2023/07/09 のログ
パンナ > 頬杖をついていた方の手で、頭をポリポリと掻く。
若い冒険者は数多く現れている一方で、歴戦のベテランさえもしくじる案件も殺到している。
加えて、王国の不安定な情勢が相変わらず冒険者達にもしわ寄せがきている。
平和な世で自分たちは食に在りつく事が難しいのでありがたくもあるのだが……。

「はぁー、面倒くせぇ。……学院で訓練してたって奴等も当たりはずれでけぇし」

大抵は怖いもの知らずが過ぎて無謀に走る問題児、または実地の恐ろしさに殆ど身動きがとれず守らざるを得ない者ばかり。
満足に戦える新米冒険者がいるなら学院なんぞに籠っていないで独立でもすればいいと思う程に、質にはムラを感じる。
正直、現役の冒険者も暇をしている訳ではなく余裕がある訳でもない。
指導という技術を持っている者もそれほど多くはない、大半が『盗んで覚えろ』という当人の素質を強く問う形ばかりだ。
だが、理不尽などという甘えは許さない。それ以上の、どうしようもない不運がいくらでも続くのがこの稼業なのだ。

「武器の扱いだけが冒険者の素質じゃねーもんな。気持ち、何とかしてやりてぇけど本人が挫けちまったらそれまでだしな」

バリバリと、運ばれたミックスナッツを音を立てながら頬張り、最近の新米冒険者の扱いに悩む女。
自らもまだ若いのだが、経歴を重ねれば自ずと尻を拭いてやる立場になるのは個人事業の世界でもある程度は変わらないのだろうか。

パンナ > 酒が勝手に進む進む。
思い出すのは新米に関するあれこれ。直近では報酬の分け前を巡る揉め事なども記憶に新しい。
ギルドで正式に取り決めがある訳ではないのだが、ほぼ勉強のつもりで貢献らしい貢献が全くない新米が己の取り分の少なさに不服を感じるのは必然と言えば必然なのだが、文句があるならソロで活動すればいいだけの話。

意地悪をするつもりはないが、過度な甘やかしは増長……ひいては慢心からの死をも招く事さえある。
冒険者同士は時に手を取り合う事もあるが完全なる同胞という訳でもない。
その世界の絶妙な機微を上手く読んで立ち回れない者はたとえどんな場所でも生き抜くのは難しい。
今の己も、今は武器を手放しギルドで書類と向き合ってる先人たちがいなければ……。

「……ふあ~ぁ、飲み過ぎたな。眠っ……」

目をごしごしと擦り、赤らんだ顔でふらっとしながらも立ち上がれば会計を済ませるべく店員のもとへ。
今日も手ごろな宿で寝泊まりして身体を休めよう……そう思っていた矢先、ふと告げられた金額を聞いて驚愕。


「は!!!?アタシそんなに飲んでねーぞっ!?……げっ!!さっきのアイツ等!!!!しれっと払わせやがって!!
 ざけんなーっ!!!!」


……大声で狼狽える女は、無事にツケてもらえたのだろうか?

ご案内:「酒場」からパンナさんが去りました。