2022/10/28 のログ
ご案内:「深夜の酒場」にパンナさんが現れました。
パンナ > 老若男女さまざまな人物が客として入り乱れ、時には破廉恥な展開も訪れるよくある酒場。

閉店時刻付近となってもなお、店員でもないのに残り続けるのは戦いの心得でもあるのか、体格のいい長身の獣人女性だった。

その女性は、酒場のカウンターで―――

「あ~~~、畜生~~~~チンコついてねぇ女はズルいぞ!アタシだってなー!好きでこんなになったんじゃねーのによー!!」

後輩冒険者が、男の子とイチャイチャしているのが気に食わなかった。

最初のうちは気前よくアドバイスしたり祝ってあげていたのが、独りになって酒も入ってむき出しの本音が店内に響く。

幸い、付き合いが長く事情もよく知ってる店主一人だ。
彼女の言動には返す言葉に困ってか、ひきつった顔のまま他の客の食器を下げては洗っている。


「3年付き合ってあんなにお互い抱き合ったのに、チンコ生えたぐらいで……ケツの穴ちっせぇ~~…ひっく」

元彼への不満が店内に虚しく響く。

「にしても、思ったより不便でかなわねぇなぁ……。生まれつきこれな人とか、人生すげぇハードだな」

ちら と、ボタンを外して緩めたホットパンツを穿いた己の下半身に目を向け。

「アッチ系の店の仕事もめちゃ限られてるし、下手こいたかもな~~~…」

自らが望んで手放すまいとした異形。その代償は思っているより大きかったのだ

パンナ > 『冒険者の仕事の方はどうなんだ』 
店主はスルーするのも限界だったのか、何気なく素っ気ないながらも彼女へ問いを発する。
もう氷しか入ってないグラスを傾け、口へ大きな氷を一個放り込むとバリボリ咀嚼しながら兎耳の女は語る。

「国は相変わらずやばそうだから結構稼ぐチャンス自体はあるぜ?……手数料とかその辺でギルドの連中、結構持っていくけどな!アタシらが一番身体張ってんだぞ~!!ざけんなクソッッッ」

自由、そしてそれに似合わぬ豊かな富を築き上げる者などごく僅かだ。
例外があるとすれば、実家の分厚いサポートを得た貴族出身の冒険者たち。

何が目当てで安泰な世界から全てが自己責任、実力主義のハードな世界にやってくるのか。コレガワカラナイ

「もしかしたらギルド職員って冒険者より儲かるのか??あー、でもずっと事務仕事とかだったら身体なまりまくってヤバそうだな。風俗で腰振ってる方が気持ちいいし金の入りいいし、ビミョーなとこだぜ」

冒険者の仕事がまるで不作な時には、それこそ何でもしなければ日々を食べていけない。

中には人に言えた事じゃない事をして日々を生きている冒険者の話は嫌でも耳に入ってくる。

「な~、マスターはこの店やって儲かってるか~~~?」

酔っ払いながら、冗談半分に聞いてみると、『ぼちぼちかな。お前がちゃんとお代払ってくれればな』と蜂の一刺しが返ってきて、大きな兎耳はぺたーんと折れた。

パンナ > しょぼくれる女に対して、店主はすまし顔で何のフォローもしなかった。

しばしの沈黙。

お互い何も言わなかったが、いち早く無言に耐えきれなくなった女は慌てて取って付けたように

「ちょ……ごめんって!近いうちにまたそこそこデカい仕事受けて、それで返すから!!」

ギルドにその仕事が都合よくあれば の話だが。

昨今の事情では、冒険者という自己責任が全ての世界の癖に変に出自などで制約を設けた求人だって来る。

特に国絡み。明らかに捨て石や死人が出る事を想定した危険な仕事でもなければ異様に厳しい条件の仕事だって来る。

そうでない案件も多々あるが、どんな仕事もそれなりの準備や出費が絡む。

冒険者稼業をしばらく続けていれば、額面では結構いい感じの報酬もいざ貰い受けてみれば、経費等と差し引いてこの程度しか手元に残らないのか と幻滅する事は多々ある。

「アタシらがダチと冒険者登録してデビューしてから、もうとっくに国の事情怪しかったし。こっからどうなってくんだろな~。ヒック」

日々の生活を一応は真剣に考えてるだけあって、国の現状を憂う彼女の言葉には店主も緊迫した面持ちで頷いた。

「ま、アタシはツケといてくれるなら用心棒はいくらでも引き受けてやるからさ♪」

パンナ > 結局、ツケが重なるのは変わらないのかと呆れる店主だったが、有事となればその程度の代償で身を守ってもらえるならそれに越した事はない。

戦いの心得のない店主は、空っぽのグラスを揺らして強気な笑みを見せて語る女に『高いのかそうでないのか分からんな』と苦笑いで返す。

「……んっ…ふあぁぁあ~~~~~っ。今日もよく飲んだしそろそろ寝るぜ」

その場で伸びをすると、ゆっくりと席を立ち肩をほぐし軽くストレッチを行う。

「風呂と部屋借りてっていい?寝てても盗人の足音聞こえるから悪い話じゃないだろ?」

兎耳をピクピクと動かし、無理やりYESと言わせようとにこやかに微笑んで。

己の価値をよく理解している彼女は、そのまま店主からなし崩し的に許可を得て、上機嫌そうに「ヒュー♪太っ腹!」とテンション高く返し、鍵を受け取ると階段を上がっていった。

ご案内:「深夜の酒場」からパンナさんが去りました。