2019/09/02 のログ
ご案内:「九頭龍の水浴び場 奥の通路」にフィルさんが現れました。
フィル > 一息つける涼しさが訪れたと思えば、また暑い日々へと戻っていく。
まだ過ごしやすい気温が安定するには遠い事を感じさせる日中である。
それでも、日がすっかりと落ち。大通りから人々の賑わいも、各々夜の楽しみへと散っていく時間ともなれば、吹き抜ける夜風は多少涼しいものであった。
酒場に水場、そして宿屋へと人気が増えていく中、暑くてもやはりさっぱりしたいという人は多いのだろう。
温泉を目玉にしている旅籠へと出入りする人の数はそこそこであり。
その人の合間をぬう様に進んでいく少年は、受付を通り。
広場などでお風呂上りの時間を涼しむ人々や、転寝をしている人々に視線を時折向けては、浴場に続く道へとその足をそのまま進めていく。

「久々だし…たまには、違うお湯に入るのも楽しそうだけど…」

普段は何だかんだと、大浴場などに足を踏み入れることはなく。
人気があまりない、奥にある中規模な浴場へと行くことが多いのである。
理由としては一番は人目があることなのだろうが、単純に人の視線を避けているわけではないわけであり。
最近はフードを目深にかぶらずに、顔をちゃんと出して行動している時がそこそこ増えているのは、少年なりの踏みだしではあるのだ。
それでもまだ、大浴場などに飛び込むような度胸がないのは愛か相変わらずのようであり。

「あんまり…奥はオススメしない、とは言われたし…」

何時もなら段々人気が少なくなっていく道を少し進んだところに、口を開けている入口から入る中規模の温泉に踏み込んでいる。
其処より手前は人気が多かったり、女湯だったりとするものが並んでおり。
それ以上奥に行くと、今度は人気が無さ過ぎる、少し不気味な寂しい雰囲気の廊下まで続いてしまうのである。
黒いうわさ、というものは少年は詳しく知らないわけであり。
受付から奥過ぎる場所は注意としか聞いてはおらず。
何時ものお風呂の入り口が近づいてくる中、少し奥の方へと視線を向け。
誰か歩いてきたり、物音が聞こえてくるなど人気があるかを、軽く窺っていくだろうが。

フィル > 元々人気のない通路なのだから、少し待ったくらいで人気が感じられることはなかった。
向こうから来る人もいなければ、逆に自分の方から奥へと歩いいくような人もいることはなく。
逆に、そこまで人がこれ以上奥へと踏み込まない場所。と考えれば少年の興味心が擽られる物はあるのだろう。
けれども、好奇心のままに踏み込んだところで、こういう場所ではトラブルに巻き込まれる可能性は常に付きまとうものであり。
無防備に興味心のままに、オススメしないような場所へと飛び込んでいくような勇気は湧くことはなく。

「いざとなったら…変化でも使って…。
って、変化先が女性だと…場合によっては逆効果…かな」

何かまずい場所であり、見つかったりして咎められてしまったら、そんなことを考えてしまい。
少年はその時の場合にはと、変化での逃げの一手を既に考えているようである。
けれども、咄嗟の変化はまだまだ少年の場合は制度が低く。
変化慣れしている姿は、数種類とはいえどれも女性の姿なわけであり。
特にひとつは、逆にノリノリで厄介事に飛び込みそうな人格も表に出てきそうなものであれば、火に油もあり得るのだ。
そんな風に、何時もなら踏み込んでいる浴室の入り口の傍で、廊下の先をじっと見据え。
考えに耽っている様子の少年は、むしろ静まり返った廊下と合わせて、少年の方が人を驚かせてしまいそうな様子に見えるかもしれず。

フィル > 「桜…は色々まずいと思うし…」

そんな事をポツリとつぶやけば、自らの内面から一つ文句でも飛ばされたような気がするのは、恐らく気のせいではないかもしれない。
考え過ぎても仕方はないが、考え無しというのもやはりどうかというものである。
暫くそんな様子で、少しいつも踏み込んだ方まで足を少し踏み出しては、また足を戻す。
そのような事を繰り返していれば、その有様は人通りがなくてこの場合は良かったと言っても間違いではないだろう。

「何もなければ…少し行って戻ればいいですよね」

自分へと言い聞かせるようなその言葉は、少し廊下に響けば静まり返った廊下へと直ぐに吸い込まれていき。
またすぐに静まり返った時間は訪れることになる。
此処が温泉宿でなければ、お化け屋敷にでも踏み込もうとしてはためらっている怖がりの子供のようであるが。
漸く一歩一歩今まで進んだことのない、廊下の奥へと少年は歩を進め初めていく。
とはいえ、進んで直ぐには更に人気のない浴場への入り口が並んでいたり。
従業員の通り道だろうか。ただのドアが時折ポツンと廊下の壁に沿って存在しているくらいなものであり。
暫くは意気込んだのが恥ずかしいくらいに、人気はなく静まり返っているものの、普通の廊下が続いていくことにはなったようだが。
黒いうわさの根源ともいえる、宿の裏の歓楽街のような施設へと繋がっている可能性もあることを、媚薬風呂を一度ここで見たことあるのに、考えることも無く。

フィル > 「思ったより…長いですね…っと」

辺りへと気を配りながら進んでいるせいもあり、まだあまり進んではいないはずなのに、それなりの距離を歩いた感覚なのだろう。
それでも、確かに旅館の廊下と言うには少々長いということに間違いはなく。
幾つか従業員以外立ち入り禁止と書かれた扉を過ぎてからは、そのような扉すらあまり目にすることもあまりないのである。
流石にそろそろ引き返しておこうかと少年が思い始めたところで、漸く道を塞ぐ扉へとたどり着くが。
その扉には従業員以外立ち入り禁止等の決まり文句でもなく。何も書かれていないのである。

「…流石に戻ったほうがいい、ですよね…これ」

扉の先に耳を澄ませば、何か妙な声が聞こえたような気さえするのは、気のせいではないかもしれず。
扉のノブに手をかけて軽く回せば、軽い音を立ててそれは回ってしまうのである。
鍵がかかっていない、その事実に一つ少年はゴクリと息を飲んでいくが。
そのまま好奇心のままに扉を開けることはなく。
一度深呼吸をするように、大きく息を吸っては吐いて、と。
静まり返った廊下に響くくらいにちゃんと息をすれば、そのまま踵を返し。
元来た道を戻って、大人しくお風呂にはいってから帰るようにしたようである。
戻り始めたあとは、湯につかり何時ものようにさっぱりして、やがて何事もなく平穏に帰路へとついて行ったか―

ご案内:「九頭龍の水浴び場 奥の通路」からフィルさんが去りました。