2022/12/20 のログ
ご案内:「王都平民地区」にアッシュさんが現れました。
■アッシュ > 平民地区の一端、建物が雑多に並ぶ間に。
二階建ての建物の上階から直接通りへ降りる階段の中頃へ腰掛け、そろそろ目の前の通りを行き交う人々がまばらになってきたのを眺めながら。
一階部分に入居している雑貨屋がそろそろ閉めた頃だ、その後はこの辺りに用がある者も殆ど居なくなる。
建物二階が自宅兼事務所だが。気晴らしがしたくなると、単に窓を開けているよりもこうして階段へ出て座っている方が何となく落ち着くようなのだ。
「さて……あの件が片付いたとして、後は何が残ってるんだったっけなぁ」
持ったまま出てきた銅製のカップに入ったコーヒーを、ぐいっと多めに喉へ流し込む。
淹れてからだいぶ経っていたから、殆どもう冷たい飲み物と変わりない。いれ直してから持ってきても良かったか、と思うが、まぁこれはこれで美味いものだ。
そんな間、片手に持った資料を数枚、指先で器用にめくりながら目を通す。
一つ一つが無関係な別件だから、どれから先に片付けて行ったものか、やれやれだと目を細めて。
ご案内:「王都平民地区」にリアさんが現れました。
■リア > 富裕地区の方角からやってくる黒髪の娘。
店じまいを始めているカフェの前を過ぎ、今から営業を始めるために明かりを灯す酒場の窓の前を過ぎ、人の流れから浮きながら立ち止まったり歩き出したり。
「んー……確かこのへん……」
見覚えのある店がいくつかあるものの、慣れた道ではないから、建物をひとつひとつ確かめながらゆっくり歩いている。
両手に提げたピクニックにでも行くような大きめのバスケット。
中からにー、と小さな鳴声。
「もう少しだからいい子にしてて――あ」
通りすぎようとしたひっそりとした階段の半ばに人影を見つけ。ほっとしたように笑みが浮かんだ。
「アッシュさん! 良かった、通りを一本間違えたかと――こんばんは!」
■アッシュ > 手元の資料をじっと見ている時間が長かったものだから、流石に少々目が疲れてきたのか。
カップを置くと、目元をぐいぐいと指先で押している。
目を閉じている間は他の感覚が無意識に敏感になるからか、ほんのりと聞き覚えのある小さな動物の鳴き声が聞こえた気がして、おや、と通りの方を伺えば。
「――おや、こんばんは。お買い物の帰りとかかねぇ」
鳴き声とは別に、また聞き覚えのある声と見覚えのある姿を発見し。
付近にはちょっとした店もいくつかあるから、その辺りに用事でもあったのか、と考える。
事務所の場所は学院宛に送っていたから、近くへ来たついでに探してみようとしたのかもしれないな、などとも思いつつ。
「わりと道が入り組んでるだろう、この辺は。丁度この上がおじさんの家と仕事場になってるよ」
■リア > 「お買い物したし、まだ買わなきゃいけないものもあるけど、でもそろそろこの子が脱走しそうだったから……」
階段をとんとん上がるブーツの音。
アッシュの座っているひとつ前の段にバスケットを置くと、楕円の蓋を半分頭で押し上げて、仔猫が顔を出す。
「先にアッシュさんのところに寄ろうと思いまして!
無事に辿り着けて良かったあ……先にお伺いも立てずすみません。お仕事中でした?
はい、これお土産です。スパイスクッキーと、チョコの香りのする紅茶ですって。お疲れのご様子ですし一休みしましょ!」
仕事中か聞いておいて返事を聞かずに、肩に掛けていてた紙袋の中から水色と白のストライプの可愛らしい紙箱を取り出してアッシュに押し付ける。
紙箱から甘い匂いがするのか、仔猫が鼻をひくつかせている。
■アッシュ > ん、と覗き込めば、バスケットの中からちょこんと顔を出した脱走しそう犯と目があった。
にー、と鳴くそれを何だ元気そうじゃないか、と少し表情を緩めて。何となく毛並みもきれいになっている気がするし、ちゃんと愛情を受けているのだろう。
「ちゃんと愛されているようで良かったなぁ、お前。やはり、おじさんが飼うよりその方が安心だ」
持っていた資料はひとまず纏めて軽く折りたたみ。
半ば強引に差し出された紙袋を受け取ると、やさぐれた男が持つにはちょっと可愛らしすぎる感じのする袋、妙な光景になっている。
バスケットの中から小さな手がにゅっと袋へ伸びるが、これはおじさんのだ、と隠し持つようにして。
「仕事の方は休憩中だよ……この狭い場所に、と言うよりお客さんを階段に座らせるわけにもいくまい、事務所へ上がろうか?
……話し込んでいると店やらはそろそろ閉まりそうではあるが」
後方、階段の上を親指で指し示し。買い物は間に合わなくなるかもしれんが、と一応聞きはするけれど。
■リア > 「女子寮のみんなからも引っ張りだこなので、触られすぎないようにするの、大変なんですよ。
名前はまだですけどね。ネーミングセンスがおかしいってみんなに言われてしまい……」
見るからに柔らかくて小さな生き物はどうやっても庇護欲をそそる造形で、可愛いものに目の無い女の子に囲まれてしかるべしなのだ。
「休憩の割に難しい顔しているように見えたけど……アッシュさんはもしや働きすぎ……? 張り込みのしすぎ……?」
年のせいだと言われそうな気がしたけれど、そう言うほどのお年には見えないと思っているので何か他に疲れの原因があるのではと考える顔。
可愛いパッケージを持つのににこにこしてしまう。
「はい! 私にお手伝いできることも教えてください。
残りのお買い物は今日じゃなくても大丈夫なので」
もとよりそのつもりで来たのでやる気に満ちて頷く。
■アッシュ > 「そうか、女子寮だとそりゃ大変なことになりそうだなぁ……猫誘拐事件など起こさんでくれよ。探しもの依頼も受けることはあるが、おじさんが女子寮は流石に捜索しにくい。
……で、そのネーミングセンスでどんな候補を考えたのか聞かせてほしいものだね」
どうやらまだ名前は決まっていない様子、一体どんな名前にされかけたのだろう、と微笑ましく見ているが。
なんだかその前の神妙な顔を心配されていまったようだから、ああ、どうと言うことはないよ、と軽く首を振って見せ。
「仕事自体はそこまで溜まっているわけではないんだがね。手を出すかどうか未定の……資料だけ受け取ってきたようなものも多いからなぁ。単にそれを眺めてただけさ」
紙…箱!を仔猫から防衛しつつ、買い物の心配をしないのであれば。それじゃあ事務所へご案内しようか、と立ち上がり。
元々階段半ばに居たから二階はすぐだ。
元々がそうだったのか、何故か鉄製の少し重たいドアを開ければ、その中はこじんまりとした、いかにも事務作業用、と言った部屋が現れて。
無骨な入り口のドアの印象とは違って、木製の家具を中心にわりと温かみのある内装にはなるよう心がけた感じが少しする。少々散らかってはいるものの。
「ちと散らかったままだが……ま、どうぞ。
手伝えることは――おじさんずっと独りだったからなぁ、何をお願いするべきかまだあまり思いついてなくてなぁ、色々考え中ではあるがね」
■リア > 「猫誘拐事件……!
私が調査して、アッシュさんは私の話を聞くだけで事件を解決する安楽椅子探偵の方向性が素敵なのでは……!?」
空想がふくらんで目が輝く。
「ええと……一つ目は、にーにー鳴くのでニイサン、二つ目がふわふわなのでケイト(毛糸)、三つ目が、白黒で足してねずみ色なのでねずみ。
どれも可愛いと思ったのですけど、不評なので思いとどまっています」
仔猫の頭を撫でるそぶりで脱走しないよう抑えつつ、バスケット持ち上げる。
アッシュの後ろについて階段を上がっていく。
「書類整理は得意分野です……よ?」
いかつい扉に、容疑者を拉致して情報を吐かせたりなどするアッシュ、という方向に空想が向かうが、中は拷問室などでは無かったのですぐにその考えは霧散する。
「わあい! お邪魔いたします。
お茶を淹れるのも助手の仕事だと思います。
アッシュさんは紅茶とコーヒーどっちがお好き? ミルクとお砂糖は?
毛玉を放してもよろしいですか?」
バスケットを腕に抱え、室内を珍しそうに見回している。
■アッシュ > 「おお、おじさんはもう足腰弱ってきてるしなぁ、そうできれば楽だが――」
言うほど実際には弱っていないし、どちらかと言えば頭脳派と言うより肉体派、自ら潜入捜査するのが得意分野ではあるのだが。
学生達のちょっとした悩み事辺りなら方向性を指示するぐらいで何とかなるかもな、と暫し考えて。
上手く、後ろで指揮していると見せかけつつ、実際にはこの少女が自力で解決できるような丁度いい仕事はないものだろうか、などと慮る。
「お、おう……ケイト、辺りはそれっぽいが――まぁ、じっくり考えるといいな?
……ああ、キッチンはそこのすだれカーテンの中だ。紅茶でもコーヒーでも、任せようか――あるものは適当に使ってくれて構わんよ」
事務スペースの部屋の隣にキッチンがあるようで、そこの入り口を覆っている紐状の飾りが下がった場所を指し示し。
先刻コーヒーを淹れたから、その道具は出しっぱなしの筈だし、紅茶用のポットなどもキッチンの棚をばたばた開ければどこかに入ってはいた気がする。
毛玉は先程から脱走したがっているから、ドアや窓が閉まっているのをざっと確認してから、おろしてやっていいぞ、とも頷いて。
■リア > 「そうだ、肩を叩くのも私のお仕事でした。弟には痛すぎるって言われたのですが」
癒すつもりが破壊行為になってしまったら恐ろしい。強度をはかるように、つん、つん、とアッシュの背中をつつく人差し指。
女学生探偵がアッシュの中で生まれようとしているとは知りもせず。
「……。アッシュさんも私のネーミングセンスに疑問を抱いているご様子……。
もう少し考えることにしましょう。おかしいねえ、ニイサンだって可愛いのにね……」
しゃがみこんで扉の脇にバスケットを下ろした。すかさず顔を出したのをくりくり撫でまわして、ぱっと手を離す。
仔猫は見知らぬ場所にぴょいっと降り立って、探検を始める様子。
「ふふふ。私用のホットチョコレートも買ってきたのです。ぬかりありませんよ。
アッシュさんも糖分補給にします?」
キッチンのすだれを手でよけて、中で紙袋をごそごそやる音。
「マシュマロと――あれとこれとそれと――カップはこれで――」
ご機嫌に歌うような口ぶりに、袋を破る音や棚の扉を開ける音が重なり、キッチンから甘い香りが漂い始める。
■アッシュ > 肩たたきが破壊行為になるとはどんなものか。案外と力が強いのか、それともその弟さんが案外と弱いのか?
背中をつつかれれば、少しこそばゆく思ったのか目を細めている。
つついたぐらいでは、服の下が鍛えられて実はしっかりした体格なのはまだ解るまい。まだその辺の一般人と変わらないただのおじさん、で良いのだ。
「探検するのはいいが、あんまり隙間とかに潜り込むんじゃないぞ、汚れるからな……
――甘いのでも苦いのでも気分次第で行ける口だからな、そうさな……甘いのでいいだろう」
味覚は人一倍敏感で、以前は甘いものが苦手だったっけな、とふと思い出す。
今は慣れて甘いものも好きになったが、苦手だった理由は味とは全く別の話で、今それらを平然と口にできるようになったのは平和になったものだ、なんて改めて思うと、少し幸せな気もする。
いつも静かな事務所内で、仔猫が何かがさごそしている音や姿を眺めていたり、キッチンの方から音がしたり甘い香りがしてきたり、そういう普通もいいものだ、と机の前の椅子に座りながらしんみりもしていて。
「こらこら、その袋はいたずらするんじゃぁないよ。中身はまだ新品なんだ……返しに行くかもしれんのだからな」
部屋の隅、棚に入れる場所が無かったのか床にそのまま置かれていた大袋に、毛玉がよじ登り始めたのを見てそっと叱れば、にー!と不満そうに鳴かれる。
■リア > 「じゃあ、アッシュさんにはこっちのマシュマロを差し上げましょう」
甘いの、という返事に、キッチンでくすくす悪戯めいた笑い声がする。
「そうだ、お掃除とお片付けも私の仕事。
お掃除のやり方、勉強しなくては」
毛玉がどこを探検してもねずみ色にならないくらい事務所を綺麗にする、という使命を見つける。
マシュマロを浮かべたホットチョコレートをふたつ、トレイに載せて運んでくる。
机の上に置かれたマグのうち、アッシュの前に置いたものはピンクのハート型の小さなマシュマロ入りである。
飲み物で一息つく前に、コートを脱いで掛けに行く――と、仔猫を諫める声が聞こえ、悪戯をしているなら回収しようかと、ぱっと振り返って部屋の隅へ。
「あら、大事なものですか? だめだよ、ほら、お前にもいいものあげるから」
コートのポケットからまたたびを取り出して、仔猫の前にころんと転がす。
何やら大きな袋が気になって、猫の気を引きながらそちらへ目をやる。
「新品で返品ですか? 何を衝動買いしたの?」