2019/01/28 のログ
ご案内:「貧民地区 Bar『 』」にジェルヴェさんが現れました。
ご案内:「貧民地区 Bar『 』」に紅月さんが現れました。
ジェルヴェ > (今夜は客入りが少ないようだ。
居座っていた客の最後の一人を今しがた見送って、水滴が残ったカウンターを拭き片付けながら時計を見やる。
酒場を閉めるにはまだ少し早い。早い気もするが、客が来ないのなら開けておく意味もない。
労働意欲というステータス数値がめきめきと急降下していく。

不真面目な店主はちらりと後方を振り返り、ドアベルがおとなしく釣り下がった店の出入り口を確認した。よおし閉めるか。そんな風に頭の中で呟きながら。)

紅月 > ーーーかつ、かつ、カチャ…

仕事の関係各所に休暇を告げて、まず最初にやる事…と言えば。
いやに人間臭いこの女の場合"酒でも飲みながらゴロゴロする"という、もはや女性らしさの欠片もない…何ならオヤジ臭すら漂いそうな其れで。
珍しく貧民街に足を運ぶのも…というより、彼女が貧民地区を歩く理由の8割がこの酒場の為。

「お、開いてる開いてる……ジジさ~ん、お久しぶりー…」

いつもの調子…よりは若干ユルい声色を紡ぎつつ、名も無きBarの扉を開く。
目が合う。
固まる。

「…お、お久しぶりー?」

コテン、と、首を傾げる。
まるで来るのがわかってたみたいに此方を見ているもんだから、ちょっぴりビックリしてしまった。

ジェルヴェ > (幸いなことに、暇な日の閉店作業とは至極簡単なものだ。テーブルを拭いて、一人分のグラスを洗って、それで終いである。
床の掃除はまあ、明日の俺頑張れ。次々と展開する脳内での独り言を切り上げて、きれいに磨き終えたカウンターから手を放そうとした―――その時、)

「…いらっしゃ」

(条件反射だ。ベルの音を聞き客の入店を知ると、どれだけ閉店後の余暇に思いを巡らせていたとしても普段の調子で出迎えの言葉が口を吐く。
その瞬間、すっぱりこの後の予定については諦めた。どうせカードをやりに行こうだとか一人で飲もうだとか、些末でどうしようもないプランである。

が、しかし。店主の口は出迎えの挨拶を最後まで口にするより前に、中途半端な形で止まってそれきりの音を失くした様子だった。
目が丸くなり、振り向いた姿勢のまま固まって、数秒。首を傾けたコートの女が丁度同じ台詞を繰り返した頃合いで、店主の口も体も漸く動きを見せる。)

「い。」

(とりあえずは大真面目に「いらっしゃい」を言い終えて、向きを女性客の方へ。
別段美人で固まっただとか、彼女の言う通り久し振り過ぎて不意を突かれただとか、そういった話ではない。顔見知りだ。多分それなりに知る仲だ。けれど目の前の姿には、彼女を語る上で一番印象的であるはずの特徴が見当たらない。)

「…いや、白っ。
 ていうか、白っ。どうした紅ちゃん、大幅イメージチェンジ?」

(様々な事が過った。過ったが、店主は素直に驚きを表現することにした。眉を寄せて浅く笑みを見せながら、彼女の方へと歩み寄っていく。)

紅月 > 「はっはっはー!
どーよ、このミルクプリンも驚きの白さ…!」

時を止めたような空白の後、まずは若干からかうようなツッコミが出る辺りが実に彼らしい。
そのまま流れ始めるユルい空気に乗っかるように、開き直るような言葉を吐いて…ついでに、腰に両手をあててドヤ顔も添えておく。

「ちょっとねー、出先で強いのとマジカルなガチンコしまして。
火のパワーを犠牲にしたら、こうなった…みたいな?」

あははー、と困ったように笑いながら答える。
つまり"上級魔法使い同士の交戦で炎の加護を失った故に魔力が変質してこうなった"という事柄を、非戦闘員である一般の方にわかりやすく説明…したかった。
ざっくりしすぎて逆にわかりにくくなっている気がする、と、気付いたのは既に口を開いた後。
…まぁ、彼は己がヒトではない事を知っているし、深く突っ込まれたら話せばイイや。
そんな風に相変わらず暢気な思考で言葉を発しながら、こちらもゆっくりと歩み寄っていく。

ジェルヴェ > 「ああマジカルね。わかるわかるゥ。あるよねー」

(その時、店主の中で想定した相槌のイメージはうら若い街の娘だった。言うまでもなくまるで理解できていないが、軽快に頷きながら店の中へと入ってきた彼女の後方へ。
着こんだコートをまずは預かろうと背後へ回り、相手の肩へと手を掛ける。)

「一瞬誰かと思ったよ。久しぶりーとか言うからさ、俺こんな真っ白ちゃんに手ェ出したかな、とか。
 さ、どーぞお嬢さん。お好きな席へ」

(先程の若者意識よりまともな普段通りの調子に戻り、笑い声に混ぜて軽口を続ける。彼女がコートの袖から腕を抜けば上着はこちらでハンガーへ掛けるつもりで。
空いている席を勧める店主の声が、ほかに誰も居やしないがらりとした店内によく響いた。)

紅月 > 「ぷふふっ、どこのピチピチ姉ちゃんよソレぇ」

肩に手を置く後ろの彼にクスクスと笑いかけながら、モソモソとコートを脱ぎ始める…帽子と緩んだストールもついでに預けて仕舞おうか。

「っていうか手ェ出してる前提なの…ジジさんの破廉恥」

軽口に軽口で返しながら濃紺のシャツに黒いベストの身軽な姿へ。
「はいはーい」なんて返事をしつつ、下ろした髪をふわりと揺らしカウンター席へと歩を進める…こっちの方が若干片付けやすそう、なんて思ってみたり。

「そーだ、何かご飯ちょーだいゴハン。
お腹空いちゃった~」

…後片付けへの配慮は出来るのに、食欲は自重しない。
席へと座りながら話すその表情は悪意の欠片もない笑顔…勝手知ったる、という雰囲気すら出ているやも知れない。

ジェルヴェ > (預かった衣類を壁に掛け、軽く形を整えておく。背を向けて受ける口調は記憶にある彼女の喋り方に違わず、どうやら怪我などはしていないようだと分かる。
マジカルな、ガチンコ。噛み砕かれた後の説明から察するにどうやら何者かとの戦闘があったらしいが、きっと詳しく説明されても彼女の現状をすべて理解するには至らないだろう。ともかく無事ならそれでよし、身も蓋もなく呑気な思考で振り返り、カウンター席へ着く相手の背を見届けてから)

「なんだろう、うちに来る女子は高確率でメシ食いたがるな。この時間に」

(繰り出された注文につい、他の常連客を連想しまた笑ってしまった。穏やかに声を弾ませながらカウンターの中へと進み、そのまま設置された食料用の貯蔵庫を開いて中を検める。

―――肉、野菜、卵。なんて事だ。材料がないと言う必殺の呪文が使えない。)

「手ェ込んだモン作れねぇけど、いい?何系が食いたいの」

(ぱたりと戸を閉め屈めていた身を起こし、腰に手を当て彼女のほうへと向き直る。白い髪と緑色をした瞳を眺めながら予めグラスの用意を進め、大雑把に注文を問いかけた。)

紅月 > 「そーなの?
そのコとイイ酒飲めそうだわぁ…こう、罪悪感もスパイス、みたいな」

まだ会った事のない常連とやらに想いを馳せる…食いしん坊な女の子、それも酒場に出入りするような子なら気が合うかもしれない。
ホクホクと勝手に想像を膨らませる途中、はた、と気付く…己は"女子"という枠に入っちゃっていいのだろうか?
恐らく食料の在庫を確認しているんだろう店主を視界におさめつつ、逸れた思考にソッと蓋をする。

「いいよいいよ、全っ然っ!!
ん~…じゃあ、卵ある?それで何か得意なのを」

キラキラと…そりゃあもう、キラっキラと。
普段振る舞う側になりがちの紅月にとっては、知人の手料理が食べられるだなんて非常に貴重な体験…まだ内容も決まってないのに嬉々と目を輝かせて。
『何系か』と問われれば軽く首を傾げ…真っ先に思い付いたのが、卵。
これなら誰に頼んでもハズレは少ないし、調理難易度もピンキリ…無難な所を言っておけば確実だろう、くらいのつもりで。
そこそこ腹にも溜まるし、卵って万能選手だと思うの。

ジェルヴェ > 「あぁ、うん。そのうちタイミング合うんじゃねぇかな。まァ居たら仲良くしてやって。おじさん引っ込んどくから」

(その時は料理の注文が倍になる可能性があるのだが。互いに来店頻度は不規則だから、にぎやかなガールズトークが繰り広げられる未来はおおよそ来ないだろうと高を括った。

しかし和やかに、できる限り適当に告げられたリクエストに応えようと働きかけていた気力はそこまでだ。指定された食材に、途端店主の浮かべていた笑みは彼女と等しく輝きを放ち)

「ナマ。」

(期待に満ちたまなざしを受け、言い放ったのは彼女の言葉に対する返答だった。すなわち『得意なもの』としての答えである。
多分それでは伝わりにくいだろうと、笑みを絶やさず続けざま口を開いて解説に入った。ツッコミや、リアクション。受ける諸々を貰うより前に、淡々と男の声が続く。)

「ジョッキを用意します。卵を割ります。入れます。完成です。
 無駄なく栄養摂取できてスタミナ付くよ。今日は数回戦やりたいって夜にピッタリ。超オススメ。」

紅月 > 「おー…3人で飲み明かせるのを期待しとく」

暗に"逃がさないぞ"と言いつつ…次いでお料理のオネダリに入る、訳だが。
何だろう、急に輝くような笑みを浮かべた彼に虚を突かれて…ぱちくり、と目を瞬かせる。
そうしてそのまま告げられる、つまりは丸呑みしろという其れを1拍遅れて理解して。

「…素材の味ィ!?
いやいや今精つけさせてどーすんのよ、ソッチ付いてないからね!」

男ノ形ならともかく、残念ながら今ついてるのはカウンターにノッシリと乗っかってる胸部だけである…じゃなくて。

「え、何、ジジさん卵料理作るの苦手なの?
違うのの方がいい?」

そう…何故か急に変わった表情に、材料を指定した瞬間にヤル気を極限までロストしたようなこのコメント。
もしかしたら卵料理が極端に苦手なんだろうか…首を傾げて心底不思議そうに問う。

ジェルヴェ > 「えっ、じゃあ俺が飲もうか?二階行く?」

(今度は男の顔が驚きを見せた。わざとらしく大袈裟な表情で自分を指さし問うた後、その指をすっと奥の通路へ向けて指し示す。
そうして大真面目に不思議がっている様相を呈していたが、素直に首を傾けて注がれる視線に然して時間もかからず、店主の顔は困ったような曖昧な笑みに変化する。
セクハラ発言も済ませた事だし、と観念した様子だった。)

「いや、あるし作るよ。…まあ、元々料理自体得意も苦手もないんだけど。でもマジで、簡単なやつな」

(素直な反応を受けると弱い、気がする。これがよく料理を注文する件の常連客だったなら、本気で生卵をジョッキに注ぎ提供していた所だったかもしれない。
純粋なのは彼女の美点だ。用意した空のグラスにはひとまず水を差して彼女の前へ置き、再び貯蔵庫へ向かって材料を取り始めた。
まず卵。それから一瞬考えたが、伸ばした手は無事一つ二つと別の食材を追加で取り出して、調理台にいくつかの品が移されていく。
卵と肉が入った包みと、余っていたキャベツ。それらが出払った事で貯蔵庫は綺麗にスカスカだ。)

紅月 > とりあえず二階云々に関しては、酒を飲んでもいないのに血色の良くなった頬と
「…はれんち」
という小さな声で返答として。

「あぁ、いーよいーよ。
私、他人様に作ってあげるか勝手に食われちゃうばっかりだから…ふふっ、何なら作ってくれるだけでも嬉しいもん」

本当に作ってくれるらしいとわかれば、まだ少し頬を染めたまま水を受け取り…頬杖ついて、ふわりと微笑み。

「…何だかんだオネダリ聞いてくれるんだよな~、ジジさん大好きー」

相変わらずのユルい調子…けれど冗談というよりは"しみじみ"といった声色で言い。
頬杖をついたまま、ゴソゴソと準備をする彼をのんびり眺め…やっぱり、楽しげにクスクスと笑って。

ジェルヴェ > 「あっはー、俺も紅ちゃん大好きー。正直料理はめんどくせぇけど」

(ボウルやら泡だて器やら包丁やら、ごそごそと必要な器具を棚から取り出して食材の隣に並べると、途端に調理台は賑やかになった。この店ではこの光景自体が少々珍しい。
手と調理器具を洗い準備を終えると、軽い口調で本音の吐露まで付け足し同意を返しながら調理に取り掛かる。
作業を始めてしまえば、手際の良さも相俟って完成まではあっという間だった。手の込んだ品は作れない、そう明言した通り、想定したのは実にシンプルな料理だ。

まずはキャベツを包丁で千切りにし、皿へ盛る。続いてフライパンを火に掛け熱し、合間に卵をボウルに割り入れ溶きほぐしいくつかの調味料を加えて味を付け、パンが適度に熱を持ち始めたら卵を投入。
丸く厚めに形を整え焼き加減を確認し、千切りにしたキャベツの上に焼いた玉子を乗せ―完成である。

キャベツに柔らかく覆いかぶさった玉子は半熟に艶を放ち、ほくほくと湯気を立てている。
そこに市場やそこらで瓶詰になって売っているドミグラスソースを掛け、パセリを刻んで振りかけて終わり。ものの数分、料理と言えるかどうかすら怪しい手軽な品だった。)

「お待たせしました。こちら”キャベツに玉子焼きのせたやつ”でございます。」

(コトリ。静かに音を立て、カウンターの向こうから彼女の前へと皿を出す。フォークとついでに使い捨ての安い紙ナプキンも添えておいた。
僅かな振動にソースを孕んだ玉子の半熟部分がふわりと揺れて、シャンデリアの明かりを受けてきらめいた。酒と煙草のにおいが染みついた安い酒場に、たちまち温まったソースの香りが立ち込める。)

ご案内:「貧民地区 Bar『 』」に紅月さんが現れました。
ジェルヴェ > (彼女に品を出した後、片付けに取り掛かる最中でゴミ箱に転がった卵の殻が目についた。
流水に手を晒しながら、それからつい数秒の間意味もなくゴミ箱の中を見つめていた事にふと気付く。
ちらりと視線をスツール席に投げると、相手は皿に乗ったキャベツと玉子だけの料理に何か明るく言いながらフォークを握り、手を付け始めていた。
店主は目を伏せて視線を逸らし、呼気だけで小さく笑って使用した器具を洗い後片付けを進めていく。

―――さて。昔馴染みの酔っ払いたちにはすこぶる高評価を貰う卵料理だが、素面で、女性で、ヒトではない―らしい―今夜の客にも好評だったのか否か。
結果は次回、また料理の注文を受けるかどうかでおのずと判明することだろう。
店名のないどこかの酒場は、その日も明け方近くまで店を開けていたと言う。)

ご案内:「貧民地区 Bar『 』」からジェルヴェさんが去りました。
紅月 > 「ちょっと兄さん、本音出てる本音…ぷ、っふふ。
今度手料理差し入れるからさ、堪忍」

付け足された其れに一先ずツッコミを入れてから、面倒とボヤく割には様になる調理姿に笑みを浮かべる。
色男は何をやっても格好イイからズルい、なんて笑って。
トトト、と刻む音やシュゥウゥ…と卵の焼ける音を楽しむ。

「…って、タイトル雑ーっ!
いただきまー…っ熱!
あふ、はふ……あっ、凄いとろける…おいし」

ふるふるフワフワ、シャキシャキとろぉり…食べる前から美味しそうだったそれは案の定、幸せの味。
数百年ぶりにうっかり舌を火傷しかけながら
「卵とデミグラスのコラボはズルい…」
なんて呟きつつ、今度自宅で作ってみようと決意。
お手軽料理ならそれはそれ、真似できるレシピは勉強になる。

「なんだぁ味付けカンペキなんじゃん…面倒がらないで、もっと作ればいいのに」

やはりというか、好評価なのは言わずもがな。
…その日から毎回とは言わずとも、来店の度に店主がゴハンのオネダリをされる事になるのは、まだ知らぬお話である。

ご案内:「貧民地区 Bar『 』」から紅月さんが去りました。