2018/05/25 のログ
ご案内:「所在も知れぬ応接間」にズメイさんが現れました。
ズメイ > 【お約束にお借り致します】
ご案内:「所在も知れぬ応接間」に竜雪さんが現れました。
ズメイ > ――"当方、捜し物に心当たりが御座います。"
縁ある商会に、そうした内密の文を届けたのが数日前のこと。

博覧してあったり、競売に出すものとは別に、「永きに渡って」個人的に蒐集したものを納める、
『宝物庫』と俗称するこの場所は、広場よりカーテン付きの馬車で数十分、そのまま乗り込んだ建物の、
魔術的に秘め隠された通路を幾つも通った先にある。

そろそろだろう。案内役の従者に導かれ、長旅を経た令嬢を労うべく立ち上がり、出迎えの姿勢。
開いた扉の向こうに微笑みかけると、うやうやしく頭を垂れた。

「ようこそ、お出でくださいました。竜雪・トゥネルソル様。
 お初にお目にかかる。私がゼムリア商会の、当代の主を務めておりますズメイ・ゼムリア。
 ……お気軽に、ズメイとお呼びください。さて、すぐにも件の品、お持ち致しますよ」

導かれたのは応接間としては広い個室で、多くの調度品に囲まれた奢侈を尽くした空間だ。
しかし窓はない。この場所が何処か、という情報を徹底的に遮断した場所。
その中央の、テーブルを挟んで向かい合うビロードのソファの片割れへ、どうぞ……と着席を促した。
テーブルの上には約束の品はまだない。適度に焦らすも楽しみの一つだ。

竜雪 > 文が届けられたが、鑑識的な瞳を持つのは商会でも数が限られた者たち。
このうち、商会生粋の引き籠り竜、別名としては確実に研究肌、学者肌みたいな娘が、
名代として赴いたのがつい先程。…場所は兎も角、商会の名代としての訪問なのできちんとするしか無くて。
建物の構造は…危険な香りや気配はなく寧ろ魔術が幾重にも張り巡らされた厳重且つ威厳のある風格の模様。

案内役の従者に導かれてやってきたが、そんなに疲れているとは思えない風に振舞うのは。
対して出迎えてくれた相手はそこらの下級貴族とは違う風格ある貴族めいた人物であった。
いや、貴族かも知れない、つい先ほどまで『視て』いた金色の瞳を元の瞳色に戻すと、此方は軽めの会釈を返そう。

「…良しなに。トゥルネソル商会の名代として参りました。リスお母様に代わり、私 竜雪がご挨拶の返礼を兼ねて。
 …私の事は竜雪、と。…初対面でありますので、『ゼムリア』様とお呼び致しますね。」

初対面なので あくまでも ズメイ とは呼ばずに、ゼムリア呼びにしてみたという。
初対面であるのでニッコリ笑顔とかはない、あくまでも微笑程度なのだ。
実家の商会とはどこか貴族めいた内装という造りと―なぜか窓が無いのと。外から覗き込まれないように対処した結果か。
ソファへと勧められればそちらに腰かけるとしよう、彼の事はあまり見ない、テーブルへと視線を向けたが、

(テーブルの上にまだ 物はない、これは焦らす作戦ですか!?)

暫し待機あるのみだ。

ズメイ > ほほう、これは――……扉の向こうから現れた令嬢をこちらもまた見つめた。
失礼にならぬ程度に視認した目鼻立ちに容姿、そして噂から想起したインドアな痩せ型とは真反対の体つき。
実に良い――などと助平心はおくびにも出さず真面目くさった表情で微笑を返そう。

「ふむ。ああ、それで構わない。ではセツ……彼の商会からきみが名代として派遣されたということは、
 その『眼』において、ひとかどの覚えがあるということで間違いはないのだね。
 ではすまないが、今暫しレディ扱いは控えさせてもらおう。我々は対等に商談を交わす相手として……
 ……茶と菓子は終わってからにしよう。万が一、粗相があってはいけない」

向かい側に座りながら、まっすぐ。何やら曰く有りげの『眼』の変色…能力の行使を見ていたということ。
そして彼女の立場も含め、念押すようにプレッシャーをかける。
まっすぐ彼女を見つめた後、テーブルの上に乗せられていた目録を手に取る。
それに眼を通し、僅かな沈黙で勿体つけた後、

「……『魔学概論』、これは古い学術書でありますな。全十冊のうち、『抜け』である4巻と7巻。
 そして、不世出の……そう、11巻目が我が手元に。これの存在は未だ学会も知られておらぬため他言は無用に。
 それと――これですな。 『災禍龍の秘法書』の、失われた36から47、そして132から165ページ目。
 数あるそちらの捜し物のほんの一角でございますが、我が宝物庫を開陳し、これより目を通していただきますが…?」

見た目より低い声でよどみ無く読み上げた後、顔を上げて微笑みかける。品はまだこない。
趣味としては渋いほうにあたる。母君のご趣味だろうかと、その表情を伺ってみよう。

竜雪 > 引き籠りなのはあくまでも性格からである。外見は凛々しい娘そのものだ、
やる気スイッチさえ入ればそこそこ腕は立つほど。ただ普段が低性能だったりする。
彼の事は視てはいたが、初対面であるからしてじっくりとは肉眼ではなく竜眼(最低限)で見ている。

(…やめよう)

先程の瞳でどこまで彼の事を見定めて、またこの建物その物を視たか。
制限が己でしない限り無理のない程度まで視えてしまう、それが竜眼というものだが、
まぁじっくり重箱の隅っこまで視る様な性格ではないので、純粋にどんな魔術の術式か、
暗号術式から基本構造を視ていただけだろう。

「『瞳』の持ち主は今の所 我が一族では母、私 竜胆 ラファル位です。
 周りが賑やかなので、私が本日罷り越した次第です。そうですね、レディ扱いしますと支障が出ます。
 あくまでも対等と…畏まりました。『視る』のは商談に留めますね。」

竜眼でかなり見てしまっていた、彼の事も視ていたのだ。
己とは違い 角も生えていない、一見としたら貴族の青年にしか見えない。
だが、その人並外れた風格はまさに 格上の存在にして覇者。間違っても勝てはしない。
勝てるとしたら同じ覇道を持つ母くらいだろう。正直分からない。
視線が交わる、だが彼から目録へと視線が落ちた、語られる言葉 少し視線を揚げる娘、直に落ちたが。

「…学会が喚きますね。古来に失われたとか。何処で…と聞くのは吝かではありません、
 色々と伝手が御座いましょうから 聞かないで置きましょう。
 魔学概論の4と7には確か 人間では上級魔導士でないと出来ない術式がある筈。
 11巻目になると、魔族でも躊躇するものがあるとか。…『災禍龍の秘法書』…それは母が喜びましょう。
 …私の堪えがたい知識の求めを突っつくおつもりですか?貪欲に探し求めてやまないと申しますのに。
 …是非に目にして手に取りたいものです。」

はい、釣れました、商会にはこういう頭脳系の学者肌は竜雪含めると片指で足りてしまう。
よく言えば知識は常識の範囲内で、悪く言えば脳筋。母は此処まで知識は高くはない。浅く広くそれが母だった。
探し物で一番 食いつきがいいのは竜雪そのものだ。そわそわしだした、待ちきれないようだ
…ただ あくまでも待機している。 まだソファの上で待機しているが、顔はほんの少しだけ動揺していたりする。

ズメイ > 「情報や秘密の売り買いを生業としている者も多いが、それを真に所有することはできない。
 秘密を持っているだけで、命という利子を払わざるを得なくなることもある。
 ……気をつけたまえ、という話さ。まあ私の場合、私自身のことよりも交友関係を探られると痛いのだがね。
 まあそれはそれ、きみが視たものも他言無用で頼むよ。ひとに恐がられると、これでも傷つくんだ――入ってくれ」

彼女の眼の利き方が尋常でないことがわかった傍ら、それに付きまとう危険性を危惧しつつも、
自らを視たことはさして気にすることはないと、さて軽く笑ってみせよう。
丁度、ノックのあとに従者が入室し、丁重に持つは三冊の無地装丁の書物と、
魔術的に防護が施された重厚なファイルに綴じられた紙片の束。立ち上がってそれを受け取ると、
そのまま竜雪の隣に座り直し、一冊を手に取った。

「賢明だ。いやしかし、これに至っては運悪く表に出ることがなかった類の宝だ、ということは先に言っておこう。
 つまり、この叡智に利子はそうつかない。幾らでやりとりするか、翻訳にどれだけの時間がかかるかを考えよう。
 さて、鑑定士であり学徒であるきみ……『視える』かね?」

保存状態はいいが大分年代物の書物だ。静かに一冊を取り上げて、軽く表面を撫でる。
一体なんの皮で装丁されたものであろうか、視線をすぐ横の少女に滑らせ、その幼竜の眼に真贋を問うた。

竜雪 > 「人の情報屋は人の轍から決して超えて参りません。
 人為らざる者になると其の轍を超える為、情報と秘密の家業の方々は総じて長生き出来ぬ者です。
 命限りあり者にとっては其の忠告で尻込みも致しましょう。
 少しばかりゼムリア様の事を『拝見』致しましたが秘密にしておきましょう。
 私は口は堅い方です、溜め込む方ですし…知識も記憶も。」

溜め込み そして蓄積して無価値になったら速攻で忘却する。
普段は余り『視』ないのだが、此処に至るまで時々『瞳の色』が変化している。ちろちろと見ているのだ。
ソファの所から微塵にも動かない、あくまでも此方は客の立場である。
彼の振舞をただの瞳で見続けていたが隣に腰かけられて 瞬きを一つ。

「こうして人知れず 宝としては死蔵されていく運命でしょうか。
 叡智…商談については私では裁断が出来かねますので、あくまでも途中までです。
 翻訳なら…その辺の人間レベルの魔導暗号術式でありましたら数分も掛らずに解読出来ましょう。
 正し、魔学概論ですので、少し 掛るかも…罠で呪歌つけている胡散臭い起動式術を組み込んだ書もありますし。
 …では『視て』みます、…竜の皮は在り来りですが。」

保存魔法掛けているのでは。これ自体に厄介な攻撃魔法は―

 ビン パシッ ボキッバキバキッ

鏃が飛び出て来た それを目にも止まらぬスピードで掴んだ そして バキバキにした音。
無表情でそれらを対処すると、改めて最初のページへと指を這わせる。
瞳はもう 金色に染まっていた、ぺらぺらと本を捲るスピードは普通だ、まだ。

ズメイ > 「おっ……と、失礼。読み解こうとする者に対しての防護……なにも表紙に編まれているものだけではありますまいな。
 こちらの落ち度だ。出来る限りこちらで解いておこう――と、言いたい、が……」

鏃に飛んだ手はほぼ同時。ゆえにより近いほうが鏃に対処した、ということになる。
少女の手に自らの手を重ねることとなった。その無礼を詫びつつ、無事を歓び、王子様になれなかったことを多少悔やもう。
しかし改めて横顔を見やれば、おそらくは未発見の文面に胸ときめかせている有様。

「大人びた顔立ちではあったが……こう見ると、年頃の少女だ。
 その視線が私のほうにあればだいぶ喜ばしかったのだが――……? ……ああ、セツ?」

邪魔をするまいと横から、微笑ましく眺めてはいた。
大人が子供の読書の様を観察するような状況。あくまでこれは鑑定作業だ。
阻害しようものなら信用に差し障る――が、めくられていくなか、何かを眼に留める。
ふと彼女がページを手繰る手を指を挟んで止めるとともに、
その耳元に声を吹き込んで、一旦の制止を求めた。

竜雪 > 「いきなり呪いカウンター発動する書物はザラ。これは物理的にやってきましたが 私の体に傷はつきません」

掌を広げれば粉砕してしまった鏃だったもの。一応古竜と人の間に生まれた竜としては
防御力だけはその辺の竜より上だった。攻撃力とかは?と聞かれれば首を傾げるかも知れない。
探しているものを見つけたその顔は宝物を見つけた少年のようだが、生憎少女は女。
パラパラとめくる様は令嬢ではなくその辺の文学少女だった。

「…………。 ひゃ、え、あ、はい。ゼムリア様?」

…手が重なった、と同時に耳元に囁かれる言葉と息遣いに びくっとして、瞳の色が金から赤へと戻る。
集中して視ていたから、急に意識が浮上したのとが今って驚いた顔を向ける。
鑑定作業は止まってしまった、何かやってしまいましたか?とういう顔で見つめて。

竜雪 > 【続きは後日となりました】
ご案内:「所在も知れぬ応接間」から竜雪さんが去りました。
ご案内:「所在も知れぬ応接間」からズメイさんが去りました。