2023/07/22 のログ
イェン > (酒に酔った男というのは何を理由にして激発するか分からない。そんな考えから出来るだけ目立たぬ様、給仕娘にだけ分かるように指差ししたつもりだったので、当の本人からのいきなりの声掛けには思わずびくりと肩が跳ねた。しかし、彼が発した声音に攻撃的な色は存在せず、むしろ、こういった店で酔客から投げられるセリフの中では特に友好的な部類に属する物であったから)

「――――ええ。先程仕事を終えて戻ったばかりの冒険者でもあります。門はとっくにしまっていたので街壁を前にしての野宿も覚悟していたのですが、門番さんが親切な方で助かりました」

(緩い笑みに応えるのは平坦な眉をぴくりとも動かさぬ無表情。黒髪の男の脇から忠言を向ける金髪の青年の物言いもまた、その涼やかな顔立ちに見合う落ち着いた物であり、彼らであれば酔いに任せていきなり無体を働くという事もないだろうと内心僅かに安堵する。そうした心の動きはやはり水も漏らさぬ鉄面皮に隠されているのだけれども。)

「……………そう、ですね。ありがたくお誘いを受けさせてもらいます」

(若干の迷いの後に返した言葉が肯定的な物となったのも、野性的な面立ちをした男の金眼に理性の灯火を見て取ったからだ。背負い袋を手に立ち上がり、彼らのテーブルに近付くと、一度小さくペコリと頭を下げてから空いていた席に付く。そして紫水晶を思わせる双眸を真っ直ぐ二人に向けながら)

「イェン=リールゥ。北方帝国からの留学生です」

グァ・ジャミル > 「へえ、冒険者! こんな遅くまでお疲れさん。いやさすがにこの時期じゃなくても女の子一人の野宿はやべーわ。
 魔物とか男とかそういうのより、虫な!」

(無表情な鉄面皮ながら、此方の問いに答えるような応えがあれば快活な明るい笑みで告げて。
 丁寧な言葉遣いではあるけれど鬱陶しがったり無視する様子がないのであればそれだけで好印象。
 こちらの誘いに乗ってくれるのなら尚のこと、テーブルの空き皿を纏めてから三つ目の椅子に移動する彼女を招く。)

「おねえさーん、今のオーダーこっちのテーブルね! あとサイコロ焼き追加ァ!」

(はいはーい、と返事が来て、これで良し、と満足気な顔である。
 元より童顔気質なので、彼女にとっては同年代に見えるかもしれないが。
 隣にいる相棒もジャミルに呆れた息を吐きつつ、「突然すみません」と一言彼女へと詫びを入れただろう。
 そうして名を名乗る彼女に向けて、二人はそれぞれ名を名乗った。)

「俺はグァ・ジャミル。ジャミルが名前ね」
『サウロと言います、宜しく。イェンさん』

(それぞれ自己紹介を済ませてから、興味を持ったようにジャミルが身を乗り出して彼女の目を見つめる。
 彼女が冒険者であり、獲物であろう袋に包まれたそれも気になるが、北方からの留学生というところがまた好奇心に触れた。)

「北方っていうと帝国だろ? シェンヤン。俺ら詳しくねえんだけど、良けりゃ話聞かせてくんない?」

イェン > 「分かります。無駄に焚き火に寄ってくる。寝ている間にも服の中に入り込もうとする。冬場の様に凍死する危険性は低くなりますが、夏場の虫には本当に辟易とさせられます」

(男の言には思わず無表情の口元も綻んだ。虫除けの香も全ての虫に効くという訳ではないのだから。女冒険者という事で妙な色眼鏡で見るでもなく、酔いに任せて妙な手出しをしてくる様子もない。彼の本性などは分からぬ物の、少なくともここまでのやり取りにおいてイェンは『中々に気持ちの良い男ですね』という印象を抱いた。それはその傍らから頭を下げてくる優男についても同様で、愛想の無さは変わらぬまでも「いいえ、お気になさらず」という返答は思いの外柔らかな声色で紡がれた。)

「はい、よろしくお願いします。ジャミル様、サウロ様」

(改めてぺこりとポニーテールの頭を下げて顔を上げれば、黒髪の男がずいっと身を乗り出して来る所。半ば反射的に背を仰け反らせ、華奢な双肩に暴力的な強張りを漲らせるも、彼の金眼に覗くのは好色でも悪意でも無い純粋なる好奇心。)

「――――私もそれほど話せる事は多くありませんが……」

(そう前置きした上で、静かに言葉を連ねていく。建築様式や街人の服装の違いから来る街の景色の差異。多様にして多彩な料理の数々。イェンの語りは男達の脳内にはっきりと異国の景色を浮かばせるだろうが、そこに根を張り生活する黒髪の少女の姿は見受けられまい。何故ならば、かの国でのイェンの扱いはあくまでも上等な道具の一つであり、その価値を高めるための訓練や教育だけがそこでの生活のほぼ全てであったのだから。今の様にふらりと酒場に立ち寄って気になった料理を気まぐれに注文してみるなんて自由など無かったのだから。)

グァ・ジャミル > 「そうそうそう、マジでそれな! 中々手が届かないような変なとこを刺された日にはもうやべーのよ。
 あと蛙な! 湿地帯のほうでの野宿はマジで絶対ぇやめた方がいい」

(雨期を超えたあたりから大繁殖する蛙。自然地帯にある湿地区域を思い出して首を横に振る。
 少女という身でありながら冒険者をするだけの力量があるのだろう。
 普通ならまだ年端も行かず学業などに専念するような少女の年齢であっても、
 育ちの環境が特殊なジャミルの価値観ではいっぱしの戦士であってもおかしくない、という考え。
 サウロに至っても立派だなと素直に感嘆している様子。
 けれど敬称に様がつけば、はは、と笑ってジャミルが手を振る。)

「いやいや様とかいらないって。別に身分も平民だしさ、俺ら。
 ふつーの呼び方のがありがたいから気楽にしてくれよ」

(と、敬称に関してはそう告げて。
 そして彼女から語られる言葉には、異国情緒溢れる情景が目に浮かぶようだ。
 サウロはシェンヤンの料理に興味を持ったようだが、ジャミルもまた話を聞きながらへぇー、と興味深そうにに頷いている。
 しかしなんというか、引っかかる部分もある。そう感じたのはジャミルの方か。
 どうにも少女の語る言葉が、まるで旅先のガイド役が語るようなものに聞こえてきて、
 彼女がその国でどう育ち、どういう環境に身を置いていたかが見えてこない。
 不思議そうに首を傾げていれば、注文した料理が届くだろうか。
 彼女の前にはスープとパン、そして骨付き唐揚げ。
 ジャミル達の所には木樽ジョッキが三つと追加のサイコロ状にカットされた牛肉の鉄板焼きだ。
 一つだけ中身は女性も安心して飲める桃の果実酒だ。)

「これは俺らの奢り。お話代な! 酒平気? まあこれはジュースみたいなモンだからいけるいける!」

(と軽い酔っ払いのノリ。ジョッキを掲げて、カンパーイ!と高らかに声を上げる。
 サウロも笑って掲げて、彼女も手に取ってくれるならごつん、とぶつかる衝撃が軽く伝わるだろう。)

イェン > 「蛙は別に嫌いではありません。解体も簡単ですし、ああ見えて中々美味しく食べられますし」

(しれっと答える留学生にたまたま近くを通りかかった給仕娘が『うえぇぇ…』といった顔を覗かせた。その辺りは何不自由のない王都で暮らす給仕娘と、蛙もメジャーな食材の一つとして取り扱う北方帝国の出であり、小綺麗な顔立ちをしていたとて時には虫食も熟さねば生きられない冒険者でもある留学生の違いと言えよう。しかし、これほど実感の籠もった野営話ができるとなれば、やはり眼前の男は同業者なのだろう。元よりその黒シャツ越しにも伺える靭やかな筋骨からして予想はしていたのだが。)

「――――そう、ですか。 ………では、ジャミルさん、サウロさんと呼ばせていただきます」

(正直に言えばしっかりと距離を離した様呼びの方が気楽なのだが、目の前の二人は荒くれ揃いの冒険者にしてはかなりまともな男達。で、あるならば、多少は距離を狭めた付き合いを考えるのも悪くはあるまい。そんな男達に語る故国の話。一般的な知識の中に僅かばかり実生活の色を付けたその語りは、酒場の喧騒の中でも良く通る涼やかな声色もあり、ほとんどの者はなんら疑問などを抱くこともないはずだ。にも関わらず怪訝な表情を浮かべるジャミルに対し、あまり突っ込んだ話を聞かれるのも困る留学生としては、タイミング良く運ばれて来た料理に密かな安堵を覚えもして。)

「ありがとうございます。そういう事であれば、素直に奢っていただきますけど―――お酒、ですか。 ……まあ、然程酒精の強いものでないなら」

(以前、昇給の祝いだと先輩冒険者に勧められて飲んだ安酒の味わいと、そこで知ったアルコールに対する己の弱さを思い出して躊躇する。が、料理を奢らせておいて酒を断るというのも失礼だろうかという考えと、黒髪の男の勢いの良さについつい流されジョッキを掲げて彼らと杯をぶつけ合う。冒険者らしからぬ、どころかこの店の客の誰よりも小柄な少女が繊細な両手で大ぶりのジョッキを持ち、桜色の薄唇にてその中身を飲む姿は、それだけでもう犯罪的な匂いの感じられる光景だろう。実際、嚥下の際にこくり、こくりと動く白喉を見つめる周囲の男達は何やらいかがわしい目を向けていたりもする。)

グァ・ジャミル > 「おっ、まさかの蛙イケるクチ!? いやまぁ食おうと思えば食えるけどさぁ…あの目がどうにも苦手。
 目がこうくりんくりんしてて、間違えて突き刺した時のこう……いでっ」

(剣を構えて突き刺すモーションをしていたところで隣から頭をはたかれる。
 それ以上想像を煽るようなことを言うなという牽制らしい。
 実際雨期明け後の湿地帯に大量発生する蛙の魔物退治の時の最大の被害者は、
 一番前に立って魔物のヘイトをコントロールしていた隣の男だ。何があったかは言えないが。
 想像を搔き立てたようで女給もまた「うへぇぇ……」と怪訝そうにしていた。
 呼び方についても改められればうんうんと満足げに頷くジャミル。
 彼女の予想は当たらずも遠からず、自由騎士という鎧を外している今は冒険者と見られてもおかしくはない。
 が、尋ねられることもなければ二人も齟齬が起きるまでは、言い直すこともないだろう。)

「全然いーよ。俺らも臨時収入はいったばっかだし。
 やっぱ可愛い女の子と飲む酒は最高なんだわ!」

(乾杯の音頭を取ってぐびぐびと傾け飲むジャミルと、料理と一緒に少しずつ味わうサウロと。
 それから周囲の目線を集める程に、小さな手で持ち上げたジョッキの中身を飲む少女と。
 どうしても小柄で可愛い顔立ちをした少女であるが故に、こういう場では視線を集めてしまうのだろう。
 身に纏う学生服からして若いことが分かり、その胸元も平均よりは大きかろう。
 夜も更けて酒も飲んで気の大きくなった男たちの欲が向けられる理由もわかるが、相手が悪い。
 何せこの国では腐敗しつつある、揺らがぬ"正義"を掲げる男たちである。
 婦女暴行を目論むような視線を見過ごす筈もなく、ジャミルが軽く睨み据えれば、早々に目を反らす者もいよう。)

「お互い飲んで食って栄養蓄えて、明日に備えねーとなあ。
 ところでイェンちゃんって行きずりの一晩ってイケるタイプ?
 俺とかどう? それともこっち系がタイプ?」

(いきなり話題が飛んだ。────行きずりの一晩、つまり閨の誘いだ。
 自分を指さしてヘラヘラと緩い笑みを浮かべるジャミルが、ついで険しい顔をジャミルへと向けているサウロを指さす。)

イェン > (やはり、この男は小気味良い。仏頂面が常であり、発する声音にも感情の色が伺えぬイェンが言うのもおかしな話ではあるが、感情もあらわな彼の語り口は鉄面皮をしてついついくすりとさせる所がある。友人に対しては遠慮のない優男のツッコミもまた良い味を出しているのだろう。この場における一番の被害者は、イケメン二人と上手いこと相席となった女学生の会話に耳をそばだてていた女給仕だ。そんな被害者を尻目に勧められるがまま飲んだ酒は――――なるほど、たしかにこれは飲みやすい。ただの果実水とは異なる仄かな苦味はそこにアルコールが含まれていることを示しているも、さらりとした飲み口はたしかにジュースの様な物。エールの旨さの分からぬイェンではあるが、これならば美味しく飲むことも出来そうだ。)

「良いですね、このお酒。それにこの骨付き肉も期待以上です。サクサクとした衣とジューシィで柔らかなお肉。空きっ腹にはこれ以上無いご馳走です」

(ジョッキを掲げる様子は子供めいてちまちまとした物なれど、骨付き肉を手づかみでがぶりといく様は冒険者らしい。それでも口の中の物をしっかりと飲み下してから言葉を発する様子を見れば、確かな教養が与えられていることも窺えよう。ちらちらと周囲から向けられる視線はこうした店ではいつもの事だが、今宵は席を共にする二人がさり気なく睨みを効かせてくれているお陰で妙な声掛けに悩まされる事もない。王都にはこの様な男達も居たのかと、冒険者に対する認識を改めようとしていた矢先)

「……………台無しです」

(思わずため息を漏らし、ポニーテールの頭部が左右に振られた。とはいえ、赤裸々な問いに陰湿さや粘着質な物は感じられず、なんともからりとした風情。普段、こうした店で男達から向けられる物と比べれば、いっそ心地良くも思えてくる。それ故に、早々に酒精の影響を滲ませて桃果の色合いを見せつつある白頬の美貌は呆れたように伏せていた双眸を開いて眼前の二人を代わる代わる見つめて)

「そうですね。ジャミルさ……ん、との野性的な一夜も、サウロさんとのしっとりとした一夜も共に楽しめそうに思えます。ですが――――どうせならばお二方に攻められたい、というのは贅沢でしょうか?」

(目尻を朱化粧で飾った切れ長を細め、桜色の唇端をほんの僅か持ち上げた酷く分かりづらい笑みは、つい最近成人したばかりの小娘が浮かべた物とは思えぬ程に妖しい代物。とはいえ斯様な物言いは、男の軽妙な語り口と酒精による勢い、そして《華》での教育によって教えられた蠱惑的な誘い方を単になぞっただけの物。彼らに対して好感を抱きはしても、行きずりの一晩が許される様な自由は無い。これはある種、小娘を誂おうとした大人に対する意趣返しめいた物だ。そんな思考も眼前の、落ち着きある二人であればしっかりと汲み取ってくれるだろうという奇妙な信頼があっての戯れである。)

グァ・ジャミル > (𠮟られたので蛙の話はおしまいだ。
 表情があまり変わらぬ様子ではあるが僅かに口角が緩む瞬間がある。
 ジャミルの持つ特別な"目"は細やかに少女の微細な変化も見落とさない。
 そう言う反応が見れたのであればジャミルとしては満足だ。女給にはすまないことをしたが。
 酒精もさほど強くないので、この一杯で酔うということはまぁそうそうないはず。
 アルコール慣れしていないなら、ちょうど良い塩梅というところか。)

「だろ~? やっぱ腹減った時は肉だよな!
 骨なしのほうも美味いから今度試してみれくれよ。
 この店の肉料理、薄く焼いた生地で野菜と一緒に包んだのとかも最高にうめーから!」

(確か昼とかはそう言う軽食も出してたはずだから、とそんな情報もさらりと出しつつ。
 豪快なかぶりつきには見ている方も気持ちがいいというもの。
 残るツマミも喋りながらするりと食べて酒を飲んでと器用なことをしているジャミルである。
 というところでお誘いを掛けてみたものの、反応を見ればジャミルは「ははっ」とからりと笑う。
 サウロは呆れ気味にジャミルを見ているので、どちらも無理強いをするようなしつこさはないだろうと分かる筈だ。)

「あ~~~~……、いやそれもありじゃね?」
『俺は嫌だよ馬鹿。……ああ、イェンさんが嫌だというわけではないから誤解しないで欲しい』

(彼女からの返答を聞けば腕を考えて唸っていたジャミルがハッとした表情で「あり」判定をし、即座にサウロに却下されていた。
 彼女の持つ妖艶さは人目を惹く。年端もいかない少女が浮かべるには艶めいて、男を落とす色香の出し方を知っているかのようだ。
 が、そんなつもりはない、という意趣返しのように伝えられれば、その意を汲み取りナンパは失敗である。
 それでも気にせず、話題はまた食べ物飲み物、シェンヤンのこと、依頼や戦い方など多岐に渡って食事の彩りになっただろう。

 そうして十分に楽しい時間を過ごした後は、代金を三人分気前よくテーブルに置いて腕を軽く伸ばし。)

「はあ~食った食った、そんじゃそろそろ出るかぁ」
『ご馳走様。良ければそこまで送るよ』

(そこまで、は酒場のある通りから出るまでを差してそんな提案を。
 夜も遅いので宿まで護衛はしたいところだが、きっとそこまで行くのはお節介かもしれないと思い。
 受け入れられるにしても遠慮されるにしても、店を出るところまでは三人で一緒だっただろう。
 月明かりの降る明るい夜。そうして二人の男と少女は店を後にしていった──。)

イェン > 「この店には匂いに誘われて来たのですが、当たりだった様ですね。おすすめしていただいた料理も是非、試してみたいと思います」

(もむもむと肉料理を咀嚼して、口腔に残る油っぽさを飲みやすい果実酒で洗い流して再びお肉。普段は徹底的なまでに脂質や糖分を控えるイェンなればこそ、こうして偶に羽目を外した際の喜びは大きい。相席する事となった者が気持ちの良い男達であったことも料理の味わいを引き立てる一因となっているのだろう。)

「ふふ、それは残念です。貴方がたの物を食べ比べてみたかったのですけれど」

(いかにも経験豊富といった体で嫣然と微笑む(無表情)事が出来るのも、彼らが全て理解した上で戯れに付き合ってくれていると分かるから。もしもこの軽口を本気にされて迫られでもしたならば、異性とまともに付き合った事のない生娘は大層困る事になっていただろう。そんなやり取りの後、落ち着きを取り戻した会話の際にはベテランと思しき二人の先達から幾つも貴重な体験談やアドバイスを得ることが出来た。それだけでもこの夜の出会いはイェンにとってありがたい物と言えるはずだ。)

「ご馳走さまでした。料理もお酒も美味で、お二人のお話も大変参考になる物でした」

(白皙の頬こそ風呂上がりめいて赤く色付いてはいるものの、ジャミルと名乗った男の進めてくれた果実酒は俗に言うレディーキラーめいた代物ではなく、その飲みやすさを裏切らぬ酒精の薄い物だったのだろう。席から立った脚もふわふわとした所は無く、若干身体の火照りを覚える程度の物。それでも酒に慣れていない己が身を鑑みれば、送るといってくれる二人の申し出もまたありがたかった。素直に学院前までの同伴をお願いして少女は二人と帰路に付く。その道中をクラスメイトの一人に見られていたらしく、翌日、あのイケメン二人は何者なのかと問い詰められる事にもなるのだが、この時のイェンはまだ知らぬ事である。)

ご案内:「平民地区/酒場」からイェンさんが去りました。
ご案内:「平民地区/酒場」からグァ・ジャミルさんが去りました。
ご案内:「薬屋テント」にタン・フィールさんが現れました。
タン・フィール > 王都を転々とする薬屋のテント、人通りの少ない空き地で営まれる其処に「気力体力回復」「疲れた身体に」「元気いっぱい!」など、日々の疲れに効くという売り文句の看板がいくつも立っている。

本日の薬屋は、そういった精力増強や疲労回復に役立つ薬の素材が大量に入荷したため、それらのタイプの薬の特化大バーゲンセール。
テントの外へと漏れ出す薬を煮詰めた桃色の煙は、心身ともに疲れ切った道行く人には、
これ以上無く甘く、匂いをかぐだけで飢えた部分を癒されるような…心と体の奥底の欲望を発散させてスッキリしたくなるような、
甘美な誘引剤となっていることだろう。


そのテントの天幕を開けば、薬師とは思えないほどあどけなく、幼く、可愛らしい子供店主が、
裸んぼうに桃色シャツ一枚という蠱惑的なファッションで、てとてと客の前に歩み寄り、ぺこりとお行儀よくお辞儀するだろう。

「いらっしゃいませっ…きょうは、どんなお薬をごきぼうですかーっ?」