2022/12/15 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 廃墟地」にテンドンさんが現れました。
テンドン > 情景を想像してみて欲しい、夜の貧民地区、あばら家だらけの住宅街。
中でも人気も少なく篝火の明かりなんてほぼ無いに等しく、光源と言えば囁くような星明り程度の片隅で事件は起こった。

「っぐ、う、おお…っ?おっっっ??」

放置されている木造性の廃墟家宅の壁に、立派な角が突き刺さって身動きが取れない状態で立ち往生している。
雨水が染み込んでやや腐りかけている壁の下には、ぽっかりと空いている誰かが昔破壊したと思われる大穴トンネル。
区画内を夜間臨時配達に走っていた所、近道に家宅の内外を突っ切っていこうと低姿勢タックルを仕掛けてその穴を潜り抜けようとした所。
その牛角が災いしてぶっすりと穴上の壁に衝突してめり込んでしまったという事になる。

テンドン > 「うっそ…何かの冗談…?ぬ、抜けな…ええっ?」

トンネルを抜けようとしていたので中腰姿勢、その上で上湾曲している角が外壁を貫通して内部にまで突き刺さった上で、何処に複雑に引っ掛かってしまっているのだろう。
ぐいぐい体を退かせようとしてもほぼ微動だにしない、何処かの熊の壁尻とまでは行かないが、大分情けない事になってしまった。
ほぼ角の根本まで持っていかれている、まるで頭突きでもしてるように見える状態から、両手の平を目の前の壁にへと押し付け。

「ぐぬっっ……っおおおおおお゛お゛……!!」

そのまま腕を突っ張る反動で引き抜こうとする試行、メリメリメリメリ…ッッ!

テンドン > 「…ンナァ~~………」

無明の夜闇に木霊する、暖簾に腕押しだった無力の鳴き声。
吹き過ぎる冷たい夜風だけがそれを聞いている。
力無く垂れ下がった牛の尾が、砂利だらけの無舗装の路面にしなだれた。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区 廃墟地」にアシュベールさんが現れました。
テンドン > 「…いや、本当に抜けないし。どうしようねこれ、困ったね。普通に横着しないで普段通りのルート選択すべきだった痛恨のミスのボク…!とか言ってる場合じゃなくておらっっっ!!!」

ガンッ!ガンッ!!と蹴り付ける家の壁、しかし腐り掛けの癖に頑丈に大工さんが作ったのか。
靴底で思い切り足蹴にしても、軽く表面が拉げぐらいはするが粉砕される気配は一向に無い。

「かった…っ!というかこの体勢が悪いよ…!!お辞儀するみたいな恰好だから、上手く力が入らないジャン…!た、助けを、いや、やだやだやだ此処貧民地区だし普通にヤダ運良く親切な知り合いに当たったとしてもこんな間抜けな所を見られたら才色兼備秀麗眉目のイケてるボクのイメージに関わるでしょ…!」

売れない前衛芸術みたいに立ち尽くし。
右にも寄れず、左にも寄れず、僅かに移動出来るとするならば軽い前後程度。
あたふたおろおろと文字通りにっちもさっちも行かぬ状況で迷える暫しばかり。

アシュベール > ―――それは、本当に偶然だった。
貧民地区の住宅街に店を設ける一人の魔族が、風の音に乗って変な音を聞いた。

>おお…っ?おっっっ?? ―――おおおおおお! ンナァ~……オラァ!!!

うめき声かと思ったらそうでもない。それと、ドカバキ!なんだか凄い殴打音も響き渡っている。
普通なら見て見ぬふりが一番かもしれないが、―――どこか聞き覚えのある声に似ていたので。ふらりとそちらに立ち寄ってみたところ。

丁度、親切な知り合いに当たったとしても!と立ち尽くす、壁角状態の少女を見付けてしまった。

「…………。」

そういえば名前聞いてなかったな。と思い返しつつ。

「あー……なにやらゆかいな事になってるみたいだーけど……大丈夫ー? いや、大丈夫じゃないか……。」

自己ツッコミしつつ、少し近付こう。
ファーストコンタクトがお金をどうするか。という時点で才色兼備という印象はない少年の声が、其処に響く。

テンドン > 「う、うわうわうわうわうわうわうわうわうわうわうわうわうわうわ!!!!!!!!!」

聞こえて来る呼びかけにびくんっと背筋が反らされ、尻尾がばたんばたん跳ね上がる。

「ってその声滅茶苦茶聞き覚え在る!ボクより年下っぽい癖にお店経営している土地持ち才能の塊っぽい誰か…!!」

角が嵌まり込んでいるために振り返れずに背中だけでトーク。

アシュベール > 「おー、なんかすごいことに。そういえば、牛の後ろに立つとー……尻尾でぶたれるから気をつけたほうがいいんだっけなー……。」

尻尾ぶんぶんばたんばたん!ついでに背筋もぴーん!っとなり、鍛えられたおみ足は大地を叩く。
後ろは呟き通り、危なさそうなので少し斜め横から。すすす……近寄ってみんとす。

「其処の魔具店で店主をしてるアシュベールでーす。……そーそー。お金拾わなかったいい子ちゃんさん。……なんでこんな愉快なことになってるのー?」

さりげない自己紹介と共に、よっこいしょ。
地面に腰掛けて、上目遣い。角が刺さって真下の方を向いてる彼女の視界に、丁度映り込むバランスです。

テンドン > 「ついでに牛糞をなすり付けられます、これボクの牧場でのアルバイト体験に基づく豆知識ね」

へなっと間も無くしてしかし鞭としては使わない尻尾はその場にへたれる。
攻撃意思はない、現状においては。なので歩いて来る相手の歩みも割りとリラックスしている状態で受容する、身動きできないけれども。

「テンドン・アルケニエでーす。此処で初の自己紹介って何だかとっても奇妙。ボク壁さんにプロポーズされちゃって放して貰えないの、何か壁さんを振る為の手段とか無いかな店主さん、割りと困っちゃってるんだこれが」

ひょいと汚れだらけの片手を掲げて応酬自己紹介。
そのままうつむき視線のままでぎょろんと眼球運動が下よりに仰ぎ見る視線とはちあった。

アシュベール > 「あーね。そゆこと。まぁ、ぼとぼと牛糞溢れたら位置的にこびりついちゃうよねー………………。」

謎の間。視線は一瞬だけ彼女のふわふわとした白い房に向いた。
けど、すぐさまその逆Lの字になってしまっている彼女に視線を戻した。大丈夫、気づかれてない。気づかれていない。めいびぃ。

「あら、美味しそうな名前ー。よろしくねー……テンドンさん。や、ホントそーね。しかも片方、壁にツノ刺さって……。
 あると言えばあるけどー……その場合、テンドンさんの角と髪の毛が微かにミディアムレアになる予感がするー……。」

アンサーがいち。魔法でぶっ飛ばす。
頑丈な其処を破壊するとなれば、炎魔法がベストだろう。しかし、その結果彼女の其処が大惨事になりかねない。と、ぎょろぎょろした彼女の目に、赤く輝く指輪を一つ見せて。

「もしくは、ぼくが後ろから引っ張るかだーね。負担は、首。」

テンドン > 「うん、でもボクは牛じゃないので勿論大丈夫、そんなそこ彼処に垂れ流すようなはしたないガールじゃないから」

くるりと巻いた尻尾を佇んでいる足の片方に緩く巻きつけて停止。

「でしょー。でも、出来ればそういうボクも巻き込み案件なのは勘弁して欲しいカナ。牛の角ってちゃんと神経通ってるんだよね、フルサイズに発達した鹿の角とかは完全骨化してるしサイの角も爪みたいなものだけれども。バーベキューになっちゃう!!!此処一帯が焼肉の匂いになっちゃうよ!!」

ノーノーと片手を掲げて左右に振るジェスチャー。

「…ボクもその手段をさっきから試みてたんだけど、結構根本までいってるよこれ。見た感じだとあんまり肉体派に見えないけれども大きなカブをどっこいしょー出来るのカナ?」

指輪にちらり一瞥、その後にお世辞にも余りガタイがいいとは言え無さそうな体躯に一瞥。

アシュベール > 「むしろそこらに垂れ流す系ガールがいたら、色々と大惨事だーね……。まー、貧民地区にはそゆのも好きな人、いるけどさー。」

貧民地区への熱い風評被害。
後ろを叩かないようにか、意識させないようにか、しゅるっと足に巻き付いた尻尾を一瞬、目線が追って。

「案外老朽化してるように見えても、精霊の加護とか実はドワーフが作った一品とかで無駄に頑丈なのあるからねー……。
 やー。さすがにこっちも可愛い女の子が香ばしい匂いを出すのはちょっとなー……って思うし。そもそも、街で破壊魔法するのもねー……。」

ということで、魔法による救出は断念。納得するように頷いてから、ゆっくりと身体を起こし、の。

「まー、魔具店経営ってことでー。こういうことへの対応策になるアイテムを、普段から持ってるからねー。
 元の筋力は、まー……多分、テンドンさんより低いけど。よっこいせー。」

そう言い、ばさりとローブを一度脱ぎ、近くに畳んでおく。
華奢な全身を覆う黒地のインナーは、着用者の筋力を増強させるマジックアイテム。
一瞥する彼女に、その生地と、生地に浮かぶ細い体のラインを見せつつの。

「こちらー。ヘカトンケイルの皮で作ったインナーとなりまーす。お手軽にマッチョでーす。」

―――宣伝。

テンドン > 「そーゆー人とはあんまりお近づきになりたくないねー、人間的にも、衛生的にも。でも貧民に限定しなくても富裕層とかでもド級のヤバい趣味持ってる人っているジャン、そーゆーのは差別ださーべーつー!」

ブーブー飛ばすブーイング、余り本気ではない物言い。

「…所有者すら定かじゃなくてゴキや鼠の巣窟になってるような場所だけどね。寧ろ下手に破壊した後に屋台骨が駄目になって倒壊するのが怖いかも…じゃあその手数品数に期待しちゃおーかな、てれれてっててーん☆彡」

自家製効果音を長閑に捻出しながらぎょろぎょろ向けるインナー部分。

「でもお高いンデショ?」

茶化した言葉の狭間に前準備、確りと地面を出来るだけ肩幅に広げた足で踏み付けて体幹の安定を保つ。
引っ張られたとしても転んだりしないように出来るだけ相手の身丈に併せて腰を下げるようにして手繰り易い体勢造り。

アシュベール > 「別に性癖を否定するつもりはないけどねー。衛生的には、やっぱちゃんとしてほしいって思うとこー。……そそ。テンドンさんの言う通り、近づかない。不干渉こそ最適ー。
 ……あーあーあー。あれってマジなの? 奴隷捕まえて、自室の地下牢でド級なことしてたりするのってさー。」

冗談のようで、ここなら割りとありそうな。
勿論、経験したことも目撃したこともないので、声の響きは本気で不思議がっており。

「完全に廃墟地だもんねー。通りすがれて良かった良かった。―――あー。ありそ。こう、抜いた瞬間壁が倒れてきてペシャン公とかー。
 ―――ててーん。」

彼女のイメージ通り。インナーに浮かぶ身体は、華奢。彼女より頭一つ小さい体格なら当然とも言える、が。

「金貨―――ン枚です。」

茶化した言葉に返ってきたお値段は、目を見開くほどの超高級だった。無数の腕を持つ巨人の魔物。上級冒険者も手が焼くような大型魔物を素材としているので――是非もないんです。
ともあれ。
ゆっくりと腰を持ち上げて、まずは彼女の腰回りに手を添える。身長の高さのお陰か、丁度彼女の臀部は自分のお腹辺りに。ぷにっとしたインナー越しのお腹の感触が伝わる。

「それじゃー、いくよー?」

―――同時に、ぐい!! その華奢な身体には見合わぬ膂力が、相手の身体に伝わる。
みしみしっ!!壁が悲鳴を上げるほどの力がその身体に伝わり。―――多分、かなり痛い。

テンドン > 「たっっっっっかっっっっっっ!!!!!!!」

何よりも先んじて聞き及んだ金銭の数字に目の玉が飛び出す。

「あいっっっっっっ!!!ぃっっだだだ!!わりっっ!!と痛いんだけど!!??????主に!!お腹辺りがっっ!後首!!!いっっだ!!引き千切れる!!ボクは壁さんを振って欲しいんであって胴体と頭を泣き別れにして欲しいわけじゃなくってぇ!いっっっつああいい゛っっっ!!!」

そして次の瞬間には激痛に基づく悲鳴が後を追い掛けた。
密着している形になっている相手の腹部に押し潰れている尻尾の付け根が滅茶苦茶に暴れ、ぱしんぱしんと痛みのやり場を求めるかのように相手の足を軽く叩く。
もうそこに静かに根付き立ってるどころではなく引っ張られている腰から砕け落ちそうな感覚にぶるぶる震えあがり。

「いっ」

しかし間も無くしてずぽんっ!とその力任せの一手が功を奏して貫き嵌まり込んでいる角は壁から引き抜けるだろう、周囲への巻き込み被害は最小限、お見事。

アシュベール > 「やー……さすがのぼくもヘカトンケイルくんから皮を貰うのは難易度高くてねー……。
 真夏に溶岩地帯に連れて行って日焼けさせて、剥がれた皮をもらってきたんだよねー……。」

謎の採取情報。ヘカトンケイルは真夏に溶岩地帯に連れて行くと、皮をドロップする。

「やー……お腹はしゃーない。だって思いっきりつかんでるからねー……後は首もしゃーない。だって、頭がツノで固定されちゃってるしねー。しゃーない、しゃーない。はい、どうどう……ほらー。治癒魔法ー。」

―――此処でさり気なく指輪の一つが光を灯す。
首はなんともならないけど、丁度握っているお腹あたり。其処に伝える活性の翡翠光。
身体の痛みを軽減させ、其処に在る器官を活発化させる癒やしの光でなんとかフォロー。
※首はなんともなりません。
ぺちんぺちんぱしんぱしん。足に触れるふわふわの尻尾の毛先の質感を受け止めつつ―――。

「お―――っとぉ。」

その瞬間、ずぼんっ!!と勢いよく角が壁から引き抜ける。が、人二人分の体重をその華奢な身体で受け止められるかというと、また別。

「―――と、わっ!?」

多分そのまま、自分は尻もちを付いてしまう。咄嗟に風魔法を展開して、彼女が態勢を崩しても痛みを帯びないようにしてみるけど……はてさて。

テンドン > 「おぎゃっ!!」

そのままもつれ込むような塩梅で地面にダイブ、悲鳴。

「痛っっっっ!!くはない…?はえ、風、おー、アフターケアまで最適。さんくーさんくー。世話をかけてしまったね店主さん。というかごめんごめん、寄り掛かると重たいよね、直ぐ退くから、っと」

思わず反射的に零れ出る声もあくまで反射に過ぎない、慈善に治癒を含めて風の効果によって何とかなった様だ。
そして抱え込まれているその姿勢からぺたんとなってしまっている自分の腰も何とかその足を張って立ち上がろうとしながら。

「いやあ、危うくテンドンがテン/ /ドンになるところだったね…やや、本当有難う助かっちゃった。魔道具作ってるのって本当だったんだなー、という事をこれで理解したよ。腕利きさんだ、色々苦労の大冒険を積みかさねてそーだけど」

自分の首をすりすり手でさすりながら、指輪やそのインナーにへと自由になった首で振り返って確認しつつ。

アシュベール > 「おっぶ―――っ。」

危ない。って言おうとしたら変な声がでた。もつれこむような塩梅。
彼女の身体に覆われるような格好になっているけど、その勢いをぎりぎりで殺す風の加護で、ソフトタッチ程度の勢いに殺せた様子。ので―――。

「や、全然重くないけどー……ま、ともあれー。良かった良かった。玉の肌にキズが無くてねー……うへへ。」

(魔法でどうにかしてるので)重くない。と伝えつつ、自分の体の上で自身の状態を整えている様子を眺める図。―――見た限り、ケガもなければ首がすっこ抜けたりもしてない。せーふ。
咄嗟にお腹を抱き止める格好だったので、彼女が立ち上がろうとするなら、胸下、アバラ、背中辺りを確り支えるようにして、ばんざーい。持ち上げ、の。

「その場合、犯人はすっこ抜いたぼくってことになるんだけどねー……。
 うへへ。まー、まだ開店してちょっとの新参、だけどねー……。
 や、生まれてから10年ぐらい熟睡しててー……此処一年で漸く冒険し始めただけだけどー。」

相手が異種族だからか、そんな言葉をぽつっと零しつつ。
振り返った相手には、治癒の光と風の光を灯す指輪の輝きと、足を開いた格好で、インナー越しの全身を晒す自分。
まだちょっと立ち上がってない。

テンドン > 「のあー。擦り傷生傷は日頃から絶えないけれども死な安死な安、此処で身動きできないままだったら間抜けな恰好のまま凍死してた恐れもあるし感謝感激だよね、はい、そっちも立ち上がりの手、ありがとー」

挙動の手伝いを受けて立位にへと移行、多少足元がよろめきつつも確りとその場にへと立ち直す。
くるりと尻尾を振ってそのまま回れ右で振り向き直り、ひょいとへたりこんだままの相手を手伝う為に片手を差し伸べる。

「…まま、誰が何かしたなんて誰も気にしないデショ。まーた誰か暴れたなー程度、秘密秘密、しー。何だか色々な複雑がスジョーがあるんだねー、いかにも普通の人間っぽくなさはひしひし感じてたけど。そうだなー、実は何処かの死した賢者の生まれ変わりとか?」

しーともう片方の手の人差し指を立てて自分の口元に。
言葉を交わす最中で遣り取りの間にこびり付いた泥土の汚れをぱしぱし尻尾の白い房で叩いて落とす。

アシュベール > 「この時期は寒いからねー……。いくら上着着てるからって、足。……テンドンさん、寒そうなカッコしてるからねー……。足の末端から冷えていって、そのまま……うへぇ。嫌な死に方。
 ―――おー、どーもどーも。よっこい、しょー……。」

普通に上着を着ているが、今回は足がむき出しになる突き刺さり具合だったはず。結果、凍死も割りとあり得た可能性。―――ぶるりと震え。
差し出された手を、じゃらり。と指輪が音を立てる手が握り返し、漸くこっちも身体を起こして。

「いっくしゅ!!」
―――寒いので慌ててローブを着る。いそいそ。

「まーね。―――思いっきり見事な孔が空いてるけどー……ま。此処まで来て、それの責任追求するやつはいなさそーな。
 んー……? あー。そーね。ぼく、魔族。ほら―――ここ。」

口元に指を添える動きに合わせ、こっちも自分の薄い唇に指を添え、しー……。
こっちも尻とか背中とか、後は埃がついていた彼女を抱き締めてた手周りをぱしぱししつつ―――眼の前の相手に見えるように髪を揺らす。
其処には、折れた角の痕。

「魔物使いの魔族でーす。どーもー。」

テンドン > 「走り易さと防寒性の両天秤、ボクは配達業のプロなので。偉いでしょ、よいしょー」

ぐいっと手繰り起こしたところで握った手を解放。
ぷら、と、手を開いてその場に佇み着替えを待ちながら。

「平民地区や富裕地区なら兎も角こんな貧民達の住居の辺境であばらやの財産価値を問うようなもの好きなんてそうそう…わーお、なるほど、魔族…え、魔族、はえ、なるほど」

目をぱちくりとさせて、角の痕跡にへと目を配る。
予想外だった、という風な面持ち。

アシュベール > 「偉い偉いー。というか、配送業なんだねー。それなら足の動きを阻害しないのも、納得といえば納得かもー……。
 ――あー、どーもどーも。ふいー……。」

手を解放されれば、自由となった両掌が再び魔法を使う。
僅かに風。それと炎と水。汚れを落とす温風がいい感じに汚れを拭っていくのである―――。

「あ、そいえば。首、まだ痛む?痛むなら治癒魔法使うけどー。
 ……そーそー。居ないと思いつつー……ん。そ、魔族。あー、魔族だからって、食べたりはしないよー。可愛い子にちょっかいは出すかもしれないけどねー。うへへ。」

冗談なのか本気なのか分からない言葉と、笑顔。合わせて、此処も。と指をさせば、フードを被らない事で露出した尖った耳。其処も異種族であることを意味しており。

「……そんな予想外だった?」

――きょとん。

テンドン > 「ええっ!?今の流れは恐れ戦ききゃー恐ろしい魔族よー!って悲鳴をあげてボクは転びまろびつその場より逃げ出すのであった、というのを寧ろ期待していたのでは!!!!???というのは冗句として、んーー、少しびっくりかなーみたいな感じ、でもボクもミレーだしね、という感じで直ぐに咀嚼して呑み込んでるのでそんな悲劇は迎えないのでした、そっちの言ってる通りに齧られたりした訳でもーなーいーしー。魔族ならそーゆーのも確かに納得カナ」

ぎょっと両手を掲げてオーバーリアクションに驚く仕草。
しかしすぐにそれもふんにゃりとほころぶ笑顔で崩される。
ぱたんと降りる両手は自分の首の横に、こきんと僅かに捻る仕草で骨がなり。

「や、首の方は大丈夫、無茶なレスキューお願いしたのはボクのほーだしね、問題なし問題なし、寧ろそっちはだいじょーぶ?か弱き乙女を助けた名誉の負傷?」

アシュベール > 「やー。それをされてたらちょっとショックだったから、理解のあるミレーさんでよかったよかったー。うへへ。
 まー。人によっては魔族とかが得意じゃない人もいるからねー。相手がそゆ人って時にぽろっと零すぐらいなんだーね。―――ま。少し驚いたぐらいなのは、嬉しいよー。
 まー。確かにテンドンさん、かじりがいありそーだけどー……。良い反応しそうだしー。ふぎゃーって。」

ふぎゃーって。そのオーバーリアクションもそういうイメージを連想させる。
けど、自然と此方も浮かべるのは笑顔である。目の前の相手がその言葉のまま、逃げ出さないで此処にいてくれたからこそ。

「今思いっきりコキンって音鳴ってたけど。―――いいよー?治癒魔法ぐらい使っても。こう見えて、魔力は強いんだよー。
 ……んー。そーね。ちょいお尻痛いぐらいだーね。こう、瓦礫がねー。」

彼女には風の魔法を使えたけど、こっちはダイレクトに瓦礫の山に尻もちしたので。
ちょっとずきずきするぐらいか。けど、治癒魔法を使うほどじゃあない。

テンドン > 「ふぎゃー。齧られたらボクは齧り返すよ、窮鼠猫を噛むってヤツ。がおお。お互いにある種の色眼鏡で見られる対象だと困るよね同盟でも組みますかー」

にゅーっと口端を指先で摘まんで持ち上げる歯列に肉食の牙は無いが頑丈な歯並びを開帳、がちがちがち。

「そっか。でもボク魔法とか使えないカラナー、でも何かお礼はすべきだと思うから、その内貧民地区のおいしー店でも奢るね、此処ぞという穴場、君は凄い幸運だなあ!という訳で親切な魔族さんに奢るお金を稼ぐ為にボクはそろそろまた配達のお仕事に戻ります、本当に助けてくれてアリガトネ、また今度何処かで機会あったら!」

そしてちゃきっと敬礼の挨拶に構えると。
それをそのまま振る手にへとかえると共にくるんっと踵を返し。
今度は慌てず騒がず慎重に穴を潜り抜け、たたっと走る韋駄天の疾走はあっという間にその場より消失する事になるのだった、どっとはらい。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区 廃墟地」からテンドンさんが去りました。
アシュベール > 「おー、怖い怖い。―――うへへ。それも面白そうだけどねぇ。」

頑丈な歯並びを晒す彼女に合わせ、両手を持ち上げ、魔王のポーズ。

「まー、此処は自前で治すからご安心をだーよ。―――おー。それはそれで、ありがたいねー。基本、自炊してるから、あんまり貧民地区の食生活、知らないんだよねー……。
 ―――おー。今度は足元、ちゃんと気をつけるんだよー?

 ―――大丈夫かなー……。」

挨拶を終え、ひゅんっ!文字通り、獣のような疾走でその場を去っていく彼女を見送って。
けど、どこかでこう、何かしらの問題を起こしそうだな。という疑念がありつつ、も。
きっと今度のテンドンさんはよくやってくれるでしょう。―――と思いつつ、改めて自宅兼お店への帰路につくとしよう。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区 廃墟地」からアシュベールさんが去りました。