今食べてもちゃんとそのまま味は解るだろう、と思う。
やはり最初に食べてみたいのは空色かな、とこの少女に似合いそうな色を摘んで。どれがどれ、と言うのだから味もそれぞれ違うのだろう、これはどんな味なんだろうなぁ、と口にして。

リア > 「良いですよ、アッシュさんの声はお休み前に聞くのに良い声なので。

 ……目玉焼きは……卵を割らないといけないんですよ?
 あと、火加減に気をつけないといけないそうですよ……?」

焼くだけではないという主張をして、温まってきた手でひょいとひとつ横からチョコレートを摘む。

「あ、白がベリーですね。ということは水色のがナッツで、青いのが柑橘だったかな。
 外の色とは全然関係ないけど美味しかったので」

アッシュが食べているのを見てにこにこしながら、こっそり耳打ちする。

「あのね、他にも可愛いのがたくさんあって……選びきれなくて他にもまだあるので、残りはあとで私が食べさせてあげます」

アッシュ > 「まあ、俺もリアの声を聞くのは好きだが……
 卵を割る……んん、そこからか?――もしかして、リア……全然料理できないのか……?」

火加減、の方は解らないでもない。
卵を割る、のも最初は細かい殻が混じったりしてしまうのも解る話ではあるのだが、器用そうに見えて実は思いの外そういう所から苦手だったりするのだったか、と何だか意外そうに見つめて。

「おっと、見た目と味が関係ないパターンだったか……ああ、確かにこいつはナッツの良い香りだ」

チョコレートの食感の中から、僅かに歯ごたえの違う別の感じがあって、食べている間にナッツの香りと味が広がってくるのを、ふむ、美味いものだ……と。
その間に耳打ちしてくる内容を聞けば、またふむ、と頷いて微笑んで。

「なるほど、こうかな……?」

少女が横から摘んでいたチョコレートひとつ、それを更に横からひょいと摘み取り。
食べさせる、と言うのだからこれもこうすべきだろう、とそのままリアの口の前まで持っていって。
ほれ、あーん、ってやつだ、などとにやにやしている。

リア > 「やったことがないだけで、できるかもしれません――明日、料理の才能が開花してしまうかもしれません……」

託宣のような口調で言う。真実は明日判明することだ。希望的観測を言うのは自由である。
食べているのを見て、私もひとついただこうかしら、どれにしようかな、と三色のチョコレートを見比べて――

「ね! 美味しいでしょう。……えっ」

口の前まで運ばれたチョコレート。
人目を気にしてまごまごした。
が、まごまごしているこの時間が一番恥ずかしいような気がして、ぱくっとチョコレートを咥え。

「……生温かい目で見られたらどうするんですか……っ。
 もうこのお店に来られなくなっちゃうじゃないですか……!」

味もろくに分からずもぐもぐしながら、カウンターの下でぎゅうっと腿を掴む指。

アッシュ > 「おやおや……こりゃぁ、料理担当は暫く俺の方だなぁ」

ふっふ、と笑いを堪えつつ……ちょっと笑い声が漏れてはいたが。
ちゃんと教わっていないだけで、教えれば普通に出来るようになるかもしれないしな、と希望的想像をしてみるのもまた自由である。

「痛い痛い……ほら、ちゃんと味わわないと勿体ないぞ?
 大丈夫さ、ここの連中はみんな意外と純情だから……むしろもっと沢山顔を出して欲しいと思ってるんじゃないか」

掴まれて、勿論本気で痛いわけではないのだが、痛がって見せつつ。
客の殆どが常連ばかりの小さな店内で。気のいい奴らばかりだから、と肩越しに視線で周囲の様子を示唆していれば。
店主こそ面白がってにやにやしているものの。他の客達は生温かい目で見るどころか、有り難いものを見たように拝み始める者とか、何か浄化されたように幸せな顔でぐったりと椅子にもたれている者とか、確かに変な目で見ている者は居ないようである。
見られていたことには変わりないのでは、あるが。

リア > 「教えてくれたらできますもん。味のほどは、先生の教え方次第です」

ちゃっかり味の責任を押し付けて笑う顔が、店主のにやけ顔を見てしまって赤くなったり青くなったり……

「ひ……あの……もしかしてあの……皆さんにばれています……?
 あの……私たちのこと……」

目の横に手を立てるみたいにして防御しているけれど、何となく視線を感じる。
小声で、しかし必死に言い募る。

「父やら母やらの耳に入ったら死んでしまうので……っ
 秘密なんですからね……!!」

アッシュ > 料理の味付けは、シンプルに薄味にすることが多い男だったから、基本を覚えるのには丁度良いかもしれず。
最初からあれこれ調味料を沢山使ってみようとしたり、無闇に強い火を使おうとしたり、そういうのが失敗の元であって……と言うのは後で実際やってみての話。

「そりゃ、小さい上に酒場だしなぁ。リアみたいに可愛い女の子が時々顔を出しもすれば、みんな気にはなるだろう。客の殆どは俺みたいにおじさんだったり、そうでなくとも男むさい環境だしな」

むさくるしい酒場内に時折現れる、それは周囲の面々にとっても一つの癒やしのようなものであったらしい。
小声であっても聞こえていたのか、秘密なんですから、の言葉に皆一斉にばたばたと、まるで何事もなかったかのように食事や談話や酒飲みに戻り。それぞれが手元で、ぐっ、と親指を立てて見せたりしていたが。

「……ふっ、まぁ……な、みんないい奴らだろう?……心配ないと思うぞ、そこは」

吹き出しそうになるのを堪えているらしく、ちょっと目をそらしながら。

リア > 「助手! ただの助手ということに! しておいてくださいっ。表向きはっ。卒業するまではっ」

やっぱり小声でお願いする。
助手活動をちゃんとしようと心に決めた出来事であった。
平静を保とうとコーヒーを飲む手が妙にそわそわしてしまう。

「こういうのに対する心の準備が……うう、もう今夜は帰ります、帰りましょう、恥ずかしくてむりです」

良い奴ら、に異論は無いにしても、今までばれていないと思っていたのが違うとわかって、何とも言えず面映ゆい気持ち。
くいくいと袖を引く。

アッシュ > 「そうそう、うちの探偵助手だからな。よく居るのも不思議じゃあない」

ひょい、と白のチョコレートを口に放り込み。おお、これは確かにベリー味が美味しいな、とか言いながら、まだ笑うのを我慢しながらの様子。
甘いものと苦めのコーヒーがまた良く合う、などとカップに口をつけて、残りを飲み干し。

「ま、気にせずまた顔を出してくれよ。そうじゃないと、かえって皆心配してしまうだろ?」

よし、と残りのチョコレートをばらまいてしまわないように箱の蓋をきちんと戻し。
自分の飲み代と、少女のぶんのコーヒー代もまとめて店主に渡して、箱をひょいと片手に持ち。

袖を引かれれば、頷きながら立ち上がり、外へ向かうことにして。

リア > こくこくと人形のごとく頷いてアピールし、ちらっとまわりを窺うけれど大分今更な気はする。

「一人で入れるお店は貴重なので、そのつもりですけど……うう……。
 ……ご馳走様でしたっ」

考えれば考えるだけ恥ずかしくなりそうなので、もう考えないことにして。
コートの前を合わせ、外に出たら、「寒いです風よけになってください」と言って後ろにぴったりくっついて帰るのだった。

ご案内:「平民地区/小酒場」からリアさんが去りました。
ご案内:「平民地区/小酒場」からアッシュさんが去りました。