2022/07/25 のログ
ご案内:「場末の酒場」にシーリーンさんが現れました。
シーリーン > 場末の酒場の中、カウンターの一番奥に腰かけている女。
この場所なら店内を見渡すことができるのでとても便利なのだ。

店内にいる客を見やり、視線が合えば時折手を振ってみたりするのだけれど、
今日はそこまで当たりを引かない。

だが、そういうことも良くある話だ。
酒精の弱い果実酒と、乳酪に果物で時間を使っているのは仕事になったときに匂いの強いものを食べていてはお客様の迷惑になるから。

今日の仕事を諦めたならもう少ししっかりしたものを食べるけれど、そこはそれ。こちらもプロである。
なので、今は遊んでいるように見えても仕事中。ゆったりした雰囲気で張るのだけれど。

ご案内:「場末の酒場」にクレイさんが現れました。
クレイ >  
 そんな一画で酒をグイグイと呷る1人の男。席の脇には剣を2本立てかけている。肴も質素な物しかなくいつもの様な肉等ではない。
 一応まだ懐に余裕はあるが、いつものようにというわけにはいかず。少し控え目に飲んでいた。のだが。

「……ふーん」

 ふと目線が行ったのは1人の女。ただ飲んでいるように見えたが、随分と回りを見ている。
 デレデレと見ていた周りの男も男だが、しっかりとそれらの視線に気が付いて手を振り返していた。その様子を見てなんとなく興味をひかれたのだ。
 どうせ1人だ。席を立つ。剣を腰に戻し、酒を掴む。そしてそっちの席へ歩いて行って。

「よう、あんたも1人ならどうよご一緒に。明日には出発でな。1人酒ってのも悲しい所だったんだよ」

 と瓶を軽く見せる。

シーリーン > 色んな相手に粉をかけていたものの、釣れるわけではない。
そんな状況でいれば、近づいてくる男が一人。

そして声をかけてきた。
口元が弧月を象って

「ええ、別に構わないわよ」

そう告げてから、男が立った席を見やる。
そこにいくつかの荷物があることを確認すれば、自分はグラスだけを手に立ち上がる。
店主に自分のつまみを移動してもらえるようにお願いしてから、連れ立って男の席へと移動しようか。

「今日はそこまで景気がいい感じではないのかしら?……それとも、買ってもらえるか期待をしても?」

どちらでも良い、という雰囲気のままで向けた問い。
その問いで女が娼婦である事は知れるだろう。

この地方ではあまり見ない服装に肌の色。
それだけで目を引いていた女が移動することで、見ていた男たちからは嘆息が漏れるかもしれない。

クレイ >  
「ん、あー……なるほど」

 妙に目が広いと思った。なるほどそういう事か。彼女の職業がわかった。とはいえ、おそらく普通の娼婦ではない。妙に気品があるというか手慣れている雰囲気を感じ取った。仮に普通の娼婦ならばあの場で移動もせずにこちらに吹っ掛けてくるはずだから。
 彼女が移動すれば自分も元の席に戻って。席に座る。

「そうだなぁ、別に景気よくする必要がねぇから景気よくしてなかっただけで。まだまだ懐に余裕はあるぜ。それにさっき言ったろ。明日には出発だって言い換えれば」

 と懐から袋を取り出す。
 それはゴルドの入った袋。袋一杯、とはいかないがそれでもまだまだ何万かは持っているといった様子だった。
 その時点で溜息や軽い怒りのような目線を向けていた相手の大半は黙る。金があるというのはこの場ではそういう意味があった。
 そしてニッと笑う。

「今日の時点でスッカラカンになったところで街に帰ってきた時にはまた数万ゴルド持ちよ。もっとも、お前さんが安い娼婦ってイメージはねぇから、持ち金全部出しても買えるかどうかって所ではあるが」

 なんて言いながらカラッと笑う。
 仮に高級娼婦だった場合、それこそ貴族や王族クラスの相手をするケースもある相手。それこそ数万近くかかる場合もあるわけで。

シーリーン > 程なくして自分の席にあったつまみがテーブルへと運ばれてくる。
それを自分の前ではなく二人の間に移動させて、良ければどうぞ、と促しつつ、
男の手から酒瓶を受け取って、グラスに注げば懐から取り出した薄絹のハンカチで男のグラスと酒瓶の水滴をぬぐう。

「なるほど、そういう選択も個人の好き好きよね。……そういう事情なら、その有り金全部で喜んで売るわよ?
景気づけになるんなら、ね」

自分が安くはないと見切る相手に返す言葉はそんなこと。
そして、続く言葉を耳にすればくすっと笑いをこぼしてみせて

「なかなか景気の良い仕事をしてるのね。冒険者?」

そのまま会話を続けていく。
そこらの娼婦なら売れると思ったらすぐにでも席を立ちたがるだろうが、
少なくとも、そんな安い仕事はするつもりはないらしい。

クレイ > 「アッハハ! おもしれぇ。じゃあそれで買った」

 とそのまま袋ごとゴルドをズイッとそちらへ。普通いくら金持ちと言えどこの量ならば躊躇いがありそうなものだが、一切躊躇いも無かった。
 そして注いでもらえればありがとさんと。肴に関してはまだ自分の物も残っていた居たので勧められてもすぐに手は付けず。
 職業を聞かれれば少し笑う。

「少し外れ。物騒版冒険者の傭兵だよ。明日には最前線ってな」

 物騒版冒険者という独特の言い回しだが、当たらずも遠からず。自分の場合金を積まれればある程度の事はやる。
 まぁ気に入らないのやあんまりにもクズな仕事は断ったりするが。

「だから丁度いい使い道だったぜ。宵越しの金なんて持った所で良い事なんてひとつもねぇし。お前さんはこんな場所で客探しか? お前くらいならもっといい場所というかパトロンとかいそうなもんなのに」

 意外なもんだぜと酒に口を付ける。
 こちらも別に急ぐわけでもないので彼女のノリ。つまりはすぐに席に立って急ぐような事はしない。

シーリーン > 「あら、毎度どうも。もし急ぎがあるならいつでも言ってね?」

袋ごとのゴルドが寄せられれば、それを手元まで引いてくる。
酌を含めての売値なので、会話を続けているが、早くしたい時には伝えてくれと付け足して。
そして職業の返事を聞けば、なるほど、と頷いて。

「それはそういう生き方にもなるわね。あの世まではお金は持っていけないもの。
ええ、いい買い物をしたと思うわよ?
ここの所はサービス期間中だから。
……ええ、お客様探し。今は娼婦兼旅人でね。
特にどこにも入ってないし、個人に買われ続けるのはちょっと趣味じゃないのよね」

娼館ならいいが、パトロンはいらないと言ってのけつつこちらもちょっとグラスに口を付け、自分の目の前の果物を1つ、口に入れた。

クレイ > 「明日の朝に起きられれば問題ねぇよ。なんなら目覚まし代も含めてくれるなら大助かりなんだがな」

 なんて冗談半分で笑う。実際そこまでを求めるのは色々と場違いだし、何より出発時間を含め軍事機密だ。何時に起こせなんて言えるわけがないわけで。
 彼女の仕事のスタイル。それをしっかりと聞いていた。そしてうなずいて。

「その気持ちは少しわかるわ。俺もそういう……なんだ、専属? みたいなしがらみが嫌いでフリーの傭兵やってるし。パトロンとか専属とかやると色々と縛られるんだよな」

 娼婦の場合も傭兵の場合もそれは同じなのだろう。
 フリーである限り気に入らなければ断ればいい。その責任を負う覚悟があるのなら。
 気に入ればどんな安値でやってもいい。その負債を背負えるのなら。
 だが専属ではそうはいかない。一定のルールを定められてしまう。
 自分の酒の肴。スナックをひとつ口に入れ、酒で流す。

「だけど、それって危険な時とかねぇの? 俺はまぁ仕事柄あれだが。それでもあるし……あんたみたいなタイプは猶更じゃねぇか?」

シーリーン > 「じゃぁ、夜はまだまだ長いし、お酒含めて楽しみましょう。
日の出と同時にでいいなら全然起こすけど?」

ペースの合う客と認識すれば、このまま飲んで、楽しんで、寝る。
目覚ましの下りは冗談半分を認識したのでこちらも冗談加えて切り返す。

「専属にもメリットはあるのよ?
不特定多数を相手にしないから病気にならないとか、
収入が安定するとか、いざうまくすれば玉の輿に乗るとか。
でも、趣味に合わないものは仕方ないわよねぇ」

あっけらかんと言ってのけ、傭兵でも似たようなものがあるらしい、と認識しつつ。

「そりゃあるわよ。娼館に入ってたってダメな客なんて結構いるし。
だから、何かしらの対策はしているわ。
例えば地回りには挨拶していざという時助けてもらうとか、
ちょっとした相手だったら立ち回れる程度の腕を持つとか。
本職さんは相手にできないから逃げるけどね。私なら」

逃げるか立ち回る。確かにどちらかしかないだろう。
そして、ちら、と見せるのは細身のシミター。
左右の腰にふた振り刷いて。
ぱっと見は、剣舞用の偽剣にも見えるが、どうやら本身であるらしい。

クレイ > 「遠慮しとく、もう少しは寝てられるしな。だからまぁもう少ししたらって感じか?」

 冗談に冗談で返されればそう返した。終わった後に自分の宿に戻る程度の時間は欲しいのでもう少ししたら酒は終わりかもしれないななんて。
 専属のメリットに関してはわかると同意を返した。

「そうなんだよ、専属というか固定であるとそういうのはホントにあるよな。特に安定ってのはホントにデカい。俺も最近理解した」

 最初は面倒だと思っていた先生業。だが今考えるとあれのお陰で少なくともくいっぱぐれないのは心強い。
 今すっからかんだろうって? その通りだ。
 剣を見れば目を細めて。

「なるほどな、逃げるのは良い選択だな……にしてもシミターの二刀流か。同じ二刀流でも全然違うスタイルだな。シミターって事は打ち合いなんて出来ねぇだろうし」

 自分のスタイルは技術は勿論だがそれに加えて力で押し切るタイプ。だが彼女の場合はそういうスタイルではないのだろう。
 と、そこまで話してからトントンと自分の額を軽く指の関節で叩く。

「っと、悪い。剣士としてつい出ちまった。本業じゃねぇのに振られても困るわな」

シーリーン > 「あら、私の買値は日の出までの時間を買う価格なの。
だから、だいたいはお住まいか、今日のお宿まで押しかけてくわ。
そして、日の出とともに消えていなくなる。起こさないようそっと、ね。
目が覚めた時には昨夜の出来事は夢かもしれない、なんてね」

最後のあたり、少し芝居がかった言葉で紡ぐこと。
専属についてはいい点も悪い点もお互いよく似たものらしい。

「ええ、逃げるわ。そして、逃げるとなると避ける、交わす、
受け流すのはできなきゃ捕まることだってある。
私のは、元は剣舞よ。だから、徹底して打ち合わない。
こちらから意図して手傷は負わせない。
相手の刃が私に届かなければ、それでいいの。
だから、舞うように、逃げる」

やや概念的な言葉だが、本職の男なら言いたい事は伝わるかもしれない。

クレイ > 「娼婦ってよりも妖精とか精霊とかそっちの類だなそりゃ。そういうのなんかいた記憶あるぞ」

 実際は淫魔とかそっち系統なのかもしれないが、それをここでぶっちゃけるような無粋な真似はしない。淫魔扱いされて喜ぶ人なんて多くはいないだろうと。
 彼女の芝居がかった言い回しには少しだけ笑みを浮かべていた。
 その後の剣の話になればあぁと頷いて。

「剣舞が元ってことは……まぁたしかにそんな動きになるな。無理して反撃せずに、最低限にして逃げるタイミングで逃げる。商売人なんだしそれが1番だと思うぜ」

 自分みたいな剣士がそれじゃダメなんだろうが、彼女の場合はそれで良いのだろう。
 そして少しだけ笑って。

「てか、それなら今度機会がありゃ剣舞も見てみたいもんだ。流石に相手は務まらねぇけどさ。俺の剣じゃ無骨すぎるし」

 彼女の姿を見る。それはそれでとても映えるのだろう。
 というより、言われなければそっちが本職だとすら思ってしまいそうだ。

シーリーン > 「ふふっ、そういうミステリアスなのも面白いでしょ?……職業柄、別のものに思われることも多いけど」

なんとなく、共感があったのかもしれない。
『とあるもの』を思い浮かべるという一点において。

そして剣舞の話から、返ってきた返事に頷いて。

「でしょ?……元々戦う方は不勉強だもの。
それに、相手を傷つけるのはあまり好きじゃないし。
剣舞なら、いつでも披露するわよ?
私が売るのは時間だから、私ができる事ならなんでも、ね。
シェンヤン仕込みだから、見るだけでも結構楽しめると思うわ」

シェンヤンの剣舞は流麗にして繊細。
確かに見ているだけでも目に楽しいだろう。
ただ、目の前の女とシェンヤンがあまりつながらない所もあるかもしれない。