2019/12/07 のログ
ご案内:「霧の森の狩猟小屋」にルドミラさんが現れました。
ルドミラ > 森の緑と枯れ草のにおいが、霧に巻き上げられていっそう濃くなったようだ。

例年、初冬の頃に某公爵主催の鹿狩りが行われる森はいま、濃霧の中に沈んでいた。
朝から薄曇りの天気ではあったが、にわかに霧が寄せてきたのは数時間前のこと。
あっという間に視界が利かなくなり、立ち往生する遠くの人馬の姿も朧げにしか見えなくなった。
来賓のひとりである女男爵は、不用意に動いて怪我をするよりはと、
近くに建っていた狩猟小屋へ逃げ込むことにした──その時、ともに居た相手と。

「……まあ、見て。外がまだ真っ白──もう何時なのかも、わからなくなってしまったわ……」

簡易寝台の上でうつぶせに。頸だけを窓の方へ向けた女は、甘だるくそう呟いた。
裸の背中から腰へかけて、毛布がわりに黒貂のロングコートが被さっている。
あたりが薄明るいのでまだ陽があるのは察しがつくが、暇つぶしのお遊びと洒落込んだ相手と絡み合っているうちに、
時間感覚が失われてしまったようだ。うっすら汗ばんだ上体を起こすと、
背筋づたいに毛皮が腰まで滑り落ちるのも構わず、窓枠にもたれた。
襟足の後れ毛を撫でつけながら耳をすませば、屋外に繋いだ馬が、ぶるる、と鼻を鳴らす音が聞こえてくる。
猟犬の吠え声はいつの間にか、遠くなっていた。

「ねえ。あたくしたち、やはり遭難しているのではなくて……?」

振り向かず背後の相手へ問いかける声は、どこか面白がるような響きで語尾に笑いを含んでいた。
小屋へ足を踏み入れて早々、同行者が暖炉に火を熾してくれたおかげで、室内はほんのりと暖かい。
寝台の下にはふたり分の衣服が脱ぎ散らかされており、テーブル上に放置されたブリキのマグの中身──皮の水筒の水に松葉を入れ温めただけの代物だが──は、とっくに冷め切っていた。

ご案内:「霧の森の狩猟小屋」にエズラさんが現れました。
エズラ > 「ははぁ、どうやらそのようですご主人様――」

問われた相手が主と同じように外の様子を窺いながら応えた。
屈強な肉体を晒した男である。
その首元には、血の色をした宝石をあしらったペンダントが光っている――己が彼女の所有物であるという証。
そしてまた、「人」の傍で彼女に付き従うときに身に付けねばならぬ必須アイテムでもあった。

「しかしまぁ、今のところ困ったことも特にないわけでして――ついては」

彼女の背から外套を完全に払い落としてしまうと――その代わりにと、己が肉体を覆い被せていくのである――

ご案内:「霧の森の狩猟小屋」からエズラさんが去りました。
ご案内:「霧の森の狩猟小屋」からルドミラさんが去りました。