2023/01/18 のログ
ご案内:「平民地区/酒場」にアッシュさんが現れました。
アッシュ > 自宅兼事務所から、少し歩いた先にある、馴染みとなりつつある小さな酒場。
窓際の席で、苦めに頼んだコーヒーをカップから啜る。酒場、と言っても酒でなくても嫌な顔をされない所も気に入ってはいる。
皆、それぞれ気分や事情があるもので、何なら食事が主目的で訪れる面々もいるぐらいだ。

「……見たくないものを、と言う思考になる事自体が、少し平和呆けし過ぎていると言うことかねぇ」

探偵業、と言う仕事を努めていて。別段どうと言うことはない内容も多いのだが、たまたま心証よろしくない案件ばかり立て続けにこなし終えると、人嫌いの意識が増してくるのも仕方のない話。
若い頃の自分であれば、そんなものどうと言うこともなく無感情にこなしていたのだろうが、人と人とのあれこれを見て辟易する、と言う感情が湧くこと自体、かつてより平和に慣れすぎたかな、と自分で自分に苦笑いもしてしまうのだ。

「ま、それだけ……今の俺が人間らしくなった、と言う意味では良いことか?
 綺麗なものを綺麗と思うようになったしなぁ……いやぁ、汚いものをなるべく見ずに済ませたいものだよ」

懐から取り出した、仕事で使っている革張りの手帳。
裏表紙を開けば、透明な板状に加工された一枚の押し花。
一見純白のようにも見えるが、よく見ると淡いピンク色をしている薔薇の花と、流石に乾燥させて艶は弱まったが深い緑色の葉。
それをまじまじと眺めて、ふう、と大きく息を吐く。

「癒やされるねぇ……」

アッシュ > 押し花の板をテーブルの上にそっと置いて、横目で見ながら少し笑みが浮かび。
それから、ぱらぱらと手帳のページを戻り、一度終わった……筈が続きが発生した依頼内容を確認している。

「どうにかなるのかねぇ、これ」

とある貴族令嬢から依頼を受けて、お相手さんの浮気調査をした案件。
見事浮気がちであることが発覚したものだから、それはそのまま仕方なく報告済み、で一件終わった筈なのだったが。
後日、そのお相手さんの貴族の男から、どうにかして復縁できないか、と言う依頼が舞い込んだのである。
それも、わりと必死な様子で。浮気がバレた経緯を、調べに調べてやっと辿り着いて、逆に依頼をかけてくるぐらいの必死さ、は認めてやらんでもないのだが。

「……いや、もうちょっと早く反省していればよかったものをなぁ。色恋事は俺には解ら――ああ、まぁ、うむ」

解らない、と言いかけて何かちょっと引っかかったようで、眉間にシワを寄せて首筋を掻く。
以前なら、自業自得、と済ませて放置していた所だが。なんとなく必死になる気持ちも解らなくもないような、そんな気も少しするのだった。

「やれやれ、だな。まぁ……本気で反省しようってんなら手助けぐらいはしてやるか。探偵がやる仕事じゃぁない気がするんだがな」

占い師にでも任せた方がいいんじゃないか、とも思う。
探偵が仲人のような事をするなどと、そうそう聞いた事がない……と思うのだ。