2019/11/18 のログ
ご案内:「自然地帯/巨鳥の巣」にスミさんが現れました。
スミ > 自然地帯の奥深く。
昼尚暗い森の夜。
昼間見れば緑滴る光景が広がるそこは、届く月光も木々の輪郭を現すのがやっと。くろぐろと立ち並ぶ木立は、無言のまま動かない巨人のよう。
時折聞こえるのは夜行性動物のものか、茂みを揺らす音に、梟や野鳩の泣き交わす声。
空気はまだ昼間の温もりを残して、ゆるりと吹く風は葉を揺らすこともできないでいる。

そんな静けさが満ちた森に、威風堂々と立つ巨木がひとつ。
小枝さえ見上げるほどの高みにある幹の、頂の方にぽっかりと洞が空いている。
覗き込めばふかふかとした枯草と僅かに散った羽毛が見えて、鳥の巣であることが解るだろう。
しかし今はそこに、ちんまりと鎮座しているのは一人のヒトの女だった。

「うむ…参ったね…」

顔の半分はあろうかと言う大きな眼鏡を額の上にあげて、洞から外の闇とにらめっこしたまま腕組みをする。
調査のために巨鳥自らに浚われるよう画策して、首尾よく巣に潜り込んだのまでは良かった。
匂いで誤魔化された親鳥には可愛がってもらったし、日が経つにつれ、雛たちとも本当の兄弟のような気がしてしまったほどだ。
しかし

「こんなに早く、行ってしまうとはなあ…」

昼に雛たちの羽毛に塗れて寝こけて、目を覚ましたらすっからかんだ。どうやら、女が寝ている間に皆巣立ってしまったらしい。
親鳥も、戻ってくる気配がない。
夜が深くなるにつれ、洞へと流れ込んでくる空気も冷えてきている…
女は腕組みをした肩をぶるっと震わせ、ううん、とまた唸って首を傾げた。

「しまったな、防寒は想定外だ…」

どうにかして、この夜を乗り切らなくては…