2022/05/03 のログ
ご案内:「平民地区 冒険者ギルド」にイェンさんが現れました。
イェン > 「―――――これで、私も一人前の冒険者として認められた……という訳ですね」

(正確に言うならば、一人前ではなく半人前。どころか、ようやく新人として認められただけではあるが、登録した直後のGランクとは扱いが変わるのは事実だ。《迷子の猫探し》だとか《街壁の石詰み》だとか《妖しい薬の実験台》だとかのお使いクエストからは解放され、モンスターの討伐依頼も受ける事が出来る様になる。そう、イェンはつい先程Fランクへの昇格を果たしたのだ。とはいえ、GからFへの昇格など黙ってコツコツこなしていれば誰だって上がれる物。登録から2ヶ月程度での昇格はたしかに少し早めだが、それとて別に珍しい記録ではない。それでも、ようやく冒険者らしくなってきたという気がした。普段と変わらぬ仏頂面も若干の紅潮を頬に昇らせ、先程までの安っぽい木札から、安っぽくも一応は金属に昇格した鉄のプレートをきゅっと豊胸に抱きしめる。)

『おぉ、嬢ちゃんもついにFランクに上がったか。こいつぁお祝いしてやらねぇとな』

(そうした留学生の仕草を見止めたのだろう。ギルド併設の酒場にいたベテラン(真昼間から酒を飲んでくだを巻く駄目大人)が、酒瓶を持ち上げ声を投げてきた。しばらくは自分への声掛けと気付いていなかったのだけれど、カウンターの向こう側で共に喜んでくれていた受付嬢が何とも言い難い表情でイェンを見ている事に気付いて目弾きの双眸にも理解の色が浮かぶ。ベテランに冷淡な美貌を向けて『私の事、でしょうか?』とばかりに小首を傾げる様子は、さらりと揺れたポニテも相まり存外に可愛らしい。)

イェン > 『お、おうよ。あれだろ? Fランクに昇格したん、だよな? ほれ、そのプレート……』
「―――ええ、そうです。私もようやく一人前の冒険者として認められたという事です(※違います)」
『ハハ、それじゃあやっぱり祝い酒だ。おう、嬢ちゃんに一杯。オレからの奢りだ!』
『お、なんだなんだFランクが出たか。よし、俺からも一杯!』
『ほほぉう、そうかそうか、オレも一杯奢ってやるよ!』
『待て待て、ワシの事を忘れてもらっちゃあ困るぞ。マスター、ワシからも一杯じゃ』
『ケッ、新人、いい気になるんじゃねぇぞ。だがまぁオレからも祝い酒だ、飲みやがれ』

(存外、イェンに声を掛けたくても中々思いきれなかったベテラン連中はいたらしく、あれよあれよという間に美貌の留学生はギルド併設の酒場奥へと連れ込まれた。そして、大テーブルのお誕生日席で、波々と酒の注がれたカップの群とむくつけき巨体に囲まれる事と相成った。これは特に変わった事でもなく、一応は冒険者ギルドの伝統行事である。駆け出しのGランクから、新人のFランクへと昇格したルーキーにベテランが酒の一杯でも奢りつつ、己の冒険譚や討伐依頼を受ける際の注意点などを教え伝え、気が合う様ならパーティの一つも組んで共に依頼を受けるきっかけとするのだ。故に、下心丸出しのベテランを止める事も出来ず、人の良い受付嬢はおろおろするばかり。イェンはイェンで、これまで声の一つも掛けてこなかったベテラン達からいきなりこうも持ち上げられて落ち着かぬやら照れくさいやら。鉄壁のポーカーフェイスはそんな今とてヘの字の唇を引き結んでいるのだけれども。)

ご案内:「平民地区 冒険者ギルド」にコルボさんが現れました。
コルボ > 「おーい、邪魔だ邪魔。カウンターでやいやい騒ぐな」

 歯を剥き出しにして不平を言いながら貴女を取り巻く男につっかかるのは
 レザーアーマーを身にまとったごろつき然とした風体の男。

「なんだコルボじゃねえか。しみったれた仕事は終わったのかよ」

 明らかに男と既知ながらどこか格を見せつけるような、おそらくは貴女に箔のついた振舞いでも見せたいのだろう。
 対して揶揄される男は肩を竦めて。

「仕事選んじゃギルドの稼業はやってらんねえだろ?
 つーか学生に酒飲ませんな。そいつ学院所属だぞ。な、イェン。

 学院の生徒は色々な派閥がヘッドハントに躍起だからな今、キズモノにしたら後がこええぞ。」

 げらげら笑いながら釘を刺しつつ、Dランクを示す銀のプレートと一緒に革袋と、
 大きくEと烙印が捺された依頼書をおろおろしていた受付嬢へ提出する。

「霊茸30本な。相変わらずクソみたいな金額で依頼してくんなあのジジイ。
 ついでだからよかったけどよ。ほら仕事しろ仕事。おっぱい揉むぞコラ。」

 コルボのニヤニヤ顔に当てられて上ずった声で受付嬢は処理を始めると、
 貴女のほうに男は向きなおる。

「てかイェン。お前在学中にFまで上がってんだな。学科やりながらよくやるぜ」

 ……そこまで話して、人相が分かりにくいかと、額に巻いていたバンダナを取り外してみせて。

「お祝いなら周りじゃなくてお前が口にしたいもんにしなきゃな。
 今日は俺が奢ってやるよ」

イェン > 「―――――っ!? コル、ボ…? んんっ……クロウ、先生。ご機嫌よう。 ―――ええ、見ての通り学院生です。一応成人はしておりますので飲酒は問題ありませんが、傷物にされてしまうのは困ります」

(ベテラン勢に進められるまま、ギルド酒場の安酒をちびちび舐めつつ彼らからもたらされる貴重な情報を心の中でメモしていた少女は、不意に横合いから聞こえて来た声音にぴくんっと肩を弾ませた。出来る限り平静を装って切れ長の双眸を向けたなら、そちらには想像通りの―――否、想像よりも少しガラの悪い風体となった教師の姿。その事にも軽い驚きを覚えつつ『そういえば先生、雇われの臨時講師の様な物だって言っていましたね』と納得する。むしろ、鷹を思わせる双眸の鋭さや、鋼の痩躯を考えるなら、今の姿の方が余程にしっくりくるという物だ。意外な所からの援護射撃にこれ幸いと乗っかって、さり気なくベテラン冒険者の狙いを牽制しておく。彼らとしては昇格祝いにかこつけて散々に酒を飲ませ、正体をなくしたところで2階の個室に連れ込んで……なんて狙いがあっての行動なのだろうし。そうしてちらり、一旦テーブル席から離れて受付カウンターへと移動した彼の様子を目にすれば、そこには燦然と輝く銀のプレート。イェンが手にしたばかりのくすんだ鉄色とは大違いのベテランの証が目に入った。受付嬢に対する態度は学院で目にした不良教師その物で、なんだか色々と納得してしまう。)

「ええ、私には目的があります。同時に時間の制限も。足踏みしている余裕は無いのです」

(油断をすればすぐに意識の端から昇ってくる先日の出来事。それを必死に脳内から追い出しつつ、イェンは普段と変わらぬポーカーフェイスを維持しつつ考える。周りで口々に文句を言う冒険者もほとんどが男性教諭と同じ銀のプレート持ち。とはいえ、彼らの大口から発せられる内容は、随所に誇張や嘘が交えられ、情報としての価値は低そうに思えた。であるならば、同じDランクではあってもきちんと仕事をこなして戻り、酒浸りになっていない彼からの情報の方が得る者は多いだろう。問題としてはやはり、先日のアレ。とはいえ、ここで飲んでいた所で貞操の危機がある事には変わりないし……そこまで考えて意を決する。)

「――――そうですね。では、本日は先生のお言葉に甘えさせてもらう事にいたします。 ―――んっ。 ―――んくっ。 ―――んくっ、んくっ、んくっ、んく。 ―――――ぷ、はぁ……。先輩方、ご馳走様でした。今後もよろしくお願いします」

(手つかずで残されていた杯を順番に取り上げて、それぞれ一気に飲み干していく。どこのドワーフだと言わんばかりの飲みっぷりに男達も唖然。そうしてペースを崩しておいてさっと立ち上がり、彼らが正気に戻る前に頭を下げて場を辞する。この辺りの呼吸は体術と同じ、機の読みあいが物を言うのだ。)

コルボ > 「クロウ?」

「学院での登録名。最初変装してたんだよ。この間バレたけど」

「んだよ生徒にちょっかいかけてんのお前のほうじゃねえかよ」

「キズモノにはしてねえよー?」

 貴女の読んだ名に冒険者達が男を見ればかいつまんで説明して、
 その最中に、貴女に手を付けた男の手癖の悪さは周知の者であることが伺えて。

「元々コルボって名乗ってんだよ。クロウもヴァローナも他所の言葉で全部”カラス”だ。
 通りがいいからこれでいってんだよ。」

 そう説明しつつ、自分へ向けてくる視線を一瞥して。

(こいつ、まだ駆け出しっていうには、目の泳ぎ方が上手いっつううか……)

 学生と、新人というにはどこか情報の捉え方に妙を感じながら、
 新人への”歓迎”を牽制しつつ貴女を席へと誘っていたところで目を見開き

「んだよ。吞めんじゃねえか。そんだけイケるなら助け舟出すのは野暮だったか?」

 プレートを袋にしまいながら、面食らう一同達が動き出す前に足早に離れたことを見定めて。

「やっぱこの間体を触った感じといいなんか腕に覚えがある感じだな。」

 以前の準備室での出来事。ただ愛撫した中でも体の肉付き、しいては筋肉の配分から人となりを見定めていて。
 その一方で合流した貴女にメニュー表を差し出して

「ここ、メニューにはないけど賄いのスープもイケるぞ。何だったら頼んでやるけどどうする?」

イェン > 「…………………………………」

(『傷物にはしていない』しれっと応える彼に対し、イェンが向ける視線がジト目となるのは仕方あるまい。確かに、傷物にはなっていないが、乙女にあれだけの事をしでかしておいて平然とそう応えられる軽薄さには視線の温度も消えようという物。元々イェンの双眸は温度を感じさせぬ冷淡な物なのだけども。ともあれ、どうやらクロウと名乗った男性教師の本当の名前はコルボというらしい。続く言葉に対してもざっくりと聞き流しつつ、とりあえず学院ではクロウ先生とこれまで通り呼んだ方がいいのだろうと判断した。冒険者ギルドではコルボ様と呼んだ方が混乱も無くて良いのだろうとも。)

「………まあ、飲めなくはありません。けど、好んで飲みたくなるお酒ではありませんでしたが」

(ようやく我に返ったベテラン勢から、獲物を横取りしていった同僚に対する野次が飛ぶ。そんな中、プリーツスカートをひらひらさせる小走りで彼の隣に並んだ少女は彼の言に踵を持ち上げた囁きで応えた。流石に奢ってもらっておいて『本当は飲みたくなかった』なんて聞かせてしまえば、彼らとて面白いはずがないだろうから。)

「~~~~~っ! ………し、しれっと、そういうことを言わないでください」

(かぁぁ…っと頬に熱を昇らせつつ、仏頂面が抗議する。 ―――が、彼がこの店のメニューを取り上げ差し出して来たのなら、流石のポーカーフェイスも「え……っ?」という表情を見せようか。)

「ぃ、いえ……あの………ですね、先生。流石にこの店で、というのは……」

(未だにぶーぶーと野次を飛ばし続けるベテラン勢をちら見して、少々気まずそうな上目遣いで男性教師を見上げる。流石に袖にしてしまった彼らの前で飲食するのは居たたまれない物がある。ついでにどうせならば安さと量のみが売りのこの店ではなく、普段は入れない様な高くて量は少ないけれど味だけは凄く良いといったお店に連れていってもらいたいなんて下心もある。銀札ともなればそこらの街人以上の稼ぎはあるのだろうし。)

コルボ > 飛んでくる野次をものともしないどころか煽り返すように男からもヤジが飛ぶ。
どうやら彼等も非常勤講師に応募したようだが落ちていたようで。

それだけに尚のこと逃した”獲物”は大きく感じているのに、生徒の一人がこんな器量の良い美少女ともなれば心中は察するべきだが”カラス”は声高に鳴くばかりで。

「まー、酒場の酒は飲み始めには勧めねえってか嫌いになるタイプだろうよ。

 つーか、いっそ聞いちまうけどイェンも俺の体つき見て職種や経験を推測して当たるタイプじゃないのか?
 若いのにきちんと”視てる”目の良さはあると思ってるぜ?

 実際目的があってこの稼業やるなら、今のうちに情報に貴賎を持ち込まないようにしとけ。
 そうしないと銀で止まるいい例から酒奢ってもらったろ?

 ん? ……あー、まあそれもそうか。良しちょっと待ってろ。先に頼んだ酒だけ飲んでくから。」

 別の店に行きたいと言われればそれもそうだなと頷いて、届いたエールを駆け付け一杯一気に飲み干して、お代をカウンターに置いてきて。

「これからしたたかさも身につけないとな。
 そうだな、客は少ないが静かで食える店もあるし、なんだったら個室借りて運んでもらうか?
 あいつ等後をついてきそうだし、撒いた方がいいだろ」

 ふと、そんなことを小声で言いつつ。

「肉、魚、美味しい野菜。どれが食いたい?」

イェン > 「――――そう、ですね。視覚から得る情報と言う物が、実戦においてもかなりの重要性を持つという事は理解しているつもりです。はい、ありがとうございま………………貴方は作らなくても良い敵を作る性質だと言われた事はありませんか……?」

(Dランク冒険者からの忠告や誉め言葉には無表情のままではあっても素直に礼を口にする。が、そこに不随した余計な一言で向こうの一団からの野次が一層強まったのを見ては、再びのジト目も向けてしまうだろう。まぁ、彼と彼らにとってはそうしたやり取りですらいつものじゃれ合いであり、コミュニケーションの一つとして成り立っている様でもあるのだから、そこは大した物だと思うけれど。そうしてこちらの図々しいお願いを聞き入れてくれたらしい男子教諭にほっとして、彼が戻って来たなら二人してギルドを出る。無論、その際には席を立とうとしていたベテラン勢に、背筋の伸びた綺麗な礼を送るのも忘れない。彼らの毒気を抜くと同時に、貴方がたの動きに気付いていますよという牽制の意味も込めて。)

「そうですね。用心というのものは重ねすぎる程で丁度良いと聞きますし、よろしくお願いします。先生」

(《個室》という言葉には一瞬ぴくりと反応してしまう。とはいえ、連れ込み宿の個室に案内されるという話ではなく、お高い料理屋の個室という事なれば、いくら不良教師と言えどおかしなことはしてこないだろう。そう判断して素直に彼の勧めを受け入れた後)

「――――ここは海にも近く、新鮮な海産物を口にする機会も多いですし………肉、でお願いします」

(きりっとした美貌で傍らの教師を見上げつつ応えた。野菜については普段、牛か馬かと思うぐらいもしゃもしゃもしゃもしゃしているので、こういう時くらいはがっつり肉を食べたい乙女心。勿論、狙っている男性の前で小食を装う気持ちも分かるが、イェンは別に彼の事を狙っている訳ではないのだし、だったら格好をつける必要もないという理屈である。)

コルボ > 「いいんだよあれで。あいつ等は酒癖も悪いし管巻いてるし、生徒から見れば教師になれなかった大人をどう見るかは、
 まあそれぞれなんだろうけどな。

 あいつ等は腕はきちんとしてる。
 それに、あいつ等気づいてないけど銀止まりってのは、利点あるしな。」

 ふと、そんなことを漏らしつつ、更に金をカウンターに置いて彼等に酒を一杯ずつ奢って
 貴女を”お持ち帰り”することに対しての手打ちとしながら。

 対して整った礼、作法を観つつ

「本当に学院に入る生徒だけあるな。
 ……飯食いながら色々言おうと思ってたけど、イェンはあんま要らなさそうだな。」

 そしてわずかな反応を見つつ内心で

(この間みたいなことするつもりですがね)

 などと思ったりはする。オーダーはこの店ではないところ、良いものは食べさせてやるとして
 そういうことを黙認してくれる店はいくらでもあると思いつつ。

「肉か。なら貴族もたまにお忍びで来る良い店連れてってやる」

 ついてきな、とギルドを離れて平民地区外周へ向けて歩き出す。
 富裕地区に近いとは言わないが、そちらに寄っていて、比較的奥まった路地を通った末に
 二階建ての建物に至る。

 中に案内されてはいれば、店主らしき男が一瞥して、カウンターで鉄板で肉を焼いている。
 調理に集中しながらも、給仕に案内されて二階の個室に
 小さく少ないが目利きの利いた調度品が飾られた二人掛けの席に案内されるだろう。

「飲めるんだったら酒でもいいぞ。ここは量は少ないが貴族が口にする品種の肉も仕入れてるからな。
 ここで美味いもの食って、いつか自分で来られるように励みな」

イェン > (独り言めいた男の呟きに傾げた小首でポニーテールの黒尾を揺らしつつ、恐らくは褒めてくれたのだろうと小さく頭を下げておく。傍らを行く男性教諭にしても先のベテラン冒険者達と同じ下心を持っての親切なのだとは気付いている。先日の一件で、彼は間違いなくイェンを一人の女として見ていたからだ。曲がりなりにも教師が生徒にあの様な事をしでかしていいのかと思わなくも無いが、それを言うなら講義で大々的に乙女の身体を《教材》として用いる様な学校という時点で『これが王国の性モラルなのですね……』と納得するより仕様がない。にもかかわらず、男の誘いにこうしてほいほい着いて行くのは、彼がもたらす情報は冗談抜きで生死に関わるものだろうというのが一点。普段は食べられない美味しいお肉を食べたいという俗な理由も勿論ある。そして、何ともおかしな話ではあるのだけれど、前回、あれだけの事をやっておきながら勢い任せで最後までしてしまおうとしなかったこの男に、ある種の信頼を置いてしまったのも確かだ。この人は、本気で嫌がれば無体な事はしないのではないか。そんな、男を知らぬ処女ならではの幻想を抱いていた。)

「―――――っ! それは期待出来そうですね。楽しみです。素直に楽しみです、先生」

(先生呼びにも敬意が滲もうという物。貴族が態々お忍びで訪れる美味しいお肉のお店。一体どれ程の肉が出てくるというのか……! 安酒でたぽつくお腹もきゅぅぅんっと鳴きだしそうなくらいの期待感が、女学生の豊乳を弾ませる。実際、若干弾む足取りが、プリーツをふわふわさせて発育の良い双乳をぱゆんぱゆんと躍らせていた。店内に入って最初にするのは吸気。小さな鼻孔からすぅぅ…っと匂いを嗅いで、香ばしい匂いで期待感を煽る。ついで閉ざしていた双眸を開いて紫水晶で周囲を見回す。高級店だけあって掃除も行き届いているし、内装にも気を使っている。給仕の立ち姿からして既に場末の食堂とは違う。こういう時、ドレスコードも平気で抜けられる学生服は便利だ。傍らを行く不良教師は冒険者丸出しの革鎧で平然としている強心臓の持ち主だが、それでも一切止められない所を見るに常連並みの扱いを受けているのだろう。銀級冒険者の経済力を改めて見直すイェンである。)

「酔いつぶれる様な事は早々ありませんが、お酒の善し悪しが分かる程の経験もありません。教えていただけますか、先生?」

(メニューを捲り、普段は食べられないお肉を選んでいく。先日は友人たる伯爵令嬢と共にとんでもない量の料理をあっさりぺろりと平らげてしまったイェンではあるが、流石にあんなのは例外的な物。量よりも質。少な目で高い物を複数種。そんな方向性でお肉の注文を終えた後、折角ならお酒も良い物をと、大人の男性に丸投げした。何やら蠱惑的な物言いになったが、これについては《華》による教育の賜物でも何でも無く処女の無自覚による物だった。)

コルボ >  男が女を抱くのは楽しみが大半だが把握する為でもある。
 うぶな女生徒が教師に誘われたぐらいで異様に乗り気になるとあれば、
 学院に国外から送り込まれた生徒側からの引き抜き要員とも判断して対処する。

 貴女をそう見なかったのは、ひとりの生徒として扱っているのは生娘と年齢相応の好奇心を垣間見たからで。

 ……実際本当に鉄面皮であればここで出会った時点で逃げられているのが普通な以上、
 わりと期待はしていたりする

(それでもま、今日はな……)

 お祝いの席で食ってしまうとトラウマになりそうだなぁと思いつつ。

「つーか、外じゃ先生って呼ばなくていいぞ。勤務外だしな。

 ……つってもさっき俺も生徒扱いしたか。まー、呼び方は先生でもコルボでもそっちに任すか。」

 何気に呼び捨てでさえいいのだと。実際一人の”女”として可愛がった以上、それだけの距離も詰めてきていて。

「ここの親父さん、料理にしか興味ないからな。一時期貴族に囲われかけてたけど、
 他の貴族が面白くないんで干渉しあった末にここじゃ
 ”他の部屋で何があっても干渉しない。この店は中立”ってことになってんだよ。」

 期待に胸を物理的に弾ませている貴女が嗅覚を頼りに評価しているのを見て、
 やけに店が静かな理由を端的に言う。店主が知らないところで取引に使われていることもあるのだろう。

 貴女のオーダーに文句を言うどころか、これとこれも美味いぞ、と
 変わり種のメニュー……、肉のスシというシェンヤン寄りの料理や
 他の肉も追加していく。

「だったらこれなんかどうだ? 酒なんて自分の好きに呑んでいいが、
 こいつは口当たりもいいし飲みすぎても翌日抜けがいいからな。

 て、味のほうだったな。癖もないし飲みやすいからワインの足掛かりにも勧められる奴だよ」

 と、少し値の張るものをチョイスして。

「にしてもイェンお前、立ち振る舞いは冒険者で名を挙げて貧乏暮らしから抜け出す、とかって意味の時間がないんじゃなさそうだな」

 これまでの所作を見て、そんなことを言う。

「ああそれと、ここは不干渉とは言いつつ、給仕とかが貴族に言われて防音の術式編み込まれてるから大声出してもいいし
 そうそう話を聞かれることはないぜ。

 なんだったらこの間のこと恨んで俺をぶっ殺しても不干渉だからな」

 などとげらげら笑いつつ