2018/09/21 のログ
ご案内:「マグメール郊外」にシチューさんが現れました。
シチュー > からっと晴れた秋の日。街道からも王都の城門からもさほど離れていない木立の中で、小さな人影があっちいったりこっちいったりとせわしない。

「これもいい感じの枝ー。っと、こっちもカラカラ乾燥してよく火が着きそう!」

ミレー族のメイド奴隷が小脇に抱えているのは乾いた小枝類。
メイド長から命じられて、早めに秋冬に向けてのお屋敷の暖房準備をしている。そばにある、ロバつきの小さな荷馬車へ集めたものを入れては少し遠くまで枝をかき集め。その繰り返しをひとりで続けている。

ご案内:「マグメール郊外」にジーヴァさんが現れました。
ジーヴァ > 先日の王城侵入から日は経ったものの、ジーヴァの身体についた生傷は未だ痕を残す。
これでは当分押し入りはできないと、ギルドからは一時的な行動中止を言い渡された。
こうして暇になったジーヴァは、フードを目深に被ったままあてもなく歩き続け、やがて王都の郊外までやってきたのだ。
青空が遠く見える晴れの日だというのにどこか肌寒く、枯れかけた木々は秋の訪れを感じさせる。

「……お手伝いか?一人きりでよくもまあそんなに働けるもんだ。
 少しはサボったって誰も文句言わないぜ」

そんな時に目に入ったのが、せかせかと動き回るミレー族の少女。
首輪を見れば奴隷だとすぐに分かるが、その表情はどこか明るいようにジーヴァは感じた。
近くの大岩に腰かけ、錫杖を置いて仕事ぶりをしばし眺めるようにミレー族の少女を見る。

シチュー > 大きな倒木の裂け目に、傘の張ったキノコの姿。枯れ枝と一緒にこれも収穫してしまおうと手のひらにそれを取り。ふんふんと小鼻を近づけて匂いを確かめていると革のブーツが地面を踏む音がする。振り返れば短い黒髪、たいまつの炎のように赤い瞳のローブ姿。ぱちぱちと睫毛弾ませたら、にー!と会釈の変わりに笑顔を見せ。

「こんにちは、お兄さん!
そうだよー。……ふふー。これもメイドの修行のうちだよ。
今は修行の身だけど……。
僕、いつか立派なメイドになってご主人さまにご奉仕するんだー!」

にこやかにそう言って。両手に抱えた枝を揺らしてみせる。
荷馬車に放り込めば、大きな銀の錫杖を物珍しそうに見上げ。

「お兄さんは冒険者さん?
……不思議な形の武器……」

ジーヴァ > 「立派なメイド、ねえ。首輪付けられてそこまで前向きでいられるのは一種の才能だな。
 気を付けろよ?このご時世、お前みたいな奴はすぐに使い捨てられる」

フンと鼻を鳴らして愛想悪く答えれば、自らの得物である銀の錫杖を好奇心を丸見えにして見てくる少女と目が合う。
相手の方が背が低いせいでうっかり赤い瞳を見られ、慌ててフードを目深に被り直した。
魔眼の移植に失敗したおかげで色だけが赤くなってしまった瞳は、ジーヴァにとって
あまり人に見せるようなものではなかった。

「……っと!杖は見てもいいけど目は見るな!あんまりいいもんじゃない。
 俺はいわゆる魔術師様だよ、冒険者みたいなもんだけどな」

そう言って錫杖を手に取り、林の向こうに向けてちょいちょいと杖を振る。
唱えるのはごく小規模かつ魔力を抑えた、風の魔術。

「汝は小枝の運び手となりて――風よ吹け!」

ジーヴァの魔力を込めた詠唱と共に、突風が辺りから集まり、木々の中にあった
木の枝がバキバキと折れてはこちらへと集まってくる。

シチュー > 「あは……。ううん、使い捨てでもいいよ。
僕はその人に、ご主人さまにそれだけの恩があるんだー」

へにゃりとケモミミふせるようにして下がり眉で笑うと、ゆっくりと頭を振る。彼はぞんざいな口の聞き方をするけど、なんだか悪い人ではないと思った。

「え、あっ……!
ご、ごめんなさい……」

フードをなぜ目深にかぶっているかまで気が付かなかった。相手の嫌がる事をするつもりはなかったけれど、自分の不注意に慌てて目をそらし。ぺこりと頭を下げる。
けれど、続いた台詞に瞳は興奮気味に見開かれ。

「魔術師!魔法使い!!
わー……!冒険者の魔法使い!かっこいい!
じゃあじゃあ、その杖って魔法を使うための……、ふわああああ!」

彼が、書物の本の中や、街中でも遠目で見るよな別世界の住人だと知るや否や尻尾がきらんっ!と光って激しくはためいた。
そして紡がれた美しい呪文の旋律に、風の魔術で巻き上がる木の枝に歓声を上げ。

「一瞬で僕が半日働く分ぐらいの枝、集まっちゃった……!
お兄さんはー、とっても偉大な魔法使い!
どうもありがとー!
……えっと……。何かお礼がしたいけど……」

足元の枝の小山を見下ろして両手をぱんぱんっ、拍手じみて叩くと大きく両腕広げてかき集め。
笑顔を花開かせながらお礼を告げる。
そうして荷馬車もいっぱいになれば、何かお返しがしたいとメイド服のポケットを探るも何も出てこずに俯きがちに。

ジーヴァ > 獣耳がへたりと下がって落ち込んだかと思えば、すぐさま目を見開いて
集まった木の枝の前で歓声を上げて喜ぶ。
まったく子供らしい豊かな感情表現に、ジーヴァは頬を緩めた。

「どうだ、俺は偉大な魔法使いだろう!
 やろうと思えばこの辺りの木々だって小枝みたいに吹き飛ばせるぜ!」

錫杖を持った手を突き上げて少女と一緒に喜び、ひとしきりはしゃいだ。
それから少女と一緒に荷馬車への積み込みを手伝い、
ぎっしりと木の枝が詰まった荷台が完成する。

「お礼?そういや言ってなかったな……それじゃ屋敷まで案内してくれねえか?
 俺は色んな本を探していてな、貴族様なら何冊か持ってるだろう。
 本、分かるか?分厚くて紙がぎっしり詰まってるやつだ」

そう言ってひょいと荷馬車に乗り込み、荷台に錫杖を置く。
そして少女が上がってきやすいように手を伸ばし、こちらへ来るように促した。

シチュー > 「すごいー!大魔法使いだっ!
夏じゃなくても、杖から嵐が出てくる!
……それに……はぁぁ……。ぴかぴか光ってとってもきれいな杖……。
王様たちの宝物みたいな杖に、さっきのすごい技……。きっと使いこなすのにすっごく修行したんだろうなあ……。お兄さん……」

一緒になってはしゃぎ、その場で跳ねつつも。
竜の宝物庫に眠るよな立派な杖を見てうっとりとため息。
ついで、彼を尊敬するよな眼差しで見上げて……。奥を覗かないようにちょっと肩のあたりを見た。

「うんっ!いいよー。
ご主人さまは治癒術扱う人だから、魔法使いさんの欲しい本が書斎にあると思う。僕がお屋敷の人たちにお兄さんのことお話しておくからたくさん見ていってよー。
じゃあー出発!……っと。ありがとー」

相手の台詞にこくんと頷けば、奴隷の自分でもお礼ができるとニコニコ喜び。
伸ばしてもらった手に掴まると、ひょいと台に乗り込み。
ロバの手綱を少し引けば、かぽかぽ歩き出した。

「僕はシチュー。素敵な魔法使いさんのお名前、教えてほしいなー?」

木立の間を行きながら。軽く語尾を上げ。

ジーヴァ > 「治癒術か、そりゃあ有難いな。奪いやす――いや、その手の本はまだ少ない。
 せめて写本でも譲ってもらえりゃいいんだが」

普段ならばここで別れ、尾行した後に屋敷を見つけて潜入するのがいつものやり方だった。
だがこうして今は少女を手伝い、あまつさえ馬車に乗せてもらって青空の下をゆったりと進んでいる。
怪我が治っていないのもあるのだろう、右足が未だキリキリと痛むからだ。
と自分に言い聞かせ、ジーヴァは少女の問いに答える。

「俺の名前はジーヴァ。ギルドじゃ三つ星のジーヴァって呼ばれてる。
 ほら、この杖に三つの宝石が嵌まってるだろ?これが俺の実力を表してるんだ。
 結構頑張ったんだぜ、なんなら触ってみるか?」

そう言って錫杖を少女に差し出す。銀で作られたそれは少女には重いかもしれないが、
先端にある三つの宝石は持ち主のように誇り高く、しっかりと日差しを受けて光り輝く。

シチュー > 「それなら、僕がお願いしてみるよ。
メイド長にお願いしたら、写し本をしてもいいって言ってくれるかも!」

彼の心中を察する事もなく、人の役に立ちたいとぐっと拳握るよにして言って勢いをつけた。秋の青空は爽やかで、あちらこちらから涼しげな虫の音がする。木陰は肌寒いが、木の枝をくぐり抜けた木漏れ日に荷馬車がさしかかると肌や衣服が温もる心地だ。

「ジーヴァ。よろしくね、ジーヴァ!
そっかー!……だから三ツ星なんだね。
この杖の宝石、ジーヴァがいつかかぶる王冠に見えるよー。
――いいの!?じゃ、……じゃあ……!」

彼の名を知って声音を明るく尻尾を振れば、瞳を細めて珍しい銀の杖を眺めて。
一度手綱を降ろすと、おそるおそる両手でそれに触れ。

「杖なのに……、何か、生きてるみたい。
風に立つライオンみたい……。それに、眩しいぐらいきらきらして……」

初めて触る魔法の触媒に感無量。ぽぅっと頬を赤らめながら、不思議な魅力放つ杖に見惚れて。
見せてくれてありがとう、と手を離した。

ジーヴァ > ちりりと鳴く虫の音と、優しい木漏れ日。この二つが不思議と心を落ち着かせ、
王城での出来事が夢だったかのように思える。
だが時折痛む右足の付け根が、すぐさまジーヴァを現実に引き戻す。

「それで済むなら……まぁいいんだけどよ。
 貴族様ってのは大抵自分の強みを隠したがって見せないもんだ。
 もし本当にそのまま写本でくれるんなら、何かの条件が付くはず……」

錫杖を見つめるシチューをそのままに、徐々に近づいてきた屋敷と思しき建物を眺める。
いざとなれば彼女を人質に……いやそれでは容赦なく切り捨てられるだろう。
ここは彼女を相手にぶつけ、その隙に氷槍で喉元に一撃。

などと物騒な思考をおくびにも出さず、錫杖を受け取ったジーヴァは離したシチューの手を握った。
それは握手のようにしっかりと握られたものだ。

「ライオン……獅子か。そういえばこいつに名前を付けてなかったな。
 シチューのおかげで気づけたお礼に、こいつの銘は銀獅子としよう」

錫杖を空にかざしてクルッと一回転させ、心なしか名付けに喜ぶように錫杖が一瞬強く煌いて見えた。
意思や人格のある武器は名付けのセンスでも切れ味や使い心地が違うと聞いたが、これもそうなのだろうか?
ジーヴァは屋敷に着くまでしばしの間、錫杖を撫でてみたり振ってみたりして、
何か声が聞こえてこないか試していた。

シチュー > たまに相手が台の上で右足に力をこめているような気がする。相手の怪我を知らない今は、王城での出来事を知らない身としては、少し首をかしげるに留まり。

「僕のご主人さまは心の大きな人だから、条件をつけたりはしないと思うけど……。うーん。
とりあえず、かけあってみるね。
もしだめでも、……えっと……。その時はとっておきの紅茶を淹れてあげるね、ジーヴァ!」

彼の台詞を耳にしたら、安請負だったかなと少しケモミミが下がった。彼の脳裏で喉元を氷槍にて裂かれていたとは知らず、少し俯き加減で告げる。

「ふふー。ジーヴァの手、あったかいねー。
――銀獅子!とっても強くて頼りがいありそな名前だねー!」

にぎにぎ。握手のまま、何か嬉しそうにその手を柔く握ったり緩めたりと力をこめ。
ふと口に出た動物が杖の名前とうつろえば、名付け親になったいい気分。彼が銀の杖を動かす様子を、やはり眩しそうに見つめている。

ジーヴァ > 「それはありがたいな、俺は紅茶が好きなんだ。
 バカみたいに冷えた日にグイッとやると、あっという間に身体が動けるようになる。
 そこにパンとかクッキーも付ければ元気一杯ってもんだよ」

力を込めては抜き、柔らかいシチューの指にジーヴァの少しごつごつとした指を絡める。
冷えるようになってきた身体を温めるようにシチューの身体に身を寄せて、
荷馬車の上で二人、ゆったりとした時間を過ごす。

「名前はそいつの力になる。この杖も獅子みたいに、俺の旅を立派に支えてくれるはずさ。
 ……さて、あれが屋敷か?なかなか大きいな」

道がだんだんと整備され、踏み慣らされた街道へと変わってゆく。
しっかりと雑草が抜かれた土は石畳にも負けない丈夫さを見せ、荷馬車の重みを受け止めて前へ前へと進めていく。

シチュー > 「そうなんだ。じゃあ、お客様に出す時みたいにブランデーも垂らしてあげるね。焼き立てのワッフルはどうかな?僕が焼いたので良かったら!」

荷馬車の上で並んで、ロバのひづめが柔らかい雑草の下生えの上を行くのを聞きながら。
あれこれと彼をもてなそうと身振り手振りをくわえて。

「きっとそうなるよ!
僕も、ジーヴァの旅の無事をお祈りするよ。
――えへー!でしょう!あれが僕のご主人さまのお屋敷!」

杖だけじゃなくて、彼の旅の無事をも小さな祈りが支えてると笑みかけて。整地された石畳を進む荷馬車の前に現れた建物に、小さく胸を張ってみせたり。

――その後にメイド長へ話を通した後、彼を書斎へと案内するのだけれども。その後、ミレー族のメイド奴隷が彼の人質にとられたのか、屋敷の誰かが氷槍で喉元をさらわれたのかはまた別のお話で――

ご案内:「マグメール郊外」からシチューさんが去りました。
ご案内:「マグメール郊外」からジーヴァさんが去りました。