2017/12/22 のログ
■ルルディ > 急に湧いたのか、それとも、この一帯の上空だけがそうなのか、分厚い黒雲が頭上に蓋をしていた。
そのせいで、日没にはまだ時間がある筈なのに、周囲は夜更けのように青黒かった。
精霊の前方には、石畳の幅広い街路がうねりながら伸び、その左右には石造りの民家がまばらに立ち並んでいる。
しかし、人が暮らしている気配はまるで無く、生活音も聞こえて来ない。風が吹き流れるか細い音だけが聞こえていた。
「これはまぁ、何とも辛気臭いところだね」
街路を歩む精霊は、左右を見渡しながら呟いた。街から街へと移動する途中の、通りすがりである。
前からも、後ろからも歩いて来る者はおらず、誰ともすれ違わない。
この辺りが、単に極めてひとけの少ない廃棄区画であるのか、魔性の土地であるのか、ぱっと見判別はつかない。
「目を楽しませてくれる景観がある訳でもなし……さっさと抜けてしまうのが吉かな」
廃村にしか見えないような場所でも、ひっそりと宿が営業しており客が出入りしていた……なんて風景を目にした事もある。
不気味な雰囲気について深く考える事もなく、この立ち止まり理由の無い街をさっさと通過すべく、精霊は少し歩調を速めた。
ご案内:「ゴーストタウン」からルルディさんが去りました。