2017/03/11 のログ
ご案内:「王都 平民地区の酒場」にチェシャ=ベルベットさんが現れました。
ご案内:「王都 平民地区の酒場」にティエンファさんが現れました。
チェシャ=ベルベット > 王都の平民地区にある静かな酒場のカウンターで
誰かを待つようにチェシャは座り、グラスを傾ける。
中身はノンアルコールのカクテルだ。
飲めないわけではないが、早々に酔うこともできない。
さて目当ての人物は来るだろうか。

ティエンファ > そこに、扉が開く音。 静かな酒場にはよく響いた。
入ってくるのは異邦の少年だ。 異国風情が滲んだ長衣に、人を探す釣り目がちの目。
そして、先に待っていたチェシャを見れば、よう、と声をかけてそっちに近づいた。

「お待たせしたぜ、チェシャ! って、おいおい、もう飲んでるのか? ズルいぜ」

ちぇー、と唇を尖らせる。 大人びて物静かなチェシャと好対照の、明るい元気な少年だ。

チェシャ=ベルベット > 入ってきた人物に一瞥を向ける。いつものツンとすました表情。
異国の風貌の少年に親しい表情を向けるでもなく視線を逸らすと

「遅い、ティエなんとか。
 それとこれは酒が入ってないからずるくない。」

ふんと鼻を鳴らして言い返す。
彼に向かって隣に来るようにこんこんと指で机を叩く。

ティエンファ > そっけない素振りを見れば、ひひ、と子供っぽく歯を見せて笑う。
呼ばれるままに隣に座れば、長く疲れを吐き出すように息を吐きだした。

「いやー、遅刻するかと思ったぜ 依頼先で荒事があってさ、血が飛んだから軽く水浴びしてきたんだ
 折角一緒に飲むのに、汗と血の匂いぷんぷんさせてたら悪いって思ってさ」

そして、チェシャが飲むカクテルを見れば、ちょっと笑って。

「そっか、呑むの待っててくれたんだな、あんがと チェシャ
 なに呑む? 待たせた詫びだ、一杯目は奢るぜ! 丁度懐も温かくなったしな!」

チェシャ=ベルベット > 「ふうん、だからあんまりいつもみたいに汗臭くないんだな。
 なるほど、一応体臭に気を使う余裕はあるわけだ」

人よりはずっといい嗅覚ですんとティエンファを嗅ぐと、彼の言葉に軽く頷いた。

「待ってたわけじゃない、たまたまそういう気分だったから選んだだけ。
 勘違いしないでくれる?……じゃあ、サングリア。果物多めのやつ」

奢ってくれるという言葉にあっさりと乗って、バーテンダーに果物やスパイスを混ぜた赤ワインの酒を頼む。
お前はどうする?というようにティエンファに視線を送り。

ティエンファ > 「えっ…お、俺って普段そんな汗臭いか!? いきなりショックなんだけど!?」

思わず自分の鼻に肩を近づけて嗅いでみる。 風呂に入ったわけではないが、まあ、臭くはなかった。
チェシャの鼻が特別良いんじゃなくって?とか情けない顔で言いつつ。

「へいへい、そういう気分って事で それでも良いさ、一緒に一杯目を飲めるってのが嬉しいだけだから!
 遠慮しないな!? 奢る方としては気持ちいいけどな、そういうの
 サングリャだっけ? じゃあ、俺も一緒の頼むわ!」

注文を受け、瓶で果物を漬けこんだワインを取り出すバーテンダー。
それを見て、お洒落だなコレ、とか素直な感想を漏らしつつ。

「普段は、エールとかみたいな判り易いのばっかしか飲まんからなあ なんか新鮮だわ」

チェシャ=ベルベット > 焦るティエンファを見て初めて笑みを漏らす。素直な笑みではなく悪戯が成功したような笑みだったが。

「さぁ、どうだろうね。僕じゃなきゃ気が付かないだけかも。
 まぁ悪臭ってわけじゃないから気にしなくてもいいよ。

 サングリア飲んだことないのか、へぇ……比較的飲みやすい酒だと思うけど
 逆に僕はエールって嫌だな。なんかオヤジ臭いから……苦いし」

味を思い出したのか顔をちょっとしかめて、バーテンダーに出されたグラスを受け取る。
赤ワインにオレンジなどの果物が入った鮮やかな酒だ。
ティエンファにも同じものが出されればグラスを軽く持ち上げ
乾杯でもするかい?と首を傾げて尋ねた。

ティエンファ > その笑顔を見れば、あ、と口を開けて目を瞬かせる。
それから、こちらも笑った。 一本取られたな、と情けないが、楽しそうな笑み。

「それなら一先ず安心しておくよ、気付いたチェシャが気にしない程度なら、ま、大丈夫だろ
 うん、初めて飲む と言うか、ワイン自体あんま呑まないんだよなぁ…なんか、こう、改まった酒みたいなイメージが」

お洒落でシックな、とか子供みたいな感想を漏らす少年は、
チェシャがエールを嫌う理由を聞けばからかうように目を細め。

「案外子供っぽいとこあんだな、チェシャ
 おう、乾杯だな! 共に酒を飲める今日の命に!」

少し変わった言い回しをして、しかし明るく笑ってグラスを鳴らし合わせる。
一口呑めば、甘い、と声を漏らし。 そしてすぐに目を細め、美味い、と言葉を重ねた。

チェシャ=ベルベット > ティエンファが笑うのを見れば、一瞬だけ呆けたように目を丸くするが
ふい、と視線を逸してそれきり笑顔は鳴りをひそめた。

「ワイン、この国じゃあ割りと頻繁に飲まれる酒だから飲めるようになっておいて損はないぜ。
 それほど畏まったものじゃないやつもあるし……。

 なんだよ、どーせ僕は子供だよ。あんなエールなんか飲むヤツのほうがおかしいんだ」

つんと拗ねたようにそっぽを向くが、グラスが打ち鳴らされればそれを一口飲む。
いつもどおりの味のような気もしたが、隣に誰かがいるおかげでその味がよりよいものになっている気もした。
ティエンファの言葉に無言で頷く、と彼の片手を取ってつ……と指で手の甲を撫でた。

「前の約束、覚えてる?」

視線を手に落としたまま、いつもよりはしおらしい態度を見せる。

ティエンファ > 驚いた表情を浮かべてから顔を逸らすチェシャに、どうした?と首を傾げるが、
猫っぽいチェシャの気まぐれかなと思い、少年は気を悪くした様子も見せない。

「折角王都に来たんだし、国の酒も味わわないとな!…とは思うんだけど、つい飲みなれたのに手を出しちゃうんだよなあ
 うん、でも、これは可愛い感じだけど、あんまり硬くならないで呑めそうだ」

頷いて、サングリアのグラスを傾ける。
ワインの染み込んだオレンジを歯先で少し齧る仕草。
拗ねた仕草をして見せるチェシャに楽しそうに笑って返す。
そして、手を擽る指の動きに目を瞬かせてから、

「覚えてるぜ? 呑む時は、覚悟が出来た時だ、ってな
 …俺もそうだけど、チェシャだって同じだろ? 覚えてんのか?」

からかうように目を細めて返す。 チェシャが重ねる手の甲は、チェシャと同じ年頃なのに、硬く、大きい。

チェシャ=ベルベット > サングリアを楽しむティエンファに、チェシャはじっとその手を撫でる。
自分よりもずっと逞しい彼の手を撫でていると、いよいよ勝手に気分が昂ぶってしまう。

「……自分で言った言葉くらい自分で覚えているよ。
 今日は仕事じゃないし、なんというか、僕は好きものだから……
 淫乱なのさ、僕は根っからの、生まれつきの。

 だからまぁ、君と寝たいと思うのも好きでやってることだよ。
 それで、そっちは覚悟できてるのかい?」

来たということはそういうことだろうとは思うものの、
未だに相手を信じられる証拠がない様子で上目遣いに見上げる。
もしかしたら彼ならいつもの陽気さで実は嘘でしたと態度を翻すことだってあるかもしれないだろうと思う。
恋した乙女じゃあるまいし、誘うのにいちいちこんな回りくどいことをしたのは久しぶりだった気がする。

「抱いてよ、ティエンファ。君が嫌じゃないなら」

酒をそっちのけで触っていた手に手を重ねて指を絡ませる。

ティエンファ > 拳を握り、何をどれだけ叩いて鍛えたのか、指の付け根は硬く、指は節が立って、この辺りでは見ない、武芸者の手だ。

「この間は、仕事なら、なんて言ってたくせに って、自分で淫乱とか言うなよ
 良いんじゃないか? 男なんだから、そういう事が好きだって可笑しかあない
 …俺には、覚悟なんてないよ」

あっさりと返した言葉は、経験が豊富なのにどこか臆病になっているチェシャの心に爪を立てるだろう。
しかし、重ねられたチェシャの指にするりと絡める指。 ぎゅ、とその手を絡み取れば、優しく目を細める。

「そんなんなくったって、チェシャが俺を気に入ってくれて、俺もチェシャを気に入ってる
 そうすりゃあ、そう言う事もあるだろうさ チェシャ、お前が良ければさ」

それが自然であるかのようにチェシャの瞳に真っ直ぐ笑いかける。
少年にとっては、誰かを気に入るのに、男も女も、正道も邪道もないのだ。 育ちがそうさせたのか、根っから鷹揚なのか。
くすぐったそうに笑い返す表情は、気後れも、いやらしさもない、純粋な好意だった。

チェシャ=ベルベット > 覚悟なんかないと言われればがっかりしたような顔と同時に
心の何処かでああ、やっぱりと思っていた自分にほっとする。
別にここで断られても、それはそれで分かりきっていた結末なのだと。

だが、硬く鍛え上げられたティエンファの手が自分の手指に絡まり握られれば
はっと顔を上げて、続く言葉にぐっと舌唇を噛み締めた。

「……君のそういう、まっすぐなところが大嫌いだ。
 鼻を明かしてへし折りたくなる。僕はそういう人間だから
 君を羨ましいと想うのと同時に、眩しくも思う……悔しいけど。

 そういう純粋な好意を僕に向けられたってどうしていいのかわからない。
 やめてくれよ、そういうのを受け取れるほど高尚な人間じゃないんだから……」

言葉とは裏腹に手を振りほどくこともせず、ただ笑顔を向けるティエンファとは対象的にこちらは泣きそうな顔になる。
飲みかけの酒を残したまま、椅子から静かに滑り下り、彼の手を引いて奥へと向かおうとする。
この期に及んでもしかしたら振りほどかれるかもしれないと思いながら。

「……この奥にそういう個室があるから、そこでしよ。来てよ」

この真っ直ぐな善性の塊のような少年をいやらしい道に引きずり込むことを躊躇うような、
それでいて来てくれさえすれば安堵するような気持ちを抱えながら。

ティエンファ > いつもキリッとして、人を突き放すような冷たい表情の氷のチェシャ。
それでも、その瞬間の顔は酷く壊れやすい、硝子細工のようにも見えた。
絡めていた指を離し、硝子の子猫を壊さないように手で包み込んだ。

「そんな簡単にへし折られる鼻っ柱じゃあないんでね、安心してぶつかってきてくれよ
 はは、別に高尚も下賤もないだろ? チェシャはチェシャだ
 …むしろ、異邦人で、親も知れない、山育ちの田舎者の方が、貴族の召使よりも下々の者っぽいけどなあ」

振り解かれても良いように遠慮がちに手を握るチェシャ。
しかし、その手が離れる事は無く、チェシャ、と呼ぶ声に少年が振り返れば、わし、とその頭を撫でる手があった。

「安心しろって …大丈夫だよ、ついてくからさ」

泣く子を優しくあやすような、暖かな声。
そして、コロッといつもの子供っぽい笑顔に変わって。

「優しくしてネ?」

わざとらしく冗談めかして笑い、自分から手を引いて、扉をくぐるのだ。

ご案内:「王都 平民地区の酒場」からティエンファさんが去りました。
チェシャ=ベルベット > チェシャ、と呼ばれて振り向けば己の頭をその硬く鍛えた手で撫でられる。
びっくりした顔で続く言葉に目を丸くすれば、みるみるうちに赤くなってその手を振り払った。

「……ばかっ、子供扱いするな……!」

ムキになって怒る様子がさらに子供っぽくみえるのも気づかないまま
ティエンファの優しくしての言葉にはむすりといつもどおりの顔をしてそっぽを向く。

「ふん、いやってほど激しくしてやる……!」

そうして一緒になって酒場の奥の扉をくぐるのだった。

ご案内:「王都 平民地区の酒場」からチェシャ=ベルベットさんが去りました。