2019/05/16 のログ
ご案内:「貧民地区孤児院」にミヤビさんが現れました。
ミヤビ > お薬を大量に抱え、孤児院を訪れるミヤビ。
あるシスターに、貧民地区の孤児院で薬が足りてないと聞き、適当に風邪薬や傷薬を持ってきたのだ。

ここで最後、と思いながら、院長先生に薬を渡すと、見知らぬ人物を見かけ、挨拶をする。

「こんにちは、あなたも何かお持ちになったのですか? 私はミヤビといいます。よろしくお願いします」

かなり幼く見えるが、喋り方や立ち振る舞いから、大人と判断して丁寧にアイサツする。

ホウセン > 妖仙自身、子供子供した体型ではあるけれど、声をかけられて向けた視線の先、声の主も相応に小柄。
素性に思い至ろうと観察するが、どうにも素性が良く分からぬと小さく鼻を鳴らして匙を投げた。

「嗚呼、よい夜じゃな。何か…と言うても幾許かの金銭と、甘味を少々といったところじゃ。」

己自身がそうであるから、見た目の年齢で判断することの危うさは重々承知している。
とはいえ、差し障りのなさそうな世間話にまで疑心暗鬼になっても始まるまい。

「それで、お主は”も”とも言うておったが、何ぞ品物でも届けに来た手合いかのぅ?」

発言の中身から気になる所をひょいっと拾い上げる。
中庭での立ち話、話し声で音のプライバシーに乏しい建物内の子供達を起すのも忍びないと、声は総じて控えめに。

ミヤビ > 「そうですね、私は薬屋をやっていますので、お薬を少々持ってきたところです」

孤児院を回っていて、ここが最後だったせいで遅くなってしまったのだ。

「甘いもの、子供たちも好きですからね。さて、私は仕事終わりましたが、お兄さんも終わりなら、一緒に食事でも行きませんか?」

仕事も終わりだし、家に帰っても子供たちも休んでいるだろう。少しぐらい寄り道してもばちは当たるまい。そう思い誘うのだった。

ホウセン > 成程。
院長が不足物資を告げる際に、薬の類を省いていたのは、こちらで当てがあったからなのだと納得した心地。
この姿で過ごすようになってから”お兄さん”呼ばわりされることはまずなく、もぞりとこそばゆい心地がする。

「仕事というか、ある種の戯れじゃが… ま、確かにこの後の用事はありゃせんのぅ。
 儂は構わぬが、今よりも遅ぅなったら、お主の様な者が街を出歩くのは難儀せぬか?」

耳や尻尾が見えているから、真っ当な人間種ではないことは知れるが、食事の後に治安の宜しくない貧民地区を通り抜けるのは危なかろうと。
見た目は非力この上ない自分自身を棚に上げて、一応の常識論を吐いてみる。

ミヤビ > 「この辺は顔が利くので大丈夫ですよ」

実際襲われたことはないので、案外治安がいいのだとミヤビは言う。
実際はミヤビの娘の父親に、このあたりに顔が利くものがおり、彼らがどうにかしてくれているのが大きい。
目立つ耳と尻尾で判別がつくので、彼女はある種のアンタッチャブルになっていた。

「何ならおうちまでお兄さんが送ってくれればあんしんです」

お兄さんのおすすめの店にお願いしますー。といいながら腕をひいて孤児院を出ようとする。
どうせもう、子供たちは休む時間だ。長居するのもなんだろう。

ホウセン > 顔パスだとの言葉に、多少胡乱気な視線になっていない保証はない。
薬師と、この辺りを牛耳る輩と、何ぞ後ろ暗い交友網があるのではないか。
深読みすればそのような疑念も湧くが、無防備なモフモフにこにこっぷりに、それも何か違うような気がしないでもない。

「結論。
 無防備で地に足の付いておらぬ小娘じゃな。」

人の悪意を知らぬお花畑の住人。
それを口にするデリカシーの無さと厚顔っぷりは、本来の調子に近しい。
孤児院の敷地を出るのに否は無いが――

「えぇい、引っ張るでないっ。
 仕方ありゃせんから、連れて行かんでもないが… 歩き辛い故、へばり付くでないっ。」

ずるずるずるーっと敷地の外へ至れば、嘆息混じりに腕を解く。
羽織の襟を整えて、妖仙の足が向かう先は、貧民地区の夜市。
健全な住民たちが寝静まるこの時間でも、繁華街たるこの辺りなら、店も営業時間真っ只中。

「まさか、もっと高価な物が食いたい…などと浅ましいことを言うてくれるなよ?」

道路の端に安っぽい長椅子とテーブルがに並んだ屋台の一軒。
ちょこんと腰を掛け、馴染みの店員には”いつもの”とだけ、簡潔に告げた。

ミヤビ > 「高級店連れて行かれたら逆に引きますねー」

ほわほわとお花畑の住人のまま、腕にしがみついたり振り払われたりまたしがみついたり、とじゃれながら入った屋台。
見た目はぼろいが、いい匂いがしており、絶対美味しい店だと確信できる。
皮肉なんてなんのその、あまり理解をせずにふわふわとほほ笑んでいた

「私も同じのと、あと焼き餃子とラーメン全部マシマシで」

慣れた様子でそんな大量に頼む。
狭い屋台なので、詰めて座る必要があるだろうと、ホウセンの横にぴったりと座る。
ふわふわした尻尾や柔らかいからだがホウセンに当たるだろう。

ホウセン > 屋台の建ち並ぶこの辺りは、健全で不健全な喧騒に満ちている。
専ら、酒を飲んで出来上がった酔漢達の、笑い声だの小規模な喧嘩だの、日常茶飯事の益体の無い彼是。
それでも娼館が軒を連ねる性風俗産業の区画とは異なるから、悩ましい彼是が漏れ聞こえるということは無い。

「構わぬが。
 折角なのじゃから、きちんと胃袋に収めるのじゃぞ。」

店員は言葉短く承知の旨を投げ返し、俄か作りの厨房では湯の煮える音やら油が爆ぜる音やらが奏でられる。
時間が時間であったから、寝る前の小腹抑えのつもりでいた妖仙の頼んだ物はといえば。

「結果的に、デザートになったということかのぅ?」

香ばしい香りを放つ、胡麻が所狭しと張り付いた胡麻団子。
所謂、点心の類だった。
程なくして、手早さが売りの屋台らしく、ごてっと胃袋に重たそうな主菜がテーブルに並ぼう。
今更、体が密着するだけでドギマギするような繊細さは投げ捨てて久しいが、身体に当たる尻尾だけは行儀が悪いと、軽くペチリ。

「いただきます。」

食事の挨拶を告げ、熱々の団子を箸で摘み上げた。

ミヤビ > 「いただきまーす♪」

割りばしを割って、上品に食べ始める。
ゆっくりのんびり食べているように見えるが、大盛りのラーメンがどんどん消えていき、焼き餃子もどんどん消えていく。

「餃子、食べますか? 大きくなれないですよ?」

そんなことを言って、餃子をホウセンに勧めながら、ゴマ団子まですべて完食する。
どこに入ったのかわからない、それくらいの大盛りばかりであった。

ホウセン > もくもく、もきゅもきゅ。
小柄ではあるけれど、十二分以上に健啖家な妖仙。
尤も、食べる事だけが目的と化している底なしの大食漢とは違う。
寧ろ、食も遊興の一つと考えているからこそ、妙なこだわりが無いでもない。

「戯け。
 味のバランスが狂うてしまうというのに、考え無しに…
 まぁ、貰うが。」

此処まで連れて来た駄賃分だと、餃子は一つペロリと平らげる。
薬師が食べ終わるタイミングに合わせ、自身も終わるよう食べ進めるようとするが、さして加減は必要なかったらしい。

「馳走になった」

食事終わりの挨拶をし、長椅子から降りると店員へ手ずから代金を渡す。
金額はキッチリ二人の合計分。

「ほれ、夜道を腹ごなしに歩いていくのじゃろう?」

少なくとも代金のことは、妖仙自身からは口にしないようだ。

ミヤビ > 「ごちになります~♪」

そういいながら、二人分の酒瓶だけこそっと別口で買って、ホウセンと一緒に歩き始める。
おごってもらったと解釈したようだ。

「おっしゃけー♪ おっしゃけー♪」

お酒を抱えてうれしそうについていく。

「で、どうします? お酒でも飲みますか?帰りますか?」

ホウセン > 果たしてこの能天気娘が、何処まで損得勘定をするか不透明極まりないけれど。
それでも、孤児院に縁があるのなら、多少の恩は売っておいても損とはなるまい。
シンプルな打算による行為ではあるが、改めて口にされると、妙に腑に落ちぬ。

「ん…?
 家人が待つ塒があるのじゃろう。
 既に休んでおる公算が大きいが、無事に帰りつく事を第一義とするがよい。」

どうにも能力的なことというより性情的に頼りなく感じたから、こうやって同道しているのにと、黒い瞳がジト目気味に。
薄っぺらい肩をカクリと落として。

「して、お主の家は何処じゃ?
 流石の儂とて、見知らぬ家へと案内も無く送り届けるのは不可能じゃからな。」

遠慮するのも堅苦しいと、懐から煙管を取り出して咥える。
黒漆と銀で装飾されたそれを唇の端に。

ミヤビ > 「飲んでもいいと思いますけどねー 家は平民街の狐喫茶です。最近話題だからわかりませんか?」

狐娘たちが給仕してくれると評判の狐喫茶、話ぐらいは効いたことがあるかもしれない。
かった酒瓶から、片手に杯を持って注ぎ、口を付けてふらふらと飲みながら進む。
ホウセンにも杯を渡し、注ごうとしながら、楽しそうに家路につく。

「ここまっしゅぐだったとおもいましゅー」

数口ですぐ真っ赤になり、酔っぱらっているのがまるわかりであった。

ホウセン > 己とて店を構える商人。
近隣の動向に纏わる情報は、概ね耳に入っている。
妖仙自身は微塵も気にせぬ類だが、ミレー族と間違われて難儀しそうな物だが等と、感想を抱いたのはそう過去の話でもない。
多少酒精を摂取しても正体を無くさぬ自負があるから、差し出された酒器を手にして、注がれた液体を眺める。

「全く…
 こうなる事を予期したから、口にこれを咥えたというのにのぅ。」

妖仙がどう言おうと、同行者が酒瓶に手を付けることは予期できていたから、煙管で口が塞がれている為、飲食は出来ぬとそれとなく牽制していたのにと。
とはいえ、注がれた以上、杯を乾かさねば作り手に不義理であろう等と考える辺り、飲兵衛思考である。
煙管は火を点すことなく再び仕舞われ、酒盃に口をつける。

「えぇい、しゃんと歩かぬか。
 途中で往生したら、そのまま捨て置くのじゃ。」

ペチペチプニプニと、薬師の頬を軽く叩きつつき、荷物になってくれるなとせっつくが、果たして効果があったのかは分からぬ所。
小規模で姦しい応酬を繰り返しながら、小さな妖仙と小さな狐娘の帰途は続き――

ご案内:「貧民地区孤児院」からホウセンさんが去りました。
ミヤビ > そうして、小さな妖孤は、小さな妖仙につれられて、どうにか家路につくのであった。
ご案内:「貧民地区孤児院」からミヤビさんが去りました。