2019/09/15 のログ
ご案内:「奴隷市場 表通り」にアグネーゼさんが現れました。
アグネーゼ > 「此処が…奴隷市場―――」

夜の時間に一際賑わう歓楽街。
その表通りに、修道服姿の少女が物珍しそうな目をあちこちに向けて、当て所なく歩いていた。
人魚としての生活を棄てて地上に出て、人間の真似事をするようになって。
少しずつ地上での生活を憶えていく上で、少女が非常に興味をもったのは、男と女の営みだった。

子を残すための性交とは違う、嗜好と呼ぶモノ。
まだまだ知識としても勉強不足。手っ取り早く学ぶには、こういった場所に赴くのが良いと―――
さて、誰から教わったのやら。

「………気のせいかしら?なんだか、道往く人が私を見ているような気がする…」

彼らの反応は様々だ。ある女はぎょっとし、ある男は好奇の目を向けてくる。
それが、仮にも聖職者の証たる修道服を着ているからだと、少女は知る由もない。
女である己が赴くのは場違いだっただろうか。
最初はそんな風に人の目を気にしていたけれど、慣れと言うものは恐ろしく、段々と気にならなくなってきた。

「……んん。市場と言うだけあって、たくさんあるのね。
 奴隷、と…性奴隷?娼婦…男娼……見世物小屋……。
 人間は同胞を売るのね。どうしてかしら?性を売り物にするって、よく分からない…」

ご案内:「奴隷市場 表通り」にギュンター・ホーレルヴァッハさんが現れました。
ギュンター・ホーレルヴァッハ > 奴隷市場を利用する事は多々あっても、大体は付き合いである事が多い。購入するにしても、基本的には他の王族や貴族への付け届け目的が殆ど。
今宵も、馴染みの貴族への"土産"を購入した後、散歩と視察も兼ねて大通りを闊歩していた。あからさまに上流階級である事を示唆する服装の為か、護衛も無く一人ぶらついていても手だしする阿呆はいない様だ。奇異の目を向けられる事はあるが。

そんな散歩の最中。己以外にも衆人の視線を集める存在に気付く。その理由も一目瞭然。此の場所で見掛けるには先ず不似合いな修道服を纏った少女が、一人で彷徨う様に歩いているのだから。

「……失礼だが、まさか迷子の類ではあるまいな?それとも、修道女殿も奴隷を買う程、神聖都市は羽振りが良くなったのか?」

放っておいても良かったのだが、ヤルダバオートは今や重要な顧客である。本当に迷子なら恩を売っておくかと、少女に歩み寄って声を掛けた。

アグネーゼ > とりあえず、一度来てみたかったから来てみた、なんて幼稚な理由で、
当て所なく市場をうろちょろとしている修道女。
そんな少女の姿は、さぞや道往く人々の目に止まりやすいのだろう。
遠巻きに見ているだけだった彼らの中で、身なりの良い中性的な顔立ちをした少年に、
声を掛けられた少女はその歩みを一度止めたのだった。

「……はい?いえ、迷子ではありません。その…ちょっと、気になったものでして。
 ただの知的好奇心で、辺りをうろついているだけなのです」

なので奴隷を買う予定も予算もないです、と少女は微笑む。
そして改めて少年を見る。己と然程背の変わらない―――少年?少女?
色んな種族が蔓延る街だ、もしかしたら無性と言う可能性もある。
不思議な子だわ、なんて、思わずまじまじと興味深そうに彼を見つめてしまい。

ギュンター・ホーレルヴァッハ > 知的好奇心、と告げた少女に怪訝そうに首を傾げる。
昨今の修道女というのはそこまで世俗に疎いものなのだろうかと思考を走らせかけて――よくよく考えればそれも当然かと思い直す。自分が接している神聖都市の大司教なり高位の司祭達が世俗に塗れているだけなのだと。

「…それはまた、些か危険な行為だな。好奇心は猫をも殺すというが、此の街で貴様の様な少女が一人で出歩く等、飢えた狼の群れにディナーを放り投げた様なものだ」

些か呆れた様な溜息を吐き出しつつ、微笑む少女を眺める。
幼く見える顔立ち。薄汚れた街に相応しくない黄金色の髪。穢れを知らぬ様な白い肌。
良くもまあ今迄無事にいられたものだと、最早感心するばかり。

――等と思って居れば、此方を見つめる少女の視線に気付く。好奇心と興味が入り混じった――と言うよりも、足しっぱなしにした様な視線を受ければ、流石に無関心でいる訳にもいかない。

「…私の顔に何かついているか?それとも、その知的好奇心とやらが此の街の淫蕩な空気に染まってしまったか?」

僅かな苦笑いを零した後、緩く瞳を細めて彼女を見つめ、揶揄う様な口調で言葉を紡ぐ。
そして、雑踏から彼女の身を隠す様に。或いは、彼女を逃がさぬ様に。ゆっくりと歩みを進めて、彼女を路地裏迄追い込もうとするだろう。
折角珍しいモノを見つけたのだ。何をするにも、低俗な輩に見せつける事もあるまい、と。

アグネーゼ > 「危険…ですか?嗚呼、その警告は……私、最近別の人に言われたばかりです」

女が一人で、外を出歩く事はいけないことだと。
こんなに人が多いのだから、危険なことなどないだろうと思っていた少女。
どうやらまたやってしまったようだ、と一人でしゅんと反省しつつ。
それでも生まれ持った好奇心は止められない―――そんな少女の視線に気付いた
彼の問いかけに、はた、と我に返ってしまえば。

「あっ…。―――ぁ、えっと…いえ、ど、どちらでもないのですけれど。
 ……失礼しました。不躾な視線を送ってしまっていたかもしれません」

貴方があまりにお綺麗だから男か女か分かりませんでした――なんて、口が裂けても言えやしない。
申し訳無さそうに謝る少女を尻目に、何やらじりじりと彼に距離を詰められて。
後退しないと躓いてしまいそうになるので、一歩、また一歩と無意識に足が後退すると、
気付けば人気のない路地裏へと追い込まれる羽目になってしまった。

「あ…あの?迷子ではないとお分かりになられたかと思うので、
 私、そろそろ行っても良いでしょうか?夜も大分更けましたし、
 教会に帰らなければならないのですが……」