2022/09/08 のログ
ご案内:「山中の別荘地」に影時さんが現れました。
ご案内:「山中の別荘地」にフィリさんが現れました。
フィリ > 「――それでも、はぃ――当然の欲求です、かと。
事前に察知出来てぃれば、こそ。対策を練る時間も…出来る、と。そぅぃった事も多々有ると、思われ――ます。

…ぅ…ん、それこそ。事前に検証を重ねると、ぃぃますか――精査に精査が必要となる、のかと…難しぃ、ぉ話です。
私と行ぅの、でしたら――ぇぇと…その、はぃ……そんなに。大勢の方と、関わるのは……ちょっと」

少しばかり。眉の端っこが下がるような、困惑気味の表情になった。
実際に百人の、無作為に選ばれた者達を前に。自分の選んだ彼の服装が、如何に見えるのかを披露して。あれやこれや言われるのを想像した…らしい。
そういった、知らない誰か達の意見に晒されるのも。それ以上に――大勢の、知らない人達の前に。立たねばならないというのも。
少女にとっては、人跡未踏の密林にでも踏み込むのと同じ程に。…未知で、不安で、脅威なのだろう。
ヒトの国、無数の人間達が存在する中で生まれ、暮らすクォーターではあるものの。種族云々ではなく性格的に、大勢の第三者は、苦手。
それこそ危機察知だの生存欲求だのの対象にすらなり得てしまうのか。

――とはいえもっと少数の相手なら。取り敢えず幾らか気を許す事の出来た相手なら。
余裕、とは言えないのかもしれないが。それこそ本能的な欲求が、原始的な恐怖を上回る。
何となく想像してしまい、怖じ気づいてしまったファッションショーではあるものの。
…私と、と。彼と自分程度の少数でなら、どうにかと。念を押す事は忘れなかった。

「寧ろ、現実の――と、申しますか。実際誰かに、見られてぃる…と、ぃぅのは。その、肌に感じると、言ぃ、ますか。
ぞわぞわ、する物が。ぁりまして――……ぅ、ぅ。それでしたら、ぇと…もぅ少し、手前で。止めてぃただきたかった――、の、ですがぁ…」

若しくは、気弱な侭に圧しきられてしまった事やら。状況に追い付けないまま、流されてしまった事やら。
それこそ――本能にせっつかれて、暴走してしまったか。色々と有ったに違いない。ある程度自覚出来ている分、尚更に反論は出来なかった。
今の成長段階が何処まで続くかは、竜の固体それぞれで異なるらしく、見当もつかないが――その、次の段階。
過去の言動を思い出す度、枕に顔を埋めて、両脚をバタバタさせるような精神年齢の頃合いが。何年、何十年続くかもしれないというのは。
出来れば…勘弁して欲しいものである。

「公営として行われる場合や――神職の、一環とされる場合とぃぅのも。国や宗教によっては、存在する、そぅです。
そも、欲望に…欲しぃ、とぃぅ情動に、直結してぃるのです…から。商ぃの基本では、ぁるの…かと――ぅ、ぇ゛!?
す、きな…好きなで――す、か?ぇ…ぇと、其処は。人並と申し…ますか…――ぁ…とは、好き……す、すきになって、しまぅ…とぃぃぃぃ…ますか…っ」

好き、という一つを取り上げても。相手が好き故の行為である者も居れば、行為その物が好きな者も居る。無論、両方である者も。
其処等辺りは人間によって千差万別なのであろうし、ヒト以外、自分達竜の中ですら。意見は食い違ってくる筈だ。
親達然り、姉妹達然り――そして少女自身は、というと。これがまた、惚れっぽいというか、好きになるタチだった。
好きだからしたいと思うし、しているから好きになる。矛盾している気もするが――その辺も、きっと。心の侭故に仕方がない事なのだ。
多分その辺も。先程から、過去の具体例にツッコまれると、多いにテンパってしまった一因なのだろう。…好きな相手の要望なら。応えたくなってしまうではないか。

「直に異国まで、拝見出来るのは――我々の中でも、限られるとぃぃますか…それこそ。ラファルちゃん様程でもなければ…でしょぅか?
自身の領域を、思ぅまま、跳び越ぇる、とぃぅのは。多くの生き物の中でも――人間こそが。一番、なのでしょぅし。

――それは。…それも、また、はぃ。事実――現実、かと。
だからこそ、持ち得る者が――そぅではなぃ、者に。土地に。富めるよぅにと、手を尽くす義務――がぁるの、ですが。
それはきっと。国家全体にとっての、リターンにも繋がる…のですから。――解ってぃても、難しぃし、行わなぃ方も多々、では…あれ」

大概の生物は縄張りを持つ。群れや領域、生息環境に縛られる。そもそも竜という生き物は取り分け、テリトリーを構築したがる性質が強い。
洞窟やら火山やらに巣を作り、其処に数多の財宝を蒐集する。そんな、文献や伝承に記載された事柄は。生物学的な事実でもあるのだ。
それも含め、彼と共にひょいひょい飛び回る――ついさっきも、もしかすれば本物が其処に来ていたかもしれない叔母などは。少数例なのだろう。
だから必然、人間以上に。少女の想像や知識は、先人からの伝聞によるものだ。
其処に豊かな側であろう者の目線が混じるのは。それを理想論と理解しつつも、現実面から肯定するのは。
知識の出所、人格形成の源に――ちゃんと。商人だったり、貴族だったり…親達の影響が有るという事だった。

そうこうしている内に。どうやら分身も戻り、一区切りのようである。
どろん、という効果音でも付きそうな案配で、分身が姿を消してしまえば。その段階で一息ついて。

「後は何と言ぃますか――触れてぃれば軽ぃの、ですが。そぅでなければ重ぃ筈なので――…む、む。
手を離したままでも、吸ぃ寄せ続けられる――なら…誘導にもなり、ますし、若しくは移動にも使ぇ――ぅぅ。
これはまた。検証の必要が、複数、発生してぃると。そぅぃった事になるのでしょぅか――」

風の知らせというか、急襲というか。あの一瞬はそれだけで、色々な可能性を示唆してくれた。
少女の手から離れた段階で。重量物である鎚は、慣性に従いブッ飛んでいくのだろうが――其処に。
吸い寄せという誘導性能が加われば。どの程度まで軌道修正…標的への命中率補正を加えられるだろうか。
其処から逆に。吸い付く様に――そんな、鎚に。手を離した状態の重い鎚に。少女自身が引っ張られると、どうだろうか。
運動能力人並以下の少女を、擬似的に跳ばせる可能性も有る…気が、してくる。着地云々に目を瞑れば。

とはいえ。一度考え始めてしまうとキリが無さそうだ。この侭では休憩どころでもなくなってしまうだろう。
考える事でいっぱいになり、脳味噌が休憩という単語を忘れてしまう前に。ぺしょ、と荷物を置いていた切り株に腰掛けた。
ごそごそ荷物を漁り。別荘から持ってきていた、サンドイッチ等軽食を拡げ始めて。

「ぉ願ぃぃたします、その時は先程の――杖の方が。宜しぃでしょうか。万一の事も御座ぃますので。

……ぅ゛。ぅ…ー…確かに、はぃ、真剣を用ぃるのは…私の方が。うっかり、して。しまぃかねません――」

例え彼の技量であれば、何時如何なる状態であれ、寸止めしてくれるのだとしても。
その直後、すっ転んだりつんのめったりした少女の方が。目の前の刃に突っ込んでしまうかもしれない。
彼の事は信頼出来ても、自分自身の身体能力の方が、到底信用出来ないのである。
予期せぬ惨事を想定してしまい、早速サンドイッチを摘もうとした手が一瞬、止まってしまいなどしつつ――も。
彼と共に過ごす昼食は。先程迄と比べれば、比較的穏やかで速やかな物だろう…また、からかわれるような事が無ければ。

影時 > 「そういうこったな。獣への備え、狩りや戦ばかりじゃないぞ? 
 ……過去の事例、記録を紐解き、天文を詠み、天候の巡りを察するのも同様のことも云える。

 ははは、流石に大っぴらにはやれん。結局のところ、どこまでも我がことでフィリ、お前さんを巻き込めるものかね」

言ってみたは良いにしても、想像してみるとさすがに無茶があるか。
たとえば、学院やら服飾家たちののイベントや催しで、思い思いにデザインを凝らした服のうち、どれがいいのか投票するならまだしっくりくる。
しかしながら、同じような流れで我がこと、どれだけ他者に溶け込めているかどうかなどを計るというのは、流石にどうかと思う仕儀だ。
面白きことを善し、酔狂を愉しむにしても、そこまでやってしまうのは粋であるかどうか。
巻き込む相手の気質やら生活を慮るとなれば、それこそ家族の数人を巻き込むくらいが一番安堵できる範囲であろう、と。
念押しに素直に頷かずには、いられない。

「……――ははぁ。
 一応加減はした。加減はしたぞ? 全部思ったまま隠さずに言っちまうなら、死にたくなる具合かネ、こりゃ」

血筋が血筋だから、という言い方はできるかもしれないにしても、矢張り竜の血というのは何かと特殊な事例を生んでしまうのだろうか。
外面と内面が一致しない。落差がある。際立つくらいに起こりうる。
もっとも、此れは人間の大の大人でもありえる事柄とは言っても、当人の気質の問題もあれば、やらかした――という度合いで遣ってしまった。
そういうことなのだろう。あの頃は若かった――と遠い目ができるようになるのは、それこそ何十年位掛かりそうなもので。
難儀だな、と。口の中でつぶやきつつ、両肩を落として思う。甘いも酸いも噛みしめるのが大人というが、そうなりづらいのがヒトとは違う定めか。

「嗚呼、その辺りの下りは己も読んだことがあるなァ。
 中身はどうあれ、その手の他所の風俗の一端を読み解けるのはここに来て良かった、と思う一つだ。

 ……まだ、そーゆー番いを作りたいような誰かさんは、居ない、と。好きに好きになる、……とかいう処でもあるのかねえ、この時分だと」

民俗学、風俗学とでも図書館ではカテゴライズされる記録を読み解くのも、楽しいことだ。
自分が通ってきた土地の記録があれば面白いが、未だ知らぬ他所の土地のものがあれば、いつか行ってみるかと思いを馳せるものである。
娼婦の類はそういった書物の記述を思い返すと、原始の神話、宗教における神職とカテゴライズされているという事例を思い出せる。
子を孕む、生み出すことに神秘、神性を見出してのことか。それとも、医療技術が十分ではないからこその生活の知恵でもあったのか。
ともあれ、愛欲、好意、そして行為が病みつきになって――等々が絡みやすい事柄でもある。その辺りは何かと危うい年頃か。

「竜種の全部を見た、知った――なんて自惚れる気は無ェが、遠く、果てまで飛べるというのは竜でもごく一部なんだろう。そう思ってる。
 
 どこまでもでも歩く、または船などで遠くまで至ろうとする性質は人間の方が強いだろう。
 しかし、……何というかな。良くも悪くも人間はごちゃまぜだなァ。
 賢く、理性に思考できる、振舞おうとするにしても、生きるためにその真逆に手を染める沙汰もある」

飛翔能力も特異性の一つとして、人にはない様々なものを持つ竜もまた、やはり生き物としての性質、在り方に準じてしまう。
財を蓄えるというのもその一端だ。自分の雇い主であり、今話をしている少女の片親たる人竜はその才に図抜けている感がある。
持つ者、持たざる者の差の認識というのは、財を蓄えて富める家の生まれだからか。響く言の葉に思う。
なまじただの人間以上に、伝聞交じりとはいえ、現実を踏まえた理想論を語れるのは、下手に偏っているよりはずっと良い。
もっと現実を知れ、と宣うのは、相手の背景も知らぬ無責任な愚者の遣ることだろう。
そうした社会勉強も遣れるかどうかは、否、考えるまい。それはまた、別の仕事を考慮しなければならなくなる事項である。

「使える奴が使えなければ――重いはずの金属か石かどうかも定かじゃない塊だからなァ。先っぽから尾っぽまでみっちり詰まった、な。
 確かめる、試すなら幾らでも今日明日のうちに遣れるだろう。
 少なくとも、他の誰かに使うと危うい、危ない……その憂いを避けるために、受けて立ったようなもんだ」

風の報せ、という奴か。材質の純度、特質を抜きにすれば、件の槌は柄も含めて全て単一の材料で作られている筈のもの。
例えば刀剣の類で全部、鋼鉄で作らないのは腐食の問題もあるが、総鋼鉄製は重い。無用に重くなり過ぎてしまう。
柄は頑丈な木材を使うことで、軽量化を計った――というコトも何もない。静止状態の重量は、非常に重くなりうる筈、である。
其れを軽くする、または使い手を引き寄せることも含め、すべては魔力に関する働きだ。想像した全ては成しえないと断言するゆえんがない。

「……練習には杖でいいだろう。いざ試すなら、槌を持ってもらうがイイな。
 ン、だろうな。とりかえしがつかないような面倒事が起こるとわかってるなら、無理に太刀を振るいやしねぇさ」

型の練習は杖、試し打ちは槌。訓練の間はそういった使い分けでいいだろう。
杖と槌も全く同一の操作感覚は出ないにしても、竜の姿まで考慮しなければならない――という面倒を考えなくていいのはむしろ僥倖。
腰にした太刀の柄頭を、出番はないぞ、というように軽く叩き、己も広げられた軽食に向かう。
手を清め、水筒の茶で口を漱げば、サンドイッチを片手に穏やかな会話を続けようか。それらが終わった後の稽古のハードさの前の、静けさの如く――。

ご案内:「山中の別荘地」からフィリさんが去りました。
ご案内:「山中の別荘地」から影時さんが去りました。