2019/07/06 のログ
ランバルディア > 女が近づくと、男は小さく鼻を鳴らした。
滲む血の匂いを感じ、整った風体を遠目に眺めるが多量という程ではないらしい。
差し出される手のひらに視線を落とし、ああ、と声を零す。

「んないいトコのお屋敷ならお抱えさんとか居そうなもんだが……
 ま、いいさ。手は抑えたまんま、こっちきな」

不思議そうに首をかしげるも、それに頷きを続け納得を示す。
踵を返し、待合室から診察室へ。
女には椅子に腰掛けるように言って、男は更に奥へ向かう。
程なく、薬その他諸々を載せたトレイを手に戻ってきて。

エダ > 「お抱えのお医者様は、風邪をひいてしまった方にかかりきりで、
あいにく手が空いていなかったんです。
こちらが開いていて助かりました」

当然の疑問にそう答えながら、後に続いて診察室へ。
勧められた椅子に座る前にローブを脱ぎ、膝の上に手早く畳んだ。
大雨のせいか、ほかに患者はいないらしい。静かな診療所だ。
医師が戻ってくると、もう一度ハンカチを外し、患部を差し出す。

「治るまでどれくらいかかりそうでしょうか……?」

盆の上に器具の類を見て、治療の行程をある程度察する。縫われるところは
直視したくないのか、微妙に視線を逸らしていた。

ランバルディア > ローブの下から現れたのは、十分に女らしい肉付きをした身体。
顔立ちは少し地味に見えるけれど。
備わった肢体と合わせてみれば、それがいいという男も少なくはないだろう。
そんな事を考えながら、差し出された手を掬うように取って。

「完治まで?
 ……んー、……お前さんが幾ら出せるのか、によるかねぇ」

清めた水で濡らした布で、患部を拭い整えていく。
如何な処置をするにしても、欠かすことの出来ない麻酔効果のある薬を女へと差し出し。

「それと、どのくらい綺麗に治してほしいのか。その辺も加味して決めるから、要望がありゃ言っといたほうがいいぜ?
 勝手に思いっきり高額治療してやってふっかけたっていいんだがな」

今日は、そんな気分でもないようで。

エダ > 雨で冷えたのか、ひんやりとした手を医師に委ねる。
清拭の布が傷の周囲にあたると、最初のうちは沁みたらしく。女の肩がピクンと跳ねた。
医師に容姿を観察されているとも知らず、意識して肩の力を抜き。
微妙に逸らした視線を赤毛頭の寝癖あたりに固定していたのだが、

「えっ。そ、そんなに違うものなんですか? お値段によって」

思わず相手の顔を見直した。薬を受け取ると、素直に口に含んで飲みくだし。
少し物思わしげな表情になる。

「それは、もちろん。よりきれいに治った方が嬉しいのですが。
……事前に教えて下さってありがとう、ございます。
今手持ちのお金が250ゴルドくらいなのですけど、それだとどの程度まで傷跡が残りそうでしょう?」

正直に、財布の中身に応じた治療を希望しよう。

ランバルディア > 「そりゃそうさ。ご近所さんなら、此処の噂くらいは聞いたことあんだろう?」

ただでさえ予約と救急だけの人気の少ない診療所。
患者を選び、自分の治療が不要と見れば他へ盥回す。
しかしてその分、腕は良い。

悪徳だ、という評価とそれとは真逆の評価で真っ二つに割れている筈。
大怪我で来る冒険者とは違う民間人の間では、特に。

「キズだ、って解る具合には残るな。
……金が無ぇんなら、他にも持ちモノで支払ってくれてもいいんだぜ?
そしたら、切ったなんてのがウソだってくらいの仕上がりにしてやるが……」

はした金、とばかりに首を振った。
ため息を挟み、男の視線が女の瞳を見遣る。
何処を見ているのか示すよう、視線を胸元へと這わせて。

エダ > 「そ、それは。『腕はいいから』って皆さんおっしゃってますから……!」

「皆さん」の情報元は屋敷の同僚たち、つまり一般人。
その後には、「ただし気まぐれで、ボッタクリ気味かも。それと……」という、微妙に最後が曖昧な注釈もついたのだったが、
そこは口を噤んでおく。治療してもらっただけでも多分ラッキーな方なのだろう、自分は。
その上でなるべく綺麗に、などと要望するのは欲張りと言うものかもしれない。

「……そうですか、じゃあ……え……?」

少しくらい跡が残っても仕方ない、と覚悟を決めたところで、金銭以外の支払い方法の申し出が。
誤解しようがないくらい、医師の視線がその「方法」を物語っている。
栗色の瞳が瞬き、揺れて、ついには俯く。頰のあたりに、朱が差していた。

「本当、ですか……? 先生。その、……お金の、かわりに……?」

明示的なことを何も言わず、言えず。目先の欲に、内心も揺れる。

ランバルディア > 尻切れ、歯切れの悪い注釈の理由も同時に察せられるか。
その方法を示すための視線は怖じること無く女の女たる部分を舐め回す。
こうなった時、窺える反応は三つ。
男のやり口に顔を青くするか怒りに顔を赤くするか。男好みに朱色を纏うか。

「代わり、……ってことは完全に『そっち』で支払うのか?
だったらもう一回り支払いが膨らむが……まぁ、医者に止められたって言えば朝帰りも大したこと無いか」

俯く女を、覗き込んだりはしない。
捕まえている手の甲に長い指を這わせて、爪先まで他愛もない愛撫を行う。
麻酔が効き始めていれば感覚など無いはずの部位だが、飲ませた薬は麻酔効果だけを含むものではなかった。
視線は隠れた谷間から更に下がり、女の下腹部に纏わりつく。

エダ > 目を上げなくても今はわかる。医師の、男の視線が自分のどんな場所に絡みついているか。
目の縁がじんわりと赤らんで、襟に隠れた喉が、こくりと鳴った。何だろう。さっきまで肌寒いくらいだったのに、今は急に部屋が暑くなった気がする。
麻酔だけではない、薬の効果だとは知る由もない。
気づけば、長い指が己の手を囲い込んで。爪の付け根まで擽ぐるような動き方をしており、
今度は肩だけでなく、手首から腕へ、ひく、ひくひくん、と奇妙に過剰なひくつきが走った。

「い、いえ…! お金と、……っぁ、……も、ぅ、……ひとつの方法、で、……」

じり、と無意識に内腿をすり合わせ、身じろぎをしながら。自分が発した言葉に驚いたように、
女ははっとして初めて、医師の顔をまともに見た。次に言うべき言葉に詰まって。潤んだ栗色の目がみはられていた。

ランバルディア > 小さな窓の外からは雨の音がする。
どんよりとした雲は分厚く、時刻はまださして遅く無いはずだが深夜のよう。
こうした軽い怪我の処置をする時にだけ使うその薬は久々だったが――どうやら、きちんと効果のある相手らしい。
過剰な反応は、それはそれで薬の効いてきた証。
愛撫はあっさりと止まり、縫合の針を手に取る。

「……金が足りないんじゃあ仕方ねえ。
こんなキズ残しちまったらお前さんの仕事だってどうなるか解らないし、……なあ?」

男の顔は明確に下半身に向かい、少ししてから上がって女の視線と絡み合う。
ゆっくりと口を開くと、女にとって尤もらしい言い訳を並べ立て。
雑な治療に満足せず、『支払い』を選ぶことの正しさを説きながら、針が患部へと入る。
鮮烈なはずの痛みは強度そのまま、薬によって別の感覚へと置き換えられている。

「なに、お前さん次第じゃ直ぐに支払い終えちまうよ――」

逆に言えば、女次第では男の想定よりも増して『支払って』もらうことになるかも知れないのだが。

エダ > 「そ、う、……ッ、は、……ぁ、……ッ、……です、よね……?
傷が、なくなるなら、それが、いち、ば、んん、ン!」

体の中央をなぞる視線に、本当に手を這わされているようだ。誘導されるままに、そう続けながら。女は、肩で息を始める。おかしい。全身が熱い。
医師の手にとらわれた女の手は、燃えるように熱くなっており。ぷつりと針が皮膚を通った瞬間には
そこに痛みとは違う甘い感覚が弾け、鼻を高く鳴らした。

「はぁ、はぁ、せん、せ、……っ、何か、……ヘンなんです、どうして、……」

ぞくぞく、と背筋に震えが駆け上がり、駆け下りる。なるべく動かぬよう体を緊張させているせいで、
快楽が内側に籠るよう。もじもじと膝を、太腿をにじり合わせ、湿ったため息をついた。
暗い雨の街の片隅が、じわりと温度と湿度をあげる。

ランバルディア > 女が同意を示したなら、男としては後は処置に意識を向けるだけ。
『支払い』への意識付けも含めて、下拵えは済ませた。
荒い息遣いと甘い声音を零す女に対し、男は、医師は一転口を噤んでしまって。

傷が男の手技によって縫合されていく間、素知らぬ顔で愛撫とある種の放置プレイという訳で。
女が如何に身を捩ろうと艶声で喘ごうと、男は一瞥もくれないまま。
最後の一針を切る。それと共に顔を上げ、双眸にジッと視線を流しながら後片付け。

「それじゃあコレでお終い、……な、ワケは無いから安心していいぞ?
ココからが『本番』だ、……さ、靴を脱げ――、……」

椅子から立ち上がり、太腿へと手を置いて身体を寄せて。
まだ女の名を聞いていないことを思い出し――名乗りを求め、
足首まで隠すスカートを勝手にたくし上げ。漸く『支払い』への指示を出し始めていく――。

ご案内:「王都某所、診療所」からエダさんが去りました。
ご案内:「王都某所、診療所」からランバルディアさんが去りました。