2019/08/13 のログ
ジェイ > 口にした食事が栄養素に変換されて蓄積されていく。
魔力をもつ生物を直接喰らうのに比較すれば、もどかしい程に遅い。
けれど、補給は補給。割り切りつつ、食事を口に運んでいく。
どうせ非効率なら少しでも美味いと思われるものを口にしたいし
それに――。

「ああ――なるほど。いや、成る程。」

ぽつり、と言葉が唇を割って零れ出る。少しだけ笑った声だ。
食事の手を止めぬ侭に、眼差しを料理に落とした侭に。
聴覚と、嗅覚と、触覚と、それ以外の感覚が店を巡って、拾ってくる情報。
穏やかでない話をしている男達。必死で女を口説いている貴族。
融資を申し込むために一生懸命にもてなしている男。
男からどれだけ搾り取るかを考えて媚を売る女。
店の中いっぱいに、そんな、情報が奏でられている。
それを欲望と呼ぶものもいるだろう。あるいは、希望と呼ぶものだっているかも知れない。

ジェイ > 酒場の夜を彩るのは趣味の良いピアノの曲。
けれども、それよりもずっと心地よく奏でられる言葉達。
詳細には興味はない。ただ、そういうことを人が奏でている。
それを、食事の伴奏にしながら、食事を続ける。
もうしばらく、その時間は続くだろう。
結局、酒は一杯も注文することはなかった―――。

ご案内:「平民地区の酒場」からジェイさんが去りました。