2022/05/04 のログ
イェン > 「……………………」

(彼がふと口にした提案を脳内で転がしてみる。かぁ…と頬に薄いピンクが滲んだ。外で会う時だけ先生ではなく名前呼びする関係。それはもう、なんだかもう、教師と生徒、許されざる恋人関係が成立してしまっているようなそんな背徳といやらしさが感じられたからだ。故に、断じて先生呼びを維持しようと仏頂面で決意した。呼び捨てとか論外である。)

「それが許されるというのは相当な腕なのでしょうね。今から期待してしまいます……♡」

(鉄壁の無表情が紫水晶に夢見る乙女の色を滲ませた。こう見えて結構食い意地の張っている系美少女であった。そんな女学生なれば、男性教諭の勧めを断るはずもない。自分の注文と彼の注文、脳内でざっと総計を出して『銀級冒険者ともなるとやはり結構な稼ぎになるのですね』と感心する。アルコールについても味の予想など出来ようはずも無いが、彼の言葉には呑み慣れた物の経験が感じられたので全てお任せだ。イェンがつぶれる程に酒精の強い物なれば、恐らくは一口目で気付くだろうし。世の中にはあっさり呑めてその実度数は凶悪の一言なんてレディキラーがいくつも存在しているのだが、その辺りの知識が抜けているのが大人びていても所詮は思春期の小娘に過ぎぬ部分。)

「……………………………。 ―――別に、恨んではおりません」

(先の言葉に対しては思案深げな表情でだんまりを決め込んだイェンだったが、続く冗談に対してはぽつりと小さな声音で言葉を返した。何故なのだろう。とイェン自身不思議に思う。レイプされたと言っても通りそうな状況だった。にもかかわらず、今もこうして二人きり―――まぁ、防音の術式が組まれている密室でというのは少々不安も感じるけれど、それでも嫌な気分ではない。もちろん、美味しいお肉と美味しそうなお酒に釣られている部分はあるのだろう。これから彼から聞き出すつもりの冒険者としてのノウハウだって値千金の物になると思う。が、本当にそれだけの事なのだろうか。目弾きの朱が苛烈な印象を残す双眸にて、改めてテーブルの向かいに座る男を見つめた。いつもと同じヘの字口の仏頂面は、ともすれば睨みつけている様でもあるが、イェンにとっては極々フラットな表情である。不思議とリラックスした表情だった。)

コルボ > (ちょっと悩んだけど今の何だ……?)

 距離が近いのか警戒されてるのかいまいち分からない。それは男が肝心なところで乙女心を理解していないというか、
 軸になる禁断の関係を仕掛ける側ではあっても物語の筋道を知らないからで。

「実際旨いから楽しみにしてな。その代わり一品一品じっくりやるからちょっと時間かかるけどな。
 量は少ないけど時間も挟まって満足感もあるぜここ」

 待ち遠しさと少量を時間をかけていただく流れが店主の経験から、計算せずして紡がれており、
 そういう間も相まって貴族からの指示も高く、それ故に掌中に収めたい輩もいるわけで。

(あとその間に酔わせちまう時間も出来るしな!)

 その間を逆手にとるろくでなしがここにいるわけで。
 トラウマにはしないが夢心地でいただくつもりである。
 最初は忌避感がないところからやったほうがいいだろうし。

「前の反応からして恨んでないにしても少しぐらい食らいつくと思ったが、少し意外だな。
 なんていうか、女子特有の落ち着きのなさがないっつうかな。

 てか、ついてきたのも、あそこで我慢して酒飲んでたくらいだ。
 先に進む為に知識と経験が欲しいってところか?

 ここの肉には敵わないが酒の肴くらいにはなると思うけど、課外授業がてらしたほうがいいか?」

 話しているうちに、一皿目が来つつ、続いてワインもくればグラスに注いで。

 飲みやすいし抜けも良いが、普通であればやや酩酊感が来る、貴女であればほろ酔い気分、少し気が緩むようになってしまうくらいの度数ではあろうか。

 肉を勧めながらワインを勧め、酒のペースを把握できにくくする程度に会話を織り交ぜる。

「実際まともに生き残れる奴は特別な奴じゃなくて安定した奴なんだよ。
 特別な技術を身に着けようと躍起になる、成果を急ぐ、過度な鍛錬で体を壊す。

 毎日安定してコンディションを保つ。それを最初に覚えたら大体誰でも上がっていけるよこの界隈はな。

 さっきこのワイン勧めたのも、ハメ外して飲みすぎても翌日の仕事に影響が出にくいからだしな。」

イェン > 「はぁ……♡ 本当に楽しみです。これはあれですね、焦らしの妙というやつですね」

(桜色の唇が妙に蠱惑的な吐息を漏らすも、美少女の紫水晶に描かれるのは《肉》の文字。今のイェンは色気よりも食い気という、男子学生の如き精神状態であった。結果として男性教師の下心への警戒心も薄れていく。幸い、続けて彼の発した話題はまともな内容の物。食欲に若干蕩けていた美貌をきりりとさせて)

「――――ええ。食事が来てから、と考えていましたが、その通りです。こうしてFランクに上がる事が出来、今後は討伐依頼も解禁されます。Gランクの依頼で命を落とす者はほとんどおりませんが、Fからはそれが一気に増加し、貴方のいるDランクで一旦落ち着くまでは毎年かなりの数の冒険者が未帰還者となっていると聞いています。今の私には、貴方の様なベテランからの情報が何より必要だと判断しました」

(美味しいお肉に食いついただけではないのだと凛々しさの迸る美貌が強調する。給仕の持ってきたお肉をガン見しながらでは説得力など皆無だろうが。《華》としてテーブルマナーもしっかりと仕込まれたイェンである。高級肉の魅力に色々と敗北してはいても、ナイフとフォークを操る白手は優雅その物。一部の隙とて見当たらない。 ―――が、一口大に切った肉を口腔に含んだ瞬間の至福の表情と来たらなかった。ふにゃりと緩んだ双眸と綻ぶ唇。咀嚼する肉によって若干膨らんだ頬は幸せそうに紅潮し、普段の少女が見せぬ年相応がそこにはあった。ワインについてはそこまででは無いようだが、それでも意外な飲みやすさに驚いているのが分かるくらいの表情変化は見て取れる。)

「なるほど。至言、やも知れませんね。特別ではなく安定ですか。言われてみれば納得も出来ますが………難しいですね」

(成果を急ぐあまりやり過ぎて、それが結果的に効率を悪くする。それはイェンの短い人生を省みたとて幾度も経験してきた事だ。しかし、どれほど長くとも後2年。それだけ経ってしまえばイェンの身体は成熟しきり、商品として完成してしまう。今の未成熟なイェンが良いと言いだす有力者などが出てこれば、明日にでも帰還命令が下されモラトリアムが終わってしまう可能性がある。それを考えるなら焦るなと言われて焦らずにいるのは難しい事だった。)

コルボ > 「そういうこった。流れもコースメニューに似てる。やっぱこの形が分かりやすいぐらい人の心を掴むのかもよ。」

 魚の流通を言ってたものの、本当に肉が好きなのだなと表情も振舞いも緩ませている様を見つめながら。

「実際これから何度もやりあうゴブリンも、雑魚だが社会性もあるし武器の扱いも心得てる。
 知能もあるし何より地の利も相手にある。
 きちんと広い場所に誘い出して集団戦で戦えばいいが、焦って逆に誘い込まれた奴から死んでく。
 数と戦術、地の利まで重なって囲まれたら等級も何もねえさ。

 結構被害出してるから討伐しないといけない奴等だってことは、忘れるなよ。」

 あと聞きながらで良いから食えよ。冷めた肉食うのは店に失礼だ、と、
 マナー以上の道理も織り交ぜて肉と酒を勧めて。

「ただま、イェンのこた心配してねえが……、時間が問題か。

 なら後は、そうだな。人づてがこの稼業大事だからそこ抑えとけば早道にはなるんじゃないか」

 そこまで言うと顔を緩ませて舌鼓を打つ様に少し笑って。

「ちゃんと話も聞いてるが、いい具合に顔も緩ませてまあ……。
 と、俺も酒が回って来たか。」

 ワインを堪能し、肉も会話の合間でよどみなく食べ勧めるとレザーアーマーを脱いで手甲も取り外す。
 内側に鎧当てでカバーしながら金属を要所に仕込んだそれを脱げば、
 流石に仕事帰りの直行もあって男の汗のにおいが漂ってくるだろう。

 胸元も少し緩めて、少し誘いをかけてきている。
 算段は、会話の中でワインを注いでペースを少し早めていけば功を奏するだろうか。

「なんだかんだで、俺とも関係作っておくか……? 普通の繋がりじゃなくなっちまったんだしな?」

 信頼を裏切るのではなく、更なる親交を深めようと言わんばかりに

イェン > 「そう、ですね。ええ。私も受付嬢から聞きましたが、ゴブリンに返り討ちにされて命を落とす冒険者が意外に多い事には驚きました。とはいえ――――……あ、はい。いただきます………ぁむ。 ―――んんぅぅう~~~~っ♡ なんですかこのお肉。蕩けてしまいました。口の中でもう跡形も無く……!」

(真面目な顔で彼の言葉に頷きを返した仏頂面が、新たな肉を口内に迎え入れた途端ほにゃあっと崩れた。その変化を見れば、どれほどの感激を覚えているかもはっきり分かろう。そうして、そんなお肉と共に飲むお酒はするすると飲めてしまって、気付けば幾度か杯を空にしていた。そのたびにボトルを傾けてお代わりを注ぐ彼の下心には気付いているも、イェンの収入では早々口にする事の出来ないお肉とお酒のコラボレーションは簡単に止める事の出来るものではなかった。)

「――――あぃがとうごあいます、先生。大変ためになうお話でひた」

(頬が若干の熱を帯びている事は分かっているが、冷淡な仏頂面は何も変わっていない、はず。微妙に呂律も回っていないようだが、思考回路は理路整然としており問題ない、はず。酔っぱらってなどいない。酔っ払いは必ずそう言うのだ。)

「…………すんすん。……………ん♡」

(出されたお肉はあらかた片付け、今は〆となる南方果実をちまちま齧って口直しの最中。酒精によって熱帯びた身体に鎧姿が窮屈になったのだろうか。不意にそれらを脱ぎ始めた彼から漂う男の匂いに、判断力の緩くなった留学生はあからさまに小鼻を鳴らす。男の臭いというのは何故こんなにも癖になる臭いなのだろう。いい匂いではないと思う。ちょっと不潔な臭いだと思う。だというのに、もっと嗅いでみたいと思うのは何故なのか。はだけられた襟から覗く鋼の胸筋にどきっとする。)

「――――ふぇっ!? んな、なんれすか……関係って、ふ、普通のつながりですけど? ふ、ふつうのつながりですけどぉ??」

(びくっとした。アルコールにやられてふわふわした頭では彼の言う《関係》というのが《肉体関係》だとか《男女の関係》といった如何わしい物としか思えない。すっかり油断した最後の最後に待ち構えていた不意打ちで、ほろ酔い美少女はひとたまりもなく慌てふためく。)

コルボ > 「肉もそうだけど親父さんの包丁の入れ方が絶妙だから溶けるような肉にもなるらしいぜ。」

 筋だけでなく筋肉の流れに沿って包丁を入れる。肉ごとにそれを行っていき、
 歯が通る際に抵抗をなくす。
 ただ上質な肉を仕入れるだけでは味わえない妙がそこにあり。

「また今度準備室に来た時でも個人的に色々話してやるから来な。
 実際お前とは関係を作っておいても良いとは思うしな」

 生き残る人間は将来成長して重要な人脈となる。他の貴族や派閥ほどではないにしろ、個人的に繋がりを造っておきたい生徒に目星をつけておきたかったが、
 そういう意味では満足の行く引きだったと確信していて。

 あと思った以上にろれつが回ってないけどここまでは確信していなくて大丈夫かなぁとも。
 抜けは良いやつだし大丈夫か。

「普通の繋がりだけど、お互い遠慮しなくていい関係、ぐらいでいいんだよ。
 ……イェン、お前男のにおいが好きだったりするんじゃないか?」

 割り切った関係、というにはお互いの性癖を把握してしまう関係性。
 立ち上がり、テーブルの反対側に座る貴女の傍に行くと、頭を撫でる男の体から汗の臭いがより漂ってくる。

「それに、俺に可愛がられてまんざらじゃなかったのも、興味があるんじゃないのか?
 ……変な奴に手籠めにされるより、俺辺りで堪能するのも手だと思うぜ。」

 そう言いながら頬を撫でる手の親指が唇をなぞり、ニィと笑い。

「二人きりの時だけ自分の欲望に素直になるなら、お前が駆け上がる手伝い、俺の人脈使って手伝ってやってもいいぞ。」

 実際押し殺してる好奇心に触れるというのも意外に少なく、それを味わうのも悪くない、
 対価としても良いのだと思えて、男はいくつもの実利を提示しながら両手を伸ばして抱擁しようとする。

 答えれば、契約成立なのだと。

イェン > 「――――そ、そぉれすか。……ん、そぉいう事れしたら、ええ。よいのではないれしょぉか。 ――――ふぇえっ!? な、何をいってますか、そういうのは……わ、わ、わ……ぁ♡」

(鋼の痩躯が立ち上がり、悠然たる足取りでテーブルを回り込んでくる。彼のいう《関係》がそういった露骨にいやらしい物では無かった事に安心したのも束の間、ぽむんっと黒髪の頭部に置かれた手指に「―――みゃっ!?」なんておかしな声が漏れた。ぎゅっと瞑った双眸が、先程よりもはっきりと男の体臭を感じさせる。頭頂から熱帯びた頬へと滑る手指にぷにっと柔らかな桜唇が弄ばれてぞくぞくっと妖しい愉悦が背筋を駆ける。イェンが思っている半分程度にも思考力は残っていなかったらしく、彼の言っている事はまるで理解出来なかった。何となく、場の雰囲気で『二人きりの時、エッチな事させてくれるのなら、冒険者としての活動で力を貸してやってもいい』と言うような提案がされたのだと感じて、かぁぁぁ…っと酒精の紅潮に羞恥の赤が混ざり込んだ。何か答えねばと瞑っていた両目を開き、アルコールの影響でどこか茫洋とした眼差しで見上げようとしたところ―――――目前に迫るのは、あられもなく開かれた襟から覗く胸板。)

「~~~~~~~~~っっ」

(牡の臭いも生々しいそれの接近は、ほろ酔い処女に抗し得る物ではなく、ぎゅぅっと小躯を竦ませ硬直してしまう。引き結んだ唇にまともな答えを返すだけの余裕などあるはずもない。しかし、固まった肢体は両手を突き出し男の胸板を押し返すでもなく、ただただ小さく震えるばかり。消極的な肯定。そんな風に受け取られたとておかしくない反応。実際、イェンは酔っぱらった頭の中で予感めいた物を感じていた。このまま彼と関係を重ねて行けば、間違いなくそうした関係になってしまうだろうと。無論、切り札となる乙女の証を易々と捧げるつもりはない。そのような関係になったとて、許すのはその手前まで。しかし、元はと言えば彼とその様な関係になるつもり自体無かった生娘である。流れ次第ではどの様な事になってもおかしくない。考えのまとまらぬ脳裏の中、ぐるぐるとその様な事ばかり考える小娘は、硬直した細身でぷるぷるとポニーテールを震わせるばかり。)

コルボ > 思考も失い、生娘然とした反応の中、抵抗しなければ貴女を抱きすくめ、自分の胸板に顔を埋もれさせるだろう。

「呼吸浅くなってるぞ? 深呼吸してみな……。」

 抱き締めれば尻を触るでも、服脱がせるでも押し倒すでもなく、ただ呼吸を整えろと言う。
 その為の深呼吸、男の臭いにそそられる女性がするその行いは性癖の暴露にほかならず。

「深呼吸して、リラックスして……、自分がどうしたいのか頭に思い浮かべて……。」

 囁くように、導くように男の声が耳元で囁かれる。
 酔っていることも自覚できるだろう、その中で自分が手を出さないことを理解してくれれば儲けものだが。

「ほら、自分でもしがみついてみな。」

 背中を押すように、深呼吸を促しながら内心穏やかではないであろう貴女に明確な行動を要求して。

イェン > 「――――――ん…っ。 は、はい………はぁぁ………、すぅぅ………、っ♡♡」

(抱き締められた。強張らせた小躯がびくっと跳ねる。頭の上からの落ち着いた声音に促され、思考力の落ちた生娘は言われるがままに深呼吸。酒精を帯びた熱い吐息が彼の胸板を擽り、吸い込む際には開かれた襟から漂う牡の臭いが豊乳の内側一杯に雪崩れ込む。『あ……この臭い、好き、です……♡』はっきりと自覚させられた。半ば無意識のままに鼻先を動かして、くんくん、すんすんと匂いを嗅ぐ。甘い吐息は愛撫めいて、鋼の胸板を晒す男の背筋にもぞくりとした妖しい愉悦を生じさせる事だろう。)

「はぁ……っ、はぁ……っ、ん、ふ………♡ は、はぃ、せん、せ……ぇ……♡」

(おずおずと彼の背筋に回した細腕が、最初はそっと手の平を添えるだけ。吸い込む呼吸に合わせてするすると柔らかな繊手が滑り、ついにはぎゅっと確かな抱擁で彼の腹筋に豊乳の柔らかさと暴れる鼓動を押し付けていた。濡れてしまっていた。もしも今、プリーツスカートを捲り上げられれば、恥ずかしくも甘酸っぱい乙女の匂いが嗅ぎ取られていたかも知れない。アルコールによる物か、はたまた大人の男性との抱擁のもたらした興奮による物なのか、はっきりと熱帯びた小顔が胸板を擽りながら上を向き、蕩けた紫瞳を男に向ける。桜色の唇は意図しての物なのか無意識か、何かを求めるかの半開きで、甘い吐息を彼の顎先に吹きかける。そんな状況を崩したのは、いかにも豪商然とした小太りの男と娼婦っぽい女の闖入だった。今のイェン以上の酩酊状態にあるのだろう彼らは、どうやら部屋を間違えてしまったらしい。大人の男と抱き合う女学生の姿を目にして『ん、ぉ……? おお、これはすまんな。いや、失敬』などと、言いつつ扉を閉めた。その頃にはもうぴゃっと男の胸から離れた場所に退避していた生娘は、真っ赤っかな顔を俯かせたまま)

「―――――そ、そろそろ帰りましょうか。私は、あ、あまり遅くまで出歩いている訳にも、いきませんし。ええ、怒られてしまいますから」

(言うが早いか、給仕呼び出しのベルを鳴らして会計を頼んでしまう。そうして彼が会計を済ませ、二人並んで店の外へと出たのなら)

「き、今日はありがとうございました大変ためになるお話でしたしつれいします!」

(一息で言い切ると、酒酔いの影響などまるで感じさせぬ疾風の様な足取りで男の前から駆け逃げて行く。後に残るは仄かに酒精を帯びた青林檎の匂いばかり。後日、学院内で男性教師と顔を合わせたイェンは微妙にぎくしゃくとした対応を見せるのだけども、そこには以前には存在しなかった距離の近付きが感じられる様になる――――。)

コルボ > 己が促すまま呼吸をすれば、後は酩酊した頭に浮かぶのは欲求。
それも交われというのではない、理解のある者に性癖を晒せと言う程度のもの。

しかしそんな中にも少女から伺える色気に欲望が鎌首をもたげるが、それを辛うじて抑えて。

こちらが平静を保てば、刺激を与えなければ、自ら進めていく。
……心なしか、自分以外のにおいが漂ってきている気がする。

雌の臭い。それほどに突き動かされるものなのかと思いつつ、させるがままにしていて。
……実際自ら無防備に豊かな胸を押し付けてくるのだからこちらも理性が途切れそうにはなるのだけれど。

(これだけ素直になってきたなら、回数重ねればいけるなこれ)

普段とは違う、じっくりと重ねる趣向に面白みを感じながらも、貴女の吐息が吐きかけられた直後に扉が開く。

「あ」

豪商のほうはともかく、娼婦のほうには見覚えがあるというか知り合いだった。
こちらも動きが止まり、無言で含みのある笑いを浮かべながら手を振って後にする娼婦にひきつった笑みを浮かべて見送れば。

「ん? あ、ああそうだな。門限とかあるもんな。」

珍しく調子を崩して言われるがままに会計を済ませて外に出れば、
先ほどまでの様子もどこへやら、風のように逃げていく背中を見送って。

「……いやまそういうわけにもいかんだろうな」

夜道を女生徒一人で帰らせるのも、かといって一緒に帰るのも気まずいだろうと、
手早く突起や足掛かりを駆使して建物の屋根に乗り移り、貴女の背中を屋根伝いに追っていく。

……無事にたどり着いたのを見届ければ、そのまま立ち去るだろう。

学院でも、男はからかい半分に接しながら、前よりかは表情が柔らかくなったのを感じるだろうか。

ご案内:「平民地区 冒険者ギルド」からイェンさんが去りました。
ご案内:「平民地区 冒険者ギルド」からコルボさんが去りました。