2023/04/16 のログ
ご案内:「中庭」にフィリさんが現れました。
■フィリ > 【お約束待ちです。】
ご案内:「中庭」に影時さんが現れました。
■フィリ > 「――ぇぇと。…宗教施設に、存在する…のでした、でしょぅか?
聞ぃた事だけはありますので、はぃ、気になります。
流石に――真似して作ってぃただく、とも。ぃかなさそうなプロの作品…なのだと、思われるのです、が。
ぅぅー…む。勿論、細心の注意は、払ぅつもりだと。思われます、がー…」
商売人だからこそ言おう。値段の高低だけが、物品の価値ではない。
より正確な言い方をすれば、値段という奴は後から付いてくる物なのである。
例え、その品が本来はそれ程高価な代物ではなかろうと――個人的な価値を見出して、欲しい、と願う客ならば。
多少値段が上方修正されたとしても、お財布の中身と相談次第では…と、なったりもするだろう。
その上、市場価格という奴も。必ずしも素材や品質だけで決められる訳ではない。
制作時期やら職人のネームバリューやら、様々な要素が付随して上乗せされ…勿論。遠い海の向こうの物である、という点も含まれるか。
場合によっては、それを手にした人物が不幸に見舞われた――だのという根も葉もない曰くだけですら。
建物ならば自己物件として、がっつり家賃を下げたりするが。逆にこれが刀剣等だと、銘の一部の如くに好事家を唸らせるのである。
という訳で。例え、あまりお高い品物ではないと言われても。出来るだけ、気をつけて取り扱いたいと思う。
価値の見出し方が人それぞれであるというのなら。今手にしている茶器の類も、彼にとってや少女にとっては、今後意味を増していくのかもしれないのだから。
…実際。決して華美な装飾が目立つ訳ではなく。良く言えばシック――悪く言えば、この国の芸術品等よりもずっと地味な、それ等だが。
少女は存外に悪くないと思っている。あまり派手派手しい代物よりも。この位の方が手にも馴染むし目にも優しい。
元々――芸術的なアレコレ等に、商品としての価値を見出しつつも。自分達が使う品としては、質実剛健な方が良いというのは。母含めトゥルネソルの者の共通認識。
…もしかすると、その辺からしても。
硬く不変の象徴にも似た岩と砂とで、逆に移ろい行く山河を表現する枯山水という代物も。興味を引くのかもしれない。
ただ、だから作ってみせて欲しい――と頼む訳にもいかないだろう。
例え彼が、ミニチュアもドールも吃驚な器用さを発揮して、小動物達にまで諸々準備してみせるとしても。其処はジャンルが違う、というものだ。
「流石に細かな…ぇぇ、作法――?マナーの方等までは、記載も確認出来ませんでしたので。
その辺りは、ご容赦ぃただけると…幸ぃです、はぃ。何と言ぃますか、こぅ…雰囲気、です。恐らく。
―――― ――ふ、ぅ…大変。結構なぉ…ぉ手前、なのです。
正直初めてぃただくのですが…こぅぃった甘さも。大変に宜しぃのではと――」
細かい所までは把握しきれない、というのも。まぁ仕方ないだろう。
この国で、物の本等から知識を得ようというのなら…大体はどうしても。異国の文化を紹介する、といった類の記載となりがちだ。
物珍しさや惹かれる要素等については、事細かに触れているかもしれないが。細かい作法だの、正座の辛さだの。
読者の興味に対してマイナスになりそうな事は。さらりと流されているか…そも、書かれていないものだ。
事前に、其処の所はきちんと自己申告しておくので。茶菓子だけで早々に、感歎の下〆の挨拶めいた一言が出てしまうのは。許して欲しい。
さて。勿論実際には、此処からこそが本質だ。
餡菓子としてはしつこ過ぎず、だが小動物達へ供された分よりもずっと確かな牡丹餅の後味を。
すっきりとリセットする意味合いも有るのであろう…もう直頭上にも増え始めるのだろう、新緑にも似た茶の色合い。
注ぎ泡立て、という一連の動作は、素人目からするとプロとどう違うのか――そう思える滑らかな物。
差し出されればぺこりと頭を下げてみせ、器を両手で包むようにして、一口。
………ほ、ぅ。先ずはそんな、柔らかな吐息が出るような。実に自然な味わいだった。
■影時 > 「著名とされるだろう奴は大体そうだが、……いや、屋敷や城に設けてる手合いも多かったか?
アレは流石に言葉で言い表すにゃ、嗚呼。とてもとても難しくてな。
――正真の数寄者、風流者だったら、若しかしたら何がしかの値をつけるかもしれん、ってだけだ。
まァ、不慮のあれこれは仕方ねぇ。そうビクつかなくとも大丈夫だ。
どこからどう見ても派手でも何でもない、金ぴかですらない茶碗が、実は垂涎の品であった、というオチもあるが、この国じゃあ……なぁ?」
枯山水の庭園の実例は確かに宗教施設に多くあったと思うが、信心深い武士たちが自身の住処に作らせた、というのも多かった筈だ。
見た目は良いのだが、侵入する際は迂闊に足跡を残す羽目になりそうで、手間取った印象が深い。
大海や川を表す砂利で作った流れに、猫とは違う大きな足跡が残った場合、侵入経路を悟られる危険があった。
枯山水の箱庭でも作れれば良いが、どうだろうか。やれなくもないかもしれないが、果たして自身含め満足に至れるだろうか?
思わず遠い目をしつつ、器物の扱いは戦々恐々しなくとも大丈夫と告げておこう。
高級取りではないけれども、自身の蓄えと稼ぎで問題ない範囲で、買い揃えることができたのだ。
今のこの機会に限らず、学院に持ち込んで使うとも考えれば、日用品感覚で使えるものの方が望ましい。
後々高額、高級になりそうなものがあれば、見つかることがあるならば――その手の店に連れて行く方が良いだろうか。
竜の眼、目利きの感覚がどこまで働くかは定かではないが、掘り出し物を見つけた時の感動は、あればあるほど良い。
「あー、それはな。今は正直微塵も気にしなくていい。俺も正直、此れは真似事の域を出ねェんだ。
多少は覚えがあるという位でな。……もう少し、ましな師でも探しときゃ善かったかね。
――お気に召して何よりだ。こっちの菓子も慣れたが、どうにもこう、重くてな」
やれ、柄杓の取り方だの、体捌きだのと、事細かくなりそうなのが作法の厄介さである。
一時の契約として雇われた武将から、饗応の一環として茶の湯の経験、手解きを受けたが、如何せん粗野な侍である。荒さは拭えなかった。
とはいえ、酒の次位に旨く呑めるもの、楽しめるものであったということはよく覚えている。
この国に渡来している記録、物の本の類でも、どこまで仔細に記述ができていることであろうか? それ位に何かと細かくなるものだ。
小さな餡団子に食いつく齧歯類の二匹のため、柄杓から湯を掬い、指先のように小さな茶碗に慎重に注ぐ。
それが冷めるまで待ちつつ、点てた抹茶を一口して、感想を述べてくれるさまに、ほっと息を零しては笑う。
甘さ控えめ、乳や卵を多く使わない菓子類とは、やはりこの辺りでは専門店以外は見かけない印象が強い。
無ければ作ればいいの精神、マインドも材料が整わなければ難しいものだ。
茶代わりの白湯が程よく冷えたと思えば、歯や口の周りに餡がついた二匹に置き、改めて己の分のものを用意する。
「……あ。足大丈夫か?」
そうしながら、思い出したように尋ねよう。足、痺れていないだろうか?
■フィリ > 「――ぅー、ん…?
其方の意味でも……ぁぁ、ぇぇ、はぃ。考ぇてみますと、寺社仏閣、でしたか?
そぅぃぅ所も、権力者の方が…屡々。利用なさった、そぅですし――共通項は。ぁるのでしょぅか。
マニア垂涎、とぃぅ可能性も。はぃ、御座ぃますし。……古い物でも、ダメージ感が良い、と。売れたりします。
も、勿論…!一見そぅ見ぇなくとも、実は、とぃったサプライズは。物語としては大変にぉ約束だとは思いますが……!」
何となく。彼の思い浮かべている事を理解出来た。
そもそも彼方のお国でも…お偉いさんの次男三男が座主等に収まったり、隠居した先代がその侭出家したり。
支配層と宗教層とが、切っても切れない縁で結ばれているという。
もしくは時代によっては、彼等が武家にも遜色のない武力や財力を持っていたりだの。
大きな寺社の建物は、いざという時には帝の避難所や、将の拠点になったりもしたという。
元来は芸術、ガーデニング技法なのだろう枯山水という物が。そうした力と教えの一体化から、城等にも広まるというのは。何となく想像出来た。
……というか、白い砂の敷き詰められた庭、と言われると。
お裁きの舞台、即ち三権分立で言う司法の、偉い人が居そうだ等と。
かの国に対してはニワカにならざるを得ない少女は、つい考えてしまうのだった。
そう。知識というのが、百聞が一見に如かない事は往々にして知られているが。
同時に聞くだけよりも見るだけよりも、それ以上に実体験を積まねば足りない事が多々。
もし、実際に触れるような場所へと赴ける機会が有るのなら。嬉々としてお供する事だろう。
「――流石に。本格的に、とぃぅ機会は。この先もなかなか無さそぅ、ですが……ぅぅ、んん。
ぃっそ帝国の流行に、便乗して……とぃぅのは。一考の余地がぁるのかも、しれなぃ…のです、はぃ。
ぃぇ逆に、ブームに載せる程度ですと。ぁまり細かぃ事を言ぅのは、ウケが悪ぃのでしょぅか。
――ぇぇ、はぃ、難しい感想抜きに、ぉ味につぃて、ですと…きっと。私以外にも、多くの方が。受け容れて下さるのではと。
…しかし、こぅぃったぉ味に慣れた方にとっては……確かに。此方の物は、濃すぎるとぃぅのも…納得です。
私でも、そぅ例ぇば――バタークリームたっぷり、等は。少々胃に堪ぇると申しますか…」
仮に、彼の故郷の文化その他、流行らせようというのなら。それこそ、真似事に留める他ない。
異国の慣習だの詳細な作法等というのは得てして。物見遊山な観光客とは相性が悪いのだ。
勿論、興味本位、で触れてみたいと願うこの国の住人が相手の商売でも同じ事。それこそ専門店の苦労も忍ばれるという物だ。
…などと、つい商売目線を挟んだりもするのだが。七面倒臭くなりそうな物言いは、二口目を啜るに合わせ飲み込む事にした。
客を愉しませる為――というなら、そも、今は少女自身が客側である。
折角もてなしていただけるのだから、それを味わい愉しんでみせなければ、逆に失礼になってしまうだろう。
さて。干した器を案の定慎重な手付きで、自身の前へと戻した辺りで――
「ぁ、し? …ぅぇ、っぇ…?ま――まだ、はぃ……まだ大丈夫だ――と、ぉ…思われるの――です…!
流石にこの短時間では、はぃ、少々ピリピリはぃたします、がー…」
ぐぬぬ。其処まで心配せずともと言いたいが…思いっきり前科の有る身なので、あまり偉そうな事は言えそうにない。
ごそごそ。小動物達と同じ高さで物音がするのは。背中の向こうで、足の親指を曲げたり伸ばしたり。
少しでも破局を遠ざける為に、身動ぎし血行を取り戻そうとしているのだった。
■影時 > 「然り然り。……寺社仏閣と書くとカミサマを祭る社も入るから、仏を祭る寺だな、どっちかと云や。
仏の世界を表すという観点もあろうが、何より侘び寂びが利いてる処も惹かれたンだろう。
華美に何もかもを充足させるんじゃなあく、敢えて欠落させている――欠かせている処に何が収まるか、という想起がな。
この国での異国趣味というのは、つくづくそうだな。好事家がのめりこむコトだ。
売り文句というか何と言うかみてぇな感もあるが、この辺りは匙加減だぞ?
一見安物、その実安物でしかねぇ器を売り込んで、銭を稼ぐ輩と迂闊にハマって散財した手合いも何度か見たぞ」
そういう時代、そういう事例があった。
蓄財している宗教集団は権力者にとっても厄介であり、その始末や取り扱いに苦慮し、痛い目を見る事例もまた然り。
だが、だからと言って切り捨てきれないのは、心の拠り所であり、勝利のためのゲン担ぎしたい気持ちもあったからだろう。
枯山水の庭園の実例として、武家、侍の類が関わりあるのは、彼らが信仰してきたものと縁深いからと言える。
現実主義、効率主義であろう忍者もまた、否定できない。心の平安、均衡を保つための祈祷を欠かさないものもあった。
――裁きの場、司法の場たる白洲は、どうだろう。
庭園、枯山水の実例に入れるべきか否か。これは細かく考えだすときりがないが。
「茶の湯もそうだが、こっちの“てぃーせっと”とやらも、同じかそれ位に突き詰めると天井知らずだったなあ……。
とはいえ、少数派にならざるをえねぇ事物でもある。
こっちで抹茶を作るにしても、注文つけないといけねぇよなァ。あー、あとあれか?学院の部活とやらでもやるか?
甘いものは酒と同じかそれ以上に不思議と、大体どこでも受け入れてくれるみてぇだから有り難い。
重い菓子が決して悪いわけじゃァないんだがな。砂糖も含め、ふんだんに使える材料が多いのは、豊かさの現れでもある。
甘みをつけるための水飴やら蜂蜜やら、用意するのに何かと手間でな……」
大衆に流行らせる――には流石に無理があろう。
初期費用もそうだが、体系立てて記述された資料がどうにも多くない。だから、範囲を絞ってやるのであればいいのでは?
そう思わなくもない。物好きな異国趣味以外であれば、学院の部活動で遣るのだって、一種の方法論だ。
とは言え、渋茶、苦いお茶は重いお菓子の類でも釣り合いが取れる位の力はあるだろう。
呑み終えたと思えば、丁度自分の分のおはぎを皿の上に一つよそったタイミングである。
「はっはっは、無理はしなくて良いぞ。崩してくれていいからな?
一通り流れは終えた後だ。あとは気楽に食べて、呑むでいい。……好きなように点てて、呑む位が一番いいとか教えた奴も云ってたか」
毛玉たちがお互いの口廻りを拭い、温くなった白湯を吞んで、はふぅ、と息を吐く中、耳を動かす。
それはきっと、もぞもぞと足を動かしている物音を耳ざとく捉えたからに違いない。
饗応を終えた後は、帰りまで見届けるのがホスト、もてなす側であろうが、まだまだ飲み食いの種がある。
この屋敷の家令が作ってくれたものもまだ、試していないのだ。
自分から足を崩し、胡坐をかきながら、自分でつくった牡丹餅を黒文字で切り分け、口に運ぶ。我ながら旨いと思うのは、この手の味が久しいからだろうか。
■フィリ > 【継続となります。】
ご案内:「中庭」からフィリさんが去りました。
■影時 > 【次回継続にて】
ご案内:「中庭」から影時さんが去りました。