2022/09/09 のログ
ご案内:「洞窟」にミメシスさんが現れました。
ミメシス > 波の音が聞える。
夜なのに海辺に舞う鳥の鳴声も。
空に浮かんだ月の輝きが水面を照らし、不思議な光景を作る。

――セレネルの海。
その海岸にある岩場に隠れた「とある条件」を満たすと姿を見せる海賊の宝が眠ると噂されている洞窟。

一攫千金を夢見る冒険者か、ただ海岸を散歩しに来た牙無きものか、偶然今夜は洞窟が姿を見せる条件を満たしていてか、その洞窟の入り口は潮の満ち引きにより、多少は海水が流れ込んで入るが、何かを待ち受けるように解放されている。

その奥にアレは存在している。

無名遺跡と違い此処には人の手で作られた灯りは無い。
存在するのは闇と潮騒と白波で磨かれて滑らかとなった地面と天井と壁――それと潮溜り、それに天井に走る亀裂より注ぐ月の輝き、奥に行けば亀裂よりも穴でも開いているのか眩い輝きが遠くに。

その中でアレはつるりとした天井に張り付いて獲物をじっと待っている。

ぴちゃ……ぴちゃ……

と闇の中で僅かな月明かりに姿を晒すのを避けるため、天井と同じ色に身体を変えて身を隠しながら、皮膚より溢れ滲ませる粘液を落とし、じっと、じっと……。

果物を腐らせたようなあの香りは潮の香りに紛れている。
粘液の滴る音も潮騒に或いは天井から落ちる海水の名残で判別難しい。

……天井の何処かに亀裂があるのか、月明かりが滑り込むように洞窟の中を冷たくも優しく照らし、その輝きを透明な粘液が反射し、不気味ながら何処か幻想的な光景を作り出していた。

ミメシス > 月の煌めきは魔物の這いずる痕を明確にし、皮膚より滴り落ちる粘液すらも輝かせて、それが天井に張り付きそこでジッと獲物の来訪を待ち続けているのすら知らしめよう。

ただ、今夜は薄雲がある。
夜風に吹かれた薄雲が月を覆う時だけは、洞窟の天井に開いた裂け目から注ぐ月の光は止んで、魔物の姿を再び闇へと隠し、その存在を隠してしまう。

だが居なくなったわけではない。
魔物は身体を時々波打たせて蠢き、その場を離れず静かにその時を待っている――…耳を注意深く澄ませば、それが犠牲者の声を真似て助けを呼ぶ声が潮騒に紛れて聞こえるかもしれない。

そうして魔物は犠牲者が自分に近づくのを誘い、待つ。
弱い存在だからこそ、慎重に確実に千載一遇のチャンスを逃さぬように……。