2023/01/04 のログ
ご案内:「平民地区/酒場」にアッシュさんが現れました。
アッシュ > 平民地区のはずれ、自宅からそれなりの距離にある何度か足を運んでいる小さな酒場へ、情報収集も兼ねて男は訪れていた。
普段、殆ど酒類を注文しない所を気まぐれでエールなど頼んで、ジョッキ片手に、様々な張り紙のされた壁の掲示板の前に立ち。

「ふむ。相変わらず……浮気調査に失せ物探し、概ね似たりよったりだなぁ。他は、採取依頼に――討伐依頼、はちとまだ早いかね」

張り出されたメモ書きやら、この場所には少々似つかわしくないしっかりと形を整えた書面やら、それらはちょっとした困りごと程度のものから、冒険者向けの依頼らしい依頼になっているものまで様々だ。

普段はなんとなくぼんやり眺める程度で、気が向けば、と言った程度でしか仕事を受けない男が、珍しく真剣に……見える気もする姿で掲示板を眺めているから、店の人間もやはり珍しいと思ったのか、何かあったのかと聞いても来る。

「ああ、仮に助手に何か仕事をさせてみるとしたら、どの辺から始めたらいいかと思って見ているんだがねぇ。結局……決めておくより、本人がやってみたいと思うものを、頼られたら手助けする、ぐらいの方がいいんじゃないかとも思うんだよなぁ」

そんなやり取りをしながら、今すぐ何か受けようと言うわけじゃあないんだよ、とエールのお代わりを頼みつつ、あまり深堀りしないでくれ、などと苦笑いしてみせて。

アッシュ > 「……。冒険者ってのはどういう仕事を受けるもんなのだろうな?」

唐突に、そんな疑問を口にする。
一般的に冒険者と言われるような面々が、どう仕事をしているのか、と言う風にはあまり考えたことがなかったように思う。
自分は勿論冒険者ではないし、そうであったこともないし、今はしがない探偵業。かつては――もっととんでもない仕事であったわけで。
駆け出し冒険者、あるいはそうなりたい?と言う節のある者にとっては、どういう所から始めるべきなのだろうか、と考えると、そこに縁のあまり無かった男にとっては、なかなか思いつかないのである。

「おお。改めて考えてみると……教える、と言う立場になった事が殆どないんだっけなぁ……」

講師の真似事でも始めてみるか、などと考えてみて。
教壇に立って生徒を前にあれこれ語っている自分――を想像してみたら、あまりに違和感がありすぎて、独り気味悪く笑っている。似合わないにも程がある。
そもそも、場末の大したこと無い一般人……に思わせておきたい身の上としては、あまり色々と、出来る部分の方を他人に見せる立場は、少々都合が悪いわけだから。そういう方向でも講師になるなどとはちょっと考えにくいのだ。

ご案内:「平民地区/酒場」にリアさんが現れました。
リア > 寒風の吹く窓の外から酒場の中を覗く顔。
格子模様のハンチングに首の後ろで結わえた黒髪、ダークブラウンのコートに黒いマフラー。
特に目を引くいでたちではないものの、薄暗い店内の様子に目を凝らす姿が通行人に怪しまれ始めた頃、ようやく酒場の扉を開けて、半身だけ覗かせる。

「あの――お尋ねしたいのですが、こちらに……」

言葉の途中でアッシュの姿を見つけて、あ、という顔。

アッシュ > ううむ、やはり自分用のいくばくかの目安を付けておく以外には、今すぐ仕事を増やすと言うのは考えものだな、などと独り頷いて。
さて、軽く何か食べるか、それとも戻っていつもの書類整理でもするべきか、と掲示板からくるりと向き直れば、見知った顔――少々怪しい格好?……いや、何にせよ見知った顔、と言うのと鉢合わせる。

「おや。 ……ほんのり変装中かね?」

どことなく、女性らしさを隠して出てきているようにも見えなくもない。
それでもすぐに誰か解るのは、観察力とはまた別の理由もあるのかもしれないが。

リア > 「こんばんは、アッシュさん。見つかって良かったあ」

知らない店の中に知っている顔を見つけて、ほっとしたように微笑む。
店内の内装や客層を観察しながら、隣まで歩み寄って。

「これは私の街中スタイル:平民地区バージョンの一つなのです。
 さっき道行くお姉さんにナンパされたんですよ、もしかして私はなかなかのイケメンなのでは?」

満更でもなさそうにくすくすする。
男物のコートなど着ていると、身長と体型があいまって性別不詳になれるのだ。

「お仕事中でした? あれ、違う、飲んでます?」

手元のジョッキを見て首を傾げた。

アッシュ > 「こんばんは、だな。……なんだ、おじさんを探してでもいたのかい?」

自分を見つつ、見つかって良かった、と言うものだから。場所が自分の事務所兼自宅に近くもあったし、それなら運良く見つけたものだ、とも思う。
何せ、一度数日かかるような仕事を始めれば、しばらくどこに居るのか解らなくなる場合もある。

小さい店ではあったが、店主の工夫が上手く行っているのか、圧迫感は少なくどことなく落ち着く様子の酒場の中で、若く見える少女……今は周囲の人々には少年に見えているのかもしれないが、が現れても別段訝しんでくる様子もなく。
時折現れる男の知り合いの様子でもあれば、さほど気にされるほどでも無いようで。

「案外、女同士が好きなお姉さんだったのかもしれないぞ? 元が綺麗なのだから、解る奴には解るだろうさ。
 ……おじさんは特に仕事と言うわけではないよ、いい仕事があるかもしれないな、とそこの掲示板は眺めてはいたがね」

リア > 「この間、事務所に忘れ物してしまって。取りに行ったら鍵が掛かっていたから……。
 さて、アッシュさんはなぜ見つかったのでしょうか?
 外れたら、紅茶――は無いのかしら、ええと……じゃあジンジャーエールでも奢ってくださいな」

不思議に思われているのに秘密めかしてにこにこ笑う。
もともとそうなのか時間帯なのか、柄の悪いお客、というのも見当たらない。
遅まきながら、入店します、の意を込めてお店の人に帽子を取って会釈する。

「ううん、でも女相手にも客引き?ってするものなんですか?
 今夜これでどう?って言われました」

片手の指を広げて。単位がよく分からないけれど値段のことだったのだろうとは思う。

「私もきれいなお姉さんは好きですが――褒めてもヒントはあげませんよ。
 ギルドだけじゃなくて、こういうところにも依頼書ってあるものなんですね」

声を掛けるまで見ていたらしい掲示板を見る。
冒険者ギルドで見たものより大分雑然としている印象だ。

アッシュ > 忘れ物など何かあっただろうか、と暫し考える。
大体の私物類は、置く時はきちんと棚か机にでも置いてありそうなものだが。
普段そんな所には置かないだろう、と言う場所に置くから忘れる、とするならば。

「む、ベッドの下に放り込んだ……家宝にしようかと思っていたアレか……?
 理由の方は――夢占いに興味があるようだったからなぁ、何か占いのひとつでも身につけたかね」

忘れ物は、もしアレならそれは大変だ、厳重にしまい直しておかねば、などと笑っている。
それは半ば冗談であるかただの意地悪であるのか。それよりも、ある程度当たりをつけて探しに来た様子であるのを、さてどうやったのか、と考えてみる。
なかなか理由が思いつかないものだったし、どのみち当たる当たらない関係なく、飲み物ぐらいはいつでも奢ってやるつもりでも居て。

「五本、ねぇ。気に入られたんじゃないかね……おじさんとしてはそんな取引は許しません、と言うやつだが。
 ――ああ、こういう所のは、きちんとした依頼書、と言うより日常の困り毎だったり、それこそおじさんのような探偵が情報を集めるのに丁度いいような小さな事が沢山出ているものなのだよ」

ギルドを通すような正式な依頼ではないもの、雑然とした情報……稀に、無報酬ですらある中にこそ本当に困っているようなものが紛れていることもある、のだとも付け加えて。

リア > 考える様子を機嫌よく見守っていたのだけれど。呟く言葉に一瞬ぽかんとして、徐々に赤くなる。

「家宝……? ……っ……そんっ……そんなわけないでしょうアッシュさんの――!」

声が上ずって大きくなりかけて、人目を気にして途中でトーンを下げる。
大きい声で罵るわけにいかないので、脱いだ帽子でばしばしとアッシュの腕を――ジョッキを持っていない方を――叩く。

「占いよりも精度が高いものですね、もう、外れ! ジンジャーエールくださいな」

お店の人に八つ当たりするわけにもいかず、なるべく抑えて微笑みを保ちながら、アッシュさん持ちで、と嫌味っぽく伝えるのが精いっぱいである。
怒りのテンションで暑くなってきてしまって、マフラーを緩めてぱたぱた喉元を仰いで風を送る。

「知らない人にはついていきませんっ。
 ……ギルドの依頼より小さいことなら私にも務まるのかしら。
 クラスの子、もう冒険者デビューしてる子が多くて引け目感じちゃうんですよねえ。
 今度くっついていこうかなあって思ってるんですけど」

貼り紙のひとつひとつを指で辿り、ソロなんて死ぬ気しかしないし、と。

アッシュ > 「おおっと、危ない……いや意外とちゃんと気は使ってるな……」

ばしばしと叩かれる、その調子はなんだかむしろ安心感があるようにすら思えて、笑っているけれど。
エールの入ったジョッキを持っていたものだから、避けようとするものの。そこは何気にちゃんと見ていたのか、反対の腕を叩いてくる所はしっかりしているな、なんて関心してしまう。
この少女と居る時はよく笑うことが増えた気がすると、自身でそれを少し自覚する。それもまた悪くないなと思いつつ、まだ笑いながら飲み物の代金を小さな硬貨で店の人間に渡してやって。

「探偵らしく……地道に人に聞きながら探してきたのかい? おじさんはいつも同じ様な格好だからな、それもありかもしれん。
 ああ、そうだそうだ――別に探偵らしくと言うわけではなく、だがね。何かリアにできそうな仕事でもあればいいんだがと見ていたのもあったのさ。冒険者デビューも、してみたそうだったしな……
 まぁ、おじさんが決めるよりは、困ったらサポートもするぞ、と言う形の方がいいんだろうがね」

やはり冒険に出てみたい気持ちがあるのだろう、と少女の言う羨ましがっているような話しぶりを聞けば、そもそもそれを考えながら見ていたのだ、と言う話しを思い出しもしつつ。

リア > 帽子をポケットに入れながら怒りの虫が治まらず、人のことからかって、私のことを何だと――とぶつぶつ文句を言っていたけれど。

「地道に――はちょこっと当たりです。正解は――どこに入れたかなあ……あ、ありました」

ぺたぺたと遠慮なくアッシュのシャツの胸ポケットや上着の内ポケットを指で探ってしゅるんと引き出した、見た目はただの薄い布リボンだ。

「私も着れるかなあと思って先日ちょこっとお借りした際、入れたまま忘れてたんですよね。
 毛玉の首輪とペアになってて引き合うように出来てるんですよ。迷子対策アイテムです」

「まあ、アッシュさんたらまた人のことばっかり考えて……。
 私、何でも色々やってみて、将来仕事にできそうなことを探さないとなーって思っているだけで、冒険者になりたいわけではないんですよ。
 うちの学校は卒業後冒険者になる人が多いそうなので、それで生計を立てられたら、貴族社会のしがらみからも抜け出せていいなと夢見てはいますけど……。
 最終的にはどこかにお勤めするのかもしれませんし。

 冒険というか、ギルドに来るような依頼って、いかんせん、こう、ルールの無いところに放り出されてあれこれやるのに慣れなくて、難しいですね。
 経験を積めばある程度ここを押さえればうまくいく、みたいな勘ができてくるんでしょうけれど」

話している途中で飲み物が運ばれてきて、ありがとうございます、と受け取って。

「家庭教師とかどこかのメイドさんの方が私の立場的には現実的な気はするのですけど、そういうのって身分保証と言いますか、紹介状やら家柄やら何やら……で結局実家と関わりなくはいられなさそうだなって言うのもあり……は……またどうして私はアッシュさんに進路相談を」

いただきます、とジンジャーエールに口をつける。