2019/05/06 のログ
ご案内:「王都マグメール ホーレルヴァッハ邸」にギュンター・ホーレルヴァッハさんが現れました。
ギュンター・ホーレルヴァッハ > 御約束待機中です
ご案内:「王都マグメール ホーレルヴァッハ邸」にクレマンスさんが現れました。
ギュンター・ホーレルヴァッハ > 「…別に、我儘を言っても構わんのだぞ?市井が落ち着けば俺も少しは時間が取れる。
寿命については…まあ、否定はせぬが。それでも俺は人間の基準で言っても若い部類だ。お前と過ごす時間は、決して短いものではないさ」

本当は、仕事にかまけてばかりの自分に言いたいことも沢山有る筈なのに。
あくまで此方の身を案じる彼女に、柔らかく微笑んで見せた。共に過ごす時間を、遠慮する事は無いのだと。

「……あやされる様な年齢でも無いのだがな。しかし…そんな穏やかな眠りを迎えたい、という気持ちもある。難しいものだな……」

己の容姿が少女然としている事もあり、眼前の恋人に対しては男として、強い雄として振る舞いたい…という矜持がある。しかし、彼女の紡ぐ物語を聞きながら、髪を撫でられて眠りに落ちるというあ甘やかな誘惑に抗いがたいのも事実。誰かに甘える、という弱さをは、親にすら見せた事が無いかもしれない。
普通の恋人というものは、どのくらい相手に甘えるものなのだろうか、という線引きに悩んでいたりもするのだが。

「……まあ、その、うむ。手慣れていた事を否定するつもりは無いが…」

弱弱しく彼女の言葉に応じながら、どうすれば彼女の気持ちに応えられるのか深く悩む。
初めて、というものがどのような事を指すのか、恋愛の経験値が絶対的に不足している己にはとてつもない難題であった。先程持ち込まれたばかりの難題を処理する方が簡単であるかもしれない。
しかし、その難題に対する解は、彼女から与えられる事になる。


「……ドキドキしながら?随分と俗世的な言葉だが…だが、うむ。分かった。いや、分かったところで、お前が望んでいる通りに出来るかは自信が無い、のだが…」

肉欲では無く、純粋な想いの籠ったキス。
言葉にするのは簡単だが、それを実践するとなると正解を知らない己には大いに難しいところ。
数秒悩んだ様に瞳を閉じる彼女を見つめた後、悩むという思考を放棄して彼女に近づいた。
——そうして彼女に触れた唇は、まるで幼子の肌に触れる様な。精巧な硝子細工に触れる様な、静かなキス。己が落とす唇で、彼女を壊してしまわない様にとでも言う様な口付け。己の想いを伝える事に、精一杯の勇気を振り絞ったと言わんばかりの穏やかで短いもの。
普段とは全く異なる様なキスをした後の己の頬は、瞳の色と同様に深紅に染まり、彼女と視線を合わせる事が出来なくなっているだろう。

クレマンス > 初対面のあの日から、可愛い、と思うことはあったのだが、一緒に暮らしているとその頻度は高くなる。
仕事中の少年は歳に比べてかなり大人びており、育った環境を想像させられた。
故に、甘えたくもなるし甘やかしたくもなる。
恋物語を聴かせ、寝付かせるようにして手を繋いで眠るという時間を実現するということは、今後聖女のワガママに入ることだろう。
まるで物分かりの良い恋人のように扱ってくれるが、実際は自己中心的な行動も多い。
キスをせがむのも、だ。

己のために困ってくれているというのも実は込み、のワガママ。
それが初めての証となり、恋する聖女の欲求を埋めてくれるところもある。
付き合わされる少年には苦労が多いだろうが、どこのカップルも少なからず男性が女性に振り回されるという面はあるはず。
だからというわけではないが、悪びれる様子もなく口付けを待って、待って。
あまりに淡く柔らかく触れ合った唇に、そっと目を開けた。
てっきり未だ彼の顔は間近にあって、いつものような微笑か
もしくは難しく考えていそうな表情でもしているのかと思っただけに、視線すら合わない立ち位置に呆気にとられる。

だが、それが相当照れた結果の反応なのだと分かると顔を覗き込んだ。
にっこり、ゆるり、というものよりは、にまにまとした悪戯を覚えた稚児の笑顔で。

「ドキドキして頂けましたか?私のことを好きだと思ってくださいましたか?」

意地悪にも言葉での返事を求める。
肌を重ね合わせる時は己が余裕を失うことが多い分、ささやかな意趣返しの面もあるやも知れず。

「――――私は、あなたが好きです」

そして慕情を求めるだけでは不公平だと思ったのか、好意を伝えることを苦手とする相手とは真逆に
するりと告げると、今度は聖女から唇を近付け重ね合わせようとした。
当然己も好きな人にこうしてキスする機会には恵まれてこなかったのだが、
感情が高まれば自然と突き動かされるものなのだといま初めて身に染みている。

ギュンター・ホーレルヴァッハ > これまで、資産と権威。地位と名誉に群がる者達を相手にしてきた己にとって、そもそも他者を受け入れるという感覚そのものが新鮮である。
それ故に、甘え方も甘やかし方も悩むばかり。己は彼女の求める恋人足り得ているのだろうかと、煩悶するばかりであった。
奪う事ばかりだった己が、彼女に何か与える事が出来るのだろうかと。

だからこそ、彼女から告げられる我儘も己にとっては心地良いもの。無論、どうすれば彼女が満足するのかと悩んでばかりではいるが、その悩みを抱く事そのものが己にとっては幸せな事なのかも知れない。
だが、それを実際に行動に移すのはまた別問題。同年代の少年よりも恋愛事情に疎い己にとっては、全てが勇気を振り絞る様なものなのだから。

此方を覗き込む聖女の表情が、幼子の様な笑顔を浮かべているのを見れば、僅かに瞳を動かして彼女と視線を合わせて頬を染めたまま口を開く。

「……それを言葉にしろと求めるか。全く。……ああ、心臓が大聖堂の鐘楼の様だったとも。大貴族共との宮中会議に挑む前でも、こんなに緊張した事は――」

最早やけっぱちとも言わんばかりに言葉を吐き出したが、それは彼女から告げられた好意を告げる言葉によって押し止められる。
むぐ、と言わんばかりに言葉に詰まった己に近付く聖女の唇。
顔を動かして素直にその唇を受け入れながらも、今のところ全敗な彼女とのやり取りに、少しばかり男としての尊厳を見せたくもなる。

「……ん………ん、む…」

先程の様な触れ合う様なキスでは無く、彼女を求める様な深い口付けを交わそうと。
ゆっくりと腕を伸ばせば、より深く唇を重ねようと彼女の頭に手を伸ばし、此方に引き寄せようとするだろう。

クレマンス > 可愛い。本当に可愛らしい。
貴族の長男として仮面を被ることが得意そうに見える彼には、己が求めた感情を
堂々と嘘で固めた言葉で表現する技術もあるだろうに、こうして正直な反応を見せてくれることが愛おしかった。
――――そして正直な話、やはり悪戯としても楽しくなってしまう。
キスした聖女の唇は、そんな悪戯心を隠しきれずにわずかに微笑んだ弧を描いていた。

そんな想いを心にお返しの口付けをして顔を上げようとしたのだが、頭を引き寄せられて離れるタイミングを失った。
予想外だったため、「あ」とでも言おうとしたように唇が緩み、互いの唇の隙間が埋まるように距離が縮まった。

「……んっ……ぅぅんっ……」

少し苦しげに聞こえるだろう、小さな声。
触れるだけのつもりだった唇が深く重なると、籠った吐息はたちまち二人の口元へ、そして隙間を縫って口内に入る。
予想外の行動といっても、恋人に求められて嬉しくないはずがない。
何度か彼の唇を己の唇で挟もうとするように小さな開閉繰り返し、その挙句。

(―――――苦しい)

出会って長く交わった間にキスをしたとはいえ、それだけで上手くなるのは難しかった。
いよいよ苦しくなって、恋人の肩をトントンと叩く。

ギュンター・ホーレルヴァッハ > 緩く唇の開いた彼女の唇を啄む様に食む。
情欲を覚える様なものでは無いが、彼女という存在を強く求める様な、そんなキス。
彼女を引き寄せた事によって、更に深く繋がった唇から互いの吐息が交われば、その吐息を貪る様に唇を繋いだまま。

———しかし、彼女から零れる僅かな声と、小さく叩かれた肩に気付けば、そっと引き寄せていた腕を緩めて唇を離す。
互いの唇を結ぶ銀色の糸が日光に照らされた後、静かに消えていく。

「……ふ…はぁっ……。……御馳走様、とでも言っておくべきかな?」

満足した、と言いたげな表情と共に、小さく吐息を吐き出すと、クスリと微笑んで緩やかに首を傾げるだろう。