2015/11/21 のログ
エレミヤ > 「そうだと良いんですが…。」

あはは、と空元気だと丸わかりな乾いた笑い声を上げて見せたものの、少女の肩はその内心を表すようにがっくりと垂れ下がる。この都市にはもう暫く滞在する予定なのだから、そうでなくては困るのだけれど。
続く言にははつりと瞳を瞬かせた後、頭の中で言葉を選ぶように視軸が下がり、ややあってから持ち上がる。

「自衛の為に自分の力を使うのは、窮地に陥った時だけなので――あと、その…私、あまり術のコントロールが上手ではないので…。」

ぐるうり、と自身の周りを歩む青年を視線で追いかけながら、ぽつぽつと語る。
軈て背後で足を止めた相手へと、肩越しに振り返っては「どうしました?」とでも言いたげな表情を向け。

シド > 「悪い方ばかり考えるのは良くないぞ。 ……ま、私がこの都市に来ることがあれば見回りをするから。気を楽に持つといい。
 ――それにしても分かりやすいね君。」

一挙一動、感情露わに揺れ動く小柄に笑みのさざめきを零す。今は背後から眺めてその杖を眺めているのだが。
その杖の話題もあがらぬならば、やはり興味は少女の方に向かうばかり。

「殊勝なことだ。こんな汚い場所に追いつめられても窮地でないとな……そうだな。今夜はせめて安全な場所を提供してあげようか。」

背後から語り掛けられるに小さく肩を竦めて歩み寄る様、堂々と。
少女を背後から抱きしめようと。流れるように。
長い腕を前にと巡らせて耳元へと唇を寄せるに、熱たゆたう吐息を鼓膜で擽る。

「私と一緒……という条件はあるが、どうだい?」

エレミヤ > 不安げに微かに揺れる瞳が、青年の言葉に瞬いて、仄かに煌めきを取り戻すと同時、焦りの色を含んだ。都市に来る事があれば、と言う言葉と、見回りをする、と言う言葉にもしや身分の高い人なのでは、と今更な考えが浮かび――締めの台詞にうぐ、と言葉に詰まったのだった。

あくまでも杖は武器では無く、自身の力のコントロールをする補助道具でしかなかった。それ故、杖で昏倒させると言った力技までは思いつかなかったと言うのが本音。
続けられた先の言葉には敢えて何も言わなかった。己の鈍臭さが原因で、これより酷い目にだって遭っていると伝えるのは、流石に憚らずに告げられる事でもない。

「―――、っ」

そうして、するり、と。それこそ自然なまでに伸ばされた腕。
一瞬、何が起こったのか分からずに呆けてしまったが、人の熱を衣服越しに覚えた体躯が小さく跳ねた。
空気の震えが熱を持って鼓膜を揺らすのに、また震える身体。
仲間がちゃんといると言う事を伝えれば、それで良いのに。一言が出てこずに唇がはくりと戦慄き、熱から逃れたがるように視線が頭ごと下がる。

「そ、――んなの、悪い、です。」

何とか告げた言葉。
口にする癖、心臓の音が内側でやけに響く。

シド > 「おや。いけない。ちょいと口がキツすぎたかな。別に君のことをとやかく言うつもりはないよ。
 単なる会話さ。  ――これもな。」

少女の思考と青年のものは異なる。詞も接触も、全ては戯れの一つ。今しがたその小柄を抱きしめているのも、あた戯れ。
本音戯れ半々の抱擁は、恐怖体験した少女に何をもたらすかも考えてはいない。
ただ抵抗が少ないこと。詞一つに震え上がる様に、ただただ前に巡らす腕に力を込めていく。
首筋に触れる唇に伴い俯く頭から垂れ落ちる銀髪が少女の胸や手に触れていく。

「私に悪い?それはおかしな話だ。見ず知らずの男に、酔っぱらいまがいに抱きしめられて怒らないのは。
 言い訳だろ……ついて来なよ。楽しい夜になるさ。」

高らかに打つ心音を、その小振りな胸を掌に収めてほくそ笑む。
やがて少女の腰に腕を回して、寄り添う影が路地裏から消えていくだろう。

エレミヤ > 「会話、」

思わず、青年の言葉を繰り返し紡ぐ。確認するように、自分に言い聞かせるように。
強まる抱擁の力にまた体温が上がるような心地を覚える。それの原因が何か、など少女に分かる由もない。
けれど、皮膚へと触れた唇に、滑り落ちる銀糸に。ますます体温は上がるばかり。

「言い訳、なんて―――」

してない、とは言えなかった。自分の中に芽生える好奇心にも似た情動がを理解していればこそ、心身に根深く染みついている言葉を偽る事を良しとしない教えが、許さなかった。
発育の淡い胸へと滑る手に震えはしたものの、拒む姿勢を見せなかった少女は促される儘、何処か揺蕩うような心地で青年と共に路地裏から消え行く。

ご案内:「港湾都市ダイラス 倉庫街」からシドさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス 倉庫街」からエレミヤさんが去りました。