2023/01/25 のログ
ご案内:「平民地区/小酒場」にアッシュさんが現れました。
アッシュ > 「おお……店の中の暖かさが有り難いねえ」

平民地区の一端。馴染みの小さな酒場に滑り込むように入れば、冷えまくっている外と、小さい店ゆえに保温されやすいのかとても暖かいその中とで、思い切り違って感じる。
震えて縮こまる――ような事は慣れゆえにないのだが、寒さを感じないわけではないから、いつもより特別冷たい空気のような気がする夜は、暖かい場所が落ち着く気がするのは仕方のない話。

「食い物も温かいのがいいね、そうだな……ああ、このスープがいい」

カウンター近くの板に、野菜多めのトマトスープを少々辛めの味付けにしているらしいお勧め品が書かれていたから、それを注文しつつ。
そのまま一番端のカウンター席に陣取って、酒――は単に酒が飲みたいと言うわけではなくて、冷えた身体を軽く温める意味で一杯貰い。

ご案内:「平民地区/小酒場」にリアさんが現れました。
リア > お酒がカウンターに置かれるのと同時、ぴうっと冷たい風が舞い込んで、テーブルの上の蝋燭の炎が揺れた。
温かい空気が逃げないように、急いで扉を閉めた黒いコートの娘。
ふうっと息を吐きながら店を見回し、探し人の顔を探すほどでもない小さなお店だから、すぐにアッシュを見つけて目が微笑む。

「こんばんは。お席、ありますか?」

お店の人へ言いながら、手袋を脱ぐ。

アッシュ > 置かれた酒のグラスに手を伸ばせば、外の空気が入ってくるのを感じて。
軽くグラスをあおりながら視線を向ければ、以前もこの場で見たような気がするコートに包まって、間違おうはずもなく見覚えのある顔を見つける。
カウンターの一番端に座っていたから、その隣が空いているのを手招きするようにしていて。

「やあ、こんばんは。クローズの札は出してきたと思うが……それでもよく、またここだと解ったなぁ」

事務所の扉に新しく追加した開店中閉店中の札。それは見てきたのか、それとも直接ここに来たのか、そこはまた想像の域を出ないのだが。

「もうすぐスープが出るよ、折角だからそれも分けようかね」

リア > コートのポケットに手袋をしまいながらアッシュの隣に腰を下ろす。
まだ寒いのでコートは襟もとを緩めるだけ。
グラスに鼻を近づけてくんと嗅ぐと、あ、お酒だ、と呟く。

「ふふ、服を確かめた方が良いんじゃないですか。アッシュさんの居場所はばればれなんですよ」

意味ありげに言ってにっこりする。仔猫の迷子防止に買った居場所へ導く魔具は、あれ以降忘れたりはしていないのだけれど。

「はあい。あのね、学校のことでお話ししたいことがあって……」

アッシュ > 「ん、舐めてみるか……?酒が飲みたいと言うより単にかけつけで温める為に頼んだものだから、かなり強いがな。
 ……また何か細工したのかい」

飲んでみるかではなく舐めてみるか、と言ったのは、小さなグラスなのも相まって本当に強いものなのだろう。
手にしたグラスをそのまま向けるが、差し出す、と言うほどでもないのも、やはり一気に行くなよと言う意味なのか、無理に味見しなくて良いぞと言う意味もあるのかもしれず。
服の方へは、またいつのまにか何か入れているのだろうか、と肩をすくめて。

「学校……なんだ、何か問題でもあったか……?」

ふむ、と体ごと少し向き直り。なにごとか大事な報告でもあるのだろうか、と神妙な顔になる。

リア > 「ううん、今日はやめておきます。明日起きれなくなってしまいそう……」

グラスに鼻を近づけて、くん、としてからアルコールの香りに顔がくしゃっとしてしまう。
冷えた耳と頬はてのひらであたためることにして。

「学校のことというか、事務所のことというか、……ええと……私のことというか。

 結論から言うと、学校がお休みの前日以外は、お泊りを控えようかなあって。
 年明けから新しくいらした先生の出す課題が、量が多いというか……
 下調べにどのくらい時間がかかるか分からなくて終わらせる目処が立たないというか……

 宣言しておかないと、あの……つい雰囲気に流されてしまいそうだなと思って」

ところどころ周りを憚って声を小さくしながら伝える。

アッシュ > んむ、と頷いて酒のカップを戻した頃、目の前に置かれた銅鍋。
一人用にしては妙に大きい、野菜入りトマトスープの入ったそれは、どうも二人分はあるようだ。見直してみれば確かに二人前と書かれているが、かえって丁度良かったかもしれず。
取り分け用の木の器に軽く注いで、先に隣へ置いてやり。それから自分のぶんを取る。

「ふむ、それはリアの勉強の方が大事だからな。そうした方がいいだろう。
 ……そもそも寮暮らしをしていてあまり抜け出しっぱなしなのもまずいだろうからなぁ。ま、少し寂しい日が増えると言うだけで、何も今生の別れになるわけでもなし」

そこまで大げさな事ではあるまい、とまた頷いてやって。まぁ、食うといいぞ、と器を指差し。
元々自分の食事も兼ねての注文だったから、自分の方も器と同じ木製のスプーンで中身を掬いながら。

リア > 「……アッシュさんも私に何か細工しました?」

二人分のスープの注文に、来ることを知っていたのかと怪訝な顔。
それはそれとして取り分けられるあつあつのスープは見るだけで寒さが和らいでほっとする。
スプーンでかき混ぜて……

「寮は別に良いんです、個室だから誰もうるさく言わないですし。
 居ないことにも気づかれないくらいで……。

 ……アッシュさんが寂しがらないように毛玉を貸し出しましょうか……」

スープを一口食べて、美味しさと困りごとのあいだでううんと唸る。

アッシュ > 「ん?いや……単にメニューをちゃんと見ていなかっただけだが――どうかな、この辺りには何かしたかもなぁ」

カウンターに頬杖をついて、逆の手をゆるりと伸ばし。
何を思っているのやら、謎掛けのように少女の胸元を、とんとん、と指先で軽く突くようにして。

「ああ、点呼がないのか……案外その辺は緩いんだな。確かに毛玉が飼えるぐらいだしな。
 ……いや、おじさんは独り寂しくしているのは慣れている。それより毛玉無しじゃあリアの方がもっと寂しいんじゃないのかい?」

少し辛いスープ、これが丁度よく冷えた身体には良い気がする。
数度口にした後、何やら隣で唸っているのを、暫しじっと見ていて。
ふと、片眉をひそめ、冗談なのか本気なのか微妙にわかりにくいような、変な笑い顔になりながら、ぼそりと。

「……案外、もっと思い切り寂しがった方がいいのか?」

リア > 「っ!……みだりにお手を触れないでくださいっ」

びくっとしてスープが波立ってしまった。一度スプーンを置いて、ぎゅっと胸の前でコートをかき合わせる。

「んー、寂しくはないです、一人で寝つけないだけで。
 寂しくないのに寂しがられても困るし、寂しいのに寂しくないふりをされても困ります。

 私はアッシュさんをあんまり一人にしたくないから、お泊まりできる日にアッシュさんのお仕事があまり重ならないと良いなと思います。
 …………?」

ぱくぱくスープを食べては辛いので舌を休めて。
変な表情に首を傾げ、誰もこちらを見ていないかちらちらっと周囲を確認してから、顔を寄せて、ちゅ、とほんの一瞬唇を重ねる。

「……今日は下の雑貨屋さんと途中でお会いして、アッシュさんがこっちの方に行くのを見たって教えてもらえたけど、すれ違いにならないようにアッシュさんはもっと私に居場所をお知らせしてください。
 事務所とここにしかいないなら分かりやすくて良いけど、そうじゃないでしょう?」

アッシュ > 「踊り子のようなことを言う……」

今は目立たない姿をしているが、そういう綺羅びやかな服も合うのだろうか、きっと合うんだろうなぁ、などと考えてしまう。が、口には出さずになんとなく笑みを浮かべるだけ。

「そりゃあもちろん、寂しいが。だがある程度蓋はしておくものだろう……あまりきっちり密封してしまうと、かえって突然吹き出したりして困ったりするものだがね――
 ……んむ。もう少し、かな」

誰か気づいたかもしれないが、それはそれ。もう少し足りない、と自分からまた一瞬のお返しをして。

「俺の方はだいたい似たような毎日さ。……だがそうだな、こっちから居場所を知らせられる手段は必要か――何か、考えないとなぁ」

ふぅむ、と何となしに酒場の天井を目で追って、いい方法がないだろうかなぁ、と少し考えてみるも。そうそうぱっと思いつくものでもない。

リア > 自分からしたのは棚に上げてお返しに慌て、カウンターの下で膝をべちっと叩く。

「だからっ。みだりにっ。触れちゃだめなんですアッシュさんはっ。

 あれ、アッシュさんも寂しいという感情が……存在したんですね……?
 ふふー、それじゃ会えるときにたくさん補給してください。私もそうします」

率直な感想がそこはかとなく失礼な発言になってしまったかしらと思うも、まあいいかとにこにこして。

「雑貨屋さんに言付けしてくれればそれで良いですよ。
 いつ戻るのかどこへ行ったのか分からないと、待とうかどうしようか迷うじゃないですか」

留守なら留守でよそで遊びますし、と。
スープを食べ終える頃には体はすっかり温まっていた。

「ふうー。美味しかったです。明日も頑張ろう……。
 ルールを決めたからもう寮に戻らないと……。
 アッシュさんはちょっと送ってくださるはずだと信じています」