2020/10/14 のログ
ご案内:「輝く白狼亭」にシンディ・オーネさんが現れました。
■シンディ・オーネ > 「――はー――…」
冒険者ギルド提携酒場から人が引く時間帯。
まだお客さんもあるかもしれないが一段落感に思わず気が緩んで、
カウンターの中で椅子にどっかり腰を下ろしたお仕着せのバイトウェイトレスは深くて長いため息をついた。
だらんと両腕を垂らして脚を投げ出して、頭が背もたれに引っ掛かるまでズルズルと姿勢を崩し、
「…んっ!」
えらいことになるマイクロミニのスカートを慌てて直す。
カウンター内であればセーフだろう。
「――はぁ…」
眉根を寄せた浮かない顔で目を閉じまたため息。
もうとことんお疲れの様子だけれどウェイトレス業務がそんなにキツイという事はなく、
プライベートというか本業というかで色々と重なってしまった諸々が原因である。
ご案内:「輝く白狼亭」にロブームさんが現れました。
■シンディ・オーネ > せっかくある程度信頼のおける冒険者仲間ができたというのにトラップやら何やらで男女の仲になってしまい、
もちろんその時だけの事故で済ませられる話ではあるのだけど、どういうわけか素面で本気っぽい言葉が出て来たり。
うっかり貴族の私有地を侵してしまったらその貴族に断れない感じで召し抱えられる事になり(?)、
見ようによっては望外の出世チャンスかもしれないが、
少女の域を出ない少女主人からはなぜか従者を使ったセクハラを受けている。
おまけに召し抱えられた事を冒険者ギルドで喧伝され、周囲の冒険者とは少し気まずくなってしまった。
息抜き気分でやんごとなき貴族様の領地巡察に護衛として雇われてみたら、
一服盛られて日程の半分をお尻で抱かれながら過ごす事になり、
個人の特定には至らないと思いたいが、馬車から宿までの移動などで晒し者にされた事が噂になっているとかいないとか。
――別々に冒険者をしながら宿で同居の恋人にはなんだか合わせる顔がなく、
ここで思い切り甘えられるような人格ならまだ良かったのかもしれないが、
一緒に居てぎこちなさを感じる事が増えてしまっている。
これが自意識過剰で、アーネストにはそんな風に感じさせていないと良いのだけれど、
察しの悪いところがあっても、彼は私に思いやりや気遣いをもってくれるから――
■ロブーム > 時間外れの酒場に、一人、男がやってくる。
黒いローブを着た、明らかに太った男だ。
男は、辺りを見渡すと、少女の姿を認め、
「――ふむ。どうやら、此処で良かった様だ」
と、独りごち、椅子に座る彼女の前に。
ローブから覗く顔は、醜悪という一語に尽きる――肥えた頬、べろりと唇を舐める太い舌、そして何より不躾に胸や太腿を見やる視線。
「シンディ・オーネ嬢と見受けるが、如何かね?」
と声を掛けてくる。
体格に見合った野太い割に、何処か甘ったるさのある声である――強いて言うなら、猫撫で声の様な。
ともあれ、男はそのまま、当然のようにこう言うのだった。
「我が名はロブーム。悪魔にして魔王。君を堕落させに参った」
そう言って、魔力を開放する。
魔力を視力で感じられるなら、黒いモヤの様な魔力が周囲に漂うのが解るだろう。
感じられずとも、何処か生暖かい何かに包まれている気が何とかなくするハズで。
そして、それがとても邪悪な何かであることも、直観するだろうか。
■シンディ・オーネ > 「――ああっと。」
椅子に崩れたカウンターの中で来客のあったらしい音を聞き、仕事しろと呻いて、身を起こす。
サボりと見咎められはしなかったか、いささか気まずい思いで露出過多な気がする制服を直した。
「いらっしゃいませ。」
冒険者ギルド提携酒場での仕事は、内部事情を知るのに実際ためになっている。
依頼の持ち込みかなと相手の風貌からそんな色眼鏡をかけて、
好色な視線には鈍感だが、その雰囲気には不安感を覚えて多少緊張した。
「――? え、はい?」
粗相の無いように、難癖つけられて面倒を増やさないようにと気合を入れたが、そこで問われる自分の名に困惑する。
同意というより何故それを問うのかという返事になったが、こちらに構わない様子で言葉は続き、
――何かの冗談だろうかと思っていられるのは、相手が魔力を展開するまでだ。
「――っ!」
椅子を蹴って立ち次の瞬間にはカウンターに飛び上がる。
男が立つのは自分の目の前、何をするつもりか知らないが魔術の完成前に昏倒させてやろうと――
魔術で応戦するよりその方が早いのだ。
男の頭部を目掛け振り上げた拳をそのまま叩きつけるハンマーパンチを見舞おうと!
■ロブーム > 殴りつけたその拳は、たしかに男の頭部を捉えた――はずだった。
だが、少女がその手応えを感じるより前に、少女の背後に男は立っていた。
空間を渡る魔術――人間ならば詠唱や儀式が必要な魔術を、男はまるで、手足を動かすように使ってみせた。
「ふむ。報告通りの娘だな」
と、男は言う。
嘲る様ではなく、むしろ感心している様に。
「シンディ・オーネ。交際中の男が一人。
直情型で、やや理想家の傾向あり――」
反撃しても、何をしても、すぐさま瞬間移動し、その攻撃範囲から外れてしまう。
まるで、霞の様だが、しかし当然、男は実在している。
存在を否定しても、否定しきれない悪魔のように。
「さて、そろそろ終わらせるとするかな――ほれ」
そう言うと、男が掲げた掌から、蔦の様な物が大量に生え、彼女を捉えようとする。
捉えたならば、少女を捉えた蔦から、百合の様な花が咲き乱れ、蜜のような甘い香りを放つだろう――睡眠効果のある、甘い香りを。