2017/01/16 のログ
■ホウセン > 手が足りない、届かないというのは、文だけを差し出した場合の話。それ以外の何物かを添えたのならば、もう少し成算が上がるのだけれど、其れはそれで材料と準備期間不足が否めない。中々に侭ならぬと、小さくぼやく。ぼやくが、だからこそ愉快な遊興であるとほくそ笑むのである。商い事に執心しているのも、それが己の思い通りにならぬ事が山積しているからであり、それらを一つ一つ紐解いてゆく愉悦を楽しんでいるのに他ならない。多少の博打になるが、それはそれ。この妖仙が怯む要因とはならない。寒空の下に繰り出す方が、余程気が進まないというものだ。
「ま、追々形になろう。が、時期の見極めだけは慎重にせねばならぬ。恐らくは、今が”売り時”じゃ。嗚呼、もう数週余裕があれば、色々準備も整っておったじゃろうに。」
嘆きは嘆きならず、遊興の難易度が釣り上がっている事に対する不平の形をした期待である。ふと期間に言及した所で、記憶の琴線に触れる何事かがあったらしい。頼りない一本の糸を手繰り寄せ、思い至った事柄に、思わず噴出してしまった。
「嗚呼、アレを飼うてから暫し経つが、今の所…特に変わった所はないようじゃな。善哉善哉。其れだけではつまらぬ故、聊か趣向を考えてやらねばならぬが…」
その呟きを理解するのは、きっとこの場にいない飼われている本人ぐらいの物だろう。若しかしたら”帳”を経由して聞き耳を立てているぐらいの事はしているかもしれないけれども。思考は方々に散り、収拾がつかぬことこの上ないが、集中力も切れたのだろう。ソファから立ち上がり、茶の後始末を”煙鬼”に命じて。自分は定宿に引き上げる心算だが、その足は、屋外に留まる時間を極力減らすよう平素よりも素早く――
ご案内:「草荘庵王都本店」からホウセンさんが去りました。