2019/05/29 のログ
ご案内:「「女王の腕」亭」にルドミラさんが現れました。
ルドミラ > ある薄曇りの日の昼下がり。淡い日差しが透かし窓の向こうに引かれた赤いカーテンを照らし、娼館の一室を隠微な雰囲気に染め上げている。
室内の調度品は色好みの貴人の寝室、といった風情に整えられており。天蓋つきのベッドでは、異国風の装飾品だけを身に纏った娼婦ふたりが向き合って横臥し、互いのからだに愛撫の手を這わせていた。

赤毛の女と、亜麻色の髪の女は微笑みあいながら甘いため息を口移しにする。やがて赤毛が何ごとかを囁きながら相手の脚の間に手を潜り込ませると、もう一方は喉を仰け反らせ、やや大げさな高い鼻声をあげた。

ルドミラ > そのとたん、

「あたくしのお店は場末の私娼窟ではなくてよ。わざとらしい声をたてるのは、あまり感心しないわ」

横合いからかかった穏やかな声は、この娼館の女主人のもの。

足音をたてぬ歩き方で寝台の周囲をゆっくりとめぐるのは、訓練中の彼女たちのからだの使い方や表情のつくり方を、さまざまな角度から確かめるため。もっとも、半ば目を伏せた微笑にまぎれて、黒目がちの瞳は厳しさを感じさせない。

教師に注意された優等生めいた従順さで「はい、マダム」と応じた娼婦は、目を閉じて訓練相手の指戯に意識を集中させ。今度は湿り気のまさった、ほとんど溜め息に近い喘ぎ声を漏らした──。

ベッドからやや離れた背後には、娼婦たちの教育係が控えている。
客間のドアは開け放たれたままで、清掃係らしき者たちが行き交っていた。酒肴の仕入れ先や仕立て屋、媚薬類の問屋、娼婦への贈り物を運んでくる業者が出入りするのもこの限られた時間帯であり、夜が稼ぎ時である娼館も、昼間は昼間でなかなかに慌ただしいのだった。

ご案内:「「女王の腕」亭」にダグラスさんが現れました。
ダグラス > 王都での仕事を終えた帰り。
少し早く仕事が終わったせいか、まだ普通の娼館も酒場も営業していない時間。
普段昼間に街を歩き回ることもないせいかどう時間を潰そうか考えたとき。
以前出会った娼館の主に顔を出しに行こうと王都にある娼館に訪れ。

「やぁ、主はいるか?
 知り合いの海の男が来たと伝えてくれ」

入口で清掃を行っていた従業員に店主に会いに来たと伝える。
案内された客室のソファに座って背もたれに身体を預けた状態で来てくれるか待つことにして。

ルドミラ > 今度の嬌声には満足が行ったのだろう。女主人の、労働を知らなそうな白い手が、通り過ぎざま従順な娼婦たちの頰を、肩を、いかにも大事そうに撫ぜていった。
くすぐったそうな、密やかな笑い声をあげたのはどちらだったか。

「ふたりとも、とても素敵よ。続けて」

他店から引き抜いた売れっ子である彼女たちのトレーニングは、さほど時間をかけずに済みそうである。
明後日には店に出してよい、と教育係に告げたところで、従業員が来客の知らせを伝えに来れば、

「海の男? ……ああ、いえ。誰だかわかったわ」

女主人の含み笑いの表情から、来客は単なる「知り合い」以上の誰かであることは知れるだろう。
娼婦たちの世話を教育係に任せ、男が通された別の客室へと姿を表したのは、およそ10分後。

「ダグラス。ダイラスの騎士海賊さん、来てくだすったのね」

いつかの緩い約定は、女主人も覚えている。そう挨拶して歩み寄った。

ダグラス > 出された茶を飲みながら、館の主人が来るのを待っていたころ。
客室に相手が現れれば笑みを浮かべて相手の顔を見上げ。
ゆっくり立ち上がり歩み寄るよる相手に小さく簡易礼拝を見せて。

「仕事で近くまで寄ったものでね。
 せっかくだしルドミラの顔を見ていこうと思ったわけだ」

自分をしる相手であればまともな仕事ではないことはわかるだろう。
とはいえ、従業員以外にも出入りの商人が客間の前を行き来しているのを気にして直接的な表現を避け。

「それにしてもいい娼館だな。
 なかなか繁盛しているのだろう?」

ルドミラ > 男が見せた配慮は最初に会った日の出来事をそのまま、思い起こさせる類のもの。

「まあ、そうなの? どちらにしても嬉しいわ。一度お店を見ていただきたいとは思っていたの」

扉を閉じ、立ち上がってこちらを迎える相手の隣まで近寄ると、改めて席をすすめた。相手と同じタイミングで、自分も隣に腰掛けながら、

「フフ、おかげさまで。でも舞台裏はこのとおり。落ち着きがなくてごめんなさいね。
あなたはもっと静かなところがお好きでしょ?」

連想するのは、相手の隠れ家。人の気配がする場所では落ち着かぬのではないかと、すまなそうに眉尻を下げて見せる。

ダグラス > 「まぁ普段はもっと喧しい部下たちと一緒にプライベートの薄い船の上で暮らしているからな。
 話す内容によるって感じだな、今回は表向き公式な訪問といった感じだし」

相手に勧められるままに座り。
軽く脚を組んで相手を見ながら肩をすくめて話す。

「それにしても忙しいところを急に来て済まなかったな。
 経営者なら昼間も忙しいのだろう?」

扉が閉まっていれば多少は声も漏れづらかろうと少し口調を崩しつつ。
ある種では自由人の自分とは異なる相手の立場を慮るように言う。
前回あった時も商品を仕入れに来ていた時でありあまり相手が休んでいる姿は想像できず。

ルドミラ > 「そう、表向き、ね」

そう相手の言葉を繰り返した時、きょう二度目の含み笑いが、女主人の口元に淡い影を落とす。おかしそうに、肩を少し震わせて。

「ダグラス、あなたったらあたくしの立場を思いやってばかりね。
忙しく、人を使う立場なのはあなたも一緒ではなくて? あなたがお仕事ついでに
今日、あたくしに会いに来てくださったように、
休憩時間なら合間合間に何とでも。今がそうよ」

中身の減ったティーカップに気づくと、ポットを持ち上げて追加はいかが? と目顔で尋ねる。

ダグラス > 「いただこう」

相手の視線を読み取れば小さく頷いてカップを相手に少し寄せ。

「意識してやっているんだ。
 俺が女の立場を慮らない時はどうするか、君も少なからず知っているだろう?」

もと王国の下士官とは言え今は海賊の頭である。
ある程度の社交儀礼を知っているとはいっても根っこは悪党であることに変わりなく。

「それにここはルドミラの城で俺は客人にすぎないんだ。
 多少は猫くらいかぶるさ」

ルドミラ > 濃い赤に近い色の茶をポットの注ぎ口から細くせせらがせると、芳香がふたりの周囲に漂う。
ソーサーに伏せてあった自分の分のカップを裏返すと、そこにも茶を注ぎ。

「もちろん。だからこそ、興味深いの。
……では、城の主らしくおもてなしをさせていただきたいわ」

ソーサーごとカップを持ち上げ、香を楽しんでからお茶に口をつける。目元だけが、ちらと男の顔を見上げて、

「このお茶を飲み終えたら、あちこち案内をさせて。今日は、猫を脱ぎ捨てる時間はあって?」

ダグラス > 「そうだな……ぜひ、案内してもらいたいが」

茶の入ったカップを手に取れば軽く香りを楽しんだ後に口に含み。
ちらっと窓から見える外の風景を見てから相手に向き直り。

「あと二、三時間くらいなら時間はあるが。
 暫く街にから、お望みであれば後日寄らせてもらうことも可能だよ」

茶を飲むペースを相手に会わせながら予定を話す。
相手が飲み終わるころに自分も茶を飲み終えるだろう。

ルドミラ > 「2、3時間あれば十分。……いえ、流れ次第かしら? あなたのご都合が許せば、だけれど」

傍目にはティータイムをともに楽しむ客と主人の体裁を崩さずに。
当たり障りのない世間話の後は、連れ立って客間を後にすることになる。

ダグラス > 「それじゃあ、お言葉に甘えさせていただこうかな」

相手が立ち上がればそれに続いて客間を後にする。

ご案内:「「女王の腕」亭」からダグラスさんが去りました。
ご案内:「「女王の腕」亭」からルドミラさんが去りました。