2022/08/24 のログ
ご案内:「古びた洋館」にセレーナさんが現れました。
■セレーナ > 夜の世界にのみ姿を現す洋館。
迷い込んだものは、館の主の贄となるか、
友となり得て解放されるか、
それとも嬲られて玩具とされるのか。
それは迷い込んだ者次第。
夜の眷属たちが多数蠢く館の中も、
外から見やる限りでは静かで落ち着いたそれ。
その館の中、豪奢な主人の部屋の中で窓の外を見やりながらワイングラスを傾ける女が一人。
「……はぁ、退屈ではあるのだけれど、だからと言って、ねぇ」
どこか外に出るのか?と問われれば、
少なくとも今は面倒くさい。
興味が引かれれば外に出ることもあるだろうけれど、
今は迷いつかれた哀れな来客が現れるのを待つばかりか。
■セレーナ > 特に何をするでもないのは退屈。
ただ、何かをするのは面倒くさい。
その二律背反に襲われるのはいつものことで。
故に、こういう時の時間の潰し方は理解していた。
ただ、ぼんやりする。
ぼんやりと言っても何も考えないという事はない。
結果、とりとめのない事を延々と考えている事となる。
その時には過去の事象を思い出したり、ふと何かが思いついたり。
思いつくものがとても良いアイデアだったり、ただの妄想だったり、何の意味もない駄文だったりもするのだけれど、それはそれで。
楽しいかと言われれば微妙な所ではあるものの、暇をつぶすにはちょうど良い。
ご案内:「古びた洋館」にベルナデッタさんが現れました。
■ベルナデッタ > 「はぁ…困りましたね。ここどこでしょう?」
屋敷の主人が退屈を感じている中、その洋館の前に現れたのは、
あまり招きたいタイプではないであろう客であった。
今日も王国に害をなす魔族を人知れず討伐したベルナデッタであったが、
その帰り道が分からなくなり、こうしてふらふらと彷徨い歩いていたのだ。
ベルナデッタはふぅ、とため息をつく。街で迷子になるなどいつぶりだろうか?
「それに…この屋敷は何でしょう?こんな所にありましたっけ?」
彼女が目を向けるのは歩いた末にたどり着いた、黒々とそびえるセレーナの館。
外から見れば、空き家かと思うほどに静かだが、手入れは行き届いている。
「……怪しい、ですね」
迷子になったところに現れた、見覚えの無い屋敷。
もしかすると、魔族の秘密拠点か、あるいは犠牲者を待ちわびる狩場か。
「どちらにせよ、調べないわけにはいきませんね」
色々な意味で疲れてはいるが、見なかったことにする、という選択肢は無いだろう。
ベルナデッタは静かに扉を開けると、中へと入っていく。
……屋敷の主人にとっても、敵対的でなくとも主教の司祭服を着た人間が入るのは嫌な事かもしれないが。
■セレーナ > 窓から外を見ていれば、そこに現れたのは主教の司祭服を身につけた女性。
その様子を目にして暫し思案していたが、この館まで至ったという事実が会談するだけの価値のある相手なのだろうと考えた。
なにより、ここまで暇を持て余していたのだ。
面白い事が起こる予感もする。
故に、彼女が屋敷の中に入ってくる動きを見せれば心の中、快哉もあげる。
とて、反応的におびえながら入ってくる様子ではなかった事が引っかかる。
故に、あまり屋敷の中を散策させない事にした。
右手が宙に何やら文様を描けば、玄関以外の屋敷のドア全てがこの部屋へと至るように空間を捻じ曲げる。
己に出会う前に下僕に出会ったりしたら、そこで厄介なことになるかもしれないから。
下僕の質も多種多様。獣と同程度の魔物にしかなれないものも存在するのだ。
仕掛けは準備した。
あとは来客がこの部屋にやってくるのを待つばかりだろうか。
これから起こる事への興味に、口元に深い笑みを浮かべた。
■ベルナデッタ > 玄関に入れば、貴族の屋敷に特有の豪勢なホールがベルナデッタを出迎える。
しかし、ノックはしなかったとはいえ扉の開く音は響いたはず。
なのに、誰も出てくる気配がない。
本当に空き家なのか、それとも待ち伏せているのか。
「うーん……手近な部屋から調べますか」
ベルナデッタは真っ直ぐ歩いた先にあった部屋のドアを、躊躇なく開く。
すると、部屋の中には一人の女。人間でないだろうことはベルナデッタの長年の勘ですぐわかった。
そして、その部屋の窓を見れば、明らかに一階からの風景ではない。
恐らく、この部屋は本来ベルナデッタが開けたドアの先にはなく、
繋がるように空間を曲げているのであろう。
「……お邪魔します、と言うべきでしょうか?」
館の主人なのか、それとも侵入者への対処を担う者なのか。
ベルナデッタは警戒を解かずに、部屋の中へと入り込む。
■セレーナ > 開かれる扉、そして扉の前に現れる姿。
口元に笑みを刷かせたままに値踏みするように暫し見やる。
部屋の中に入ってくる彼女の姿を見ても特に身構えるでもなく姿勢を変えずにそのままで、
かかる言葉にほんの少しだけ目を細めて。
「異常な環境下でも礼儀正しいのね。
……いらっしゃいませ、ごきげんよう。私の館へ。
森の中を迷ってしまったという所かしら?」
向けてきた気配から警戒をしている事は知れる。
がゆえに向けた最初の節。
けれど、その後に向けた言葉は歓迎のそれか。
警戒すれど身構える気配がなければ
視線で己が近くの椅子を勧めるだろう。
無論、どのように動いても構わない。
それは彼女の自由なのだから。
■ベルナデッタ > 「まぁ…仕事柄ですね。
申し遅れました。私はベルナデッタと申します。
見ての通り、主教の人間です」
かけられた言葉は穏やかなもの。少なくともいきなり襲い掛かるということはないらしい。
ベルナデッタはそれなら相応にと、自己紹介をし、勧められた椅子に座る。
「えぇ、おっしゃる通り。務めからの帰り道に迷ってしまい…」
目に見える武器を近くに置いている様子はない。
恐らく、何かしてくるにしても魔術の行使なのだろう。
ならば、神々の加護を持つ己には効かない。
そこまで考えつつも、ベルナデッタは目の前の女の素性を探ろうと視線だけ動かして部屋を見回す。
「それにしても、知らなかったですね。ここにこんな屋敷があるとは」
穏やかに話している風で、異端審問官は警戒を解かない。
■セレーナ > 「ノーシス主教の。……でも、血の匂いがするわ。
そういう仕事がお得意なのね?」
すん、と鼻を一つ鳴らせばそう言葉を紡ぐ。
少なくとも、血の匂いは己にはごまかせない。
甘美な日々の糧なのだから。
が、勧めた椅子に座る様をみれば、一瞬驚いたような表情を見せて、
次の瞬間には楽しそうに笑う。
「アハハ……本当、肝が据わっているのね。
……それは、少し悪い事をしたわね。
この屋敷の近くは本来、人除けの魔法を施しているの。
お互いの領域を犯すことなく、お互いが心安らかに暮らして行けるように。
ただ、時にはこちらからそちらに迷い込む者もいる。
そう言う者はそちらの法で裁いてもらって構わないからどうという事もないのだけれど。
そして……ごく稀に、この屋敷自体に招かれてしまう者もいる。
その理由は私にも分からないのだけれど、貴女は招かれてしまったようね」
周囲を見渡せば、生活感はあるものの、それ以上のものはない。
ただ、淫靡と退廃と、少しの血の香りがするくらいか。
「招かれてしまったのならば、少し私の暇つぶしに付き合っていただけないかしら?
……言葉を交わすだけでも良し、その中で更に別の事をしたくなったらそれも良し。
この屋敷の中では、貴女が認め、貴女の責任の下であれば、貴女が何をしても構わない。
無論、相手がそうされたくなかったら抵抗するけれど、それはその相手の権利。
権利と権利がぶつかり合ったら、意思を通す力の強い方が権利を得ることになるだけ。
……まぁ、興味がないというのであれば、街へ帰すこともやぶさかではないわ。
また、帰りたいとなったらいつでも帰してあげる。
ただ、もう二度とこの屋敷には来れないかもしれないけどね」
どうするの?と小さく首をかしげて返答を待ち。
■ベルナデッタ > 「血…あぁ、今日は魔物を退治していたのです」
嘘は言っていない。昼間にはとある邪悪な女魔族の手下達を散々斬り捨てていたのだ。
腰にはよくある護身用のような剣を下げているが、
武器の知見があれば、護身以上に使い込んでいることがわかるだろう。
そして鼻が効けば、魔物達の主人であった女魔族との淫靡な死闘の残滓も嗅ぎ付けられるかもしれない。
「神々のご加護がありますので…。
今こうしてここにいるのも、神のお導きかもしれません」
しかし、狙ってこちらを誘い込んだわけではなさそうなのが分かれば、
幾分か警戒も和らぐ。それでもまだ、視線には鋭さが残っているが。
「暇つぶし…ですか。私はまず貴女が何者なのか、もう少し詳しく知りたいところですね。
それとも、主教のありがたい説法でも聞きますか?」
ベルナデッタは微笑んで、そう返す。
■セレーナ > 「あら、勇ましいのね。それで血の……あら?もう少し違う匂いも。
これは、貴女ともう一人の淫らな香りね」
血と蜜は同根にして別のもの。
故に血ほど敏感じゃなくともかぎつけることはできた。
「そうね……そういう意味ではさらに申し訳なかったかしら。
この屋敷には貴女が狩るべき者がいるかもしれないわ。
……とはいえ、私の目が届く限りは連中にも貴女にもそうはさせないけれど」
神のご加護という言葉を引いて、この屋敷の秘密の一つを事も無げにさらけ出しつつ、続く言葉には小さく笑いこぼして。
「そうね、私が何者かは伝えずに暇つぶしを手伝えと言ってもねぇ。それは失礼だわ。
私は、セレーナ=トレメール。宵闇のお方の眷属にして、魔術師の氏族。
そして、血を吸い、肉の交わりに溺れる者……吸血鬼、よ」
己が素性をありのままに晒す。
己が如何なる存在なのかを。
明かした上で、彼女の微笑みを受け止め、受け入れた上で己もまた、彼女に微笑みを返すだろう。
■ベルナデッタ > 「……本当に鼻が利くのですね。
貴女が思うような穏やかな行為をしていた訳ではありませんが」
永劫の時を生きる吸血鬼であれば、淫魔の類を逆にその行為にて滅する人間がいることは聞いたり目にしたことはあるであろう。
「狩るべき…そうですね。気配はします。貴女がそうではないとも限りませんが。
目の届かないところに放りだしてくだされば、心おきなく狩れるのですが」
冗談めかしてそう言い、こちらも笑う。
だが、彼女の自己紹介を聞けば真剣な表情に戻り。
「トレメール…聞いたことはありますね。この国の王族や貴族と繋がりがあるとか…。
少なくとも、王国に敵対しているわけではないのでしょう?」
そういう相手を害するほど、ベルナデッタに分別が無いわけではない。
主教内には吸血鬼の討伐を専門とする司祭もいるが、生憎ベルナデッタは違った。
それでも、戦闘方法ぐらいは心得ているが。
「そこまで明かしてくださったのであれば、私も明かしましょう。
私は主教内で異端審問官をしております。
魔族崇拝の異端と、その元締めたる魔族の討伐が私の務めです」
逆にここで明かさねば、失礼になるだろう。
そう判断したベルナデッタも己の身の上を語る。
「吸血鬼は、専門ではないですが」
■セレーナ > 行為について告げる彼女の言葉に少し引っかかることがあったが、今すぐは思い出せずにいて。
けれど、続く言葉には冗談めかした様子を知れば、同じく己も笑って見せて
「私の庇護のもとに大人しくしているならば流石にねぇ。親として、姉として、守ってあげなくてはならないでしょう?
……相手と自分の実力差も知れず暴れるような輩ならば、好きにして構わないけれど」
永劫を生きるために精神を摩耗させ、いつしか狂ってしまう者もいる。
そういうものは己が『処理』することもある。
そういう相手を彼女が殺すというならば、それは感謝こそすれ恨みに思う事でもない。
そして、己の出自に思い至った様子に目を細めて
「博識ね。われらと王家の約定など、知るものも少ないと言うのに。
……敵対はおろか、協力すらしてはいないわ。
我々が干渉すればパワーバランスが崩れ、力を貸した勢力のみが強くなりすぎる。
そんなものはよろしくないもの」
寧ろ興味がないとまで言ってのけるだろうか。
その中で、更に自らの素性を明かしてくるベルナデッタ。
異端審問官であると告げる彼女の言葉と、先程の行為に対して向けてきた言葉の記憶がつながった。
強い興味を示す様子。
今まで面倒くさそうに、それでいて丁寧に穏やかにとしていた雰囲気が変わる。
強い興味と、瞳の奥に灯った昏い被虐の悦びの色が。
「ノーシスの使途が使えるという魔を滅する行為、でしたっけ?
それ、死ぬほど気持ちがいいのかしら?それとも気持ちよすぎて死んでしまうのかしら?」
今までと違って少し食い気味に食いついた話題。
ただ、物騒な話題にもかかわらず先程以上に友好的にすら聞こえるかもしれない。
■ベルナデッタ > 「ふふ、貴女の管理が行き届いていることを願いますよ。
私達も、私達の信仰と信徒に手を出さねば何も言いませんから」
異端審問官は結局は、ノーシス主教の信仰を守るのが第一の役目である。
故に、驚異にならなければ積極的に動くこともない。
勿論、王国がノーシス主教を守護している以上、王国を危機に陥れる者にも結果的には敵対するのだが。
「そういう事を知っておかねばならない立場ですので…。
せっかく中立不干渉を保ってくださっているのに、こちらから台無しにしては事ですからね。
太古から生きる龍、閉ざされた森を統べる妖精王、闇に生きる人狼…とは仲が悪いんでしたっけ?吸血鬼は。
互いに触れ合わぬのが共存の道となる種族はいるものです」
そうなると、こうして話しているのも不味いのかもしれないが、
相手が興味を持っているのに無下にするのも事だろう。
だが、彼女が己の立場、そこから連想される技能に強く興味を抱けば、
それには流石に苦笑いした。
「よ、よくご存知で…。人や方法によるのですが。
私の場合は、信仰する女神様より加護を授かっています。
あらゆる魔力を浄化し消し去る強力なものを。
試しに今ここで貴女が最大の魔法を放っても、私には傷一つ付けられないでしょう」
威力や規模は関係ない。そういうものなのだ。
神の力とは、それほどまでに強力なものである。
「そして、その力は私の身体のみならず…体液にも宿ります。
故に魔族に飲ませれば、魔力を消し去り、その根源たる魂も破壊することができるでしょう。
……ただし、それには魂を無防備な状態にする必要がありますが」
ベルナデッタは自身の能力について説明する。
己の手の内を明かすのはいささか不安ではあるが、
セレーナの様子からは敵意は感じられない。
「ですので答えは、気持ちよくしないと死なせられない、でしょうか。
淫魔の類は人間を絶頂させることで魂をさらけ出させ、吸精を行います。
それと同じ理屈です。ただしこちらは破壊、ですが」
ただ、魂を浄化の力に焼かれ破壊される瞬間はとてつもない快楽を感じてしまうらしいと、
そう付け加えるベルナデッタ。
とはいえ、それは大抵の魔族には最期の快楽となるのだが。
■セレーナ > 「逆に、行き届いていなければ、狩ってしまって構わないわ。
貴女は人として信頼できるタイプと見た。
ならば、貴女が狩るべきと判断したのであれば狩るべきものなのでしょう」
家族だからこそ、狩らなければならないという事もある。
それが、望み望まれて眷属へと誘った親としての責任だと感じているが故。
「仲が悪い、というより反りが合わないが正しいかしら。
龍種とは、お互いの能力相性が良くない。
妖精王とは、森の扱いでけんかになる。
人狼は、お互い血が原因の種族だからお互い血を汚すと考える。
……でも、種族で相性が悪くとも個人的に友人にはなれるけど」
敵味方の状態を説明すれば、触れあわぬ方が共存には合意を示した。
己が興味に対して返答を返してくれる彼女。
どこか目をキラキラさせながらその話を聞いていたが、
その現実を理解すれば、少しだけ消沈する。
「そっか……知らないほどの快楽を感じられるのかと期待していたのだけれど、もしかしたら普通の快楽の範囲で結果、消滅させられるかもしれないリスクがあるかもしれない……悩むわ」
グラスをテーブルの上に置いて、腕を組んで、ひとしきり悩む。
思い切り悩んだ後で、ふっ……と雰囲気を緩めれば。
「それって……どっちにしても、貴女は淫魔をも絶頂に至らせるテクニシャンって事になるのかしら?
さっきの話もあきらめきれないけれど、こうなってくると貴女自身にもっと興味が湧いてくるわね」
己の隣の椅子に腰かけているベルナデッタに体を向ける。
手すりの上、横向きになるように。
すると互いの顔が少し近づくだろう。
互いの吐息が触れ合うほどに。
■ベルナデッタ > 「それは光栄です…。
勿論、こうして顔合わせが出来た以上、なるべく話を通してから行動しようと思います。
それに、貴女の眷属のみならず、貴女の同族に…その強大な力を、
人間を脅かす為に躊躇なく使う者がいれば、その時には貴女の助けも必要になるかもしれません。」
不干渉は、必ずしも協力しないということを意味しない。
不干渉を守るために手を組む事も時には必要だろう。
目の前の吸血鬼には、そういう協力も頼めるかもしれない。
ベルナデッタの方も、セレーナを信頼できる相手として見ていた。
「成程、そういう関係なのですか…。
強大な力を持った存在同士でも反りが合わない、世の中はよく出来たものですね。
お陰で人間は蹂躙されずに生きていける…」
とはいえ、個人としては仲良くできるというのにも、同意を示す。
ベルナデッタとて、友好的に接する魔族はいるのだ。
「あ、あはは…貴女にそれをするのは、
貴女の眷属に八つ裂きにされないか怖いのですが…」
十中八九、己に使わせることを考えていたセレーナの様子に、
ベルナデッタはさらに苦笑いを滲ませて。
最も、己に目の前の吸血鬼を害しきれるとも思えないが。
「まぁ、少しは自信はありますね。それに淫魔の能力は私の力で無効化できるので…。
でも…私一応、聖職者ですよ?」
別に己の信仰する女神にそういう戒律は無いのだが、
彼女の方はそれでいいのだろうか?
目の前に顔を寄せる彼女に、ベルナデッタは困惑しつつ。
■セレーナ > 「そうね。私の子達は私のにらみで押さえつけられるけれど、他の血筋はそうもいかない。
他の血筋も私達と同じ関係性のはずだけれど、トチ狂った者が現れないとも限らない。
……そういう事であれば。どのような助けができるかは確約できないけどね」
もう少し狂気的に清廉な相手かと思っていたが、思った以上に清濁併せのむ覚悟があるようだった。
それは、宵闇の眷属たる己にとっては望ましい心根だ。
「世界はそういう意味でも興味深く出来ているの。
強者は強者同士で、弱者も弱者同士でバランスを取るように」
そして、苦笑いを浮かべるベルナデッタに少し唇とがらせつつ
「死ぬかもしれないほどの快楽、って言われたら一度位は経験してみたくならない?……ましてや、不死性にからくりのある吸血鬼ならば、なおさら」
まだ少し隠している事もある、という事はにじませつつも、続く言葉はセレーナの興味を深く引いた。
唇が三日月を象って、聖職者だと告げる彼女の言葉にくすっと小さく笑いを溢せば、そっと顔を寄せる。
避けられなければそっと唇を重ねるだけのキスをしようとして。
「……だから、何?私は聖職者に興味があるのではないわ。
ベルナデッタという素敵な女性に興味があるの。
勿論、貴女の権利は尊重するわ。最初に言った通り、貴女がしたい事をすればいいの」
顔は至近のまま、誘うように口が言葉を紡いでいく。
その誘いに彼女が乗ってくれば、そのままベッドへと誘う事だろう。
■ベルナデッタ > 唇を尖らせる彼女に宥めるような笑みを返して、
ベルナデッタは内心、やはり一筋縄では害せぬ存在なのだろうと考えを確かにする。
「私は快楽に負けて死んだ女達を見てきた身なので…自分がああなりたいとは思わないですね。
その様が見たいのでしたら、私の務めの時にでもお誘いしますが」
吸血鬼と聖職者のタッグなど、その魔族にとっては悪夢でしかないだろうが。
そして、更に顔を寄せられても、言葉とは裏腹に避けることなくキスを受け入れた。
「まぁ、貴女が良いのであれば。
……ただ、私の好みを言えば、邪悪な女を討ち取る時が一番興奮します」
ベルナデッタの澄んだ瞳に、サディスティックな色が滲む。
セレーナの首に両腕を回しながら、口付けを返す。
「貴女のような素敵な女性と普通に身体を重ねるのも、好きですが」
ベッドに誘われれば、ベルナデッタは付いていくだろうか。
■セレーナ > 己の口づけに対して返ってきた口づけ。
それを受け入れれば口元の笑みが深まる。
ベッドへと誘い、ついてきたベルナデッタ。
ベッドの上にのぼる前に、私は自らの衣を脱ぎ捨てていく。
自らの身体を露にするも、ベルナデッタが服を脱ぐかどうかは任せるままに。
「もしかしたら、私も邪悪な女かもしれないわよ?
……ふふっ、ありがと。貴女のような女性に素敵と言われれば嬉しいわ。
出来れば私は激しいのが好みなの。きっと、貴女が邪悪を打ち取るのと同じくらいにね。
私も貴女を気持ちよくしたいけれど、貴女は私に手加減などせずに興奮するままにして頂戴?
大丈夫……私はそう簡単には死なないから」
そう言葉を紡げば、準備の出来たベルナデッタの身体を抱きしめて、己が下になるようにベッドへと引き倒していく。
■ベルナデッタ > 立ち上がり、ベッドへと向かえば、
服を脱ぐセレーナに合わせ、ベルナデッタも聖職者の服を脱いでいく。
露になる、磨き上げられた美しい肢体。
しかしよく見れば、その白い肌にキスの痕やひっかき傷など、
他の女の痕跡を見ることができるかもしれない。
この屋敷に来る前に彼女に討ち取られ、この世にはいない女淫魔の痕跡を。
そして、ベルナデッタ自身のそれに微かに混じる、彼女の淫臭を。
それはもしかしたら、快楽に飲まれた壮絶な最期の記憶を伴うかもしれない。
「ふふ、そう演じてもらっても構いませんよ。
正直、寝床で吸血鬼に勝てるほどの自信があるわけではないのですが…」
抱きしめられれば抱きしめ返し、己の唇をぺろりと舐めて舌で濡らす。
「では…覚悟してくださいね?セレーナ」
そして、ベッドに思い切り押し倒すと、その唇を貪る。
次いで、片手で彼女の豊満な乳房を激しく揉みしだく。
「んっ…ちゅ…んむ……」
舌が早速セレーナの口内に入り、暴れる蛇のように蹂躙する。
それと同時に流れ込んだ唾液を飲めば、早速ベルナデッタの力を感じるだろう。
まだ微かながら、魔力の消失を実感するはずだ。
■セレーナ > 「ふふっ……他の女の匂い、とでも言おうかと思ったけれど、貴女が倒してきた女の匂いね。
あぁ……死ぬ直前に絶頂したのかしら、うらやましい。その快感はいかほどだったのかしらね」
抱き合って、引き倒す勢いと押し倒す勢いが相まって、ベッドが大きくバウンドする。
けれど、極上のスプリングが効いたベッドはその衝撃すらをも受け止める。
そのまま貪れる唇。乳房を揉みしだく手の力も激しく強く、その力強さが心地いい。
「んちゅ……ん、はぁ……ちゅ……」
舌が絡まり蹂躙するように責め立ててくる。
その激しさに酔いしれるように、時折返る舌の動きはどこか媚びるよう。
それがベルナデッタが与えてくる快楽の強さを物語っているか。
その唾液を飲み込むことで、身体に感じる気怠い感覚。
身体が重く、鈍くなっていくその感覚はどこか心地よい。
「ふふ……うふふ……この感覚は初めて。
あぁ……力を奪われていくってこんな感覚なのね……ちゅっ…」
感覚として理解してなお、それをさらに求める用に唇を重ねていく。
何度も何度も深く口づけながら、己が指はベルナデッタの背中をフェザータッチで這いまわり、左手が下まで降りてゆけば、その尻肉を揉みしだく。
いつもと同じ強さで揉んでいるはずなのに、どこか甘えるような力になっているその感覚を楽しいと感じていた。
■ベルナデッタ > 「えぇ…最初は魔族らしく尊大でしたが、最期は許してと泣き叫びながら果てましたよ」
唇を微かに離し、そう囁いて。
相手が普通の淫魔であれば、これから貴女もそうなるのですと続けただろうか。
「れる…んむ……」
さらに求めるようなセレーナの舌の動きに、それをしゃぶり返して応えてやる。
的確に性感帯を舐る舌の動きは、女との性交経験が豊富なことを思わせる。
永劫の時を生きる吸血鬼にも、満足させるものであろう。
そして、唾液を流し込まれる毎に、セレーナの魔力はどんどん消え去っていく。
一方でベルナデッタの身体もセレーナに心地よい柔らかさを返し、
時折身体が震え、快感を感じていることが分かるだろう。
「唾液や汗もそうですが…もっと強力なのはここの液です」
そう言いながらベルナデッタは、既に濡れ始めた己の秘所に指を這わせる。
そして、愛液をその先に纏うと、セレーナの秘所にそれを塗り付けた。
その瞬間、唾液とは比べ物にならない浄化の力が、セレーナの身体を電流のように駆けるだろう。
「でも…貴女の場合、血が一番効くかもしれませんね?」
片手で秘所を撫で続けながら、もう片方の手は己の指先をセレーナの口内にふくませ、
吸血鬼特有の鋭い牙を撫でる。まるで、噛めと言わんばかりに。
■セレーナ > 「あら、許してだなんて、根性の脆い子ですこと」
囁く言葉に囁き返す言葉。
そして続く言葉に笑み深め、それは楽しみだわ、などと返しつつ
深く深く繰り返していた口づけ、どんどんと消えていく魔力。
けれど、それを厭うことなく貪り吸いたてて。
力が奪われていく感覚と同時に、血と同根のそれは甘美な甘露の味がする。
神聖なるものはめったに食せるものではない。
そして、強い力はそれだけ上質の味になるのだから。
ベルナデッタの柔らかな体は肌を重ねているだけで心地よく、快楽の中でその感触は心地よさを増幅してくれるだろう。
そして、セレーナの肌は上質なシルクを思わせるような肌触りも、同時にひんやりと冷たい温度を返す。
ベルナデッタの興奮の熱を冷ましつつ、冷めるが故にさらに燃え上がらせようとするかのような。
「そこの液?……ひぁぁっ!」
愛液をただ指で塗りつけられただけなのに、甘く高い声が吹き上がる。
少し目の前がちかちかするほどの快楽を感じつつ、強く減退する力。
「あ、はぁ……確かに、強烈……ふふっ。確かに。
一番効きそうなのは血液ね……じゃぁ、ベルナデッタも味わってちょうだい?
吸血鬼に血を吸われるという事の、意味を」
そう甘くささやけば、含まされる指先。
最も強い力を秘めているだろう彼女の血を吸えばどうなるのだろうか。
その期待を込めて、その指に牙を立てる。
口の中に感じる赤錆の味。同時に体を貫く聖なる力。
それが、己の力に干渉してくる。
秘所への快楽と、血液が与えてくる快楽にガクガクと身体を激しく震わせながらベルナデッタの血を堪能しつつ、
セレーナの食餌としての吸血が、ベルナデッタへも強烈な快楽として返していく。
吸血の快楽は催淫の快楽にあらず。己が生命の源を捧げると言う人間の根源に対する被虐の快楽。
それを返していったものの、お互いに強い快楽を浴びた後で、不意に途切れる。
「はぁ…はぁ…はぁ…すご…っ……ねぇ、ベル……ちゅーしてぇ……」
とろんと蕩けた瞳。人の血ならぬ、神の子の血ゆえにその快楽に酔った表情を浮かべながら、甘えるように口の中の指を舐めていた。
■ベルナデッタ > 「……っ!?!?」
牙を突き立てられ、血を吸われた瞬間、
ベルナデッタの身体にぞくぞくと暗い快楽が駆け巡る。
不意打ちのごときそれに、思わず彼女はセレーナと同じように身体を震わせてしまう。
「うっ、んっ!あっ!はっ…んんっ!!」
そして、耐えきれずにベルナデッタはセレーナの身体の上で絶頂した。
ぷしゃり、と愛液が彼女の身体に吹きかかる。
勿論それにも浄化の力が含まれており、彼女の秘所にかかろうものなら暴力的な浄化の快楽がセレーナを襲うだろう。
「はぁ…はぁ……ゆ、指にしておいてよかった…」
首筋や性感帯を吸われたら、意識を保てなかったかもしれない。
ベルナデッタは甘えるセレーナに答え、指を口から抜いて代わりに唇を触れさせる。
舌を入れれば、口内には微かに己の血の味がした。
「んっ…ちゅ…はぁ、えぇ、いっぱいしてあげますよ」
激しい口付けを続け、豊満な乳房同士を重ね合わせながら、
ベルナデッタは血の流れる指先を、セレーナの下半身に這わせる。
(こちらに挿入したら…どうなるのでしょう?)
浄化の力は、淫魔の場合は力の根源たる子宮に届けるのが一番効く。
では、吸血鬼は?ベルナデッタは己の血が流れる指先を、セレーナの膣内にそっと入れて。
そして、抜群のテクニックで、そこを掻き混ぜはじめた。
■セレーナ > 「ベルナデッタの血、凄い極上だったわ……吸っただけで、イっちゃいそうなくらい。
首から吸ったら、絶対に耐え切れなかった……」
血を吸いなれている方だったがために指では絶頂を迎えなかったものの、知ってか知らずかベルナデッタと同じ感想を口にした。
吸血でベルナデッタを絶頂させたのは吸血鬼としてのプライドを保ったかもしれないけれど、その強烈な快楽にどこか退行したような反応を見せていた。
今までの大人びた反応から、今の見た目通りの年齢程度の反応に。
そして、強請った通りに何度も口づけを繰り返していたが、ベルナデッタの好奇心を感知することなどできるはずもない。
そして、強烈な快楽を味わったが故に、止血をし忘れた指が秘所へと差し込まれる。
そこで違和感を感じる次の刹那、ベルナデッタの抜群のテクニックと合わせて襲い掛かってきた。
「へ?……あっ……ああああああああああっ!
なに、これぇ……こんな、こん…なぁぁぁぁぁっ!!!」
身体を激しく痙攣させながら上半身がのたうち回る。
血液のもたらす強烈な快楽と、ベルナデッタの抜群のテクニックが混ざり合うことで、今まで経験したことが無いほどの強烈な快楽が全身を襲ってきたのだ。
身体をのたうち回らせている中、ベルナデッタの身体の所々から感じる淫魔の香り。
この極上の快楽を与えてくれるベルナデッタの身体にまとわりつくその香りに、快楽に犯された意識は強い嫉妬を覚えた。
「あひあっ!…あぐっ…あちゅっ…あぅっ…ちゅぱ……」
途中からキスを離せば、淫魔の香りをぬぐい取ろうとするかのように、キスをして、舌を這わせ、己が唾液の香りで上書きしようと。
が、程なく腰が小刻みに震えて激しい絶頂への扉が見え隠れすれば
「ああああっ!もぅ、だめ、イくっ……イっちゃぁぁぁぁぁぁっ!!」
全身でベルナデッタの身体に縋りつき、がくがくと激しく体を痙攣させて、秘所から大量の潮を激しくまき散らせながらのはしたない絶頂姿を曝け出した。
もし、絶頂を確認してから指を抜いても、呆けた表情のまま、身体を暫しひくつかせながら無防備な姿をさらしたままだっただろう。
■ベルナデッタ > 「ふふ…いい、反応ですね…!セレーナ…!」
外見相応に退行し、暴れ乱れる高位吸血鬼の姿に、
ベルナデッタのサディスティックな部分が満足感を覚える。
そして、彼女が興奮を強め体温が上がると、
彼女の身体にこびりついていた淫魔の残滓もむわりと香り出す。
「んっ…はぁ、んんっ…!」
己の肌に残る赤い痕。そこを上書きするように執拗にセレーナに口付けされ、舌を這わされる。
淫魔の残滓を舐め取れば、吸血鬼たるセレーナの脳裏にはより強く、彼女の最期の記憶が巡ってくるだろう。
主教の司祭、ただの人間に対する慢心と侮蔑から始まり、次第に油断は焦りとなり、焦りは恐怖となり…。
激烈な快楽に晒され、絶望、後悔、諦観の感情に染まりながら、
最期は貝合わせで浄化の愛液を子宮に注ぎ込まれ、魂を激烈な快楽に焼き切られる…。
「さぁ、イき果てなさい!セレーナ!!」
トドメと言わんばかりに、ベルナデッタの指が激しく膣内を掻き混ぜる時、
浄化の力が駆け巡り、セレーナに淫魔の最期を追体験させるだろう。
そして、盛大に潮を吹いたセレーナの姿を恍惚とした表情で眺めていたベルナデッタは…ふと我に返った。
「その…大丈夫ですか?」
がくがくと痙攣するセレーナの身体に寄り添い、頭を撫でながら、心配そうな瞳を向ける。
■セレーナ > 激しい絶頂の中、荒い吐息をつきながら無防備な姿をさらしたままで、
セレーナは絶頂へと至るまでの間に舐めとった淫魔の残滓の最後の記憶を反芻していた。
結局は、目の前の異端審問官である彼女と向き合わず、己の力を過信し、振り回され、結果滅した愚か者の記憶。
それを全て舐めとって、己の中で消化したことに満足感を覚える。
「……ベルナデッタにまとわりつく資格すら、ないのよ……」
ぼんやりした表情でそんな言葉をつぶやいていたが、寄り添われ、頭を撫でられれば、
とろり蕩けた瞳でベルナデッタを見やり、両手を回して抱きついて、その胸に顔を押し付け甘えるような仕草。
暫しその体勢のままで、だんだんと落ち着いてくれば
「だいじょうぶぅ……凄い、素敵だった……死ぬかもしれない快楽って……素敵ぃ……」
我に返ってみてみれば、入室した時と比べてセレーナの身体から発する圧迫感が薄れている事に気づくだろう。
しかし、手加減があったにせよ、滅されることは無くこの世界にその姿のまま存在しており、
死ぬかもしれなかった快楽の波を、寧ろ満足げに賛美すらしていた。
■ベルナデッタ > 「……?」
セレーナの呟きが耳に入り、頭に疑問符を浮かべるベルナデッタ。
彼女にとっては、今日滅ぼした淫魔も今まで相手にした数々の淫魔の一人でしかない。
しかし、甘えるような仕草をセレーネが見せれば、聖職者らしい慈愛に満ちた撫で方でそれに応えるだろう。
「死ぬかもしれないというか…普通は死んでしまうのですが…。
まぁ、吸血鬼ですからね、貴女は…」
吸血鬼、伝説の不死身の化け物。神の加護の力でも、簡単には滅ぼせないようだ。
ベルナデッタは苦笑すると、少し伸びをして、身体をほぐした。
「ふぅ…さて、私もそろそろ帰宅せねばならないのですが、
出来れば帰る前にお風呂だけ借りたいのです。よろしいでしょうか?」
身体中、セレーナの唾液やら汗やら愛液やらでどろどろだ。
このまま帰るわけにもいかないだろう。
淫魔を屠った時には身体を洗えず、拭くだけで済ませてしまっていたのだ。
ここで全て、綺麗に流してしまいたい。
「それと……貴女との連絡手段を、出来れば教えてください。
私達、良い友達になれそうですので…」
仕事の上でも、私生活でも。
もし望めば、淫魔狩りにつれていくこともあるだろう。
■セレーナ > そのまま暫く休んでいれば、緩慢に体を起こしていく。
セレーナも同じように体を解せば、
「多分、貴女の力と私の力は干渉できるけれど、貴女の力は、私の存在へは干渉できないみたい。……まぁ、元をたどれば私も人間だったことはあるのだから、当然なのかもしれないけれど。
……つまりは、あの最後、ぐったりしている時に物理的に滅せば死ぬわよ?多分。ただ……」
そこまで言葉にしてから、ベッドの傍の呼び鈴を2回2回1回の順で慣らしてから
「……吸血鬼は、復活するための場所をいくつも隠し持っているの。
だから、殺してもまた復活する。それが、吸血鬼の不死性の秘密よ。
もし、貴女が私を滅することがあれば覚えておきなさい。
『穢れた土』すべて見つけて浄化しなければ、私を滅することはできない。
……まぁ、貴女のお仲間の吸血鬼ハンターたちに聞いても分かる事だけどね」
行為前までは隠していた不死性の秘密を自ら口にするそれは、余程の信頼の証ともいえるのかもしれない。
その後で、風呂を借りたいと告げるベルナデッタに、右奥の扉を指さして
「そこがバスルームよ。もう5分お待ちなさい。今準備させているから」
先程のベルで風呂の準備をさせているのだと付け加えるか。
続く言葉を耳にすれば、口元に穏やかな笑みを浮かべつつ、右手をベルナデッタの目の前、真横に一本線を描くように動かす。
それから、先程血を吸った指を取り、1舐めして血を止めてから、その指先を右手で握って小さく何かをつぶやいた。
すると、その指先には小さなコウモリの形をした痣になる。
「貴女の目は、私の迷いの森を見通すことができるわ。
だから、帰り道は迷わないし、また来るときはこの屋敷を認識できる。
そして、貴女の指先と私の間に繋がりを紡いだわ。
私に会いたくなったら、心からそう念じなさい。
それだけで、私と交信できるから」
やってみる?とにこやかな笑みで問い加えて。
■ベルナデッタ > 「成程…そういうからくりがあるのですね。
覚えておきますが、そういう事態には専門家が動くと思うので、
私がこの知識を使うことは無さそうですね…」
ベルナデッタとて基礎的な教育はされているし、
下級の吸血鬼ぐらいまでなら滅せる銀の弾丸も常時携帯している。
それでも、ベルナデッタの専門は淫魔であり、吸血鬼ではない。
「わざわざすみません…。
神々もきっと見ておられることでしょう、
と言いたいですが…見られても困りますよね」
主教信者の吸血鬼なんて聞いたこともない。
ノーシス主教は多神教故にかつては吸血鬼の信仰も教義に取り入れようとしたこともあるらしいが、
それが上手くいかなかったということは、それだけ異質なのだろう。
そして、彼女が自身の目と指に何か呪文をかけるのを、驚きつつも素直に受け止めて。
「わ…ありがとうございます。
成程、これなら次に訊ねる時も困りませんね。
では、一回試しましょうか」
風呂に入る前に、ベルナデッタは指先を握りしめ、
心の中で、セレーナの事を思い浮かべる。
■セレーナ > 「覚えておいて損はないわよ。淫魔だって、血の接吻を行えば吸血鬼になるのだから。
吸血鬼と淫魔のハイブリッドなんかに出会った時に役に立つわ」
滅多なことでは出会うはずのないものだが、それでも可能性は捨てない事が大事だと説く。
「そうでもないわよ?……見られていても、何もお返ししないけどね」
信者でなくとも神は見ている。そう説く聖職者も存在する。
そして、望んで今の姿となったのだから、見られていても恥じるつもりもない。
だからこそ、セレーナの氏族はある程度は人間と共存できているのかもしれない。
そして、試してみると告げるベルナデッタ。
実際に試してみると、目の前で口も開いていないセレーナから、『伝わったわよ?』とメッセージが届く。
直接ベルナデッタの意識に話しかけているようだった。
「こんな感じ。さて、そろそろ準備もできただろうし、お風呂に行く?……せっかくだから一緒に入りましょう」
そんなことを言いつつ立ち上がって連れ立って風呂を使うだろう。
その後、風呂を終え、身支度を整え終わった後、これだけ面倒くさがりな女吸血鬼が玄関のドアまで見送って、
『たまに遊びにいらっしゃい』と告げて、別離のキスも当然のごとくして見送った、と言う話はしばらく眷属たちの間で語り草になったとか。
ご案内:「古びた洋館」からセレーナさんが去りました。
ご案内:「古びた洋館」からベルナデッタさんが去りました。