2015/10/11 のログ
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ご案内:「設定自由部屋3」にシールさんが現れました。
シール > ――シャリン――鈴の音のような心地よい金属音とともに銀色の光が弧を描き、その線上に重なる黒い影が次々と倒れていく。
通路の奥からはオークやゴブリン、大蝙蝠等の多種多様のモンスターが次々と押し寄せてくるが、まるで自ら切り伏せられに向かっているかのように次々と倒れていく。
やがてその押し寄せる波のような進撃も終わり、通路の奥からモンスターの気配がないことを感じ取って、ふぅ、と少女は振り返り、サーベルを鞘に納めながら背後の集団に声をかける。
「大丈夫?怪我はなかった?」

――王立コクマー・ラジエル学院の訓練用迷宮。その中にはモンスターに似せたゴーレムやパペットなどの魔道生物が蔓延っており、一般の生徒はそこで訓練し技術を磨く。
だが、それら人工のモンスターはあくまで訓練用。卒業を前にした生徒たちはより実践の空気を味わう必要があるだろうと、下層に行けば結界に閉じ込められた本物のモンスターが蔓延っている。
自分の実力を過信した学生パーティー数人が教師の許可も得ずに下層に向かっていったと、クラスメイトから相談を受けたのが数時間前。
教師への報告を相手に任せ、急いで迷宮に向かえば案の定、そのパーティーは押し寄せるモンスターの前に全滅寸前の状況だったのだ。

「ふぅ…まったく。ここに来るには予め先生方の許可が必要なはずでしょう?許可がもらえなかったっていうことは、貴方たちにはまだここに来るだけの実力がないっていうことよ。」
今頃先生方も上まで来ているでしょうし、しっかり怒られてくることね、とため息交じりに告げれば、あきらかに上級生、恐らくは高等部と思われるパーティーも返す言葉もなく帰っていく。
その後ろ姿を見送って、ふぅ、とまた一つ溜息をついた。
「…あー、もーっ、だめだなぁ…今の言い方、絶対意地悪だったよね…」
人目がなくなったことで、その姫騎士から先程までの凛とした雰囲気は消え去り、そこにはただ自己嫌悪に落ちる少女の姿。

シール > 激しい戦闘があったと思われぬほど、少女の姿は乱れておらず、無数のモンスターを切り伏せておきながら、その白い衣装には返り血の一滴すら浴びていない。
元々の白い肌、流れるような銀色の髪とほぼ白系統の色彩で統一されたその姿は、まるで大理石で作られた彫像のよう。
以前そのように評価したクラスメイトは、続けて「もっとも、あの手の彫像と比べたら胸が全然足りねごぶぉふぁっ!」と言っていたけれど。
…人間なのだから時には感情に任せて手が出ることも、まぁ、ある。

「…さて、と。一応これで全員の無事は確認できたと思うけど…」
呟きながらちらり、と視線を床に向けた。…まぁ、向けるまでもない。死屍累々と横たわるモンスターの群れ。
本の中ではないリアルな世界の知識を、現実を学ぶため学院に来た少女は、この後冒険者たちが行うことも、当然ながら学んでいた。
…学んでは、いた。
「……これ…本気で物色するの…?」
モンスターが落とすドロップアイテム。それらは時にモンスターの身体の一部だったりすることもあり、確かな鑑定眼が必要である。
無論、鑑定についての知識は学んでいて、それについて自身の能力を過小評価することはないけれど。
ちらり、と、返り血すら浴びぬよう戦った自分の白い服を見る。
ちらり、と、赤や青緑色の様々な血・体液で汚れた死骸を見る。

「…え…するの…?」

試合ではない実戦の、まさか最初の壁がこんなことだなんて思ってもみなかった。

シール > 沈黙が迷宮を支配する。ごく、と、緊張に白い喉を鳴らす。
人々を導かなければならないのであれば、綺麗ごとばかりではいけない。自ら泥に塗れる覚悟がなくて、どうして人がついていこうなどと思うだろうか。
身に纏う聖衣が白いのは潔白さを表すためのものではない。
生きるためには時に汚れなければならない、それを忘れないためのものだ、と、以前読んだ書物の文言を思い出す。
瞼を閉じ、落ち着くようにすぅ、と深呼吸をひとつ。
防護の役目など殆ど為していない絹の服を、小さな胸の膨らみが微かに押し上げて、再び戻す。
開いた瞼の奥の青い瞳に決意を秘めて。

「――うん、まずは一刻も早く先生方に報告しなくちゃね。物色なんてしてる暇ナイヨネ?」

誰も聞いていないのにどこか言い訳がましく取り繕いながら、少女は踵を返して地上へと向かう。
後には積み重なるモンスターの死骸だけがその場に残されて――。

ご案内:「設定自由部屋3」からシールさんが去りました。
ご案内:「精霊神殿」にユージニアさんが現れました。
ユージニア > 地元の小さき神である森の精霊神を祭る神殿。
そこは天然の温泉の近くでもあり、志程度で訪問者に回復魔法
をほどこす善意の場所としても知られている。
…比較的、といわなくてはいけないのがこの国の現状ではあるけれど。
「…さ、これでもう大丈夫なはずです――目を開けてごらんなさい?」
手をかざし、回復魔法を傷つき閉ざされていた目に注いでいた巫女姫の声に。
街道で魔物に襲われた少年はおそるおそる目を開き、見える、と歓声をあげた。ありがとうございます、と両親が涙ながらに頭を下げて

ユージニア > 「よかったですね。けど、もう、一人だけで遠くに行ってはだめですよ?最近はいろいろと…物騒だそうですから」
わかった、と何度もうなづく少年と両親を見送って…少女は小さく溜息をついた。この頃、魔物や夜盗に襲われた怪我人が多くなっていないか、と。
幸い神殿そのものや近くの村は兵士が駐在しているのもあり、狼藉にはあっていないけれど。
「こんな状況で王都に行かなくてはいけないのは…不安、ですね。どなたか、詳しい方にでもお話を聞けるといいのですけど」

ユージニア > と、つい零してしまったが、すぐに心当たりがあるわけでもなく。冒険者をしている兄が今度帰ってきたら、聞いてみるぐらいかと神殿の広間の窓から空のほうを見上げる。
たまたまそんな旅人でも来てくれるというのは、虫がよすぎるだろう。
そこに姫さま、と声がかかり。
「…なに、この手紙。父様から?…あぁ、もう、縁談など私にはまだ早いといっているのに。」
「わかりました、どちらにしても、王都には行かなければいけないようですね。むかいます、と伝えてください」

ユージニア > そうして、数日のうちに。
しばらくぶりの王都へと、むかうことになる。

ご案内:「精霊神殿」からユージニアさんが去りました。